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マーケティング指標における データサイエンス入門

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前提 - 聴き手のレベル感の想定 データサイエンス初学者or簡単な書籍を読んだことがあるくらいの 方々(ゴリゴリに専門書を読んでます的なレベルは想定していないで す) ▶ あえて厳密な表現をしていないところがあります

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アジェンダ - 前回のおさらい - マーケティング指標の紹介 - データサイエンスの概要 - データサイエンスのマーケティング領域への応用

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前回のおさらい

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相関関係と因果関係 相関関係の例 相関関係は必ずしも因果関係を表しているわけではない 因果関係の例 ビールの売上が大きいと アイスの売上も大きい傾向 学習時間を増やすと 試験の成績が上がる

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因果関係の重要性 ビジネスシーンでは因果関係を知りたい(ことが多い) キャンペーン施策は利益につながったの? ➢ 因果関係が分からないと いつまで経っても意思決定を評価できない 広告を売ってるけど費用対効果はどうなの?

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因果関係の難しいところ これって本当の効果? 広告の例:広告を見たグループと広告を見てないグループの売上を比較 売上 広告を見た 広告を見てない 現代の広告の多くは、売上に繋がりやすい人を ターゲティングして配信されている ➢ 広告を見ていなくても売上が高い 「すべてが広告の効果」 というわけではない

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バイアス(セレクション・バイアス) バイアスを取り除いたものが本当の効果 広告の例:バイアス=広告を見ていなくても生じていたであろう売上の差 売上 広告を見た 広告を見てない 広告の効果(本当の効果) 広告を見ていなくても 生じていたであろう売上の差 (セレクション・バイアス)

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バイアスを除いた効果を推定するアプローチ(実験or非実験) 効果検証とは? 前回、紹介した手法 実験 - RCT(A/Bテスト) 非実験 - DID(差分の差分法) - RDD(回帰不連続デザイン)

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前回、議論していない点 効果検証の流れ 1. 効果を定義する 2. (広義の)”データサイエンス”

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今回、焦点を当てたい点 指標へのアプローチ どんな指標を見るべきか “データサイエンス”の具体例 どのように応用されているのか 〇〇アルゴリズム 〇〇分析

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前回のおさらい(まとめ) - 相関関係と因果関係は混同してはいけない - 本当の効果って意外と分からない(バイアスだらけ) - 効果検証とは、バイアスを取り除いて本当の効果を推定するア プローチ - 今回は、効果を定義するための指標や評価するための”データ サイエンス”の応用例についてお話させていただきます。

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マーケティング指標の紹介

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マーケティング指標の紹介(前提) この章は、みなさんが知らないような「新しい指標を紹介する」と いうような内容ではありません。 (たぶん、私より詳しい人はたくさんいると思います(笑)) では、何を紹介する章なのか?? ➢ 「指標へのアプローチ」を紹介します!!

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いきなりですが、、、 みなさん、ダイエットをしたことはありますか?

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ダイエットあるある やみくもにダイエットを試みたものの、、、 運動 食事制限 気合十分 挫折 ➢ 「ダイエットに必要な指標を定量的に終えていない」ことが原因

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ダイエットで追うべき指標 ダイエットって実は非常にシンプル ※脂肪1kgを燃やすのに必要なカロリーは、約7,200キロカロリー 消費カロリーと摂取カロリーの指標を追えばよい ➢ 追うべき指標が分かると、解像度がグッと上がる!! 1日の消費カロリー 1日の摂取カロリー >

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マーケティング指標の話に戻ります 書籍「データ・ドリブン・マーケティング」で紹介されている指標 をベースにお話します 書籍の概要(Amazonの紹介文を一部抜粋) フォーチュン500社の業績上位20%の企業に共通する成功のカギは、データ解析にも とづくマーケティング(データドリブン・マーケティング)の意思決定であることがわ かっている。しかし日本では、各種メディアで「ビッグデータ」という言葉を目にし ない日はないほどだが、実際にはほとんどの企業がそれを売上・パフォーマンスの向 上に転換できていないのが現状である。その最大の理由は、そもそもどのような指標 が有効なのかを知らないことにある。 著者が提言する15の指標による意思決定は、大規模なシステムや人的投資を必ずしも 必要とするものではない。内容を正しく理解した担当者が一人いればできることがほ とんどであるため、対象となる読者層の裾野は極めて広い。また、事例も豊富であ り、机上の理論に終わらず、実務家が明日から使える示唆・ノウハウに富んでいる。

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マーケティング活動の予算配分(平均値) 需要喚起が約5割を占める ※書籍「データ・ドリブン・マーケティング」の図表1.5を一部改変 マーケティング活動を5項目に分類 1. ブランディング 2. 市場形成 3. CRM 4. ITインフラおよび組織能力 5. 需要喚起

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マーケティング活動の予算配分(業績別) 業績上位企業と業績下位企業で予算配分の割合は異なる ※書籍「データ・ドリブン・マーケティング」の図表1.6を改変 上が業績上位企業、下が業績下位企業の予算配分 業績上位企業の方が、業績下位企業より も中長期的な(需要喚起以外)マーケ ティング活動に予算を配分している割合 が高い

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ついつい、需要喚起関連の活動に重きを置いてしまう、、、 マーケティング活動あるある ➢ マーケティング活動の目的に合った評価指標を選択する必要 需要喚起 短期的な売上UP等などの繋がりや すく、効果や重要性を説明・理解 しやすい それ以外の活動 短期的には売上UP等に繋がらない ものが多く、効果や重要性を説明 ・理解しづらい

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マーケティング活動に合った評価指標 あくまでも参考 マーケティング活動 目的・カテゴリ 評価指標の例 ブランディング 認知向上 ブランド認知率 市場形成 比較検討・評価 試乗(お試し)回数 CRM 顧客満足度 解約率、NPS ITインフラ等 運用効率 オファー承諾率 需要喚起 トライアル 売上高、財務系指標全般

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マーケティング活動に合った評価指標(補足) 赤枠部分は短期的な利益に繋がりにくいからこそ指標選定が鍵 マーケティング活動 目的・カテゴリ 評価指標の例 ブランディング 認知向上 ブランド認知率 市場形成 比較検討・評価 試乗(お試し)回数 CRM 顧客満足度 解約率、NPS ITインフラ等 運用効率 オファー承諾率 需要喚起 トライアル 売上高、財務系指標全般

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マーケティングのバランス・スコアカード マーケティング施策を設計する際に3つの観点で考える必要がある 指標 概要 具体例 過去指標 具体的なキャンペーンや戦 術の効果を測る指標 売上高 リード・コンバージョン 将来指標 先行指標となる測定値 ブランド認知率 LTV 内部プロセス管理指標 施策実行の効率性を測る指 標 オファー承諾率 費用対効果

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指標に基づくマーケティング活動のプロセス マーケティング・キャンペーン・マネジメント(MCM)が鍵 効果測定 (測定) キャンペーンの 管理(実行) キャンペーンへ の投資(選択) フィードバック (適応学習)

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- マーケティング活動の成功確度を上げるためには、定量的な指 標を追う必要がある - マーケティング活動に合った指標選定がポイント。特に需要喚 起以外のマーケティング活動は短期的・直接的に売上に結びつ くことを確認しにくいケースが多いので、目的に合った指標選 定が重要 - マーケティング施策の設計には、スコアカードやマーケティン グ・キャンペーン・マネジメント(MCM)の導入を推奨 マーケティング指標の紹介(まとめ)

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データサイエンスの概要

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データサイエンスとは 統計学などの知見をもとにデータからインサイトを導き出すこと

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本スライド内における”データサイエンス” 先ほどの定義に加えて、統計学・機械学習・最適化など広義の数理 的手法も含めて“データサイエンス”と表現 データサイエンス警察 ※「データサイエンス」という表 現は曖昧な便利ワードとして用い られがちなので、要注意です (正直、何が正解かは私も分かりません)

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3大”データサイエンス”手法(あくまでも主観) - 統計学(統計解析) - 機械学習 - 数理最適化 ➢ 重なる部分も多く、厳密な棲み分けはない

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統計学って何ができるの? 手元のデータを使って、母集団について考える イメージ: カレーの味見 味見で全部は食べない 小皿にすくって (鍋全体の)味を確認

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統計学を用いた効果検証(カレーの例) いつものレシピに隠し味を入れて、味の変化を考える 隠し味入り 隠し味なし 味の差が隠し味の効果

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機械学習って何ができるの? 手元のデータから学習し、ある値を予測する(教師あり学習) イメージ: カレーの味 じゃがいも 玉ねぎ にんじん お肉 カレールー 味 aグラム bグラム cグラム dグラム eグラム

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機械学習を用いた効果検証(カレーの例) 隠し味ありとなしの味の予測値の差を考える 隠し味入りの味の予測値 隠し味なしの味の予測値 予測値の差が隠し味の効果

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数理最適化って何ができるの?(補足) データと制約条件から、ある値を最大(最小)にする配分を実現 イメージ: カレーをできるだけたくさん作る 甘口カレー4食分の具材 玉ねぎ1個 じゃがいも2個 にんじん2本 牛肉100g 甘口カレールー1個 辛口カレー4食分の具材 玉ねぎ2個 じゃがいも2個 にんじん1本 牛肉200g 辛口カレールー1個 冷蔵庫(制約条件) 玉ねぎ6個 じゃがいも6個 にんじん6本 牛肉500g 甘口カレールー3個 辛口カレールー3個

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データサイエンスの概要(まとめ) - データサイエンスとは、統計学などの知見をもとにデータから インサイトを導き出すこと - 統計学、機械学習、数理最適化でできること - 統計学: 手元のデータから母集団を考えることができる - 機械学習: 手元のデータから予測できる(教師あり学習) - 数理最適化: 手元のデータと制約条件からある値を最大(最小) にする配分を実現することができる

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データサイエンスの マーケティング領域への応用

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本スライドで紹介する4つの手法 - 回帰分析 - ネクストベスト・オファーモデル分析 - 決定木分析 - LiNGAMモデル分析

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回帰分析 いい感じの回帰直線を考えて、効果を推定する手法 イメージ: キャンペーン施策の平均売上効果 売上高の指標に注目 - 縦軸: 平均売上の推定値(単位: 円) - 横軸: 年齢(単位: 歳) - 効果: 2直線の差 キャンペーンには売上を平均1,000円上げ る効果があると解釈

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回帰分析(補足) 前回、紹介した手法も回帰分析の枠組み 差分の差分法(DID) t4時点でキャンペーンを実施 - 縦軸: 平均売上の推定値(単位: 円) - 横軸: 時点(t1, t2, t3, t4) - 効果: t4時点のキャンペーンありの実 線と破線の差

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回帰分析(補足) 前回、紹介した手法も回帰分析の枠組み 回帰不連続デザイン(RDD) 累計ポイントが1,000ポイント以上の顧 客にだけキャンペーンを実施 - 縦軸: 平均売上の推定値(単位: 円) - 横軸: 累計ポイント - 効果: 累計ポイントが1,000ポイント 付近の平均売上の差

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回帰分析(メリット・デメリット) 回帰分析のメリットとデメリット メリット - 考え方が比較的シンプルなため、受け入れられやすい - 汎用性が高い デメリット - 変数の選択などが実は難しく、誤用されやすい

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ネクストベスト・オファーモデル 既存の顧客の購入意欲を点数化し、1番点数の高いものを提案する Eメールによる販促 Eメールで提案 最も購入意欲が高い 商品を提案 モデルの作成 ロジスティック回帰 モデルなど データ蓄積 過去の購買履歴など の属性データ 効果測定 オファー承諾率など モデルは定期的に 更新する

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ネクストベスト・オファーモデル(補足) 似た手法に「アソシエーション分析」がある(クラスター分析) 顧客がどんな商品やサービスを同時に購入するかを特定する分析手法 (例)野球のグローブを購入する人に野球ボールやバットをレコメンド

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ネクストベスト・オファーモデル(メリ・デメ) ネクストベスト・オファーモデルのメリット・デメリット メリット - 分析結果に基づいたEメール配信など、一度実装すればネクストアクションま で自動化することが可能 デメリット - 分析結果が視覚的に分かりにくい - データ基盤などのITインフラ整備が必要

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決定木分析 データに基づいてルールを設定し、木構造に分類する 解約率が高い顧客を割り出す 全顧客1,000人 解約率10.0% 顧客数500人 解約率5.0% 顧客数500人 解約率15.0% 顧客数100人(解約率9.0%) 顧客数400人(解約率4.0%) 顧客数200人(解約率21.0%) 顧客数300人(解約率11.0%) この顧客層に刺さるネクスト アクションを考える Yes No 例)顧客ランクが〜以上

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決定木分析(メリット・デメリット) 決定木分析のメリット・デメリット メリット - 視覚的に理解しやすい - 幅広いケースでアプローチが可能 デメリット - モデルの過学習の懸念

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LiNGAMモデル分析 いい感じのモデルを考えて、各要素の影響度合いを推定 イメージ 求めたい関係式 - x = 2y + a - y = b - z = 3x + 4y + c ※a,b,cは誤差(ノイズ) 変数y 変数x 変数z ×2 ×4 ×3 ➢ 矢印と赤の数字たちを知りたい LiNGAMの由来 必要な仮定の頭文字 - Linear: 線形 - Non-Gaussian: (誤差項が)ガウス分布 に従わない - Acyclic: 非循環(な因果グラフで表すこ とができる) - Model: モデル

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LiNGAMモデル分析(メリット・デメリット) LiNGAMモデル分析のメリット・デメリット メリット - 視覚的に理解しやすい デメリット - 前提条件が厳しい

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DSのマーケティング領域への応用(まとめ) - 回帰分析、ネクストベスト・オファーモデル分析、決定木分 析、LiNGAMモデル分析などを紹介 - いずれの手法にもメリット・デメリットがあるため、目的に合 わせた手法選定が必要

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おわりに

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参考文献 - マーク・ジェフリー「データ・ドリブン・マーケティング」ダ イヤモンド社(2017) - 安井「効果検証入門」ホクソエム社(2020) - Ron Kohavi他「ABテスト実践ガイド」ドワンゴ(2021) - 小川「Pythonによる因果分析」マイナビ出版(2021) - 佐藤「マーケティングの統計モデル」朝倉書店(2015)

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ご清聴ありがとうございました