Slide 1

Slide 1 text

An Elegant Puzzle: Systems of Engineering Management を50分でざっと知る (at NTT Com TechLunch #158) 2022年11月 NTT コミュニケーションズ 岩瀬 / @iwashi86

Slide 2

Slide 2 text

1 発表終了時の到達点 ● An Elegant Puzzle: Systems of Engineering Management※ の書籍に書いてある内容の一部を理解している ※ 岩瀬が2022年に読んだ中で一番学びがあった本

Slide 3

Slide 3 text

2 著者 ● Will larson氏 (@lethain) ● Uber社のシニアエンジニアリングマネージャーや Stripe社のエンジニア組織のHeadを歴任して 現在はCalm社のCTO ● Hacker News にブログポストがよく載っており IT界隈の著名人の1人

Slide 4

Slide 4 text

3 どんな本? ● 実際にEMや、EMを束ねるHeadとして活動してきた 著者の知見がまとまっている書籍 ● 実践的なプラクティスや考え方が多く掲載される ○ 研究による裏付けがメインという類の書籍ではない

Slide 5

Slide 5 text

4 書籍の全体像 1. 組織 - 組織やチームデザイン 2. ツール - システム思考、ツール、変化の起こし方 3. アプローチ - EMが直面する課題と解決法 4. 文化 - 組織文化への取り組み 5. キャリア - 採用、評価、昇進 6. 付録

Slide 6

Slide 6 text

5 書籍の全体像 1. 組織 - 組織やチームデザイン 2. ツール - システム思考、ツール、変化の起こし方 3. アプローチ - EMが直面する課題と解決法 4. 文化 - 組織文化への取り組み 5. キャリア - 採用、評価、昇進 6. 付録 → 個人的に印象に残った箇所を順不同でかいつまんで紹介します!

Slide 7

Slide 7 text

6 本題

Slide 8

Slide 8 text

7 チームの状態と移行 https://unsplash.com/photos/E9PJO_vL3E8

Slide 9

Slide 9 text

8 チームの状態(次のページで説明) https://lethain.com/durably-excellent-teams/ より

Slide 10

Slide 10 text

9 チームの状態 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ 1. 遅れている状態 ○ 毎週バックログが伸び続ける。チームメンバーはめちゃくちゃ働くが進捗はいまいち ○ メンバーの士気は低く、不満が口から出ている

Slide 11

Slide 11 text

10 チームの状態 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ 1. 遅れている状態 ○ 毎週バックログが伸び続ける。チームメンバーはめちゃくちゃ働くが進捗はいまいち ○ メンバーの士気は低く、不満が口から出ている 2. 立ち泳ぎ状態 ○ 必要な仕事はできているが、技術的負債の返済はできず 新しいプロジェクトにも着手できていない ○ メンバーの士気は[1]に比べ高いが、引き続きかなり働いている

Slide 12

Slide 12 text

11 チームの状態 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ 1. 遅れている状態 ○ 毎週バックログが伸び続ける。チームメンバーはめちゃくちゃ働くが進捗はいまいち ○ メンバーの士気は低く、不満が口から出ている 2. 立ち泳ぎ状態 ○ 必要な仕事はできているが、技術的負債の返済はできず 新しいプロジェクトにも着手できていない ○ メンバーの士気は[1]に比べ高いが、引き続きかなり働いている 3. 返済可能な状態 ○ 技術的負債の返済ができている。その結果、さらに返済するための時間が生まれている

Slide 13

Slide 13 text

12 チームの状態 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ 1. 遅れている状態 ○ 毎週バックログが伸び続ける。チームメンバーはめちゃくちゃ働くが進捗はいまいち ○ メンバーの士気は低く、不満が口から出ている 2. 立ち泳ぎ状態 ○ 必要な仕事はできているが、技術的負債の返済はできず 新しいプロジェクトにも着手できていない ○ メンバーの士気は[1]に比べ高いが、引き続きかなり働いている 3. 返済可能な状態 ○ 技術的負債の返済ができている。その結果、さらに返済するための時間が生まれている 4. 革新が起こせる状態 ○ 技術的負債がほとんどなく、メンバーの士気も高く、新たなユーザーニーズも満たせている

Slide 14

Slide 14 text

13 チームの状態 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ 1. 遅れている状態 ○ 毎週バックログが伸び続ける。チームメンバーはめちゃくちゃ働くが進捗はいまいち ○ メンバーの士気は低く、不満が口から出ている 2. 立ち泳ぎ状態 ○ 必要な仕事はできているが、技術的負債の返済はできず 新しいプロジェクトにも着手できていない ○ メンバーの士気は[1]に比べ高いが、引き続きかなり働いている 3. 返済可能な状態 ○ 技術的負債の返済ができている。その結果、さらに返済するための時間が生まれている 4. 革新が起こせる状態 ○ 技術的負債がほとんどなく、メンバーの士気も高く、新たなユーザーニーズも満たせている さて今、 ご自身のチームは どの状態にいますか? (心の中で考えよう)

Slide 15

Slide 15 text

14 チームの状態 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ 1. 遅れている状態 ○ 毎週バックログが伸び続ける。チームメンバーはめちゃくちゃ働くが進捗はいまいち ○ メンバーの士気は低く、不満が口から出ている 2. 立ち泳ぎ状態 ○ 必要な仕事はできているが、技術的負債の返済はできず 新しいプロジェクトにも着手できていない ○ メンバーの士気は[1]に比べ高いが、引き続きかなり働いている 3. 返済可能な状態 ○ 技術的負債の返済ができている。その結果、さらに返済するための時間が生まれている 4. 革新が起こせる状態 ○ 技術的負債がほとんどなく、メンバーの士気も高く、新たなユーザーニーズも満たせている どうやって 次の状態に移行するか?

Slide 16

Slide 16 text

15 チームの移行方法 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ ● [1]遅れている状態 -> [2]立ち泳ぎ状態 ○ [2]に移行できるまで採用する ← ヘッドカウントで諦めるマネージャも多いが頑張りどころ ○ ちょっとした成功を祝う、楽観的な考えを吹き込む

Slide 17

Slide 17 text

16 チームの移行方法 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ ● [1]遅れている状態 -> [2]立ち泳ぎ状態 ○ [2]に移行できるまで採用する ○ ちょっとした成功を祝う、楽観的な考えを吹き込む ● [2] 立ち泳ぎ状態 -> [3] 返済可能な状態 ○ チームの労力を合わせて、たくさんのことを「終わらせる」。並行して走っている仕事を減らす ○ チームメンバーの生産性の見方を、個人からチームへと変えていく

Slide 18

Slide 18 text

17 チームの移行方法 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ ● [1]遅れている状態 -> [2]立ち泳ぎ状態 ○ [2]に移行できるまで採用する ○ ちょっとした成功を祝う、楽観的な考えを吹き込む ● [2] 立ち泳ぎ状態 -> [3] 返済可能な状態 ○ チームの労力を合わせて、たくさんのことを「終わらせる」。並行して走っている仕事を減らす ○ チームメンバーの生産性の見方を、個人からチームへと変えていく ● [3] 返済可能な状態 -> [4] 革新が起こせる状態 ○ 負債を返済し始めているので、さらに時間を作れるようにする ■ ステークホルダーは「時間ができてそうだから、新しい価値を!」となるかもしれないが そこを耐えて [3] -> [2] に戻さないようにする

Slide 19

Slide 19 text

18 チームの移行方法 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ ● [1]遅れている状態 -> [2]立ち泳ぎ状態 ○ [2]に移行できるまで採用する ○ ちょっとした成功を祝う、楽観的な考えを吹き込む ● [2] 立ち泳ぎ状態 -> [3] 返済可能な状態 ○ チームの労力を合わせて、たくさんのことを「終わらせる」。並行して走っている仕事を減らす ○ チームメンバーの生産性の見方を、個人からチームへと変えていく ● [3] 返済可能な状態 -> [4] 革新が起こせる状態 ○ 負債を返済し始めているので、さらに時間を作れるようにする ■ ステークホルダーは「時間ができてそうだから、新しい価値を!」となるかもしれないが そこを耐えて [3] -> [2] に戻さないようにする ● [4] イノベーションを起こせる状態以降 ○ Slack!(トムデマルコの書籍を読もう!) ○ ただし、失敗しがちなのは顧客価値に繋がらないフレームワークの移行への着手など

Slide 20

Slide 20 text

19 移行時の注意点 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ ● それぞれの状態の移行には「時間がかかる」 ○ システムによっては、数年以上の負債蓄積がある ○ 逆に言えば、修正に時間がかかるのと同じで 効果が出れば長い時間維持できる

Slide 21

Slide 21 text

20 移行時の注意点 https://lethain.com/durably-excellent-teams/ ● それぞれの状態の移行には「時間がかかる」 ○ システムによっては、数年以上の負債蓄積がある ○ 逆に言えば、修正に時間がかかるのと同じで 効果が出れば長い時間維持できる ● 簡単には効果が出ない ○ 長く時間がかかっても、自分の計画を信頼して維持すること (だから組織をいじったり、新しい仕事を始めずに続けること)

Slide 22

Slide 22 text

21 (変化を効果的に導く) ツール https://unsplash.com/photos/sm0Bkoj5bnA

Slide 23

Slide 23 text

22 3大ツール + α ● システム思考 ○ 右の書籍を読めばわかる ○ ストックとフローを用いてシステムで考える ○ 書籍では “LeanとDevOpsの科学” を引用して具体化される

Slide 24

Slide 24 text

23 3大ツール + α ● システム思考 ○ 右の書籍を読めばわかる ○ ストックとフローを用いてシステムで考える ○ 書籍では “LeanとDevOpsの科学” を引用して具体化される ● メトリクス ○ あとで出てくる

Slide 25

Slide 25 text

24 3大ツール + α ● システム思考 ○ 右の書籍を読めばわかる ○ ストックとフローを用いてシステムで考える ○ 書籍では “LeanとDevOpsの科学” を引用して具体化される ● メトリクス ○ あとで出てくる ● ビジョン ○ (原著参照)

Slide 26

Slide 26 text

25 3大ツール + α ● システム思考 ○ 右の書籍を読めばわかる ○ ストックとフローを用いてシステムで考える ○ 書籍では “LeanとDevOpsの科学” を引用して具体化される ● メトリクス ○ あとで出てくる ● ビジョン ○ (原著参照) ● プロダクトマネジメント(思考) ○ (探索・選択・検証をEM視点から書いてある、詳細は原著)

Slide 27

Slide 27 text

26 3大ツール + α ● システム思考 ○ 右の書籍を読めばわかる ○ ストックとフローを用いてシステムで考える ○ 書籍では “LeanとDevOpsの科学” を引用して具体化される ● メトリクス ○ あとで出てくる ● ビジョン ○ (原著参照) ● プロダクトマネジメント(思考) ○ (探索・選択・検証をEM視点から書いてある、詳細は原著) では具体的に どうやって変化を導く?

Slide 28

Slide 28 text

27 (権威に依存しない) リーダーシップ https://unsplash.com/photos/6U5AEmQIajg

Slide 29

Slide 29 text

28 厄介な問題 ● こんな経験は? ○ ここに問題がありそうだけど、自分は部長でも課長でもなくて 一人の担当者にすぎない ■ or 新しく配属された部署だと、まだ信頼貯金がない… ○ どうやって解決すればいいんだろう? (岩瀬補足:PdM とかまさにこれ。多くは人事権限がない)

Slide 30

Slide 30 text

29 厄介な問題 ● こんな経験は? ○ ここに問題がありそうだけど、自分は部長でも課長でもなくて 一人の担当者にすぎない ■ or 新しく配属された部署だと、まだ信頼貯金がない… ○ どうやって解決すればいいんだろう? (岩瀬補足:PdM とかまさにこれ。多くは人事権限がない) ● そんな時に(すべてではないが)上手く行った方法がある ○ それが Model -> Document -> Share

Slide 31

Slide 31 text

30 https://lethain.com/model-document-share/

Slide 32

Slide 32 text

31 Model ● 月次などでチームの健康状態やスループットを計測する ○ 例:タスクサイズを軽量に測定 ● 大事なのは変化を加える前のベースライン(基準値)を知ること

Slide 33

Slide 33 text

32 Model ● 月次などでチームの健康状態やスループットを計測する ○ 例:タスクサイズを軽量に測定 ● 大事なのは変化を加える前のベースライン(基準値)を知ること ● おおっぴらに宣伝するのではなく、「ちょっとした実験だよ」 といった意味づけではじめて、しばらく続ける ○ ダメだったらやめればいい ● 一定、効果が出てくると感じたら…

Slide 34

Slide 34 text

33 Document ● 次の内容を文書化する ○ 解決しようとしている問題 ○ 試行から学んだこと ○ 他のチームで採用(再現)するための方法の詳細 ■ 可能な限り詳しく、汎化して ■ 他のチームに新規メンバが入っても理解できるように

Slide 35

Slide 35 text

34 Share ● 短いメールでドキュメントを配布する ○ この時自分の経験談も入れておく ● 「採用してください!」とは言わない ○ 単に方法を紹介するだけでいい ● 奇妙なことに著者の経験からいえば、 トップダウン・強制型のアプローチよりも採用率が高い

Slide 36

Slide 36 text

35 参考:Model→Document→Share と トップダウン のどちらを使えば? ● Model → Document → Share ○ 新しい施策を採用する余裕がない ○ 新しい施策を広めるためのリソースがない ○ 分散型で意思決定したいトピックである ○ チームが自律的に採用できる ○ 徐々に変更が起こってもいい ● それぞれに特徴、向き不向きがある

Slide 37

Slide 37 text

36 ● トップダウン、強制型 ○ 新しい施策を採用する余裕がある ○ 新しい施策を広めるためのリソースがある ○ 中央集権的に決定したいトピックである ○ 組織内で一貫性が必要 ○ 素早く変更を起こしたい ● Model → Document → Share ○ 新しい施策を採用する余裕がない ○ 新しい施策を広めるためのリソースがない ○ 分散型で意思決定したいトピックである ○ チームが自律的に採用できる ○ 徐々に変更が起こってもいい ● それぞれに特徴、向き不向きがある 参考:Model→Document→Share と トップダウン のどちらを使えば?

Slide 38

Slide 38 text

37 ● トップダウン、強制型 ○ 新しい施策を採用する余裕がある ○ 新しい施策を広めるためのリソースがある ○ 中央集権的に決定したいトピックである ○ 組織内で一貫性が必要 ○ 素早く変更を起こしたい ● Model → Document → Share ○ 新しい施策を採用する余裕がない ○ 新しい施策を広めるためのリソースがない ○ 分散型で意思決定したいトピックである ○ チームが自律的に採用できる ○ 徐々に変更が起こってもいい ● それぞれに特徴、向き不向きがある ● Model → Document → Share 型は 組織の価値観があっているときに効果をより発揮しやすい ○ ただし、同僚からの尊敬など、自然発生するAuthority(信頼貯金)は必要 参考:Model→Document→Share と トップダウン のどちらを使えば?

Slide 39

Slide 39 text

38 良いゴールと悪いゴール https://unsplash.com/photos/M1-7VLtyLbo

Slide 40

Slide 40 text

39 ゴールを話すタイミング ● ゴールを話すタイミングがいつやってくるか? ○ どの会社、どの部門であっても マネジメントのスコープが広がるにつれて、すべてを理解するのは困難に ○ そのときにゴール(What)について話すことで やり方(How)を分離して議論できる → これが、言うは易く行うは難し

Slide 41

Slide 41 text

40 悪いゴールとは? ● 数字だけになっているもの ○ たとえば ■ 「ビルド時間の50パーセンタイルが2秒以下になること」 ■ 「9つのプロジェクトを終わらせること」 ● なぜ、上記が悪いのか?

Slide 42

Slide 42 text

41 悪いゴールとは? ● 数字だけになっているもの ○ たとえば ■ 「ビルド時間の50パーセンタイルが2秒以下になること」 ■ 「9つのプロジェクトを終わらせること」 ● なぜ、上記が悪いのか? ○ それが野心的なゴールなのか、重要なのかわからないから

Slide 43

Slide 43 text

42 良いゴールとは? ● 次の4つの組み合わせになっているもの ○ たどり着きたい目標の状態 ○ 現在のベースライン ○ 現在のトレンド(現在のベロシティを表している) ○ 時間の区切り

Slide 44

Slide 44 text

43 良いゴールとは? ● 次の4つの組み合わせになっているもの ○ たどり着きたい目標の状態 ○ 現在のベースライン ○ 現在のトレンド(現在のベロシティを表している) ○ 時間の区切り ● 上記を考慮すると、たとえば ○ 「3Qでは、フロントページのレンダリング時間を 600ms(p95)から 300ms(p95)にする。  2Qでは、レンダリング時間が 500ms から 600ms に増えてしまっている。」

Slide 45

Slide 45 text

44 良いゴールである、と判断するためには? ● シンプルな2つのテスト質問の組合せによって可能 ○ 質問: ■ その領域に詳しくない誰かが難しさについてある程度わかるかどうか ■ うまく行った場合に評価できるかどうか ● 前述の4つの観点を含められていれば、おそらくこの2つの指標を満たしている

Slide 46

Slide 46 text

45 ゴールのタイプ ● ゴールには2つの興味深いタイプがある ○ 投資:たどり着きたい未来の状態を描くもの ○ ベースライン:保ち続けたい状態を表すもの ● なぜ、2つのタイプを考える必要があるか?

Slide 47

Slide 47 text

46 ゴールのタイプ ● ゴールには2つの興味深いタイプがある ○ 投資:たどり着きたい未来の状態を描くもの ○ ベースライン:保ち続けたい状態を表すもの ● なぜ、2つのタイプを考える必要があるか? ○ たとえば、「データパイプラインの処理時間を短くしたい」というゴールは… ■ 今はp95で6時間かかっているコアバッチジョブを、3Qでp95で3時間以内とする ■ 2Qを通じて2時間遅くなってしまった

Slide 48

Slide 48 text

47 ゴールのタイプ ● ゴールには2つの興味深いタイプがある ○ 投資:たどり着きたい未来の状態を描くもの ○ ベースライン:保ち続けたい状態を表すもの ● なぜ、2つのタイプを考える必要があるか? ○ たとえば、「データパイプラインの処理時間を短くしたい」というゴールは… ■ 今はp95で6時間かかっているコアバッチジョブを、3Qでp95で3時間以内とする ■ 2Qを通じて2時間遅くなってしまった ● 上記は良いゴールであるが、ちょっと物足りない ○ なぜならば、クラスタサイズを2倍にすれば明日にでも達成できるから(お金の力で) ○ 必ずしも悪いわけではないが、別のやり方もある

Slide 49

Slide 49 text

48 そこで相殺目標 ● 前述の問題回避のために、ベースラインのメトリクスを含めてゴール設計する ○ すなわち、相殺目標(相反する目標)を設定する

Slide 50

Slide 50 text

49 そこで相殺目標 ● 前述の問題回避のために、ベースラインのメトリクスを含めてゴール設計する ○ すなわち、相殺目標(相反する目標)を設定する ● たとえば、先ほどの例に対する相殺目標は ○ コアバッチ処理の効率は 1GB 0.05$ を超えてはいけない ○ パイプラインを利用しているチームに対して アラートを今より増やしてはいけない(今は週2回発生している) など

Slide 51

Slide 51 text

50 相殺目標の効果 ● ベースラインのメトリクスにより解決策を絞り込め かつアクセルを踏むタイミングを制御できる ○ 例:新機能に向けていい感じに進んでいる。   でも、信頼性がベースラインより下回ったら、優先度を変えよう ○ (岩瀬補足:エラーバジェット、SLI、SLOの概念に似ている)

Slide 52

Slide 52 text

51 相殺目標の効果 ● ベースラインのメトリクスにより解決策を絞り込め かつアクセルを踏むタイミングを制御できる ○ 例:新機能に向けていい感じに進んでいる。   でも、信頼性がベースラインより下回ったら、優先度を変えよう ○ (岩瀬補足:エラーバジェット、SLI、SLOの概念に似ている) ● ただ、これは必須じゃない ○ たとえば、投資目標が達成するなら、10%は許容できるかもしれない ○ トレードオフを事前に明確に考えておくのが大事

Slide 53

Slide 53 text

52 マネージャーが ハマるポイント https://unsplash.com/photos/-Cmz06-0btw

Slide 54

Slide 54 text

53 新任マネージャーのハマりポイント(1) ● 部下のやりたい方向にのみマネジメントする ○ そして、それが顧客や会社の興味とずれている

Slide 55

Slide 55 text

54 新任マネージャーのハマりポイント(1) ● 部下のやりたい方向にのみマネジメントする ○ そして、それが顧客や会社の興味とずれている ● 反対に上だけにマネジメントする ○ 上だけを見て、チームをおざなりにする ○ 成果は健全なチームから生まれるのにもかかわらず

Slide 56

Slide 56 text

55 新任マネージャーのハマりポイント(1) ● 部下のやりたい方向にのみマネジメントする ○ そして、それが顧客や会社の興味とずれている ● 反対に上だけにマネジメントする ○ 上だけを見て、チームをおざなりにする ○ 成果は健全なチームから生まれるのにもかかわらず ● 上にまったくあげない ○ チームの成功と認知は、上司との関係に大きく依存するにもかかわらずやらない ○ 素晴らしい業績は伝わるべき

Slide 57

Slide 57 text

56 新任マネージャーのハマりポイント(1) ● 部下のやりたい方向にのみマネジメントする ○ そして、それが顧客や会社の興味とずれている ● 反対に上だけにマネジメントする ○ 上だけを見て、チームをおざなりにする ○ 成果は健全なチームから生まれるのにもかかわらず ● 上にまったくあげない ○ チームの成功と認知は、上司との関係に大きく依存するにもかかわらずやらない ○ 素晴らしい業績は伝わるべき ● 部分最適化しすぎ ○ 会社がサポートできない技術を使ったり 他のチームと競合するプロダクトを作ったりしてしまう

Slide 58

Slide 58 text

57 新任マネージャーのハマりポイント(2) ● 採用じゃ問題は解決しないと思いこむ ○ 追われているときは採用じゃなくて、消化活動したくなる ○ でもビジネスが伸びたら、結局採用が必要になる。採用がだめなら燃え尽きる…

Slide 59

Slide 59 text

58 新任マネージャーのハマりポイント(2) ● 採用じゃ問題は解決しないと思いこむ ○ 追われているときは採用じゃなくて、消化活動したくなる ○ でもビジネスが伸びたら、結局採用が必要になる。採用がだめなら燃え尽きる… ● 関係構築に時間を使わない ○ チームは顧客が欲しがるものを作ってリリースすることに時間を使う ○ そのためには社内の人脈が確実に必要

Slide 60

Slide 60 text

59 新任マネージャーのハマりポイント(2) ● 採用じゃ問題は解決しないと思いこむ ○ 追われているときは採用じゃなくて、消化活動したくなる ○ でもビジネスが伸びたら、結局採用が必要になる。採用がだめなら燃え尽きる… ● 関係構築に時間を使わない ○ チームは顧客が欲しがるものを作ってリリースすることに時間を使う ○ そのためには社内の人脈が確実に必要 ● 自分の役割に固執しすぎる ○ 効果的なマネージャはチームの”のり”のように振る舞い、チームのギャップを埋めている ○ そのために役割・スコープを越えて、本当にやるべきことやる必要がある

Slide 61

Slide 61 text

60 新任マネージャーのハマりポイント(2) ● 採用じゃ問題は解決しないと思いこむ ○ 追われているときは採用じゃなくて、消化活動したくなる ○ でもビジネスが伸びたら、結局採用が必要になる。採用がだめなら燃え尽きる… ● 関係構築に時間を使わない ○ チームは顧客が欲しがるものを作ってリリースすることに時間を使う ○ そのためには社内の人脈が確実に必要 ● 自分の役割に固執しすぎる ○ 効果的なマネージャはチームの”のり”のように振る舞い、チームのギャップを埋めている ○ そのために役割・スコープを越えて、本当にやるべきことやる必要がある ● 上司が人間であることを忘れる ○ 上司の行為(たとえば大事なことを言い忘れるとか)によって、イライラすることもある ○ ただ悪意でやってるわけではなく善意でやっている(あやまちを犯すこともある)と考える

Slide 62

Slide 62 text

61 経験あるマネージャーのハマりポイント ● 前の会社で上手くいったことをやってしまう ○ 「修正」し始める前に、まず立ち止まって耳を傾けるのが大事 ○ そうしなければ存在しない問題に取り組んでしまう

Slide 63

Slide 63 text

62 経験あるマネージャーのハマりポイント ● 前の会社で上手くいったことをやってしまう ○ 「修正」し始める前に、まず立ち止まって耳を傾けるのが大事 ○ そうしなければ存在しない問題に取り組んでしまう ● 関係構築に時間を使いすぎる ○ 大きな企業から小さな企業に移ったマネージャにありがち ○ 小さな企業では、関係構築よりも「実行」(Execution)が大事

Slide 64

Slide 64 text

63 経験あるマネージャーのハマりポイント ● 前の会社で上手くいったことをやってしまう ○ 「修正」し始める前に、まず立ち止まって耳を傾けるのが大事 ○ そうしなければ存在しない問題に取り組んでしまう ● 関係構築に時間を使いすぎる ○ 大きな企業から小さな企業に移ったマネージャにありがち ○ 小さな企業では、関係構築よりも「実行」(Execution)が大事 ● 採用がすべてを解決すると考えてしまう ○ 採用によって問題を解決できるが、やりすぎると文化が薄まり、かつ人の役割や責務が曖昧になっていく

Slide 65

Slide 65 text

64 経験あるマネージャーのハマりポイント ● 前の会社で上手くいったことをやってしまう ○ 「修正」し始める前に、まず立ち止まって耳を傾けるのが大事 ○ そうしなければ存在しない問題に取り組んでしまう ● 関係構築に時間を使いすぎる ○ 大きな企業から小さな企業に移ったマネージャにありがち ○ 小さな企業では、関係構築よりも「実行」(Execution)が大事 ● 採用がすべてを解決すると考えてしまう ○ 採用によって問題を解決できるが、やりすぎると文化が薄まり、かつ人の役割や責務が曖昧になっていく ● 委譲ではなく逃げてしまう ○ 委譲は大事だが、やりすぎて本当にやるべきことから逃げてはダメ

Slide 66

Slide 66 text

65 経験あるマネージャーのハマりポイント ● 前の会社で上手くいったことをやってしまう ○ 「修正」し始める前に、まず立ち止まって耳を傾けるのが大事 ○ そうしなければ存在しない問題に取り組んでしまう ● 関係構築に時間を使いすぎる ○ 大きな企業から小さな企業に移ったマネージャにありがち ○ 小さな企業では、関係構築よりも「実行」(Execution)が大事 ● 採用がすべてを解決すると考えてしまう ○ 採用によって問題を解決できるが、やりすぎると文化が薄まり、かつ人の役割や責務が曖昧になっていく ● 委譲ではなく逃げてしまう ○ 委譲は大事だが、やりすぎて本当にやるべきことから逃げてはダメ ● 地に足がつかなくなっている(浮世離れしている) ○ 大企業でありがちだが、現実から遠い意思決定をしやすくなってしまう (その他、新米でもベテランでもハマるポイント4点は原著参照)

Slide 67

Slide 67 text

66 インクルージョン https://unsplash.com/photos/ZFXZ_xMYTZs

Slide 68

Slide 68 text

67 インクルージョン ● 書籍ではインクルージョンの2側面について語られている ○ 機会(Oppotunity)へアクセスできること ■ (岩瀬補足:NTT-G の各種人事制度が該当)

Slide 69

Slide 69 text

68 インクルージョン ● 書籍ではインクルージョンの2側面について語られている ○ 機会(Oppotunity)へアクセスできること ■ (岩瀬補足:NTT-G の各種人事制度が該当) ○ メンバーシップ(こっちを紹介) ■ 会社のグループの一員として感じられること

Slide 70

Slide 70 text

69 インクルージョン ● 書籍ではインクルージョンの2側面について語られている ○ 機会(Oppotunity)へアクセスできること ■ (岩瀬補足:NTT-G の各種人事制度が該当) ○ メンバーシップ(こっちを紹介) ■ 会社のグループの一員として感じられること ● なお先に、アンチパターン ○ 上記(特に機会)が限られた人に提供されている状態 ○ 退職の要因になる

Slide 71

Slide 71 text

70 メンバーシップを高めるために良かったこと ● 業務時間中に開催される週次の定例イベント ○ 任意で誰でも参加できる ○ 論文読み会や読書会が該当

Slide 72

Slide 72 text

71 メンバーシップを高めるために良かったこと ● 業務時間中に開催される週次の定例イベント ○ 任意で誰でも参加できる ○ 論文読み会や読書会が該当 ● ERGs (Employee Resource Groups) ○ 共通の属性・背景を持つメンバが集まる機会

Slide 73

Slide 73 text

72 メンバーシップを高めるために良かったこと ● 業務時間中に開催される週次の定例イベント ○ 任意で誰でも参加できる ○ 論文読み会や読書会が該当 ● ERGs (Employee Resource Groups) ○ 共通の属性・背景を持つメンバが集まる機会 ● チームでのオフサイト ○ 4半期に1回立ち止まってふりかえる ○ 1日集まるだけで驚くほど、個人がチームとして働けるように感じられるように ■ 特にマネージャーの集まりで効果的

Slide 74

Slide 74 text

73 メンバーシップを高めるために良かったこと ● 業務時間中に開催される週次の定例イベント ○ 任意で誰でも参加できる ○ 論文読み会や読書会が該当 ● ERGs (Employee Resource Groups) ○ 共通の属性・背景を持つメンバが集まる機会 ● チームでのオフサイト ○ 4半期に1回立ち止まってふりかえる ○ 1日集まるだけで驚くほど、個人がチームとして働けるように感じられるように ■ 特にマネージャーの集まりで効果的 ● コーヒーチャット ○ 異なるチームからランダムで呼ばれて話す会

Slide 75

Slide 75 text

74 メンバーシップを高めるために良かったこと ● 業務時間中に開催される週次の定例イベント ○ 任意で誰でも参加できる ○ 論文読み会や読書会が該当 ● ERGs (Employee Resource Groups) ○ 共通の属性・背景を持つメンバが集まる機会 ● チームでのオフサイト ○ 4半期に1回立ち止まってふりかえる ○ 1日集まるだけで驚くほど、個人がチームとして働けるように感じられるように ■ 特にマネージャーの集まりで効果的 ● コーヒーチャット ○ 異なるチームからランダムで呼ばれて話す会 ● チームでのランチ ○ 週1回などでランチする会 (儀式的で嫌な人もいる)

Slide 76

Slide 76 text

75 メンバーシップにおける注意点 ● 前述の活動はシンプルだが そのシンプルさゆえに、考慮すべき事項が埋もれることがある

Slide 77

Slide 77 text

76 メンバーシップにおける注意点 ● 前述の活動はシンプルだが そのシンプルさゆえに、考慮すべき事項が埋もれることがある ● またどの活動も全員に有効なわけではない ○ ランチ会といっても複雑な食事制限があるメンバーがいたら? ○ 運動がある活動だったとして、運動が苦手なメンバーがいたら? ○ 終業後だとして、子供がいる親だったら?

Slide 78

Slide 78 text

77 メンバーシップにおける注意点 ● 前述の活動はシンプルだが そのシンプルさゆえに、考慮すべき事項が埋もれることがある ● またどの活動も全員に有効なわけではない ○ ランチ会といっても複雑な食事制限があるメンバーがいたら? ○ 運動がある活動だったとして、運動が苦手なメンバーがいたら? ○ 終業後だとして、子供がいる親だったら? ● さまざまな組み合わせで考えること および同僚とアイデアを(小さく)検証するのが大事

Slide 79

Slide 79 text

78 メンバーシップの測定メトリクス ● リテンションレート ● リファラルレート(コホートによる) ● 出席率 ● コーヒーチャットの開催数 など

Slide 80

Slide 80 text

79 学習コミュニティ  https://unsplash.com/photos/XkKCui44iM0

Slide 81

Slide 81 text

80 Community of Learning - 上手くいかなかったこと ● いわゆるEMコミュニティでの勉強会

Slide 82

Slide 82 text

81 Community of Learning - 上手くいかなかったこと ● いわゆるEMコミュニティでの勉強会 ● 上手くいかなかったこと ○ 重要な教訓などをびっしり書いた内容の濃いプレゼン ○ 結果的に出席率も下がり、学習効果も低かった

Slide 83

Slide 83 text

82 Community of Learning - 上手くいったこと ● 上手く行ったアプローチ ○ 主催者は講師ではなく、互いの学びをファシリテートする

Slide 84

Slide 84 text

83 Community of Learning - 上手くいったこと ● 上手く行ったアプローチ ○ 主催者は講師ではなく、互いの学びをファシリテートする ○ 進め方 ■ チェックインで20-30秒で名前・所属・考えていることを共有 ■ プレゼンは短く5分程度、残りはブレイクアウトして ディスカッションする時間に ● 盛り上がらないこともあるので、10分程度が良い ■ ブレイクアウトして戻ったら、学びを相互共有する

Slide 85

Slide 85 text

84 タイムマネジメント (コツがいっぱいある) https://unsplash.com/photos/xLs4XSQmxtE

Slide 86

Slide 86 text

85 タイムマネジメントのコツ (1) ● 4半期に一回振り返りする ■ 時間に何に使ってきたかカテゴリ分けする ■ ざっくり何に使ったか、それを何に次に四半期に使うか振り返る

Slide 87

Slide 87 text

86 タイムマネジメントのコツ (1) ● 4半期に一回振り返りする ■ 時間に何に使ってきたかカテゴリ分けする ■ ざっくり何に使ったか、それを何に次に四半期に使うか振り返る ● シニアになればなるほど(所掌が広がるほど)、責務を持つ重要な仕事を完了しにくくなる ○ さらに悪いことに、1on1が長期のゴールとぶつかってくる ○ 最終的には長期のゴールを重要視する

Slide 88

Slide 88 text

87 タイムマネジメントのコツ (1) ● 4半期に一回振り返りする ■ 時間に何に使ってきたかカテゴリ分けする ■ ざっくり何に使ったか、それを何に次に四半期に使うか振り返る ● シニアになればなるほど(所掌が広がるほど)、責務を持つ重要な仕事を完了しにくくなる ○ さらに悪いことに、1on1が長期のゴールとぶつかってくる ○ 最終的には長期のゴールを重要視する ● レバレッジの効く小さな仕事を終わらせる ■ 終わらせればさらに時間ができる

Slide 89

Slide 89 text

88 タイムマネジメントのコツ (1) ● 4半期に一回振り返りする ■ 時間に何に使ってきたかカテゴリ分けする ■ ざっくり何に使ったか、それを何に次に四半期に使うか振り返る ● シニアになればなるほど(所掌が広がるほど)、責務を持つ重要な仕事を完了しにくくなる ○ さらに悪いことに、1on1が長期のゴールとぶつかってくる ○ 最終的には長期のゴールを重要視する ● レバレッジの効く小さな仕事を終わらせる ■ 終わらせればさらに時間ができる ● やらないことを決める ■ ただし、適当にやめるんじゃなくて構造的なやり方でやめる ■ まず、やらないけど重要な仕事をいくつか見つける ■ 次に新しくあがってきた組織のリスクとなる仕事を再分類する ■ で、チームや上司に「これがやれてない」と伝える ← 重要

Slide 90

Slide 90 text

89 タイムマネジメントのコツ (2) ● 時間を先に割り当てておく ○ “スキップレベル1on1で全員と毎月30分” と決めると、組織が拡大したときに破綻する ○ だから時間を先に割り当てておく ■ たとえば、毎週2hと決めてその中で対応する

Slide 91

Slide 91 text

90 タイムマネジメントのコツ (2) ● 時間を先に割り当てておく ○ “スキップレベル1on1で全員と毎月30分” と決めると、組織が拡大したときに破綻する ○ だから時間を先に割り当てておく ■ たとえば、毎週2hと決めてその中で対応する ● システム・プロセスを作ったら、どこかのタイミングで例外処理も委譲する ○ 例外対処はマネージャの役割だが、抱えすぎてしまうマネージャも多い ○ 例外対処はエネルギーを使うので、どこかで別のマネージャに委譲すべき

Slide 92

Slide 92 text

91 余談:組織デザインと例外処理 ”様々な経済性を求めて分業が行われる。しかし分業を行うと、各人の活動を調整、 各人の努力が最終的なアウトプットにまとまるように統合しなければならない。 人々の活動を調整し、最終的なアウトプットへと統合していくために多様な工夫が施される。 この分業と調整の工夫が集積されたものが組織デザインである。”

Slide 93

Slide 93 text

92 余談:組織デザインと例外処理 ”様々な経済性を求めて分業が行われる。しかし分業を行うと、各人の活動を調整、 各人の努力が最終的なアウトプットにまとまるように統合しなければならない。 人々の活動を調整し、最終的なアウトプットへと統合していくために多様な工夫が施される。 この分業と調整の工夫が集積されたものが組織デザインである。” ● 調整を行うための方法に標準化とヒエラルキーがある

Slide 94

Slide 94 text

93 余談:組織デザインと例外処理 ”様々な経済性を求めて分業が行われる。しかし分業を行うと、各人の活動を調整、 各人の努力が最終的なアウトプットにまとまるように統合しなければならない。 人々の活動を調整し、最終的なアウトプットへと統合していくために多様な工夫が施される。 この分業と調整の工夫が集積されたものが組織デザインである。” ● 調整を行うための方法に標準化とヒエラルキーがある ● 標準化とは、いちいち問い合わせしなくていいように プロセスを事前に決めておくこと

Slide 95

Slide 95 text

94 余談:組織デザインと例外処理 ”様々な経済性を求めて分業が行われる。しかし分業を行うと、各人の活動を調整、 各人の努力が最終的なアウトプットにまとまるように統合しなければならない。 人々の活動を調整し、最終的なアウトプットへと統合していくために多様な工夫が施される。 この分業と調整の工夫が集積されたものが組織デザインである。” ● 調整を行うための方法に標準化とヒエラルキーがある ● 標準化とは、いちいち問い合わせしなくていいように プロセスを事前に決めておくこと ● ただし、どうしてもプロセスにハマらない例外事象が出てくる ○ そこでヒエラルキーを作って、例外処理を管理者が担う ○ (ただ、これはエネルギーを消耗するよ、という話)

Slide 96

Slide 96 text

95 タイムマネジメントのコツ (2) ● 時間を先に割り当てておく ○ “スキップレベル1on1で全員と毎月30分” と決めると、組織が拡大したときに破綻する ○ だから時間を先に割り当てておく ■ たとえば、毎週2hと決めてその中で対応する ● システム・プロセスを作ったら、どこかのタイミングで例外処理も委譲する ○ 例外対処はマネージャの役割だが、抱えすぎてしまうマネージャも多い ○ 例外対処はエネルギーを使うので、どこかで別のマネージャに委譲すべき ● そのミーティングに出る価値があるか検討する ○ シニアになるにつれて、ミーティングに呼ばれやすくことがある ○ そのミーテイングに出ることによって、出なかったときより価値が出せるか考える

Slide 97

Slide 97 text

96 タイムマネジメントのコツ (2) ● 時間を先に割り当てておく ○ “スキップレベル1on1で全員と毎月30分” と決めると、組織が拡大したときに破綻する ○ だから時間を先に割り当てておく ■ たとえば、毎週2hと決めてその中で対応する ● システム・プロセスを作ったら、どこかのタイミングで例外処理も委譲する ○ 例外対処はマネージャの役割だが、抱えすぎてしまうマネージャも多い ○ 例外対処はエネルギーを使うので、どこかで別のマネージャに委譲すべき ● そのミーティングに出る価値があるか検討する ○ シニアになるにつれて、ミーティングに呼ばれやすくことがある ○ そのミーテイングに出ることによって、出なかったときより価値が出せるか考える ● ちょっと先の成長を見越して採用する

Slide 98

Slide 98 text

97 タイムマネジメントのコツ (2) ● 時間を先に割り当てておく ○ “スキップレベル1on1で全員と毎月30分” と決めると、組織が拡大したときに破綻する ○ だから時間を先に割り当てておく ■ たとえば、毎週2hと決めてその中で対応する ● システム・プロセスを作ったら、どこかのタイミングで例外処理も委譲する ○ 例外対処はマネージャの役割だが、抱えすぎてしまうマネージャも多い ○ 例外対処はエネルギーを使うので、どこかで別のマネージャに委譲すべき ● そのミーティングに出る価値があるか検討する ○ シニアになるにつれて、ミーティングに呼ばれやすくことがある ○ そのミーテイングに出ることによって、出なかったときより価値が出せるか考える ● ちょっと先の成長を見越して採用する ● カレンダーで2時間のブロックを、週にいくつか作る

Slide 99

Slide 99 text

98 タイムマネジメントのコツ (2) ● 時間を先に割り当てておく ○ “スキップレベル1on1で全員と毎月30分” と決めると、組織が拡大したときに破綻する ○ だから時間を先に割り当てておく ■ たとえば、毎週2hと決めてその中で対応する ● システム・プロセスを作ったら、どこかのタイミングで例外処理も委譲する ○ 例外対処はマネージャの役割だが、抱えすぎてしまうマネージャも多い ○ 例外対処はエネルギーを使うので、どこかで別のマネージャに委譲すべき ● そのミーティングに出る価値があるか検討する ○ シニアになるにつれて、ミーティングに呼ばれやすくことがある ○ そのミーテイングに出ることによって、出なかったときより価値が出せるか考える ● ちょっと先の成長を見越して採用する ● カレンダーで2時間のブロックを、週にいくつか作る ● (それでもだめなら)秘書的なサポートを得る

Slide 100

Slide 100 text

99

Slide 101

Slide 101 text

100 週7hぐらい 1on1している

Slide 102

Slide 102 text

101 週4hぐらい 採用面接してる

Slide 103

Slide 103 text

102 採用 https://unsplash.com/photos/fY8Jr4iuPQM

Slide 104

Slide 104 text

103 採用ファネル全体像 https://lethain.com/hiring-funnel/

Slide 105

Slide 105 text

104 Identify(候補者を見つける) ● 候補者がやってくるソースは大きく分けてインバウンド、ソーシング、リファラルの3つ ○ スタートアップなどはリファラルに依存しがち ○ ただ、急成長する企業はすぐにリファラルが枯渇して、ソーシングとインバウンドに依存するようになる

Slide 106

Slide 106 text

105 Identify(候補者を見つける) ● 候補者がやってくるソースは大きく分けてインバウンド、ソーシング、リファラルの3つ ○ スタートアップなどはリファラルに依存しがち ○ ただ、急成長する企業はすぐにリファラルが枯渇して、ソーシングとインバウンドに依存するようになる ● インバウンド(自然流入) ○ いわゆるWebサイトから直接応募するケースなどが該当 ○ 量は多いが、質は低くなりがち

Slide 107

Slide 107 text

106 Identify(候補者を見つける) ● 候補者がやってくるソースは大きく分けてインバウンド、ソーシング、リファラルの3つ ○ スタートアップなどはリファラルに依存しがち ○ ただ、急成長する企業はすぐにリファラルが枯渇して、ソーシングとインバウンドに依存するようになる ● インバウンド(自然流入) ○ いわゆるWebサイトから直接応募するケースなどが該当 ○ 量は多いが、質は低くなりがち ● ソーシング ○ 企業側が積極的に動いて探してくるケースが該当 ○ Linkedinとか、大学訪問、カンファレンスやミートアップで誘うのもここ ■ ちなみに別の章で、Linkedinの具体的な運用(スロットルされるまで送るとか)が書いてある

Slide 108

Slide 108 text

107 Identify(候補者を見つける) ● 候補者がやってくるソースは大きく分けてインバウンド、ソーシング、リファラルの3つ ○ スタートアップなどはリファラルに依存しがち ○ ただ、急成長する企業はすぐにリファラルが枯渇して、ソーシングとインバウンドに依存するようになる ● インバウンド(自然流入) ○ いわゆるWebサイトから直接応募するケースなどが該当 ○ 量は多いが、質は低くなりがち ● ソーシング ○ 企業側が積極的に動いて探してくるケースが該当 ○ Linkedinとか、大学訪問、カンファレンスやミートアップで誘うのもここ ■ ちなみに別の章で、Linkedinの具体的な運用(スロットルされるまで送るとか)が書いてある ● リファーラル ○ 前職の同僚や、大学の友人をつれてくる方法。小さな会社だと主流 ○ 3つの内で一番効率がよい

Slide 109

Slide 109 text

108 Motivate(応募する気持ちになってもらう) ● 候補者が見つかったら、インタビューに来てもらえるようにモチベートする必要がある ○ この時点で、会社にあまり情熱がない人をフィルターする方法もあるが、非推奨 ○ むしろ、本当は情熱があったとしても、その表現が下手な人をフィルターしてしまうため

Slide 110

Slide 110 text

109 Motivate(応募する気持ちになってもらう) ● 候補者が見つかったら、インタビューに来てもらえるようにモチベートする必要がある ○ この時点で、会社にあまり情熱がない人をフィルターする方法もあるが、非推奨 ○ むしろ、本当は情熱があったとしても、その表現が下手な人をフィルターしてしまうため ● このフェーズで効果的なこと ○ 候補者と一緒に過ごす時間を増やす ■ コーヒーを一緒にのんだり、取り組んでいるプロジェクトについて話したり お互いから学べることを楽しむ ○ 正直に、ちょっとだけ楽観的に、ロールについて明確に定義して話す

Slide 111

Slide 111 text

110 Evaluate(評価する) ● その候補者が会社で本当に上手くやっているか見極めるフェーズ ○ 次の矛盾する3つ観点のバランスを取る必要があるため難解

Slide 112

Slide 112 text

111 Evaluate(評価する) ● その候補者が会社で本当に上手くやっているか見極めるフェーズ ○ 次の矛盾する3つ観点のバランスを取る必要があるため難解 ● 観点 ○ 確からしさ ■ 候補者が会社で成功すると自信をどれだけ持てるか ■ 離職は士気にかかわるし、上手くやるには時間もかかる

Slide 113

Slide 113 text

112 Evaluate(評価する) ● その候補者が会社で本当に上手くやっているか見極めるフェーズ ○ 次の矛盾する3つ観点のバランスを取る必要があるため難解 ● 観点 ○ 確からしさ ■ 候補者が会社で成功すると自信をどれだけ持てるか ■ 離職は士気にかかわるし、上手くやるには時間もかかる ○ 候補者体験(CX) ■ 候補者が評価されている間も、心地よい体験を得られるように ■ 入ってほしい候補者をみつけたとしても、その候補者が興味を失ったら終わり

Slide 114

Slide 114 text

113 Evaluate(評価する) ● その候補者が会社で本当に上手くやっているか見極めるフェーズ ○ 次の矛盾する3つ観点のバランスを取る必要があるため難解 ● 観点 ○ 確からしさ ■ 候補者が会社で成功すると自信をどれだけ持てるか ■ 離職は士気にかかわるし、上手くやるには時間もかかる ○ 候補者体験(CX) ■ 候補者が評価されている間も、心地よい体験を得られるように ■ 入ってほしい候補者をみつけたとしても、その候補者が興味を失ったら終わり ○ 効率 ■ チームの時間と、候補者の時間をいちばん効率よく使いたい ■ ここでは、候補者と評価者の時間の非対称に注意 ● 例えば、候補者が自宅で課題を解くための時間は長くかかるが、その評価は一瞬、はBad

Slide 115

Slide 115 text

114 参考:Effective Interiview の7要素 ● 候補者に親切に ● すべてのインタビュワー(面接官)が 面接対象のRoleの要件について合意している ● インタビューで「何を」「どうやって」見極めるか理解しておく ○ 技術についてプレゼンしてもらう、ペアプロ・ペアデバッグする など (なお、著者は単なるアルゴリズム的な質問に否定的) ● インタビュー前にしっかり準備する ● 候補者に興味を持つ・示す ● インタビュー自体にフィードバックループを ● ファネルを計測して改善する

Slide 116

Slide 116 text

115 Close(内定承諾) ● Motivateのフェーズに似ている ○ ただ、1日費やす代わりに、数年を費やしてもらうかもしれない意思決定になる ○ 給与・ボーナス・福利厚生など、複数の要因が絡んでくる ● ファネル上の最後のステップなので、ファネルの全体効率を考えると特に重要

Slide 117

Slide 117 text

116 ファネルの最適化 ● ファネルを設計したら、実装・運用して「測定」する ○ ATS(Applicant Tracking System) のメタデータを上手く使うのもココ ● 測定は超重要 ○ なぜならば、どこに注力すべきか分かるため ○ 会社によって注力する箇所は異なるし、同じ会社でもフェーズによって異なる ○ 唯一の方法は、ファネルに着目をして改善を繰り返すこと

Slide 118

Slide 118 text

117 どこまでファネルを最適化すればいいの? ● ファネルの改善初期は比較的簡単 ○ 各フェーズを見渡して投資箇所を決めていく

Slide 119

Slide 119 text

118 どこまでファネルを最適化すればいいの? ● ファネルの改善初期は比較的簡単 ○ 各フェーズを見渡して投資箇所を決めていく ● 厄介なのは「各セクションはどこまで高めるのが合理的なのか?」ということ ○ つまり、50%でいいのか、85%まで上げないといけないのか

Slide 120

Slide 120 text

119 どこまでファネルを最適化すればいいの? ● ファネルの改善初期は比較的簡単 ○ 各フェーズを見渡して投資箇所を決めていく ● 厄介なのは「各セクションはどこまで高めるのが合理的なのか?」ということ ○ つまり、50%でいいのか、85%まで上げないといけないのか ● ライバル企業の数値があるなら有用な情報になる ○ これがないと、過剰投資 or 過小投資につながる

Slide 121

Slide 121 text

120 ファネルを拡張する 拡張域 https://lethain.com/hiring-funnel/

Slide 122

Slide 122 text

121 ファネルを拡張する方法 (1) ● Closeで終わらせる以上に、上手くファネルを拡張して活用する方法がある ● オンボーディング ○ 候補者が入社してからスピードが出てくる(立ち上がる)までにどれぐらい時間がかかるか? ○ 計測は簡単じゃないが、個人が対象ではなくグループが対象になるので、少し乱雑でも構わない ○ 生産性に関するメトリックを見ると良い ■ 例えば、入社してからP40の生産性を出すまでにかかる時間は?

Slide 123

Slide 123 text

122 ファネルを拡張する方法 (1) ● Closeで終わらせる以上に、上手くファネルを拡張して活用する方法がある ● オンボーディング ○ 候補者が入社してからスピードが出てくる(立ち上がる)までにどれぐらい時間がかかるか? ○ 計測は簡単じゃないが、個人が対象ではなくグループが対象になるので、少し乱雑でも構わない ○ 生産性に関するメトリックを見ると良い ■ 例えば、入社してからP40の生産性を出すまでにかかる時間は? ● 影響・成果 ○ 入社してからどのぐらい影響を与えているか? ○ これも計測は簡単じゃないが、先ほどと同じく個人ではなくグループのトレンドを見る ○ 代替指標は、雇用してからの時間に基づくパフォーマンスレートの分布 になるだろう

Slide 124

Slide 124 text

123 ファネルを拡張する方法 (2) ● 昇進 ○ 入社してから昇進するまでの時間は? ■ 組織内で新たなポジションへアクセスできているかどうか理解できる指標にもなる

Slide 125

Slide 125 text

124 ファネルを拡張する方法 (2) ● 昇進 ○ 入社してから昇進するまでの時間は? ■ 組織内で新たなポジションへアクセスできているかどうか理解できる指標にもなる ● 継続率(離職率) ○ 入社したメンバが辞めていないか? ○ これは測定が簡単だが、遅行指標になる ○ 重要なメトリックなので測定すべき

Slide 126

Slide 126 text

125 ファネルを拡張する方法 (2) ● 昇進 ○ 入社してから昇進するまでの時間は? ■ 組織内で新たなポジションへアクセスできているかどうか理解できる指標にもなる ● 継続率(離職率) ○ 入社したメンバが辞めていないか? ○ これは測定が簡単だが、遅行指標になる ○ 重要なメトリックなので測定すべき ● ここまでの数値はセンシティブな数値なので、組織によっては共有を嫌がる ○ それでも構わない。誰かがケアしているのが大切!

Slide 127

Slide 127 text

126 採用面接の評価は難しい ● Cracking the Coding Interviewをパラパラ読んだ人いる? ○ 新しいロールに対する候補者の評価は「雑な科学」だと分かる ○ インタビューの精度に疑問を持っている人がほとんどであり 自信を持って採用できている人はあんまりいない

Slide 128

Slide 128 text

127 採用面接の評価は難しい ● Cracking the Coding Interviewをパラパラ読んだ人いる? ○ 新しいロールに対する候補者の評価は「雑な科学」だと分かる ○ インタビューの精度に疑問を持っている人がほとんどであり 自信を持って採用できている人はあんまりいない ● ただ、ちょっとした構造と創造性によって 公平で一貫したやり方で確度を高められる

Slide 129

Slide 129 text

128 評価を上手くするためのやり方 ● メトリクスファースト。データがなければ改善できない ○ 余談:戦略の章でもデータの大事さが出る。データがなければ空中戦になるから ● 今の面接プロセスのパフォーマンスを理解する ○ 例えば ■ ファネルはどうなっているか?どこで落ちている?他社のデータと比較したら? ■ インタビューの結果と、実際の業績は関連している? ■ 特に成功に資する要素はなんだった? ■ インタビューで聞いても役立たない要素は? ● …… (書籍には、この後も項目が続く。詳しくは原著で)

Slide 130

Slide 130 text

129 ということで 今日紹介したこと

Slide 131

Slide 131 text

130 書籍の全体像とのマッピング 1. 組織 a. チームの4状態と移行方法 2. ツール a. システム思考、良いゴールと悪いゴール b. 権威に依存せずに変化を起こす方法、Model→Doc→Share c. タイムマネジメント 3. アプローチ a. マネージャーのハマりポイント 4. 文化 a. インクルージョン、機会とメンバーシップ 5. キャリア a. 採用、採用、採用 6. 付録

Slide 132

Slide 132 text

131 書籍の全体像とのマッピング 1. 組織 a. チームの4状態と移行方法 2. ツール a. システム思考、良いゴールと悪いゴール b. 権威に依存せずに変化を起こす方法、Model→Doc→Share c. タイムマネジメント 3. アプローチ a. マネージャーのハマりポイント 4. 文化 a. インクルージョン、機会とメンバーシップ 5. キャリア a. 採用、採用、採用 6. 付録 これで全体の30%ぐらい? (残りは書籍で)

Slide 133

Slide 133 text

132 おさらい:発表終了時の到達点 ● An Elegant Puzzle: Systems of Engineering Management の書籍に書いてある内容の一部を理解している おしまい