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01 | © Sansan, Inc.
Data Science Report
データサイエンティストのつながり分析
1 概要
ビッグデータの蓄積や計算技術の向上に伴い、データを分析しビジネス上の課題に対してソリューションを導くデータサイ
エンティストが活躍している。マネジメント誌『Harvard Business Review』がデータサイエンティストを21世紀で最もセ
クシーな職業であると表現したのが、2012年10月であった。それから年月が経過しても、そのセクシーさにますます磨きを
かけていると言える。経済産業省(2016)は、2025年までの予測においてデータサイエンティストのニーズがさらに高まる
ことを示しており、企業にとってはデータサイエンティストの確保がますます課題になると指摘しているからである。本稿で
は、
そのようなデータサイエンティストがどのような人たちと名刺交換をしているのかについて、
個人向け名刺アプリ「Eight」
のデータを基に分析をしたい。
データサイエンティストのつながりに注目する理由は、データサイエンティストに求められているスキルが多岐にわたるた
め、複数のスキルを身に付けることや仕事での活躍を目的にどのような人と交流をしているのかが複雑であり、目に見えない
ものであることから、その実態を把握することに意義があると考えているためである。
日経情報ストラテジー編(2013)は、データサイエンティストに求められているスキルを3つ挙げている。一つ目は、着眼
点である。データ分析を通じて顧客が持つ潜在ニーズを引き出す、既存業務の問題点を浮き彫りにするといったことのために
は、何にフォーカスを当てるかといったものの見方が求められる。二つ目は、ITの知識である。情報を分析することが求めら
れるため、統計ツールの使い方やプログラミングに関する知識、データマイニングなどの手法を熟知しておく必要がある。ま
た、
機械学習に代表されるようにモデルに関する知識も求められるために、
統計学についての理解も不可欠である。三つ目は、
業務理解と現場への説明能力である。データサイエンティストは、分析した内容を他部署の人間にも分かりやすく伝える必要
がある。
このように、データサイエンティストは、エンジニアリングとビジネスの両方について理解が求められる職業であり、その
理解が伴ってこそ仕事ができるといえる。仕事を進める上で他社の人間と接点を持つ際に、どのような人と交流をしているの
か、データサイエンティストのつながりについて見ていきたい。
2 分析対象
分析に当たっては、Eightのデータについて個人を匿名化し、2017年1月から2018年6月の期間にユーザーが登録した名刺
の情報をEightの利用規約で許諾を得ている範囲で使用した。Eightのデータにおいて、データサイエンティストであること
を判別するために、
ユーザー自身の名刺情報の役職に
「データサイエンティスト」
「データアナリスト」
「データストラテジスト」
と記載がある人を対象とした結果、数百名のサンプルが得られた。一般的には、データサイエンティストは「ビッグデータを
分析し、現場に働きかけてイノベーティブな商品やサービスを生み出し、業務プロセスを革新する人材」と定義される(日経
情報ストラテジー編、
2013)
。
データサイエンティストとデータアナリストは、
その役割が一部異なることも見られるようだが、
データに携わる人材ということでやや広めに定義をしている。分析対象とした数百名が対象期間中にどれだけ名刺交換をして
いるかを以下で分析するが、一般的な人との違いが分かるようにランダムに抽出した数百名のユーザー(抽出の結果、データ
サイエンティストは含まれなかった)についてのデータも参考サンプルとして結果を示した。
分析では、データサイエンティストと参考サンプルのそれぞれにおいて、名刺交換枚数の分布(ネットワーク分析では次数
分布と呼ばれる)を見た上で、名刺交換をしている相手の部署はどこかといった点について示している。名刺交換をした相手
のうち本人と同じ企業に所属している人を除いたため、他社の人間との交流を見ることになる。Eightは個人向け名刺アプリ
であるため、登録されている名刺には、業務の一環として本人の意思によらず名刺を交換したケースも含まれているかもしれ
ないが、自主的に勉強会やイベントなどに参加し、そこで受け取った名刺である可能性もあるだろう。そういった可能性も踏
まえ、Eightの名刺情報を分析することで、本人の意思によりどれだけ幅広い交流ができているかをある程度は把握できると
考える。