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静止衛星海色データと 海洋循環再解析データによる 2012年台風通過時の東シナ海の クロロフィルa変動の解明

akina
January 30, 2017

静止衛星海色データと 海洋循環再解析データによる 2012年台風通過時の東シナ海の クロロフィルa変動の解明

akina

January 30, 2017
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  1. 東シナ海の海洋環境 50m 100m 200m 長江 栄養塩 懸濁物  大部分が200m以浅の大陸棚が広がる 海域

     多量の栄養塩や懸濁物が含まれた長江 河川水が流入 夏期: 済州島付近まで長江希釈水が到達  黄海底層冷水、黒潮、台湾暖流の流入  夏期(6~9月): 多数の台風が東シナ海を 通過 東シナ海は陸棚上で性質の異なる海水が 混合し、複雑な水塊構造を形成
  2. 台風が海洋生物に与える影響 台風 強風 ◆ 長江河口域 (水深:50m以浅) 高濃度の栄養塩・懸濁物が存在 →表層の基礎生産を高める →光の透過が制限 潮汐等で濁度が大きく時間変動

    混合 湧昇 栄養塩 植物プランクトン ◆ 長江河口域の植物プランクトン 台風通過後に沖合と異なる応答 を示す可能性がある。 頻繁な船舶観測は難しい。 植物プランクトン ブルーム
  3. 静止衛星海色センサと3次元海洋再解析 静止衛星海色センサ GOCI 海色センサが搭載された 静止衛星は世界初  時間解像度:1時間 (1日8回)  空間解像度:500

    m  東シナ海・日本海における 海面の短期変動を観測 GOCIデータ処理ソフト GDPS  光学データを海色に変換可能  2015年1月に最新版1.3が公表 →データ処理精度の向上が期待 3次元海洋モデルによる再解析 JCOPE2 (JAMSTEC)  衛星観測や中層フロート観測 の全てのデータを同化  流速場・温度・塩分の鉛直構造 の考察が可能 データ処理 比較 韓国海洋科学技術院
  4. データと方法1:GOCIデータの解析 ◆観測期間・範囲 2012年8月の東シナ海 (115-130°E, 25-42°N) ◆GOCIデータ Chl a, 全懸濁物質 (TSS),

    リモートセンシング反射率 (Rrs) ◆Chl aの推定アルゴリズム OC2アルゴリズム (O’Reilly et al., 2000) Chloc2 = −0.0929 + 10 0.2974−2.2429×R+0.8353×R2−0.007×R3 R=log10 Rrs490 Rrs555 沖合域におけるChl a推定精度が高い YOCアルゴリズム (Siswanto et al., 2011) Chlyoc = 10(0.342−2.511×log10 R −0.277×log10 2 R ) R = Rrs443 Rrs555 Rrs412 Rrs490 −1.012 黄海・東シナ海沿岸域におけるChl aの推定に特化
  5. GOCIソフトウェア(GDPS)の問題点 42°N 38°N 34°N 30°N 26°N OC2アルゴリズム YOCアルゴリズム Chl a

    ( −) GDPS1.3は濁度の低い沖合域でもYOCアルゴリズムを適用 濁度によってアルゴリズムを切り替える必要がある 100 10 1 0 TSS ( 切り替え後(本研究) 高濁度 Chl a (推定) 懸濁物質(TSS) 115°E 120°E 125°E 130°E 10 1 0.1 低濁度
  6. データと方法2:2012年台風の解析 ◆対象とした台風 台風14号(TEMBIN) 最大風速:59.2 m s-1 最低気圧:950 hPa 台風15号(BOLAVEN) 最大風速:64.3

    m s-1 最低気圧:910 hPa ◆衛星データ Chl a・TSS: GOCI 海面温度(SST): NOAA AVHRR ◆3次元海洋再解析(JCOPE2) 水温, 塩分, 流向・流速 ◆現場データ (2009ー2013年:7ー9月) 水温, Chl a, 硝酸塩濃度(NO3) → 沖合の鉛直分布図の作成
  7. 台風通過前後の鉛直構造の変化:3次元海洋再解析 10-30 m 30-50 m 海域A 海域B 海域A (沖合):急激な水温変化に対応不可能 (風外力不十分)

    海域B (沿岸):水温・塩分変化を再現可能 海域B (沿岸) 海域A (沖合) 0.1 (通過前) 0.2 (通過後) 0.3 (通過前) 6.5 (通過後) 再解析SST-衛星SST
  8. 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 SST (oC) 20 25 30

    JCOPE2 海域Aの時系列 (沖合:Chl a増加) 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 Chl a (mg m-3) 0.0 2.0 4.0 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 TSS (g m-3) 0.0 1.2 2.4 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 Salinity (PSU) 31 32 33 34 35 Chl a: GOCI SST:衛星/再解析 SST 大幅に低下 TSS: GOCI 海面塩分: 再解析 台風通過期間 鉛直混合・湧昇 の発生
  9. データ採取:海域A 夏期の平均鉛直分布(2009-2013) 表層混合層: 10 m 表層混合層: 50 m 台風通過後の衛星SST:20.3℃ 台風直後の推定鉛直分布

    Chl a: +0.20 mg m-3 NO3: +2.61 µM 9/1Chl a 3.30 mg m-3 8/30/12 9/1/12 9/3/12 Chl a (mg m-3) 0 1 2 3 4 +2.18 mg m-3 NO3: +2.61 µM Chl a :NO3= 1.37mg m-3:1.0 µM Ishizaka et al. (1983) 海域AのChl a変動要因:夏期現場データ ①亜表層からのChl a運搬(0.2 mg m-3) ②栄養塩によるChl a増加(2.18 mg m-3) 表層Chl aの増加:
  10. 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 SST (oC) 20 25 30

    JCOPE2 海域Bの時系列 (沿岸:Chl a減少) 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 Chl a (mg m-3) 0 2 4 6 GOCI: Chl a SST:衛星/再解析 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 TSS (g m-3) 1 2 3 4 5 8/18/12 8/22/12 8/26/12 8/30/12 9/3/12 Salinity (PSU) 20 25 30 35 GOCI: TSS 海面塩分:再解析 台風通過期間 TSS・海面塩分 大幅に増加 SST 低下 鉛直混合の発生
  11. 海域BのChl a変動要因 TSS 0 10 20 30 20 25 30

    35 Salinity (PSU) 8/18 8/28 8/30 高濁度 50ー100 g m-3 (m) Chl a TSS (g m-3) Chl a (mg m-3) 8/30 8/28 8/18 通 過 前 通 過 中 通 過 後 鉛直混合の発生:下層の高濁度水を運搬・高Chl a水塊を希釈 光の透過率の減少:Chl a増加の抑制
  12. まとめ1 ◆ 静止衛星海色データ, 船舶観測データ, 3次元海洋再解析を 相互検証することでChl aの鉛直構造の変化を推定した。 ◆ 静止衛星海色センサ(GOCI) 高頻度の観測:雲によってデータ取得できない海域が減少

    台風通過直後でもChl a・懸濁物質の変動が観測可能 ◆ 3次元海洋再解析(JCOPE2) 船舶観測データがない海域B(沿岸)における台風通過前後 の水温・塩分の鉛直分布を推定できた。 GOCI 1日8回の観測 GDPS1.3 最新版の公表 OC2・YOC 切り替え(本研究)
  13. まとめ2 海域A (沖合) 混合 湧昇 植物プランクトン ブルーム 鉛直混合・湧昇の発生 強風 海域B

    (沿岸) 植物プランクトン ブルーム 長江河川水 混合 鉛直混合の発生 強風 栄養塩 植物プランクトン 光 堆積物