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マインドフルネスと 人工知能 三宅 陽一郎 @miyayou (日本デジタルゲーム学会理事) 2018.2.6 LIFORK OTEMACHI 大手町ファーストスクエア ウエストタワー https://www.facebook.com/youichiro.miyake http://www.slideshare.net/youichiromiyake [email protected]

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経歴 京都大学(数学) 大阪大学(原子核実験物理) 東京大学 (エネルギー工学/人工知能) 高エネルギー加速器研究所(半年ぐらい。修士論文) http://www.facebook.com/youichiro.miyake

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My Works (2004-2017) AI for Game Titles Books

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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自然知能と人工知能 人間 =自然知能 機械 =人工知能

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人工知能を探求することは、 人間を探求すること。

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ダートマス会議(1956年) • ジョン・マッカーシーのいたダートマス大学で、人 工知能をテーマとして初めて開催された会議。 • Artificial Intelligence という名称もはじめてここで 用いられた。 http://www-formal.stanford.edu/jmc/history/dartmouth/dartmouth.html

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ダートマス会議(1956年) 我々は、1956年の夏の2ヶ月間、10人の人工知能研究者 がニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学に集 まることを提案する。そこで、学習のあらゆる観点や知能 の他の機能を正確に説明することで機械がそれらをシミュ レートできるようにするための基本的研究を進める。機械 が言語を使うことができるようにする方法の探究、機械上 での抽象化と概念の形成、今は人間にしか解けない問題 を機械で解くこと、機械が自分自身を改善する方法などの 探究の試みがなされるだろう。我々は、注意深く選ばれた 科学者のグループがひと夏集まれば、それらの問題のうち いくつかで大きな進展が得られると考えている。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83% 9E%E3%82%B9%E4%BC%9A%E8%AD%B0 人工知能=人間の知能を機械に写す(移す)。

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機械(マシン) ソフトウェア 知能 身体 機能 知能 http://www.1999.co.jp/blog/1210192 http://ja.wallpapersma.com/wallpaper/_- %E3%83%AA%E3%82%B9%E3%80%81%E5%A3%81%E7%B4%99%E3%80%81%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%89%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%80%81%E3% 83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%81%E3%83%9A%E3%83%83.html

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身体性とインテリジェンス Gray’s anatomy 脳の中心の部位は身体とつながっている。 生理機能を司っている。 それを囲うように、辺縁体、大脳がある。 http://square.umin.ac.jp/neuroinf/brain/005.html http://www.amazon.co.jp/Grays-Anatomy-Anatomical-Clinical-Practice/dp/0443066841

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意識/無意識の知性 身体の制御に つながる 感覚を統合する 知性全体 人の意識的な部分 意識自身には機能がない 環境 身体 意識 無意識 意識的な知性 無意識的な知性 表象 意識に浮かび 上がるイメージ

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人間の精神 意識 前意識 無意識 知能 言語による 精神の構造化 外部からの 情報 言語化のプロセス シニフィアン /シニフィエ 言語回路 (=解釈) 意識の形成 世界を分節化している

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人間の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ) 意識の境界面 (表象) 知覚の境界面 知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識)

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人間の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 生態学的人工知能 ※生態=環境・身体との 結びつきを考える 伝統的な人工知能 身体知

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人間の精神 意識 前意識 無意識 知能 言語による 精神の構造化 外部からの 情報 言語化のプロセス シニフィアン/シニフィエ 言語回路 (=解釈)

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機械の精神=人工知能 意識 前意識 無意識 知能 言語による 精神の構造化 外部からの 情報 言語化のプロセス シンボル/010100000 言語回路 (=プログラム)

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人間の精神、機械の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 言語・非言語境界面 知覚の境界面 人工知能は、人間の知能を機械に移したもの。

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人工知能の歴史 1956年 1986年 2016年 人工知能 発祥 日本人工知能学会 発足 現在

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自然知能と人工知能 人間 =自然知能 機械 =人工知能

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人間と人工知能が協調して仕事をする時代に 人間 =自然知能 機械 =人工知能

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人工知能を、理解する 人工知能に、人間を理解させる。

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西欧的知能感 神 人間 人工 知能 垂直的知能感 人間に似ていれば 似ているほど良い。 = Human-like AI

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東洋的知能感 神 人間 人工 知能 鹿 ゾウリ ムシ 初音 ミク AIBO たま ごっち 水平的知能感 すべてに神が宿る (「八百万の神」世界観)

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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人工知能とは

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自然知能と人工知能 人間 =自然知能 機械 =人工知能

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ダートマス会議(1956年) 我々は、1956年の夏の2ヶ月間、10人の人工知能研究者 がニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学に集 まることを提案する。そこで、学習のあらゆる観点や知能 の他の機能を正確に説明することで機械がそれらをシミュ レートできるようにするための基本的研究を進める。機械 が言語を使うことができるようにする方法の探究、機械上 での抽象化と概念の形成、今は人間にしか解けない問題 を機械で解くこと、機械が自分自身を改善する方法などの 探究の試みがなされるだろう。我々は、注意深く選ばれた 科学者のグループがひと夏集まれば、それらの問題のうち いくつかで大きな進展が得られると考えている。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83% 9E%E3%82%B9%E4%BC%9A%E8%AD%B0 人工知能=人間の知能を機械に写す(移す)。

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身体性とインテリジェンス Gray’s anatomy 脳の中心の部位は身体とつながっている。 生理機能を司っている。 それを囲うように、辺縁体、大脳がある。 http://square.umin.ac.jp/neuroinf/brain/005.html http://www.amazon.co.jp/Grays-Anatomy-Anatomical-Clinical-Practice/dp/0443066841

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人工知能ブーム 時間 規模 情報革命 ネット革命 知能革命 電子情報化 オンライン化 知能化 1960 1990 2000 第一次AIブーム 第二次AIブーム 第三次AIブーム 1970 1980 2010

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人工知能には、思考を異にする 二つの種類がある。

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二つの人工知能 IF (s_collison==true) register_all(s_star); assign_edge(); assign_vertex(); mix_all(); シンボルによる人工知能 (記号主義) ニューラルネットによる人工知能 (コネクショニズム) IBM ワトソン Google検索 など AlphaGo など http://www.nature.com/nature/journal/v518/n7540/full/nature14236.html

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神経素子(ニューロン)とは? 入力 入力 入力 出力 入力 この中にはイオン(電解,Na+,K+) 溶液が入っていて、入力によって電圧が 高まると出力する仕組みになっています。 100mVぐらい ニューラルネットワーク内シグナル伝達スピード 100(m/sec) … 案外遅い http://www.brain.riken.go.jp/jp/aware/neurons.html

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ニューラルネットを理解しよう② 数学的原理 http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/brain/brain/11/index-11.html 医学的知識 http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/mnaka/ut/sozai/ai.html モデル化 数学的モデル ニューロン 人工ニューロン 入出力関係のグラフ 入出力関係の関数(シグモイド関数) ニューラルネットワーク (ニューロンをつなげたもの) 道具はこれで全て。これで何ができるだろう?

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この300年の技術の動向 社会 機械レイヤー 情報処理レイヤー 人工知能レイヤー

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2 第1次AIブーム 時間 規模 情報革命 ネット革命 知能革命 電子情報化 オンライン化 知能化 1960 1990 2000 第一次AIブーム 第二次AIブーム 第三次AIブーム 1970 1980 2010

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2 第一次AIブーム(1960年代) • コンピューターは大型のものしかない。 • 人工知能という分野自体が誕生したばかり。 • ニューラルネットという新しい分野のブーム。 19世紀後半 人間の脳は ニューロンという もので出来てい るらしい 20世紀前半 ニューロンの 電気的性質が 解明される (ホジキン博士、 ハクスレー博士) 1950年代に ニューラルネット 発明 1963年に ホジキン=ハク スレー方程式が ノーベル賞

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2 第一次AIブーム(1960年代) もし A ならば B もし B ならば C よって、 もし A ならば C シンボルによる人工知能 (記号主義) ニューラルネットによる人工知能 (コネクショニズム) 推論ベース ニューラルネット 誕生

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3 第二次AIブーム(1980年代) • パソコンが普及して行く。 • ルールを集めて知能を作ろう。 • 逆伝播法によるニューラルネットのブーム。 パソコンが 世の中で 普及して行く 知識主義 = たくさんの知識 を人工知能に 与えて推論 すれば知能が できる インターネット もなく、知識 が足りない。 推論も専門的 な機能のみ。

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3 第二次AIブーム(1980年代) IF (A) then B IF (C) then D IF (E) then F IF (G) then H IF ( I ) then J シンボルによる人工知能 (記号主義) ニューラルネットによる人工知能 (コネクショニズム) ルールベース 新しい学習法= 逆伝搬法

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3 第二次AIブーム(1980年代) 0 0 0 【逆伝播法】 ここが1になるように、 結合の強さを、 さかのぼって変えて行く。

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4 第三次AIブーム(2010年代) • インターネットが普及して行く。 • インターネットで蓄積されたデータを学習させて 知能を作ろう。 • 改善されたニューラルネットのブーム。 インターネット が世の中で 普及して行く データ 学習主義 = たくさんのデー タを人工知能 に学習させる 現在、進行中

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4 第三次AIブーム(2010年代) シンボルによる人工知能 (記号主義) ニューラルネットによる人工知能 (コネクショニズム) データベース 新しい学習法= ディープラーニング データベース 検索エンジン キーワード 検索結果 検索 人 次の章で 説明 します

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インターネットによる 膨大なデータ 4 第三次AIブーム(2010年代) 時間 規模 1960 1990 2000 第一次AIブーム 第二次AIブーム 第三次AIブーム 1970 1980 2010 ルールベース 逆伝播法 データベース ディープ ラーニング 推論ベース ニューラル ネット誕生 小型・中型 コンピュータの普及 大型コンピュータ 専門家のみのブーム

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ディープラーニング=分別器 シンボルによる人工知能 (記号主義) ニューラルネットによる人工知能 (コネクショニズム) データベース 新しい学習法= ディープラーニング データベース 検索エンジン キーワード 検索結果 検索 人

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ディープラーニング=分別器 シンボルによる人工知能 (記号主義) ニューラルネットによる人工知能 (コネクショニズム) データベース 新しい学習法= ディープラーニング データベース 検索エンジン キーワード 検索結果 検索 人 最初から 分けて 考える よくわから ないものを 分けられる ようになる

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人工知能の3つのドグマ ① よく考えれば、よい行動ができる ② 世界と自己を分かつ(心、身、世界) ③ 因果律の中にある

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人工知能の意識はどこにあるか?

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主体と客体(谷淳) 谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer

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主体と客体(谷淳) • この図では、まず仮に主体と客体という二項対立 の構造を想定してみる。客体環境からボトムアップ するセンソリの流れを主体はある構えを持ちトップ ダウン的に予測し解釈しようとする。両者の相互作 用を経て認識が成立し、行為が生成される。 谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer 心と環境は溶け合っている 身体と環境も溶け合っている Chaotic

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主体と客体(谷淳) • 認識の結果は主体の内部を変化させ、また生成された行為 は環境を変化させる。この相互作用を通して、主体から出発 したトップダウンの流れと客体から出発したボトムアップの流 れは分離不可能になり、もはや主体と客体といった区別は 無意味になる。この時に初めて、古典的な認知論で想定さ れてきた、客体として操作される表象と、それを操作する主 体といった構図からも自由になれるのである。 • いかにこのような相互作用の場を構築するか、本文では筆 者らが行ってきた一連の認知ロボット実験について解説しな がら、本問題について議論していく。 • 谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer

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主体と客体(谷淳) 谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer

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主体と客体(谷淳) 谷淳、「力学系に基づく構成論的な認知の理解」、Springer

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唯識論 世界は識から成り立つとする理論。 眼識 耳識 鼻識 舌識 身識 意識 阿頼耶識 (一切種子識) 末那識 感覚 (五識) 思考 自我執着心 根本心 表層心 深層心 言葉なしで対象を直接 に把握する。それぞれ 固有の対象を持つ。 五識と共に働いて感覚を 鮮明にする。五識の後に 言葉を用いて対象を概念的 に把握する 常に阿頼耶識を対象として 「我」と執する。 眼識ないし末那識を生じる。 身体を生じて生理的に維持している。 自然をつくり出し、それを維持し続けている。 一切を生じる種子を有する。 (横山紘一 「唯識の思想」、講談社学術文庫、P.60 ) 阿頼耶識から生まれた ものが、人間にさまざま なものを見せる。 =煩悩

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無分別智 • では、無分別智とは何か。普通私たちは何かを行うとき、「自 分」と「他者」と両者の間に展開する「行為」あるいは「物」という 三つを分別します。例えば、施すという行為(布施)のなかで、 「自分が人にこの物を施す」と考えます。もちろん施すということ はよいことですが、このように三つを分別して施すと、そこに「自 分」と「他者」と「施す」という行為とが意識され、それに強く執着 することになります。「自分は人を救ったのだ」と傲ることになり かねません。 • これに対して、この三つを分別せず、しかも布施をする行為、こ れを無分別智に基づく布施行といい、このような智慧のことを 「三輪清浄の無分別智」といいます。このような智慧を働かせて 物事に成りきって生きる時間を、なるたけ多く持つことが大切で す。なぜならこの無分別智がいわば火となって深層の阿頼耶識 に潜む汚れた種子を焼いていくからです。 (横山紘一「唯識でよむ般若心境 空の実践」、P.185)

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人間の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ) 意識の境界面 (表象) 知覚の境界面 知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識) 世界と自分は一体だと思っている 世界と自分は違うと思っている

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我々の無意識の根源には 世界と自分は一体だという 原衝動(アニマ)がある しかし、意識や知能は世界と自分を 分けて捉えようとする(分別)

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東洋と西洋 物事を分解し、 組み上げることで、 知を形成しましょう。 (西洋) 物事を区別しない ことで知が生まれる (東洋)

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人工知能 人間 仏教と人工知能 • 仏教 = 煩悩から解脱する • 人工知能 = むしろ煩悩を与えたい(執着) 煩悩 煩悩 解脱 執着

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人工知能 人間 仏教と人工知能 • 仏教 = 煩悩から解脱する • 人工知能 = むしろ煩悩を与えたい(執着) 煩悩 煩悩 解脱 執着 人工知能にどのようにして煩悩を与えることができるか?

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人間は煩悩から逃れたい 人工知能には、煩悩が必要

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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キャラクターAI:意思決定 知能とは何か?

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FC SFC SS, PS PS2,GC,Xbox Xbox360, PS3, Wii DC (次世代) Hardware 時間軸 2005 1999 ゲームの進化と人工知能 複雑な世界の 複雑なAI ゲームも世界も、AIの身体と内面もますます複雑になる。 単純な世界の シンプルなAI (スペースインベーダー、タイトー、1978年) (アサシンクリード、ゲームロフト、2007年)

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(例) スペースインベーダー(1978) プレイヤーの動きに関係なく、決められた動きをする (スペースインベーダー、タイトー、1978年)

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(例)プリンス・オブ・ペルシャ 「プリンス・オブ・ペルシャ」など、 スプライトアニメーションを用意する必要がある場合、 必然的にこういった制御となる。 (プリンスオブペルシャ、1989年)

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強化学習(例) 強化学習 (例)格闘ゲーム キック パン チ 波動 R_0 : 報酬=ダメージ http://piposozai.blog76.fc2.com/ http://dear-croa.d.dooo.jp/download/illust.html

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強化学習 (例)格闘ゲームTaoFeng におけるキャラクター学習 Ralf Herbrich, Thore Graepel, Joaquin Quiñonero Candela Applied Games Group,Microsoft Research Cambridge "Forza, Halo, Xbox Live The Magic of Research in Microsoft Products" https://www.microsoft.com/en-us/research/project/video-games-and-artificial- intelligence/?from=http%3A%2F%2Fresearch.microsoft.com%2Fen-us%2Fprojects%2Fijcaiigames%2F Microsoft Research Playing Machines: Machine Learning Applications in Computer Games http://research.microsoft.com/en-us/projects/mlgames2008/ Video Games and Artificial Intelligence http://research.microsoft.com/en-us/projects/ijcaiigames/ Leraning to fight https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2004/01/graehergol04.pdf

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原始の海+光+熱+稲妻 http://www.yunphoto.net/jp/photobase/yp2863.html Photo by (c)Tomo.Yun http://www.yunphoto.net

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ユーリーミラーの実験 ガスから生命の構成要素であるアミノ酸を合成した。 ハロルド・ュ―リーの研究室で、スタンレー・ミラーが実験(1953年) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Miller-Urey_experiment_JP.png

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極性頭部 非極性尾部 水と仲良し 水と溶けあえない (参考)永田和宏 「生命の内と外」 (「考える人」(Vol.45))

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自己組織化

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原始の海で構造化=外と内の形成 外 内 Energy

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http://28275116.at.webry.info/201005/article_7.html

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テセウスの船(パラドックス) 船の老朽化した部分を、新しい木に入れ替えているうちに、 全部を入れ替えてしまった。 はたしてこの船は元の船と同一のものであろうか? http://img02.hamazo.tv/usr/j/a/g/jagr/629.jpg

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テセウスのパラドックス 物質的構成 = 循環する 物質によらず不変なもの 構造

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テセウスのパラドックス 物質的構成 = 循環する 物質によらず不変なもの 構造 情報

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だから、こう言える。 生物は物質的存在であると同時に、 情報的存在でもあるのだ。

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テセウスのパラドックス 物質 情報 情報 物質 生物は、情報的存在であり、同時に物質的な存在である。 物質は情報に存在を与え、情報は物質に構造を与える。

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情報と物質 情報 物質 生物は、情報的存在であり、同時に物質的な存在である。 物質は情報に存在を与え、情報は物質に構造を与える。

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「情報と物質」から「精神と身体」へ 情報 物質 精神・知性 身体

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精神と身体、そして進化 情報 物質 精神・知性 身体 進化

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世界 物質的循環 物質 物理的INPUT 物理的OUTPUT 生理的代謝機能

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世界 情報的循環 情報 INPUT INFORMATION OUTPUT INFORMATION 情報処理=情報代謝 (つまり思考) 物質的存在としての身体がそうであるように、情報的存在として人間は、 情報を摂取し、記憶し(=情報体としての自分を組み換え)、情報をアウトプット・排泄する。

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世界 情報的・物質的循環 物質 物理的OUTPUT 代謝機能 情報 INPUT INFORMATION OUTPUT INFORMATION 情報処理=情報代謝 (つまり思考) 生理的代謝機能 物理的INPUT

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知能 環境 興奮(環世界) 情報(エージェント アーキテクチャ) 事物そのもの (華厳哲学)

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事事無碍(華厳哲学) A K B C D E F G H I J (井筒俊彦全集九巻「事事無碍・理理無碍」、P.47)

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機能環 効果器 受容器(刺激→興奮(記号)) 客体 活動神経網 知覚神経網 前野佳彦訳・ユクスキュル「動物の環境と内的世界」 (みすず書房) 知覚世界 活動世界 知覚微表担体 対象化された機構 活動担体 内的世界 興奮(記号) 興奮 興奮 運動形態 =特定の筋肉を動かす 中枢神経網

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・ 身体 運動の 構成 センサー・ 身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 記憶

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精神と身体、そして進化 情報 物質 精神・知性 身体 人工知能 人工身体 知能は生き物の情報的側面である。

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ユクスキュルの生物学

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問い 生き物の「視る」とカメラの「視る」は どう違うだろうか? http://www.free-picture.net/reptiles/lizards/chameleon-wallpapers.jpg.html 生物の持つ目は、生物の知能と身体と深く結びついている 能動的な眼であり、 カメラは使用者の意思に従う受動的な眼である。

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主体と客体はどう結ばれるか? 客体 (対象) 関係がない http://sozai-free.com/sozai/00992.html

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主体と客体はどう結ばれるか? 客体 (対象) 関係がない

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主体と客体はどう結ばれるか? 関係がある http://illpop.com/png_insecthtm/aquatic_a02.htm

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主体と客体はどう結ばれるか? 客体 (対象) 関係がある

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主体と客体はどう結ばれるか? 客体 (対象) 関係がある 知覚 作用

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環世界のイメージ 環世界=「かたつむりの殻」のように、生物それぞれが持ちつつ、 それが世界であり、それ以外の世界へ逸脱できない世界。

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環境 人工知能とは? 身体 人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる 入力(センサー) 行動(アウトプット) 知能

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環境 人工知能とは? 身体 人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる 入力(センサー) 行動(アウトプット) 知能

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知能の内部世界 環境世界 エフェクター・ 身体 センサー・ 身体

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知能の内部世界 環境世界 エフェクター・ 身体 センサー・ 身体 エージェント・アーキテクチャ =世界と知能を分けて考える。

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思考 環境世界 エフェクター・ 身体 センサー・ 身体 記憶

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環境世界 認識の 形成 記憶 センサー・ 身体 記憶体 情報処理過程 情報 統合 記憶

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 センサー・ 身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 情報 統合 記憶

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・ 身体 運動の 構成 センサー・ 身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 記憶

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知能の世界 環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・ 身体 運動の 構成 センサー・ 身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 エージェント・アーキテクチャ =世界と知能を分けて考える。

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知能の世界 環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・ 身体 運動の 構成 センサー・ 身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 対象・ 現象 情報の流れ(インフォメーション・フロー) 影響を与える 影響を受ける 記憶

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人工知能 人間 仏教と人工知能 • 仏教 = 煩悩から解脱する • 人工知能 = むしろ煩悩を与えたい(執着) 煩悩 煩悩 解脱 執着

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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人工知能の3つのドグマ ① よく考えれば、よい行動ができる ② 世界と自己を分かつ(心、身、世界) ③ 因果律の中にある

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東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩

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荘子「万物斉同」 三.成形と成心 人間はまた「成心(生まれながらの心)」が備わっている。 「成心」については、知愚の別はないのである。 (荘子、中国の思想XII、岸陽子訳、徳間書店、P.54) 「良識はこの世で最も公平に配分されているものである。 ……すなわち,よく判断し,真なるものを偽なるものから分 かつところの能力,これが本来良識または理性と名づけら れるものだが,これはすべての人において生まれつき相 等しい」 (ルネ・デカルト 「方法序説」、落合太郎訳)

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荘子「万物斉同」 三.成形と成心 しかしこの「成心」は、生活の過程において変形され、 是非を分別する知へと変質してゆく。こうして「成心」を 失った人間は勢いの赴くところ、「今日越に出発して昨日 到着した」というごとき、あり得ぬ命題を生み出すにい たった。 (荘子、中国の思想XII、岸陽子訳、徳間書店、P.54)

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荘子「万物斉同」 四.「明」による ことばがうろから鳴り出す響きではない。ことばには意味 が含まれる。とはいえ、その意味が不確定のものだとすれば、 ことばは成立するはずがない。そうなれば、ことばはヒヨコの 囀りとは異なるとはいってみたところで、事実上、両者の差異 はないことになる。 そもそも「道」に真偽の別が生じ、ことばに是非の別が生じ たのは、なぜであろうか。もともと「道」は万物に偏在するもの であり、ことばも「道」と形影相伴う関係にあるのだが、人間の さかしらが道を見失わせ、虚飾がことばの意味を覆ってし まったのだ。 …このように人間は、たがいに異説を立てあって、論争に明 け暮れている。この是非の争いの悪循環を断ち切るには、 「明」によるほかないであろう。 (荘子、中国の思想XII、岸陽子訳、徳間書店、P.54)

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• 分別(=賢しい知)を批判 では、何があるのか? 荘子 道(=万物を支配する根本原理) 明(=知の限界を超えた真知)

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荘子「応帝王」 「どうだろう、人間にはみな眼耳口鼻など合わせて 七つの穴があり、それで見たり、聞いたり、食った り、息をしたりするのだが、渾沌にはそれがない。 ひとつ、顔に穴をあけてさしあげては」 話がきまると、二人は一日にひとつずつ穴をあけ ていった。そして七日目、渾沌は死んだ。 (荘子、中国の思想XII、岸陽子訳、徳間書店、P.190) 小知によって偉大なる自然の知を殺した話 小知 < 道=自然の摂理

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環境世界 エフェクター・ 身体 センサー・ 身体 道に従え 道=世界を貫く原理=人間はそれによって 世界と一体となることでより良く生きる

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荘子「万物斉同」 五.「道枢」の境地 すべての存在は、「あれ」と「これ」に区分される。しかし ながら、あれの側からいえば、これは「あれ」であり、あれ は「これ」である。つまり「あれ」なる概念は「これ」なる概 念との対比においてはじめて成立し「これ」なる概念は 「あれ」なる概念との対比においてはじめて成立するとい うのが、彼我相対の説である。…たとえば生と死、可と不 可、是と非の関係もまた然り、すべて事物は相互に依存 しあうと同時に、相互に排斥しあう関係にある。 (荘子、中国の思想XII、岸陽子訳、徳間書店、P.54)

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荘子「万物斉同」 五.「道枢」の境地 だからこそ、聖人は、あれかこれかと選択する立場をと らず、生成変化する自然をそのまま受容しようとする… このように、自他の区別を失うことにより個別存在でな くなること、それが「道枢」である。「道」を体得した者は、 扉が枢を中心として無限に延転するように、無窮に変化 しつつ無窮の変化に対応してゆくことができるのだ。「道 枢」の境地においてこそ、是と非の対立は超克される。 「明」によるとは、このことである。 (荘子、中国の思想XII、岸陽子訳、徳間書店、P.57)

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アリストテレス「範疇論」 • アリストテレスは、述語(AはBであるというときのBにあたる)の 種類を、範疇として下記のように区分する。 • すなわち「実体」「性質」「量」「関係」「能動」「受動」「場所」「時 間」「姿勢」「所有」(『カテゴリー論』第4章)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82 %B9%E3%83%88%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B9

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荘子とアリストテレス • 世界を分けることで理解することで、理性を進めるのが、西洋 のアリストテレス以来の伝統である(範疇論) • 人工知能もまた、その路線に従って、世界を分かち、論理に 従って思考する存在として構築された(第三回「デカルトと機 械論」) • ニューラルネット、ディープラーニングもまた分別することがで きる。人はそこに理性を見る。 • では、荘子は何を言っているのか?

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荘子「道枢は対立を超える」 アリストテレス 「範疇論」 (カテゴリー) ヘーゲル 「弁証法」 (対立) 荘子 「道枢」 (道)

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ニューラルネット=分別器 0 0 0 【逆伝播法】 ここが1になるように、 結合の強さを、 さかのぼって変えて行く。

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インターネットによる 膨大なデータ 4 第三次AIブーム(2010年代) 時間 規模 1960 1990 2000 第一次AIブーム 第二次AIブーム 第三次AIブーム 1970 1980 2010 ルールベース 逆伝播法 データベース ディープ ラーニング 推論ベース ニューラル ネット誕生 小型・中型 コンピュータの普及 大型コンピュータ 専門家のみのブーム

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論

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人間の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ) 意識の境界面 (表象) 知覚の境界面 知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識) 世界と自分は一体だと思っている 世界と自分は違うと思っている

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二つの知能論 •西洋の知能論 = 機能論 •エージェントアーキテクチャ/ •環世界 •東洋の知能論 = 存在論 驚くほど存在について議論しない 驚くほど機能について議論しない

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・身体 運動の 構成 センサー・身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 エージェント・アーキテクチャ 記憶

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No content

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A M B C 表層意識 言語アラヤ識 M領域 (イマージュ) 無意識 意識のゼロポイント 象徴化作用 意識化 深層 意識 領域 意識と本質、岩波文庫、井筒俊彦、P.214

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意識と本質 我々が「・・・・・・の意識」(=表層意識)によって対象的に認識し関 わり合う無数の事物からなる経験的世界が、存在の有「本質的分 節の所産であることは、既に繰り返し述べたところ。事物と我々の 日常的出合いに関する限り、この存在分節は、たしかに表層意識 領域内での事態でしかない。だが、存在分節の根は深い。それは、 表層意識の働きに尽きるものではないし、また表層意識で始めて 起こることでもない。存在分節は、実は、意識のもっとずっと深いと ころで生起するのだ。我々が表層意識の面で見る事物の分節は、 深層で第一次的分節の結果、あるいはそれの第二次的展開に過 ぎない。 (意識と本質、岩波文庫井筒俊彦、P.229)

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存在の混沌 生態による分節化 言語による分節化 世界

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存在の混沌 生態による分節化 言語による分節化 世界 創造のプロセス =存在の意味分節

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存在の混沌 生態による分節化 =環世界による分節化 言語による分節化 世界 創造のプロセス =存在の意味分節

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存在の混沌 生態による分節化 言語による分節化 世界 創造のプロセス =存在の意味分節 文化世界 環世界 (対世界)

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人間の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ) 意識の境界面 (表象) 知覚の境界面 知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識) 世界と自分は一体だと思っている 世界と自分は違うと思っている

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唯識論 世界は識から成り立つとする理論。 眼識 耳識 鼻識 舌識 身識 意識 阿頼耶識 (一切種子識) 末那識 感覚 (五識) 思考 自我執着心 根本心 表層心 深層心 言葉なしで対象を直接 に把握する。それぞれ 固有の対象を持つ。 五識と共に働いて感覚を 鮮明にする。五識の後に 言葉を用いて対象を概念的 に把握する 常に阿頼耶識を対象として 「我」と執する。 眼識ないし末那識を生じる。 身体を生じて生理的に維持している。 自然をつくり出し、それを維持し続けている。 一切を生じる種子を有する。 (横山紘一 「唯識の思想」、講談社学術文庫、P.60 )

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唯識論 世界は識から成り立つとする理論。 眼識 耳識 鼻識 舌識 身識 意識 阿頼耶識 (一切種子識) 末那識 感覚 (五識) 思考 自我執着心 根本心 表層心 深層心 言葉なしで対象を直接 に把握する。それぞれ 固有の対象を持つ。 五識と共に働いて感覚を 鮮明にする。五識の後に 言葉を用いて対象を概念的 に把握する 常に阿頼耶識を対象として 「我」と執する。 眼識ないし末那識を生じる。 身体を生じて生理的に維持している。 自然をつくり出し、それを維持し続けている。 一切を生じる種子を有する。 (横山紘一 「唯識の思想」、講談社学術文庫、P.60 ) 阿頼耶識から生まれた ものが、人間にさまざま なものを見せる。 =煩悩

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唯識論 世界は識から成り立つとする理論。 眼識 耳識 鼻識 舌識 身識 意識 阿頼耶識 (一切種子識) 末那識 感覚 (五識) 思考 自我執着心 根本心 表層心 深層心 言葉なしで対象を直接 に把握する。それぞれ 固有の対象を持つ。 五識と共に働いて感覚を 鮮明にする。五識の後に 言葉を用いて対象を概念的 に把握する 常に阿頼耶識を対象として 「我」と執する。 眼識ないし末那識を生じる。 身体を生じて生理的に維持している。 自然をつくり出し、それを維持し続けている。 一切を生じる種子を有する。 (横山紘一 「唯識の思想」、講談社学術文庫、P.60 ) この阿頼耶識から認識が立ち上がるプロセスを実装 できないか? それは現象学の志向性に通じる。

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イブン・アラビーの存在論(イスラーム哲学) イスラーム哲学の原像、岩波新書、井筒俊彦、P.119

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言葉のない世界 イブン・アラビーの存在論(アラビア哲学) イスラーム哲学の原像、岩波新書、井筒俊彦、P.119 アーラム・アム・ミサール (根源的イマージュの世界) 存在的多者の領域 対象からなる世界 (=言葉で分節化された世界)

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存在的多者の 領域 アーラム・ アム・ミ サール 上昇過程 =自己の存在を 奥深く還元する 下降過程 =奥底の何かが 自己を世界において 顕現しようとする イブン・アラビーの存在論(イスラーム哲学) イスラーム哲学の原像、岩波新書、井筒俊彦、P.119

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存在的多者の 領域 アーラム・ アム・ミ サール 上昇過程 下降過程 上昇過程・下降過程 仏教: 向上・向下 (不覚 → 覚 → 不覚) 仏教: 向上門・却来門 仏教: 掃蕩門・建立門 浄土真宗: 住相・環相 スーフィズム: 上昇・下降 イブン・アラビーの存在論(イスラーム哲学) イスラーム哲学の原像、岩波新書、井筒俊彦、P.119

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イブン・アラビーの存在論(イスラーム哲学) 存在的多者の 領域 アーラム・ アム・ミ サール 上昇過程 下降過程 存在のゼロポイント =道(老子) =絶対的一者(アハド)(イブン・アラビー) =空=無 =光の光 =存在の零度(ロラン・バルト) =絶対の無=絶対の有 =真空が妙有に切り替わるとおころ =無極即太極(宋代の易学、周廉渓) イスラーム哲学の原像、岩波新書、井筒俊彦、P.119

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自己顕現の流れ 共創する場 人工知能モデル トップダウンの流れ ボトムアップの流れ 自分自身を形成 する流れ 自分自身を形成 する流れ 種子 自分 行為 自分自身を形成する (認識もその一部。 自分自身としての認識) 行為を形成する (自分自身を 世界へ投げ出す) 時間の作用に対して ホメオタシス的衝動 アポトーシス的衝動 行動とは恒常性の破壊 形成とは変化の破壊

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・身体 運動の 構成 センサー・身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 受け渡し 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す

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人間の二つの自己本性 • 時間を超えて不変的もの・恒久的なものでありたいと願う 自己 (=恒常性自己・ホメオスタシス) • 常に世界と共に一つの流れでありたいと願い自己 (=投与的自己・アポトーシス)

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・身体 運動の 構成 センサー・身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 受け渡し 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 自分の中心へ向かって 自分自身取り戻す力 自分自身の投与によって 世界に流れを作る力

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・身体 運動の 構成 センサー・身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 受け渡し 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 自分の中心へ向かって 自分自身取り戻す力 =マインドフルネス 自分自身の投与によって 世界に流れを作る力

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知能という場には二つの自己がある 世界と共に一つの流れでありたいと思う自己 世界から離れて独立不変の自己でありたいと 思う自己

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三界虚妄、但是一心作(華厳哲学) • 「華厳経」の、あの有名な「唯心かつ」に「三界虚妄、但是一心作」(存在世界は、隅 から隅まで虚像であって、すべては一つの心の作り出したもの)と言われ、法蔵は 「一切法皆唯心現、無別自体」(すべてのものは、いずれも、ただ心の現われであっ て、心から離れた客観的なもの自体というものは実在しない)と『華厳旨帰』の一節 に言っておりますが、これらの言葉は、これを同趣旨の無数の他の言表と同じく、い ずれも要するに、唯識派の根本テーゼである「万物唯識」の展開にすぎません。 (井筒俊彦全集九巻「事事無碍・理理無碍」、P.28)

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理事無碍(華厳哲学) • 「妙有」的側面が脚光を浴びて前に現れ、「真空的」側面が背 後の闇に隠れる場合、当然のことながら、「空」は、思想的に、 強力な存在肯定的原理として機能しはじめます。「空」が、本 来的には、否定そのものであり、存在否定的プロセスであっ たことを、あたかもわすれてしまったように。…. そのような形 で、否定から肯定に向きを変え、「有」的原理に変換した「空」 を、華厳哲学は「理」と呼びます。「理」は「事」と対をなして、 華厳的存在論の中枢をなす重要な概念です。 (井筒俊彦全集九巻「事事無碍・理理無碍」、P.35) 空 存在を否定 (真空的) 存在を肯定 (妙有的)

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理事無碍 (華厳哲学) • これに反して、仏、すなわち一度、存在解体を体験し、「空」を識っ た人は、一切の現象的差別のかげに無差別を見る。二重の「見」を 行使する「複眼の士」は。、「事」を見ていながら、それを透き通して、 そのまま「理」を見ている。というよりも、むしろ、「空」的な主体に とっては、同じものが「事」であって「理」である、「理」でありながら 「事」である、と言ったほうがいいでしょう。「事」がいかに千差万別 であろうとも、それらの存在分節の裏側には、「虚空のごとく一切処 に遍在する」無分節がある。文節と無分節とは同時現成。この存在 論的事態を「理事無碍」(「事理無碍」)というのであります。 (井筒俊彦全集九巻「事事無碍・理理無碍」、P.41)

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事事無碍(華厳哲学) • ただ一つのものの存在にも、全宇宙が参与する。存在世界は、こ のように一瞬一瞬に新しく現成していく。「一一微塵中、見一切法 界」(空中に舞うひとつ一つの極微の塵のなかに、存在世界の全体 を見る)と『華厳経』に言われています。あらゆるものの生命が互い に融通しつつ脈動する壮麗な、あの華厳的世界像が、ここに拓け るのです。路傍に一輪の花開く時、天下は春爛漫。「華開世界起の 時節、すなわち春到なり」(『正法眼蔵』「梅華」)という道元の言葉 が憶い出されます。 • ある一物の現起は、すなわち、一切万法の現起。ある特定のもの が、それだけで個的に現起するということは、絶対にあり得ない。 常にすべてのものが、同時に、全体的に現起するのです。事物の このような存在実相を、華厳哲学では「縁起」といいます。「縁起」は 「性起」とならんで華厳哲学の中枢概念です。 (井筒俊彦全集九巻「事事無碍・理理無碍」、P.47)

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華厳哲学 • 物も、事も、私も、私自身が成り立たせているのだ。

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意識の持続性 現在の思考 常に意識にのっとって 「現実になろう」とする意識の流れたち 意 識 意 識 下 コンテクスト

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知能 時 あらゆる瞬間(一定の周期ごと)に自分自身が作られる いろいろな刺激が世界から入って来る

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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時間と知能

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道元「有時(うじ)」 • これを要約していえば、あらゆる世界のあらゆる 存在は、連続する時々である。だが、それはまた ある時であるから、またわがある時である。 • 事のありようの活ぱつぱつ地としてあるのが、つ まりある時なのである。それを有だと無だと騒ぎ 立てることはいらぬことである。 (道元「正方眼蔵(一)」、増谷文雄訳、「有時」、P.261.262)

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コンテキスト (=文脈、流れ) • 我々がコンテキスト呼ぶもの。 • 一つの意味、一つの方向をもって積み重さなるもの。 • それが時間。

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コンテキスト (=文脈、流れ) 我々の深層では さまざまな文脈が競合している

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一つの時=全存在 一つの時 一つの時 一つの時 一つの時 有時 有時=一つの時は全存在であり、時の連なりは、 それぞれの時=全存在が衝突することなく連なること。

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道元「有時(うじ)」 • とするなれば、松も時であり、竹も時である。時は飛び去ると のみ心得てはならない。飛び去るのが時の性質とのみ学んで はならない。もし時は飛び去るものとのみすれば、そこに隙間 が出て来くるであろう。「ある時」ということばの道理にまため ぐり遇えないのは、時はただ過ぎゆくものとのみ学んでいるか らである。 (道元「正方眼蔵(一)」、増谷文雄訳、「有時」、P.258)

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道元「有時(うじ)」 • そのような道理であるから、大地のいたるところに、さまざまな 現象があり、いろいろな草木があるが、その現象や草木の一 つ一つがそれぞれ全世界をもっていることが学ばねばならな い。 • だが、どこまでいっても、そのような時ばかりであるのだから、 ある時はまたすべての時である。ある草木も、ある現象も、み な時である。そして、それぞれの時に、すべての存在、すべて の世界がこめられているのである。 (道元「正方眼蔵(一)」、増谷文雄訳、「有時」、P.255)

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道元「有時(うじ)」 • いったい、この世界は、自己をおしひろげて全世界となすので ある。その全世界の人々物々をかりに時々であると考えてみ るがよい。すると物と物とが相さまたげることがないように、時 と時とが相ぶつかることもない。 • 自己をおし並べて自己がそれを見るのであるから、自己もま た時だというのが、このような道理をいうのである。 (道元「正方眼蔵(一)」、増谷文雄訳、「有時」、P.254)

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人は、知能は、自分の人生という 物語を過去から作り出している =物語り作者 =物語を作り変える (過去を変える)

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意識を作る=自身を語る St=k-1 St=k St=k+1 ロゴス t=k-2 ロゴス t=k-1 ロゴス t=k 差延によって作り出された差異は もう一度、統合される。 しかし、新しい差延が生まれる 語る 語る

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意識を作る=自身を語る St=k-1 St=k St=k+1 ロゴス t=k-2 ロゴス t=k-1 ロゴス t=k 知能は差延、差異、統合、反復の システムである。

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意識を作る=自身を語る St=k-1 St=k St=k+1 ロゴス t=k-2 ロゴス t=k-1 ロゴス t=k 知能は差延、差異、統合、反復の システムである。 逸脱(差異化,差延) 統合(引き戻し) 語る 語る

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差延された過去が積み重なる 時間 我々は過去の反響の積み重なりの中で生きている。 t=k-1 t=k t=k+1 t=k+2

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私ごと内側から作り出す 知能 今の意識 過去の意識 さらに過去の意識 時 消えて行く

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意識とは常に次の意識に溶け合わされる。 まるで波が次から来る波に融け続けるように。 Peter Gorges https://www.flickr.com/photos/petergorges/2940133463/

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私は次に来る私に食われ続ける =意識の本質(意識の持続性) =時間 知能 消えて行く

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道元「有時(うじ)」 • とするなれば、松も時であり、竹も時である。時は飛び去ると のみ心得てはならない。飛び去るのが時の性質とのみ学んでは ならない。もし時は飛び去るものとのみすれば、そこに隙間が 出て来くるであろう。「ある時」ということばの道理にまため ぐり遇えないのは、時はただ過ぎゆくものとのみ学んでいるか らである。 (道元「正方眼蔵(一)」、増谷文雄訳、「有時」、P.258)

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・身体 運動の 構成 センサー・身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 自分を時間と世界 に投げ出す 考えるというよりは、 自分自身が世界と一緒に 作られる

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意識を作る=自身を語る St=k-1 St=k St=k+1 ロゴス t=k-2 ロゴス t=k-1 ロゴス t=k 意識を作る=自らを「語る、表 現する、表明する、表現する」 ことが必要である 亀裂 亀裂 亀裂 語る 語る

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St=k-1 St=k St=k+1 ロゴス t=k-2 ロゴス t=k-1 ロゴス t=k 逸脱(差異化,差延) 統合(引き戻し) 語る 語る 差延によって作り出された差異はもう一度、統合される。 しかし、新しい差延が生まれる。 知能は差延、差異、統合、反復のシステムである。

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差延された過去が積み重なる 時間 我々は過去の反響の積み重なりの中で生きている。 t=k-1 t=k t=k+1 t=k+2

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二つのアーキテクチャの試み (2)生成・融合・減衰型のアーキテクチャ 知能 + + + 現在の瞬間のAI

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水の波紋のように意識が作られる 著作者 acworks タイトル 波紋が浮かぶ水面 http://01.gatag.net/0013916-free-photo/

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知能 時 自我 自我 自我 「私」ごと内側から作り出す

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知能 時 自我 自我 自我 「私」ごと内側から作り出す

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私ごと内側から作り出す 知能 「世界と身体」の刺激と情報から現在の自分自身を作り上げる 今の意識

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私ごと内側から作り出す 知能 今の意識 過去の意識

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私ごと内側から作り出す 知能 今の意識 過去の意識 さらに過去の意識 時

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私ごと内側から作り出す 知能 今の意識 過去の意識 さらに過去の意識 時 消えて行く

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世界ごと「私」を創り出す=それが知能 知能 時 消えて行く

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意識とは常に次の意識に溶け合わさ れる。 まるで波が次から来る波に融け続け るように。 Peter Gorges https://www.flickr.com/photos/petergorges/2940133463/

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私は次に来る私に食われ続ける =意識の本質(意識の持続性) =時間 知能 消えて行く

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メタAI キャラクター AI ゲーム状況を認識 作り得るゲームの流れを見出す ゲームの流れを実現するために キャラクターを巻き込む ゲームの流れに準じつつ行動する

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人工知能モデル 存在を失う =情報体の方向 存在を得る(受肉) =世界への 埋め込みのベクトル トップダウンの流れ ボトムアップの流れ 物質から精神へ 精神から物質へ この二つのベクトルを人工知能の中に取り込む 自分自身を形成 する流れ 自分自身を形成 する流れ 共創する場

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自己顕現の流れ 共創する場 トップダウンの流れ ボトムアップの流れ 自分自身を形成 する流れ 自分自身を形成 する流れ 自分 行為 自分自身を形成する (認識もその一部。 自分自身としての認識) 行為を形成する (自分自身を 世界へ投げ出す) 時間の作用に対して ホメオタシス的衝動 アポトーシス的衝動 行動とは恒常性の破壊 形成とは変化の破壊

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知能 この力が時 自分自身 (共創の場) 無限の世界 無限の世界 身体=存在 身体を起点として自分が生成して行く。 志向性の矢 世界からの流れと自分自身の内側 からの流れで作り出した世界 = 現実 現実 現実 こちらから見たときの断面

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ゼ ロ 無限世界 志向性の矢

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ゼ ロ 無限世界 志向性の矢 知能

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環境世界 認識の 形成 記憶 意思の 決定 身体 制御 エフェクター・身体 運動の 構成 センサー・身体 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 意思決定 モジュール 記憶体 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 情報 統合 運動 統合 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 受け渡し 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 「構成的自己=知能」 の形成(創造)

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環境世界 意思の 決定 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 「構成的自己=知能」 の形成(創造)

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環境世界 意思の 決定 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 自分の中心 常にポップ(浮かび上がっては消える)する自己

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環境世界 意思の 決定 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 自分として世界がある 世界として自分がある

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環境世界 意思の 決定 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 自分として世界がある 世界として自分がある 断絶

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環境世界 意思の 決定 情報処理過程 運動創出過程 身体部分 「存在的自己・認識・記憶」 の形成(創造) 一なる全 (すべての源泉) 超時間的 自分を時間と世界 に投げ出す 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 自分として世界がある 世界として自分がある 断絶 理

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世界としての自分、という境地。 自分としての世界、という境地。 その間に「理」がある。

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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人工知能、世界、縁起

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二つのアーキテクチャの試み 知能 知覚される現実 言語的現実・推論的現実 (虚構) 思考(推論)によっても、現実を作り出してしまう。

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知能 この力が時 現実

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世界 世界 世界 世界 世界 知能 世界からの流れ、そして、内側からの創造の流れが、 人間の「現実」を作り出す。 それは自分の身体と運動が組み込まれた世界。

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知能 この力が時 現実 自分自身 世界からの流れと 自分自身の内側からの流れ で作り出した世界 = 現実 衝突 =苦しみ 無限の世界 無限の世界

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情報処理装置から、 混沌的実体として縁起の中にいる人工知能へ 単なる情報処理装置ではなく 混沌的実体として世界との 縁起の中にいる人工知能

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混沌としての知能 設計としては、身体とか心か分けずに、 世界や内面と関係のある要素を生成し、消滅させることで、 人工知性を作って行く。

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第五章 人工知能、体験、部分からの総合

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混沌としての知能 設計としては、身体とか心か分けずに、 世界や内面と関係のある要素を生成し、消滅させることで、 人工知性を作って行く。

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問題は体験から来る • 人工知能は世界を、自分を体験していない • 人工知能は世界から情報を抜き取っているだけ 体験 問題 人間=体験から問題を創造(ジェネレート)する

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問題は体験から来る • 人工知能は世界を、自分を体験していない • 人工知能は世界から情報を抜き取っているだけ 問題 人工知能=問題が定義する情報を世界から集める

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人工知能と体験 人工知能は体験を得ることができるだろうか? 人工知能は体験から学ぶことができるだろうか? 人工知能は自分自身の体験を持つことができるだろう か? 人工知能は自分の体験から自分を作ることができるだ ろうか?

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問題は体験から来る • 人工知能は世界を、自分を体験していない • 人工知能は世界から情報を抜き取っているだけ 体験 問題 人間=体験から問題を創造(ジェネレート)する

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問題は体験から来る • 人工知能は世界を、自分を体験していない • 人工知能は世界から情報を抜き取っているだけ 体験 問題 体験で解き得なかったものを問題とする

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問題は体験から来る • 人工知能は世界を、自分を体験していない • 人工知能は世界から情報を抜き取っているだけ 体験 問題 体験で解き得なかったものを問題とする 禅はこちら を解決する

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西洋型哲学 問題 問題を直線的に説いていく アリストテレスの演繹学 原因と結果

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東洋型哲学 体験 体験 体験 体験 体験 伝えられない =中心はない =縁起 =それぞれ自分の体験を積み重ねて、まとめるしかない。 体験 体験によって問題を解く = 禅 = 縁起の構造でもある = 何が原因と結果ではなく

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西洋のわかった=東洋のわかったような 東洋のわかった=個人的な理解 体験 体験 体験 体験 体験 体験 問題 体験からの一般化は禅では 否定される

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西洋のわかった=東洋のわかったような 東洋のわかった=個人的な理解 体験 体験 体験 体験 体験 体験 問題 東洋=体験を貫くほとばしり(神髄)=悟り 禅的 / 経験とメタファー 西洋=思考を貫くほとばしり(神髄)=理解 デカルト的 / 情報と推論

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理 華厳哲学とアリストテレス哲学 理 華厳(けごん)哲学 アリストテレス 原因 結果

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混沌としての知能 悟り より大きな 悟り

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華厳の縁起 混沌としての知能 設計としては、身体とか心か分けずに、 世界や内面と関係のある要素を生成し、消滅させることで、 人工知性を作って行く。

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環境 知能 知能のコア 環境から要請 される知能 環境 たくさんの自己がある たくさんと環境と関わっている知能・身体 それらがそれぞれの世界を持っている 部分 知能

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対世界 効果器 受容器(刺激→興奮(記号)) 客体 活動神経網 知覚神経網 前野佳彦訳・ユクスキュル「動物の環境と内的世界」 (みすず書房) 知覚世界 活動世界 知覚微表担体 対象化された機構 活動担体 内的世界 興奮(記号) 興奮 興奮 運動形態 =特定の筋肉を動かす 中枢神経網 対世界

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持続的意識 インフォメーション・フローから 一瞬一瞬生起される構成的自己 「構成的自己=知能」 の形成(創造) 人工知能 環境世界 環境 時間 意識=無意識の境界 線 無意識=身体の境界 線

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二つのアーキテクチャの試み (1)無意識インタレース型アーキテクチャ(競合 型) 現在の思考 常にあらゆる想定される事態について 分散して思考している=いつでも主導権を 握ろうとしている。 意 識 意 識 下

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差延された過去が積み重なる 時間 我々は過去の反響の積み重なりの中で生きている。 t=k-1 t=k t=k+1 t=k+2

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差延された過去が積み重なる 時間 我々は過去の反響の積み重なりの中で生きている。 t=k-1 t=k t=k+1 t=k+2

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身体 頭脳 身体 イマージュ 求心性情報 (身体→脳) 遠心性情報 (脳→身体) …予測された身体状態 実際の身体状態 差を見る 予測と実測が違う =注意を喚起 (例)足を踏み外す 着くと思った足がつかなかった =注意

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環境 知能 知能のコア 環境から要請 される知能 環境 体験から悟る 部分 知能 体験 体験 体験 体験 体験

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物質世界 一なる全 知能の 極 自意識 より高度な知能 環世界的知能 存在のゼロポイント 知能の極点 機能的 知能モデル 精神的 存在論的 知能モデル 環世界

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人間の精神 意識 前意識 無意識 外部からの 情報 言語・非言語境界面 (シニフィアン/シニフィエ) 意識の境界面 (表象) 知覚の境界面 知能と身体の境界面 (仏教で言う:阿頼耶識) 世界と自分は一体だと思っている 世界と自分は違うと思っている

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物質世界 一なる全 知能の 極 自意識 より高度な知能 環世界的知能 存在のゼロポイント 知能の極点 機能的 知能モデル 精神的 存在論的 知能モデル 環世界 世界の側に真理が含まれると思う =東洋 思惟の世界に真理があると思う =西洋

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物質世界 一なる全 知能の 極 自意識 より高度な知能 環世界的知能 存在のゼロポイント 知能の極点 機能的 知能モデル 精神的 存在論的 知能モデル 環世界 世界の側に真理が含まれると思う =東洋 思惟の世界に真理があると思う =西洋 自分の中心 常にポップ(浮かび上がっては消える)する自己 世界

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自分の中心 常にポップ(浮かび上がっては消える)する自己 世界

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物質世界 一なる全 知能の 極 自意識 より高度な知能 環世界的知能 存在のゼロポイント 知能の極点 機能的 知能モデル 精神的 存在論的 知能モデル 環世界 世界の側に真理が含まれると思う =東洋 思惟の世界に真理があると思う =西洋 世界として自分がある 自分として世界がある

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物質世界 一なる全 知能の 極 自意識 より高度な知能 環世界的知能 存在のゼロポイント 知能の極点 機能的 知能モデル 精神的 存在論的 知能モデル 環世界 世界の側に真理が含まれると思う =東洋 思惟の世界に真理があると思う =西洋 自分として世界がある 世界として自分がある

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自分として世界がある 世界として自分がある マインドフルネス フロー状態 =世界と一体となった流れ

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マインドフルネスは、 世界と一つの流れになった自己から、 自己としての世界を取り戻し、 再び、世界と一つの流れになる 運動を取り戻す

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世界と共創する流れ • インフォメーションフローではなく、世界からの事物の流れ。 世界の各部分からの関係を受けて総合的に流れる神髄 • 人工知能だけではフレームは破ることができないかもしれない が、世界の一部として、知能を明け渡すことで、世界の発展と 共創して、知能を高めて行くことができるのではないか?

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環境 知能 知能のコア 環境から要請 される知能 環境 体験から悟る 部分 知能 体験 体験 体験 体験 体験

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目次 1. はじめに 2. 人工知能とは 3. キャラクターAI:意思決定 4. 西洋哲学と人工知能 5. 東洋哲学と人工知能、混沌、煩悩 6. 東洋哲学と人工知能、分節化、唯識論 7. 時間と知能 8. 人工知能、世界、縁起 9. 人工知能、知能、世界

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人工知能、知能、世界

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人工知能 人間 仏教と人工知能 • 仏教 = 煩悩から解脱する • 人工知能 = むしろ煩悩を与えたい(執着) 煩悩 煩悩 解脱 執着

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存在的多者の 領域 アーラム・ アム・ミ サール 上昇過程 =自己の存在を 奥深く還元する 下降過程 =奥底の何かが 自己を世界において 顕現しようとする イブン・アラビーの存在論(イスラーム哲学) イスラーム哲学の原像、岩波新書、井筒俊彦、P.119

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二つのアーキテクチャの試み (2)生成・融合・減衰型のアーキテクチャ 知能 + + + 現在の瞬間のAI

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知能 この力が時 現実 自分自身 世界からの流れと 自分自身の内側からの流れ で作り出した世界 = 現実 衝突 =苦しみ 無限の世界 無限の世界

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混沌としての知能 悟り より大きな 悟り

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環境 知能 知能のコア 環境から要請 される知能 環境 体験から悟る 部分 知能 体験 体験 体験 体験 体験

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世界(混沌) 小世界 (小混沌) 時間的多重な 自己 物質として構成されようとするが、 時間的に多重な存在であり、 未来へ向かって発展しようとする

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世界(混沌) 小世界 (小混沌) もう一度、世界全体になろうとする 世界の収縮、世界への解放の中に 知能はある。 時間的多重な 自己