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April 23, 2024
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Transcript
ST03: フェミニズム哲学のイメージ ST02復習: 第2派〜第3波 スタンドポイント理論の概要 フェミニズム哲学の基本的な特徴 まとめ 社会思想(Social Thought, TCUE2023)
福原正人:
[email protected]
learnwiz one 最初の参加者名: 「学籍番号」 。氏名を書いても評価にカウントされないよ。 リアルタイム質問欄:講義中に複数回送信可。使用するかはもう少し様子見。 リアペ提出欄:各講義に1回。翌日の朝が最終締め切り。 しつこいけど初回の講義動画「評価方法」 (46分45秒〜)は必ず視聴して。 ST03:
もう一度確認 福原正人:
[email protected]
女性も社会のメンバーに入れてほしい 18世紀末~1920年代 人権宣言(18世紀)以降も女性は公的空間では人間でなかった -女性は(黒人奴隷と同じように)モノとして扱われた。モノは、権利の「対象」であ り、参政権や所有権、移動の自由、結婚の自由等、権利の「主体」でない。 e.g. イギリスのサフラジェット運動(女性参政権運動) 獲得年:イギリス1918年、アメリカ1920年、日本1945年 →これらは人間としての主体性=権利を取り戻す運動 第一波の問題意識は、公的空間での法的・政治的不平等の(制度的な)改善
-現代ではリベラル(自由主義的な)フェミニズムと呼ばれる。 ST03: 第1波 福原正人:
[email protected]
リベラル(自由主義)とは? 中世の絶対王政に代わる近代な社会システムを基礎付ける政治的、社会的な理念を指 す。ひと言でいうと、個人の自由と利益を(権利を通じて)尊重すること。 どのように?絶対王政に代わる個人の権利を尊重する社会制度を構築する。どのような 社会制度が構築されるべきか=社会正義はいくつかのバージョンがある。例えば、公正 な市場、福祉国家、法の支配(憲法) 、民主主義など。 共通する特徴としての「公私二元論」e.g 民事不介入、政教分離 -国家が口だしをできるみんなに関わる社会の問題と個人の問題を区別しよう
-公的空間:社会制度一般(e.g. 経済発展と平等な権利分配) -私的空間:個人の生き方、家庭など よって、政治や法の問題とは、社会制度の問題であり、リベラル・フェミニズムとは、 この制度変革を通じて男女平等を実現する立場である。 ST03: 補足 福原正人:
[email protected]
入りたかった社会は男性優位社会だった 1960年代~1980年 法的平等の達成後も続く(1)男女間の実質的不平等、(2)女性特有の経験 e.g. 家庭内無償労働、DV、賃金格差、キャリア形成の難しさ、ハラスメント 上記のような女性としての経験や抵抗運動のなかで「公私二元論」では看過される問題 (=社会構造)が断片的に指摘され始める。 e.g. 性別役割分業の見直し、性と生殖の権利の保障、ポルノグラフィーの是非 第二波の問題意識は「公私二元論」の問い直し。とくに私的空間にも及ぶ男女間の社会
構造を指摘して、これを変えていくことが重要とされる。 -「個人的なことは政治的である(the personal is political)」 -現代ではラディカル(急進的な)フェミニズムと呼ばれる。 ST03: 第2波 福原正人:
[email protected]
ジェンダー(gender) / ジェンダー規範 男女の生物学的な性差であるセックス(sex)に対する男女の社会的役割や行為規範を含む 社会的な性差のこと。社会的役割や行為規範はジェンダー規範と呼ぶ。 精神学者ロバート・ストラーが、教育心理学等の知見に基づいて、ジェンダーが個人の アイデンティティを形成すると指摘する( 『セックスとジェンダー』1968年)日本で は、社会学を中心に1980年代頃から用いられる。 フェミニストは、ジェンダー概念を用いて
(1)女性の不利益は、個人の問題ではなく社会 の問題であり、(2)公私二元論では、構造的な問題が看過されると論じた。 e.g. 女性のキャリア形成が難しいのは、その女性の努力が足りないからではなく、そう したジェンダー構造やジェンダー規範が存在するから ST03: 社会構造の典型例 福原正人:
[email protected]
画一的な女性像を越えて 1990年~現代(現代を第4波とする場合もある) フェミニズム第2波は男女関係、とりわけ白人中産階級の経験にフォーカス -男女というジェンダー構造だけでなく、この二元論への問い直しの他、人種や性愛規 範、障碍なども社会構造として捉えられる 第3波は複数のアイデンティティへの帰属を踏まえた運動と理論として展開 -性的マイノリティ(LGBTQ) e.g. 同性婚 -人種
e.g. 黒人のニーズや労働環境 -当然、第2波と第3波の関係を中心にフェミニズム内の論争も生まれる ポップ・カルチャーとの接近やSNSでの運動 ST03: 第3波〜現代 福原正人:
[email protected]
フェミニズム哲学のイメージ 実際はもう少し複雑だが社会運動としてのフェミニズムはここまで。 今日のタスクはフェミニズム第2波以降に理論的なイメージを付けること。 とくに<スタンドポイント理論>の雰囲気を掴むことで、フェミニズム哲学がどういっ た前提に議論しているかを理解する。スタンドポイント理論は教科書レベルではないの で雰囲気をつかめれば十分である。 そのうえでフェミニズム哲学の基本的な特徴をいくつか理解していこう その詳細は講義のなかで段階的に説明するので、今のところはイメージだけよい ST03: 今日のタスク
福原正人:
[email protected]
スタンドポイント理論(standpoint theory) 社会構造の不正さや抑圧は、被抑圧者の<認識的優位性>に依拠することで明らかにで きるとする理論のことを指す。 ざっくりというと... 当たり前だと思っていたことを変えるべきだとに気づけるのは、その当たり前から不利 益を被ってきた当事者であるということを前提にして考えたほうがよい なぜならば、構造的に不利な立場にあるひとは、構造的に有利な立場にあるひとがアク セスできない経験や証拠にアクセスできるから ST03:
フェミニズムの方法論 福原正人:
[email protected]
夜道は安全か? 客観的な証拠:犯罪発生率からして犯罪が少なく安全な国の一つである 男性Mさんの証拠:確かに俺は夜道を歩いていて怖いと思ったことないな 女性W1さんの証拠:場所によったら怖いかもしれないな 女性W2さんの証拠:怖い目に遭ったので安全とは言えない気がする この事例では社会構造はそこまでハッキリしない 夜道は女性という立場からして安全と言い難いと思える<証拠>がありそう 社会的立場によって知識にたどり着く異なる<証拠>にアクセスしている ST03: 事例1
福原正人:
[email protected]
職場は平等か? 制度的な証拠:男女機会均等に関わる法令があり職場はこの法令を遵守している 男性Mさんの証拠:同じ部署だし男女で仕事内容もそこまで変わらなくない? 女性W1さんの証拠:わたしの昇進が遅いのはもしかして私が女だから? 女性W2さんの証拠:わたしの昇進が遅いのはわたしの努力が足りないから? この事例では性別役割分業のようなジェンダー構造がもう少し想像できる 職場のなかで、構造的に有利なひと(=男性)は、構造的な問題に気づかなかったり (気づいていてもその立場ゆえに)無視することができる一方、構造的に不利なひと (=女性)は、これに直面せざるをえない場合がある これが立場によってどのような<証拠>にアクセスできるのかに違いを生み出す
ST03: 事例2 福原正人:
[email protected]
フェミニズム第2波は女性の経験が原動力。これをうけて、1970年代〜80年代にかけて 哲学者や社会学者が、オーソドックスな社会科学が重視する「客観的な」データではな く、当事者の経験の再評価することの意義を理論化したもの。 いくつの注意点 -客観的な知識が(フェミニズムにとって)ムダという主張ではない -当事者は絶対的に認識的優位であるという主張ではない(e.g. 女性W2さん) -当事者は社会構造の問題を捉える<証拠>にアクセスしやすいのイメージでよい この理論を理解すると、フェミニズム哲学が、どのような問題に関心をもって、どのよ うな不正義に関心をもっているのかが浮かび上がってくる
ST03: スタンドポイント理論の詳細 福原正人:
[email protected]
(1) どのような問題に注目するのか? 構造的に有利なひとが無視および隠蔽してきた経験に含まれる不正さに注目する 典型的には成人男性だが、問題によっては異性愛者などに変化する ケア活動(家事、介護、育児): ST04 リプロダクティブな活動(妊娠出産):ST06 その他(結婚、性愛、ポルノグラフィ、ハラスメント): ST9-ST10 実際に、オーソドックスな政治学や法学、経済学では(部分的には公私二元論に基づき)
制度的志向が強く、これらの問題は、ほとんど注目されてこなかった。 e.g. J.ロールズ『正義論』: 正義とは権利分配を行う制度の問題である ST03: フェミニズム哲学の特徴(1) 福原正人:
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(2) どのように不正であると主張するのか? 社会的立場に由来する不正義 -個人としての不利益ではなく、特定のアイデンティティを共有する集団の一員としての不利 益。よってこの不利益は、その集団(およびその構成員)が、社会のなかでどのように扱わ れているのかという構造的な問題に帰着する。 構造的不正義(structural injustice): ST04 e.g.
女性であるというだけで貧困に陥るリスクが高い 具体的な概念は? -抑圧(oppression):ST05、モノ化(objectification):ST08 認識的不正義(epistemic injustice) : ST12-ST13 e.g. 黒人/障碍者というだけで<証拠>として信用してもらえない ST03: フェミニズム哲学の特徴(2) 福原正人:
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(3)どのような主張や政策を批判するのか? 不正な構造を固定化する言説や政策 既存の社会構造を当然視する主張や政策(=本質主義) e.g. 男女は生殖を行うことが当然であり国家はこれを結婚として祝福している フェミ:パートナー関係にとって生殖は当然ではないのではないか? 一見として最もらしいが間接的に不正な構造を固定化する主張や政策 -客観的なデータや制度的な中立性 e.g. 医学部入試の女性差別問題
女性は離職率が高いので男性の優先は安定的な医療にとって合理的である フェミ:女性の離職率の高さはそもそも不正な構造を反映しているのではないか? ST03: フェミニズム哲学の特徴(3)
今日のお題 スタンドポイント理論が有効な事例は他にどのようなものがあるだろうか。 その他、通常のリアペとして。 ST03: learnwizone 福原正人:
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スタンドポイント理論 そこからみるフェミニズム哲学の基本的な特徴 -マジョリティが無視してきたトピック -特定の立場に基づく不正への注目 -不正を固定化する言説に対して批判的 ST03: まとめ 福原正人:
[email protected]
ST04: ケア(care)——公私二元論と家庭内無償労働 ST03: 次回 福原正人:
[email protected]