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大学院時代の研究作品 「VRで観るアクション映画」 …を作ってみて分かったことを、今更ながらまとめてみました。 (2018年当時のことなので、古い情報が多いかも) VRで映像作品(特にアクション)を作るときの参考になれば幸いです。

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そもそもの発端 「VR」と「激しい動き」は相性が悪いらしい。 →よし分かった(分かってない) アクション映画を作ろう …ということで、 Oculusの「VRコンテンツ制作におけるガイドライン」を参照しつつ、 どういう演出が有効なのかを検証しながらVRのアクション作品を制作しました。

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当時、色々と実験して分かったことが沢山あったものの、 「一切ネットに放流せずにもったいないなぁ」と思ったので、 少々乱暴な情報含めて、とりあえずメモ程度にまとめたのがここまでの経緯。 本編動画はこちら https://youtu.be/Y0Zfvb1wsHM HMDで視聴できる実行ファイルはこちら (だいぶ昔のデータを掘り起こして、起動確認もしていないので、正常に動作するかは不明) https://www.mediafire.com/file/nqtqjtktuuw2jqm/VR_Action_Movie_-DIVE-.zip/file 大学院生の同期と二人で制作。 大変だった。

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「カット割りについて」 従来のVRにとってのカット割りは、 鑑賞者の方向感覚を損なう演出として使い勝手が悪かった。 (...VRではカット割りというよりも。唐突な視点切り替えと呼ぶべき?) ただ、アクション作品を作るにあたって、 カット割りを封印されるのはあまり面白くない。 ということで…

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「カット割りについて」 研究作品では鑑賞者の視点を前方180°の範囲に制限しました。 常に前方だけ見せるようにすると、 唐突な視点切り替えによる混乱は抑えられ、後方を作るコストもカット! 但し、事前にしっかり説明しないと、 ほとんどの人はVRゴーグルを被ったら周りを見渡そうとするので注意。 作中でもこういうチュートリアルを入れて説明。 前方のスクリーンに映像を表示して、 「あ、このコンテンツは前だけ見るんだな」 というのが感覚的に分かりやすくなるよう に構成しました。

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「前方以外のドリー移動は酔いやすい」 これはVR演出の中でもよく知られているが、 基本的に前方向以外のドリー移動は酔いやすい。 (等速なら後ろドリーでもいける?) 特に加減速や回転があると最悪なので、ぜひお試しあれ。 (一度、加減速&横方向にドリー移動&回転するカメラワークをVRで試したところ大変な目に遭いました) コントローラーで自由移動ができるVRゲームが存在するように、 全然平気な人もいるみたい。 作中でも「飛んでいくミサイル」に鑑賞者 をくっつけて飛ばしたりしました。 正面等速ドリーだから大丈夫、大丈夫。

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「前方以外のドリー移動は酔いやすい」 そもそも、VRで酔う大きな原因は 「視覚的な動き」と「体感的な動き」のズレによるものが大きいので、 見た目と体感の動きが同期したライド系アトラクションは そういった酔いは少ないみたい。 (そもそも乗り物酔いする人は酔うだろうけど) 今回の作品は基本的に椅子に座って鑑賞する作品だったので、 この辺りは特に気を付けてカメラワークを作成しました。 OK! Front Other NG…?

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「望遠や広角レンズの見え方が違う」 やってみてハッとしたことの一つ。 通常の映像コンテンツではカメラレンズの画角を変更することで 映像の見せ方を変えるが、鑑賞者の見え方に忠実であるVRでは考え方が違う。 望遠レンズに近いものとして、強制的に視野をズーム状態にすることはできるが、 全画面で表示させるとめちゃくちゃ酔うので注意。 (実際に試してはいないけど、広角だと世界が歪んだように見えると思う) 作中でもズーム演出を取り入れてみましたが、 全画面だと酔うので、 ズーム画面を小さくして表示しました。

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「望遠や広角レンズの見え方が違う」 VRでは既存の映像コンテンツのような 映像世界の一部をフレームで切り取るという考え方よりも、 映像世界の中に鑑賞者が立つという感覚で演出した方がいいです。

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「視線誘導」 基本的に画面中央に見せたいものを集約するようにしないと、 カット切り替えで混乱しやすくなる。 特に人は「移動する対象を目で追いやすい」ので、 鑑賞者の視線が途切れないようにカット間でレイアウトしないと、混乱しやすい。 (この要素を逆手にとって、VRコンテンツではよく蝶々とかを飛ばして視線移動しますよね) メインの被写体を画面端に移動させる場合、 次のカットで同じような場所に被写体を置かないと 混乱しやすい。 カット1 カット2 (混乱しやすい) 消えた!?

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「視線誘導」 この「VRにおけるイマジナリーライン」的なルールは、 映像以上に気を使って演出する必要があり、 個人的には一番やっかいだった要素だった。 ただし、これを守れば、カット割りを細かくしても意外と大丈夫っぽい。

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「巨大感や距離感に大きな魅力」 大きいものは大きく、近いものは近く感じる。 現実では当たり前だけど、モニター越しに見る映像作品とは全く違う感覚。 3D映画っぽい感覚?と思われがちだけど、 3D映画がモニターから被写体が飛び出しているのに対して、 VRは自分の目の前に存在している感覚が強い。 VRで映像コンテンツを作る醍醐味ともいえる。 近い! でかい!

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「巨大感や距離感に大きな魅力」 ただし、あまりに被写体と鑑賞者の距離が近すぎると酔うみたいなので注意。 (寄り目とかをやりすぎると気持ち悪い感覚に近いかも) 高い場所も高く感じるし、狭い場所も狭く感じるので、 各種恐怖症の人は本当に怖い思いをします。取り扱いに注意。 (鑑賞中に気分が悪くなったら途中退席を申告できる仕組みがあると良いです) 同じく、ゲームではありがちな、CGキャラクターが意図せず何かにめり込んだりするのも、 著しく実在感を損なうので避けた方がいい。 マジで高い!! まぁ、意図しないめり込みとかは 普通のCG作品でもNGですが…

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「人称が違うことによるストーリーテリングの違い」 これも作ってみて分かったことの一つ。 モニターで見る映像作品はストーリーを客観視することができるが、 VRの場合は鑑賞者の自由視点という要素によって、主観的な印象が強くなる。 どんな影響があるかというと… 登場人物がカメラに手を差し伸べると 「自分に手が差し伸べられているように感じる」 会話シーンで目の前の二人が喋っていると 「自分を無視して二人が会話しているように感じる」 モニターだと… 「登場人物に話しているんだろうなぁ」 VRだと… 「え?自分に話しかけている?」

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「人称が違うことによるストーリーテリングの違い」 没入感が高いがゆえに、演出によっては鑑賞者が登場人物の一人になった感覚になり、 場合によってはミスリードを引き起こす。 微妙なニュアンスの違いだが、実際に体験してみると結構違う。 これらのストーリーテリングはテーマパークのライド型アトラクションとの相性が良く、 近年ライド型VRアトラクションも増えている。 思わず手を伸ばしちゃう

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「音作りの違い」 普通の映像制作に慣れていると、意外と終盤にならないと気付かないやつ。 VRではカメラが自由視点である仕様上、 音の発生源に効果音を付けるのが最適だが、慣れていないと若干扱いが難しい。 (ゲームのサウンド制作の感覚に近いかも)

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「音作りの違い」 研究作品のときはその辺りのノウハウ(というか時間)が全くなかったので、 左右のステレオ音源を正面の空間上に配置することで、 最低限の指向性を確保しようとするも断念。 通常の映像作品と同じように左右に音を振り分けた音を UE4のシーケンサーで再生するようなざっくり音響で対応した。

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「プリビズの重要性」 既存の映像演出とは考え方が全く違うので、プリビズ制作は超オススメ。 普段の感覚で演出すると、全く通用しない演出も多々あるため、 プリビズで地雷を見つける作業をした方がいい。 (ここまで説明したことも、実際に見てみないと感覚的に分からないことが多いと思います) プリビズ 本編

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まとめると… Oculus神のVRマニュアルにある程度従えば、VRでもアクション映画は作ることができる。 イベントにも出展して50人くらいの若い男女に鑑賞してもらったところ、 ほぼ全ての鑑賞者に混乱や酔っている様子はなかった印象。 ただ、通常の映像演出とは全く違うルールが多々あるので、 一発本番よりもまずは試しに作ってみるのがオススメ。 (全体的に演劇に近い作り方と鑑賞体験なのかな?という印象です) 乱暴なメモ書きですいませんが、これからVRの映像作品を作ろうとしている方にとって、 少しでもヒントになれば幸いです。