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「⾏動経済学が  最強の学問である」 の学び

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プロローグ ⾏動経済学 ‧「なぜ⼈はそう⾏動するのか?」を直感や主観的判断ではなく、  「サイエンス = 実験で証明された⼈間のセオリー」として理論化した学問 ‧ビジネスの中⼼は「⼈間の⾏動を変えること」  => 何千万、何億もの⼈々を動かすことが⾏動経済学では可能  => 「⾏動経済学が最強の学問である」ゆえん

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‧「⾏動経済学の本質」とは何か?  => 「⼈間の『⾮合理な意思決定のメカニズム』を解明する学問」  ⼈間は「⾮合理な⾏動」ばかりしてしまう⽣き物  合理的な⼈間がなぜ「⾮合理な⾏動」をしてしまうのか?を理解する学問  「経済学」+「⼼理学」=「⾏動経済学」    経済学   ‧経済活動における「⼈間の⾏動」を解明する学問   ‧⼈間は常に「合理的に⾏動する」という前提の上での学問である   ‧⼈間を「理想的」に捉えており、「正しい⾏動をするべきだし、するだろ    う」と考えている 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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クイズ💡 【さて、あなたはAの瓶とBの瓶のどちらのガラス瓶から引きますか?】 ジェリービーンズが⼊ったガラス瓶が2つあります。 それぞれ⽩⾊のジェリービーンズと⾚⾊のジェリービーンズが⼊っていて、Aの瓶には合 計100粒、うち91が⽩で9粒が⾚。 Bの瓶には合計10粒、うち9粒が⽩で1粒が⾚のジェリービーンズが⼊っています。 ⽬隠しをしながら⼀⼈⼀粒ずつジェリービーンズを引き、“先に⾚⾊のジェリービーンズ を引いたら、お⾦がもらえる”というゲームです。 ガラス瓶AとBのどちらを引いてもかまいません。 あなたが⼀番最初に引くことになりました。 さて…→あなたはAを選んだ?それともB? 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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Aのガラス瓶…⾚の割合は100分の9だから9% Bのガラス瓶…⾚の割合は10分の1だから10% ということで、Bを選んだ⽅が⾼確率であり、合理的といえる。 にもかかわらず、6割以上の⼈がAを選んでしまうという実験結果が出ている。 それは⼈間が“確率”よりも、⾚⾊のジェリービーンズの“数”そのものに⽬が⾏ってしま い、合理的確率を基準に選ばないため“⾚のジェリービーンズが多くある⽅が⾚を引ける 感じがする”と、9粒あるAを選んでしまうという。 冷静に考えると分かることなのに、つい判断を誤る。 これが実際の⼈間というものだという。 このように⼈間とは“⾮合理な⾏動”であり“意思決定”をしてしまう⽣き物。 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い ■ ⾏動経済学を活⽤した例 ① ‧オバマ⼤統領の再選  ‧⺠主党の浮動票を獲得するための戦略  ‧以下の3つの質問を浮動票対象者に質問するだけ   ‧選挙の⽇、何時に投票しますか?   ‧その⽇はどこから投票所に⾏きますか?   ‧直前にはどんな予定がありますか?   => 対象者の頭の中に「当⽇の投票に⾏くまでの過程」を描かせ、「なんとなく⾏か ない原因」を取り除くことに成功

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■ ⾏動経済学を活⽤した例 ② ‧ネットフリックスで「第2話」が⾃動再⽣されるワケ 経済学  「⼈は情報も選択肢も多ければ多いほどいい」 ⾏動経済学「情報や選択肢が多すぎると、⼈は最適な意思決定ができないばかりか、意     思決定⾃体ができなくなる」(情報オーバーロード) レコメンド機能: 何百万ものコンテンツを⽤意した上でユーザーが実際に⽬にする選択 肢については適量に絞って最適化している ⾃動再⽣: ⼈間は今この瞬間に重点を置き、今の状態を維持したいと思うので、「辞め る」意思決定ができず、ダラダラと⾒続けてしまう(現状維持バイアス) 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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■ ⾏動経済学を活⽤した例 ③ ‧ポイント制度(スタバの例)  ‧ポイント数によってステータスや特典を付与し、   ユーザに優越感をもたらす(ポジ  ティブアフェクト)  ‧「期間限定ボーナス」「◯◯ステータスまであと××ポイント」   (⽬標勾配効果、ゲーミフィケーション)  ‧ステータスバーの25ポイントと50ポイント、200ポイントと   400ポイントの⽬盛の間隔が同じ間隔というトリック。   ユーザは、バーが半分まできたので最後まで集めようと判断して   しまう 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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■ ⾏動経済学を学ぶ理由 ‧消費者側として「企業の戦略」に乗せられないように賢くなる ‧企業側として、顧客にサービスや商品をより多く楽しんでいた だくための戦略家になれる 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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■ 「⾮合理な意思決定」を決める3つの要因  ① 認知のクセ  ② 状況  ③ 感情 序章:本書といわゆる「⾏動経済学⼊⾨」の違い

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■ 「認知のクセ」=「脳の情報処理の仕⽅」 「脳の情報処理の仕⽅」そのものに「歪み」が存在する 代表的な理論「システム1 vs システム2」 ‧システム1: 直感、システム2: 論理 ‧⼈間が脳で情報処理をする際にはこの2つを場⾯場⾯で使い分けている ‧システム1  ‧素早く情報を把握、判断する。熟考するのではなく、直感や感情などを基にヒューリス   ティック(認知の近道)を使う ‧システム2  ‧脳は集中してじっくり情報を捉え、過去の経験などを照らし合わせ、情報を分析した上   で把握、判断する。 第1章:認知のクセ

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■ チョコレートケーキとフルーツサラダの実験 被検者を2グループ(A,B)に分ける。 「記憶の研究」と⾔って、A には2桁の数字を、B には7桁の数字を記憶してもらう。 途中「まだ実験中ですが、休憩に軽⾷を⽤意している」と⾔ってチョコレートケーキ(⾝体に 悪い)とフルーツサラダ(⾝体に良い)を差し出す。 — 2桁の数字を記憶している A グループ => フルーツサラダを選択する⼈が多い 7桁の数字を記憶している B グループ => チョコレートケーキを選択する⼈が多い システム1とシステム2の存在を把握し、対策を取ることが重要 第1章:認知のクセ

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■ 認知のクセの⼤元「システム1 vs システム2」 クイズ💡 野球のバットとボールが合わせて1ドル10セントで売っています。 野球のバットはボールより1ドル⾼いです。 別々に買ったらそれぞれいくらでしょう? 第1章:認知のクセ

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■ 正解は... 「バット1ドル5セント、ボール5セント」 しかし、反射的に「バット1ドル、ボール10セント」と答えてしまう  => 認知のクセによる⾮合理な意思決定 反射的に間違えた答えが出た後に、本当にあっているのかどうかの⾃⼰チェックをし、 「反射的な答え(システム1)vs 考えた答え(システム2)」を⽐較し後者を選ばなければな らない。 システム1 とシステム2は無意識下で連動し、複雑に絡み合いながら同時に動いている システム1 を⽩⾊、システム2を黒⾊とすると... 時と場合によって、薄い グレーになったり、濃いグレーになったりする (真っ⽩、真っ黒はない) 第1章:認知のクセ

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■ ⼈はいつ「システム1 」を使いがちか? ⼈のデフォルトの意思決定は「システム1」である。 ⼈は1⽇に最⼤3万5,000回もの意思決定をしている。 全ての意思決定を「システム2」で⾏っていたら何も決められなくなる。 いつ「システム1」を使いがちなのか? バットとボールのクイズのように「思い込み」や「偏⾒」から誤った瞬時の意思決定をしがち なのはいつか? ‧疲れているとき         ‧情報が簡単で⾒慣れすぎているとき ‧情報量、選択肢が多いとき    ‧気⼒、意思の⼒がないとき ‧時間がないとき ‧モチベーションが低いとき 第1章:認知のクセ

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■ マクドナルドのアンケート調査の失敗 「もっと健康的でヘルシーなメニューを増やして欲しい」というアンケートであがってくる 多くのユーザの声に答える形で「サラダマック」を発売。しかし、ヒットせずすぐ終売に。 ‧⼈がマクドナルドを利⽤する時はどんな時か?  => 忙しい時。疲れている時。⾃分で料理するのが⾯倒な時。   「しっかりと考えて利⽤する」のではなく「なんとなくパッと利⽤する」   つまり、システム1の意思決定がされる ‧アンケートに回答する時はどんな時か?  =>忙しい時、疲れている時に回答はしない。じっくり考えてシステム2の意思決定がされ   る。合理的で理想的な⾏動を頭に浮かべて回答する。 また、会社が意思決定をする会議における意思決定においても、しっかり考えてからの意思 決定になるのでシステム2の意思決定が⾏われることが多い。 顧客理解を深める時はシステム1の観点でも⾏うべき(商品特性による) 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ① メンタル‧アカウンティング 「あなたは劇場でチケットを買おうとして財布を開くと10ドル札を落としたことに気づい た。それでもあなたは財布から10ドルを出して当⽇券を買いますか?」 => 88% の⼈が「イエス」と答えている 「あなたは事前に10ドルの前売り券(⽇付指定)を買っておいたけれど、劇場に着いたら前売 り券を落としたことに気づいた。それでもあなたは財布から10ドルを出して当⽇券を買います か?」 => イエスと答えた⼈は46%。半分以上の⼈はノーと答えた。 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ① メンタル‧アカウンティング 先の2つの質問どちらの場合も失くしたお⾦の価値は「10ドル」で変わらない。 しかし、同じ10ドルであってもお札を落とした場合と前売り券を落とした場合とで その後の⾏動が変わってくる。 ⼈は⼼の中に「そのお⾦が何のためのお⾦か」を無意識に仕分けをしている。  ‧「劇に使うお⾦は10ドル」と仕分けされている  ‧後者の場合、失くしたお⾦以外に10ドルを追加で出すことに⼼理的抵抗が⽣まれている 合理的に考えれば、失くしたのは同じ10ドルなので、⾏動が変わるのは⾮合理である ⼈は無意識下でお⾦の仕分けをし、同額のお⾦でも価値を変えている。 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ② ⾃制バイアス ダイエット中の仕事帰り、疲れて空腹の状態でスーパーに⽴ち寄る。 「明⽇の朝に⾷べるヨーグルトを買うだけ」と⾃分に⾔い聞かせても、商品を⾒ると、 ついビールやデザート等を買ってしまう。誘惑に負けてしまう。 「ダイエットは明⽇から...」「今⽇頑張った⾃分へのご褒美...」 => ⼈間は⾃分が思うほど⾃制⼼が強くない。  「⾃分は誘惑に負けない」「衝動的な⾏動を抑えられる」と⾃分を過⼤評価してしまう  認知のクセ。 対策 ‧あえて「⼩さなひと⼿間」を加え、システム2を可動させる時間を設ける  ‧上記の例だと...1つ遠いスーパーまで歩く 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ③ 埋没コスト 「スキー旅⾏を計画。A 州プラン: 100ドルとB州プラン: 50ドルの予約⾦を⽀払済。  B州の⽅が雪質がよく、設備が新設されてより楽しめそう。」 「A州‧B州 のプランが同⽇の予約であることが発覚。どちらにしか⾏けない。返⾦はな し。」 「どちらの旅⾏に⾏きたいですか?」 => 半数以上の⼈が A プランを選択 ‧より⼤きな初期投資を⾏ったから。 ‧⼀度何かを始めたら、たとえ成果が出ていなくても、そこに費やした時間/お⾦/労⼒を  取り戻そうと継続してしまう  ‧⼀⽣懸命進めているプロジェクトが途中「うまくいかないかも?練り直した⽅が良いか   も?」という状態になっても中断できない 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ④ フット‧イン‧ザ‧ドア(⼩さなお願いから始めよ) ‧ステッカーの実験  ‧⾃分が住むマンションの⾃治会で「安全運転キャンペーン」がスタート。あなたは役員と  して参加することに。マンションの各部屋の窓にキャンペーンの⼤きなポスターを貼っ  て もらうようお願いして回る役割を与えられた。 対応1:  住⺠に「ポスターを貼ってください」と⾔って回る => 16% しか貼ってくれない 対応2:  まず、⼩さなステッカーを作成し「窓や⾞の中に貼ってください」と依頼。  2週間後、「ポスターを貼ってください」と⾔って回る => 76% の⼈が受け⼊れる 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ④ フット‧イン‧ザ‧ドア(⼩さなお願いから始めよ) 最初の⼩さなお願いは、引き受ける際のハードルが低い。 「私は交通安全を意識し⾃治体のお願いを聞いてあげるいい⼈」という気持ちが芽⽣える。 その気持ちの⼀貫性を保つために、2週間後、「⼤きなポスターを貼ってください」と⾔われ ても受け⼊れてしまう。 受け⼊れないと「私は交通安全を意識し⾃治体のお願いを聞いてあげるいい⼈」という⾃⼰イ メージと⽭盾してしまう 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ 確証バイアス ‧何かを思い込んだらそれを証明するための根拠、⾃分に都合の良い情報や信じたい調査結果 ばかりを集め始めてしまう 確証バイアスを減少させる⽅法 A. ⾃分の提案に部下から FB をもらう場合には最初に「『この内容は素晴らしい』と同意し て欲しいわけではない。⽬的はクオリティを⾼めること。あなた視点の改善点を FB して ほしい」と伝える B. 敢えて反対意⾒を求める a. MTG で「悪魔の代弁者」という役割を設け、敢えて異を発⾔してもらう b. 現⾏のプラン A だけではなく、反対となるプラン B を考えてみる 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ 真理の錯誤効果 「絶対にこんなこと有り得ない」と思っているのに、繰り返し⾒たり聞いたりすることで信じ てしまう  ‧ネット上でのフェイク動画 真理の錯誤効果を減少させる⽅法  ‧「疑わしいな」と思った時点で真偽を検証する。⼀時リソースに当たる。 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑦ ⾝体的認知 ⾝体から⼊って脳に情報が伝達される際にも認知のクセが発⽣する 例えば...  ‧実際には⾯⽩くも楽しくもない場合でも、意図的に笑顔を作ことで、脳が 「あれ、笑っているな。笑っているなら楽しいに違いない。」   と錯覚し、実際に楽しくなる。  ‧⼈の話を前のめりで聞くと、たとえ興味がない話であっても興味深く感じる  ‧初めて訪問する会社で温かい飲み物を出された場合と冷たい飲み物を出された場合とで、  商談相⼿の印象が変わる。   ‧温かい飲み物 => 「この⼈(相⼿)は温かい⼈だ」   ‧冷たい飲み物 => 「この⼈(相⼿)は冷たい⼈だ」 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ 概念メタファー 以下の2枚の写真だとどちらがより消費者に⾼級感を演出し、魅⼒的に映るでしょうか? 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ 概念メタファー A. 左の広告のほうが権威性を⽰す、つまりは⾼級時計には効果的な広告になる ⼈は垂直のものをみると無意識のうちに「⼈の上に⽴つ」「出世する」「優位性」とい う感覚を抱く 抽象的な概念を具体的なもので⽐喩することで、⼈が理解しやすくなる認知の枠組み 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ 概念メタファー 第1章:認知のクセ 左の写真の「左のボトル」と「右のボトル」 あなたが⾼級感を演出したい場合は、どちらを選ぶべき でしょうか?

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ 概念メタファー A. 「左のボトル」 ⼈は無意識のうちに「細⻑いもの = ⾼級」「低くて幅があるもの = 気楽」を感じる 細⻑い‧背の⾼いものをみると「⼒」「権威」「⾼級感」を感じ、 太く短い‧背の低いものをみると「安⼼」「親しみやすさ」を感じる 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ 現在志向バイアス ⼈間は「今この瞬間」に重点を置くので、将来の利益よりも⽬先の利益を優先してしまう 現在志向バイアスが働くと、将来の⼤きな利益を逃してしまったり、問題の解決を先延ば しにしてしまったりする 例)  ‧今すぐ100ドルと、1年後に200ドルもらえるという選択肢を迫られた場合、今すぐ    100ドルもらえる⽅を選んでしまう  ‧ダイエットをしようとしているのに、⽬の前のケーキを優先してしまう  ‧試験勉強や受験勉強を先延ばしにしてしまう  ‧夏休みの宿題を最終⽇まで残してしまう 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑨ 「時間」も認知のクセになる:「双曲割引モデル」 Q1: 今⽇100ドルもらうのと1ヶ⽉後に120ドルもらうのと、どちらがいいか? => 多くの⼈が「今⽇100ドルもらう」と回答。現在志向バイアス。 Q2: 1年後に100ドルもらうのと1年1ヶ⽉後に120ドルもらうのと、どちらがいいか? => 多くの⼈が「1年1ヶ⽉後に120ドルもらう」と回答。 合理的に考えれば1⽇24時間、今⽇と明⽇、1ヶ⽉後は同じ価値。 しかし「今⽇と1ヶ⽉後」は⼤きな差でも、「1年後と1年1ヶ⽉後」は⼤した差ではなくな る 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑨ 「時間」も認知のクセになる:「双曲割引モデル」 ゼロに近い数値(今⽇と1ヶ⽉後)の差は意識しやすいが、ゼロから遠い数値(1年後と1 年1ヶ⽉後)の差は意識しづらい => お⾦にも当てはまる ‧100円と110円の差は気になるが、1万円と1万100円の差は気にならない 例)  コンビニやスーパーでの10円、100円の差は気になっても、10数万円を超える買い物や  イベントでの出費での1000円、2000円の差は気にならない 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑩ 解釈レベル理論 ⼈間の意識が向くのは「今」であり、今については「現実的かつ具体的」に考える 逆に、1週間後、1ヶ⽉後、1年後と考えることが先になるにつれ思考は「抽象的」になっ ていく 例) ‧旅⾏会社が夏のハワイ旅⾏を PR したいときに時期によって PR 内容を変える必要がある  ‧夏まで時間がある場合 => 顧客が思い描くのはハワイの海や雰囲気など抽象的なイ    メージ  ‧夏直前の場合 => 顧客の思考は、⾶⾏機の出発⽇‧帰国⽇、発着時刻、ホテルの⾷事   の内容、申し込み時期による割引の有無等の具体的なものに変化する 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 11. 計画の誤謬(ごびゅう) あらゆる計画は所要時間や予算を⽢く⾒積もって計画してしまうがために失敗する ⚫楽観バイアス ⾃分にとって好ましいことが起こる確率を過⼤評価し、好ましくないことが起こる確率を 過⼩評価する   + ⚫解釈レベル理論 将来のことを考える時の思考が抽象的になってしまう 計画の誤謬に陥らない⽅法 A. 計画を細かいタスクに分けて個別に計画する B. 最悪なシナリオの場合にかかる⽇数を計画する 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 12. 快楽適応 ⼈は何が怒っても、繰り返しベースラインの幸福度に戻る 幸せなことが起こって、幸せを感じたとしてもしばらく経つと元の状態に戻る 逆も然りで、悲しいことが起こって悲しみを感じたとしても... タイムマネジメントとして活⽤ ‧嫌な仕事ほど⼀気にやってしまった⽅が良い  ‧ずっと取り組んでいると嫌な気持ちに慣れて、徐々に感じなくなっていく  ‧細切れにやるほど、嫌な気持ちに慣れず⻑時間嫌な気持ちが継続する ‧楽しみ時間は⼀気に取らず細切れにとる 第1章:認知のクセ

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■ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 13. デュレーション‧ヒューリスティック サービスの内容よりもかかった時間で評価してしまう 例)  オートロックのマンションで鍵を家の中に置いて外に出てしまった。鍵を解除する業者  を依頼しようと思うが、1回2万円かかる。家に⼊れない状態が続くわけにもいかず、依  頼することに。業者が来て解錠してもらったら、ものの3分で解錠できた。  「たった3分で2万円も取られてしまった」 => 合理的に考えれば、時間が短かろうが⻑かろうが「解錠してもらう」というサービス⾃ 体は変わらないのに、かかった時間で評価が変わってしまう。 ‧顧客にサービスを提供する場合には、顧客にはこの認知のクセがあると理解する 第1章:認知のクセ

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■⼈間の判断は周りの「状況」の影響を強く受ける 経済学: ⼈間はどんな状況にも左右されず、常に合理的な意思決定をする ⾏動経済学: ⼈間は環境に左右されて意思決定し、状況に影響されて⾏動している 代表的な理論「選択アーキテクチャー」  ‧レストランでの3プランのコース提案(A: ⾼いコース、B: 普通コース、C: 安いコース)を  提⽰すると B が⼀番売れる   => どういう選択肢を提⽰するか?という状況を作り出す 第2章:状況

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💡クイズ 【以下の⽂字はどう読みますか?】 第2章:状況

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💡クイズ 【以下の⽂字はどう読みますか?】 第2章:状況

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両⽅とも真ん中の⽂字は同じ⽂字 周りに置かれている⽂字で「13」にもなるし「B」にもなる ⼈間は常に⾃分で意思決定をしているのではなく、周りの状況が意思決定をしていることが 多々ある 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ① 系列位置効果 競争が⾼い求⼈の⾯接試験。10⼈の応募者が集められて順番に⾯接を受ける。 あなたが順番を決めて良いとしたら、あなたは何番⽬にする? 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ① 系列位置効果 競争が⾼い求⼈の⾯接試験。10⼈の応募者が集められて順番に⾯接を受ける。 あなたが順番を決めて良いとしたら、あなたは何番⽬にする? => 「⼀番最初」or「⼀番最後」が合格する可能性が⾼くなる ‧情報の順番によって記憶の定着度合に差が出る  ‧初頭効果: 初めに得た情報が印象に残り強い影響を与える  ‧新近効果: 最後の情報が意思決定に⼤きな影響を与える 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ① 系列位置効果 逆に、⾯接官として応募者を採⽤する場合に「初頭効果」や「新近効果」の影響を受けていな いか、しっかり考えた⽅が良い ‧社内企画のプレゼン  ‧選ばれたい場合   ‧その会議の直後に意思決定される場合 => 最後にプレゼンすべき   ‧その会議の数⽇後に意思決定される場合 => 最初にプレゼンすべき  ‧選ばれたくない場合    => 中盤の順番でプレゼンすべき ⚫ 消費者の選択肢への影響 「地元のワインに対する調査」と称して3種類のワインをテイスティングさせて好きなワイン を選択させる。(※実は全て同じワイン)  => 55%の⼈が「最初に飲んだワイン」を選択 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ② 単純存在効果 他⼈が周りにいるだけで意思決定が変わる ‧実験  ‧被験者に5ドルを私、⼩売店で電池を1つ買ってきてもらう。どの電池でも良い。お釣り   は被験者のものになる。 ‧結果  ‧電池コーナーの周りに他の客がいない時 => 33%が⼀番⾼いメーカーの電池  ‧電池コーナーの周りに他の客が1⼈いる時 => 42%が⼀番⾼いメーカーの電池  ‧電池コーナーの周りに他の客が3⼈いる時 => 63%が⼀番⾼いメーカーの電池 他の客は、ただ存在しているだけだったにも関わらず意思決定に影響を与えている 被験者は「他の客に影響を受けた」とは⾃覚しておらず、「なぜその電池を選んだのか?」と 質問しても「このメーカーの⽅が⻑持ちすると思ったから」と回答した 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ③ 過剰正当化効果 もともと内発的動機で取り組んでいたところに、⾦銭的報酬などの外発的動機が⽤意されると モチベーションが下がってしまう。義務化‧プレッシャー 例)  ‧ボランティアで週に1回海岸のゴミ拾いを複数⼈していたが、⾏政から⼿当が出るように   なった途端「ヒトとカネの管理」が発⽣してしまい、やる気がなくなる。ちゃんとやら  な いと、となってしまう。  ‧やりたいこと(趣味)を仕事にしたはずなのにやる気があがらない。 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ④ 情報オーバーロード 伝統的な経済学では、⼈は正しく合理的な意思決定を基に⾏動できる → 情報量が多ければ多 いほど良い ⾏動経済学では、多すぎる情報は⼈を疲れさせ、意思決定を妨げたり、不合理な⾏動をとって しまう 例)  メール(Slack)のチェックによってスイッチングコストが発⽣し、⽣産性が下がる 対策 ‧時間を決める ‧優先順位を決める ‧⼀次リソースを取得する 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ 選択オーバーロード 選択肢が多すぎることで相⼿は選べなくなってしまう Amazon でトイレットペーパーと検索すると数万件がヒットする 1つ1つの商品を⽐較検討し、⾃分にベストな商品を選択するには膨⼤な時間と労⼒がかかる 買うことそのものをやめてしまう可能性もある ⼀⽅で、選択肢の多さサービスの「売り」になる 選択肢が少なすぎると⼈は興味を持たない 「選択肢は多い⽅が良い」という思い込みを利⽤して、何種類も同じような商品を販売する 顧客はそれを魅⼒に感じ、集まってくる => 選択オーバーロードを⽣み出し、結果、消費者はどれも選ばないという状況 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ 選択オーバーロード ⼈間は多くの選択肢があることを好む⼀⽅で、多すぎると決められないという⽭盾、⾮合理で ある => 「選択アーキテクチャー」という考えの誕⽣ ‧Amazon: おすすめ商品、価格順‧新しい順‧⼈気順のフィルター ‧TikTok: 最初から動画が選択されている ‧Netflix: おすすめドラマの予告動画 ‧その他  ‧商品の品質表⽰がわかると消費者は購⼊しやすくなる  ‧ディシジョンツリーの活⽤ ▪選択肢は「10個」ばベスト 実験: この中に欲しいペンがあったら1本購⼊してください。なければ購⼊不要です。 => 10本の時に購⼊率が最も⾼く90% 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ プライミング効果 ⾊、⾳楽、位置、匂いといった刺激が無意識のうちに⼈の意思決定に影響を与えている 実験: ⾃動⾞販売の EC サイトを2つ作り、それぞれのサイトで「安全重視モデル」と「価格重 視モデル」の両⽅を販売。 1つのサイトは緑⾊を基調としたサイト、もう1つは⾚⾊を基調としたサイト。 結果: ‧緑⾊を基調としたサイトでは、価格重視モデルを選んだ⼈ 66%、安全重視モデル 34% ‧⾚⾊を基調としたサイトでは、価格重視モデルを選んだ⼈ 50%、安全重視モデル 50%  → ⾚⾊を基調としたサイトでは「危険」というイメージが⾼まり、安全重視が増 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ プライミング効果 その他の例) ‧ワインショップで、フランスを連想させる BGM を流すと83%の客がフランスワインを購⼊ ‧CEO から従業員のメッセージに、⽬標の達成を連想させるワードを⼊れるようにしたとこ  ろ、従業員のパフォーマンスが15%、業務効率が35%向上した プライミング効果は、本⼈に「選ばせられた、状況に決定させられた」という意識はなく、 「⾃分で主体的に選んだ」と思っている 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論(このまとめは本よりもプレジデントの記事の⽅がわかりやすかったのでそちらを利⽤する) ⼈は損失を回避する傾向があり、状況によってその判断が変わる 1. どちらを選びますか? A:100万円が無条件で⼿に⼊る B:コインを投げ、表が出たら200万円が⼿に⼊り、裏が出たらなにも⼿に⼊らない 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 2. あなたは200万円の負債を抱えています。どちらを選びますか? A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる B:コインを投げ、表が出たら負債が全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 期待値はどちらも100万円にも関わらず、 1 では A を選ぶ⼈の⽅が多く、2 では B を選ぶ⼈の⽅が多い 「⼈間は⽬の前に利益を提⽰されると利益が⼿に⼊らないという損失の回避を優先し、⽬の前 に損失を提⽰されると損失そのものを回避しようとする傾向がある」 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 「⼈間は⽬の前に利益を提⽰されると利益が⼿に⼊らないという損失の回避を優先し、⽬の前 に損失を提⽰されると損失そのものを回避しようとする傾向がある」 — 1. どちらを選びますか? A:100万円が無条件で⼿に⼊る B:コインを投げ、表が出たら200万円が⼿に⼊り、裏が出たらなにも⼿に⼊らない — 1 では負債がない状態 = 損失がない状態 その状態で利益(100万円)が提⽰されると利益(100万円)が⼿に⼊らないという損失の回 避を優先する => 選択肢 B の「何も⼿に⼊らない状態 = 損失」を回避する 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 「⼈間は⽬の前に利益を提⽰されると利益が⼿に⼊らないという損失の回避を優先し、⽬の前 に損失を提⽰されると損失そのものを回避しようとする傾向がある」 — 2. あなたは200万円の負債を抱えています。どちらを選びますか? A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる B:コインを投げ、表が出たら負債が全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない — 2 では負債がある状態 = 損失がある状態 ⽬の前に損失(200万円の負債)を提⽰されると損失(200万円の負債)そのものを回避しよ うとする => 選択肢 B の全額免除に意識がいく 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 ⼈は得をすることよりも、損をしないことを優先する ⼈を説得したいなら、「お得ですよ!」よりも「損しますよ?」という⾔い⽅や⾒せ⽅のほう が効果的 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 1. あなたはスーパーに卵を買いに来た。このスーパーでは卵1パックが「250円」で販売され ている。買おうとしたら他の客が話しているのが聞こえてきた。どうやら⾃転⾞で10分先の スーパーでは卵1パック「150円」で販売されているらしい。 A:このスーパーで卵を買う B:10分先のスーパーで卵を買う 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 2. あなたは家電量販店に洗濯機を買いに来た。この家電量販店では洗濯機が「99,900円」で 販売されている。買おうとしたら他の客が話しているのが聞こえてきた。どうやら⾃転⾞で10 分先の家電量販店では洗濯機が「99,800円」で販売されているらしい。 A:この家電量販店で洗濯機を買う B:10分先の家電量販店で洗濯機を買う 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 1 では B の「10分先のスーパーで卵を買う」を選んだ⼈が多く、2 では A の「この家電量販店 で洗濯機を買う」を選んだ⼈が多い お得になる絶対額ではなく、率で「お得かどうか」を判断している 100万円の⾞を1万円引きされてもあまり嬉しくないのに、スーパーの買い物では、数⼗円〜 数百円安くなっているだけでも嬉しく感じる ⾦額の⼤きさと、主観的に感じる価値は⼀致せず、⾦額の絶対値が⼤きくなるほど感覚が鈍感 になる (⼤きな買い物ほど、本当は、値切れるだけ値切ったほうがいいはずなのに⾦銭感覚が⿇痺し てしまう) 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑦ おとり効果 「誰も選ばないような選択肢」をあえて追加することで、「もともとあったもの」を選ばせる 実験: 4万円のホームベーカリーの横に、6万円のホームベーカリーをおくことで4万円のホーム ベーカリーが売れるようになった 脳は「⽐較」によって物事を認知する 6万円のホームベーカリーが横にあることで、4万円が安く感じる 例) ‧「松‧⽵‧梅」の「松」を⽤意する  ‧iPhone のストレージ 128 / 256 / 512 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ アンカリング効果 最初に提⽰された数値が基準になり、その後に続くものに対する判断が⾮合理に歪んでいく 実験: ワインをいくらで買うか? 「このワインを n 円で買いますか?」 n にはその⼈の携帯番号の下2桁*1000円の数字を⼊れる。 例えば... 携帯番号が XX45 の⼈は、n = 45,000円。XX10 の⼈は 10,000円 。 下2桁が⼤きい⼈ほど⾼額になるので、「買いません」と答える。 「買いません」と答えた⼈に「では、いくらなら買いますか?」と質問する。 例えば、上の例だと「このワインに45,000円も出したくない。買わない。」と答えた⼈にこの 質問をすると「んー、じゃあ、まぁ20,000円なら」という回答がある、という感じ。 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ アンカリング効果 実験結果、下2桁の数字が⼤きい⼈ほど、最終的に買うと答えた価格が⾼額になることがわ かった。 携帯番号の下2桁というワインとは全く関係ないランダムな数字であるにも関わらず、⼈は最 初に提⽰された数字に強く影響を受ける 応⽤ ‧交渉する際の最初の提⽰額  ‧プロジェクトの予算を80万円で通したい時に、最初は「100万円かかる」と⾏って提案す  る。その後、こことここを削ればなんとか80万円で収まると伝える。 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑨ ⾃律性バイアス ⼈は「⾃分で主体的に決めたいんだ」と思いたい性質がある ⼦供にお⼿伝いをさせるときに... A: 「⾷事の後の⽫洗いをお願いね」 B: 「⾷事の後の⽫洗いはスポンジでする?⾷洗機で洗う?」 やってもらうことが前提。命令されてやるのではなく、⾃分の意志でやる。 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑩ 脳の意思決定は時間帯で変化する 刑務所での仮釈放になりやすい時間帯がある!? 仮釈放する = 更⽣しているか?再犯は⼤丈夫か? システム2の慎重な意思決定が求められる 仮釈放になりやすい時間帯: 朝⼀、ランチ休憩後、午後の休憩後 => 朝や休憩後、脳がリフレッシュしている時間帯 時間の経過と共に徐々に脳が疲れていき、考える⼒が低下しリスクの少ない意思決定になる。 ネット広告の時間帯 ‧⾼額な商品(家、⾞ etc)は朝早い時間帯の配信が効果的(脳が元気な状態) ‧衝動買い的に購⼊して欲しい商品(ファストフード、ファッション)は⼣⽅から夜の脳が疲 れている時間帯の配信が効果的 第2章:状況

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■ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑩ 脳の意思決定は時間帯で変化する 刑務所での仮釈放になりやすい時間帯がある!? 仮釈放する = 更⽣しているか?再犯は⼤丈夫か? システム2の慎重な意思決定が求められる 仮釈放になりやすい時間帯: 朝⼀、ランチ休憩後、午後の休憩後 => 朝や休憩後、脳がリフレッシュしている時間帯 時間の経過と共に徐々に脳が疲れていき、考える⼒が低下しリスクの少ない意思決定になる。 ネット広告の時間帯 ‧⾼額な商品(家、⾞ etc)は朝早い時間帯の配信が効果的(脳が元気な状態) ‧衝動買い的に購⼊して欲しい商品(ファストフード、ファッション)は⼣⽅から夜の脳が疲 れている時間帯の配信が効果的 第2章:状況

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■「有⽤な感情」「やっかいな感情」「淡い感情」 感情: ⼈類の進化の過程で出来上がったもの ⼈間が合理的であれば感情に惑わらせずに、常にベストの成果を出し、⼈間関係は良好に保つ しかし...  「不安」の感情があるからベストの成果を出すことができない  「怒り」の感情によって⼈間関係を壊してしまう  感情が昂ってしまい、普段ならしない意思決定をしてしまう ⾃分が意識できる感情、喜怒哀楽まではいかない「淡い感情」が意思決定に⼤きな影響を与え る 第3章:感情

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■ そもそも「感情」とは何か? 喜怒哀楽のようにはっきりとした感情 => エモーション 喜怒哀楽のようにははっきりとしない感情 => アフェクト  ‧スタバが好きな⼈がスタバのロゴをたまたま⾒たら「おっ」と気分が上がる  ‧タバコが苦⼿な⼈がタバコと聞いただけでちょっと嫌な気持ちになる アフェクトの⽅が⽇々の⽣活の中で抱く機会が多い => 意思決定に与える頻度が多い ただ、潜在意識に働きかけるので気がつきにくい ⾔語化できない、なんとなくという類のもの その⼈がこれまでの⼈⽣で蓄積してきた微々たる感情がその⼈のアフェクトを作っている 第3章:感情

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■ アフェクトの伝染 ⼀緒にいる⼈が楽しそうだと⾃分も楽しくなる。釣られ笑い。もらい泣き。 Facebook の実験 Aグループ: ポジティブな投稿がタイムラインに流れてこないようにした Bグループ: ネガティブな投稿がタイムラインに流れてこないようにした Aグループ => ネガティブな投稿が⽬につくようになったことから⾃⾝もネガティブな投稿をす るようになった Bグループ => ポジティブな投稿が⽬につくようになったことから⾃⾝もポジティブな投稿をす るようになった 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ① ポジティブ‧アフェクト(拡張 - 形成理論) ポジティブな感情は視野や思考の幅を広め、ストレスによる⾝体と⼼の不調を整えてくれる 能⼒‧活⼒‧意欲が⾼まり、⼈脈や活動の範囲が広がる 仕事の効率も質も上げ、⼼⾝のストレスを軽減させる すぐにできるポジティブ‧アフェクトの活⽤例 ‧家族の写真をデスクに飾る ‧楽しかった思い出の写真をスマホの背景にする ‧ストレスの多い会議のあと、温かい飲み物を飲んでほっとする ‧休み明け仕事にいくのが億劫な⽉曜⽇はお気に⼊りの洋服で出勤する アフェクトは淡いものなのですぐ消えるが、逆にすぐ⽣み出すことができる 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ② ネガティブ‧アフェクト 「なんとなく乗り気がしない、なんとなく嫌だなぁ」 ほおっておくと、何かと仕事が⼿につかず、パフォーマンス悪いなぁといいながら⾃分の調⼦ を⾃分で落としてしまうようなことになる 対応 ‧脳の中のネガティブ‧アフェクトに気づく、認める。そして、原因を考えて再評価する。  「来週から始まる責任あるプロジェクトに⾃信が無い。不安だ」  =>「責任あるプロジェクトを任せられるなんで期待されている証拠だ。」  「仕事でミスをしてしまった...」  =>「いい勉強になった。次からはもう⼤丈夫だ」 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ② ネガティブ‧アフェクト 実験:「⾃分はいかに仕事ができるか」というスピーチコンテスト。 被験者を2つのグループに分けてコンテスト前にそれぞれ次の⾔葉を呟くように指⽰ グループA:「私はワクワクしている」 グループB: 「私は平常⼼で落ち着いている」 結果、「⾃分は有能な社員だ」と⾃信たっぷりにスピーチができ、好評価を得たのは... 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ② ネガティブ‧アフェクト 実験:「⾃分はいかに仕事ができるか」というスピーチコンテスト。 被験者を2つのグループに分けてコンテスト前にそれぞれ次の⾔葉を呟くように指⽰ グループA:「私はワクワクしている」 グループB: 「私は平常⼼で落ち着いている」 結果、「⾃分は有能な社員だ」と⾃信たっぷりにスピーチができ、好評価を得たのは... 「グループA」 不安や緊張というネガティブな感情は簡単に消えるものではなく、下⼿に「上がっていない。 私は⼤丈夫だ」と抑え込もうとすると逆効果になる。それゆえにネガティブ‧アフェクトを認 識し、その上でポジティブ‧アフェクトに変換する 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ③ キャッシュレス効果 キャッシュレスは、「お⾦を使ってしまった」という⼼理的痛みを感じにくい ネガティブ‧アフェクトが⽣まれいにくくなってしまい、結果、簡単に使ってしまう ⾃⼰投資として使ったほうがいいお⾦ => カードで⽀払う 払うことの痛みを感じ、使うのを惜しんでしまっては⾃⼰投資できない。 (痛みを感じたからこそしっかり⾃⼰投資するモチベーションにつながる考え⽅もある) ちょっとした楽しみ‧贅沢 => 現⾦で払う 「お⾦を使った」という感覚を⾼められ、より楽しみや贅沢を強く実感することができる。 無駄遣いもしなくなる。 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ③ キャッシュレス効果 実験:レストランでのメニュー表記 同じメニューのデザインや料理の種類でメニュー表を記載 唯⼀異なるのは⾦額部分のみ A: ⾦額部分を 「XXXX $20.00」と「料理名+$⾦額」で表記 B: ⾦額部分を 「XXXX 20.00」と「料理名+⾦額」で表記 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ③ キャッシュレス効果 実験:レストランでのメニュー表記 同じメニューのデザインや料理の種類でメニュー表を記載 唯⼀異なるのは⾦額部分のみ A: ⾦額部分を 「XXXX $20.00」と「料理名+$⾦額」で表記 B: ⾦額部分を 「XXXX 20.00」と「料理名+⾦額」で表記 => B のメニューを受け取った客の⽅が⼤幅に消費が増⼤ 頭では⾦額とわかっているが、「お⾦を払う」という⾏動が⼼理的に響かず、簡単にお⾦を 使ってしまうという結果 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ④ ⽬標勾配効果 実験:コーヒーを1杯買うと1つスタンプを推してくれるコーヒーショップ 以下の2つのスタンプカードで早くスタンプを全部集めた客が多かったのはどっち? A: スタンプを10個集めると1杯無料サービス B: スタンプを12個集めると1杯無料サービス。ただし、最初から2個押されている。 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ④ ⽬標勾配効果 実験:コーヒーを1杯買うと1つスタンプを推してくれるコーヒーショップ 以下の2つのスタンプカードで早くスタンプを全部集めた客が多かったのはどっち? A: スタンプを10個集めると1杯無料サービス B: スタンプを12個集めると1杯無料サービス。ただし、最初から2個押されている。 => B のスタンプカード。 「10個集めないといけない」という状況は同じでも、既に2個押されていることでポジティブ エフェクトが⽣まれる。 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ コントロール感(理論名ではない) ⼈は「常に⾃分で意思決定し、⾏動している。⼈⽣をコントロールしている」と考えている し、そうしたいという欲求がある。 実社会では、なかなかそうはいかないもの。常にコントロール感を感じられるとは限らない。 悲しかったりストレスが溜まっていたりすると買い物をしたくなる(ストレス発散の爆買) => ⼼理的なコントロール感を取り戻したいという気持ちの表れ 買い物は⾃分の意思で選んだものを⾃分のお⾦で⾃分のものにできる。つまり、簡単に 「⾃分でコントロールしている」と感じられる⾏動 実験では、ec サイトに置いて、決済まで進まずとも、気に⼊った商品を選んでカートに⼊れて もらう操作をするだけで、悲しみやストレスが軽減するという結果になった。 怒っている⼈に同実験をやったが、怒りは軽減しなかった。「怒り」というのは悲しみやスト レスよりも、より特定の「状況」や「⼈」が標的となっているため。 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ コントロール感(理論名ではない) 採⾎についての実験 採⾎は必要な検査をわかっていても多少の不安を感じるもの。 直前に「どちらの腕にしますか?」と聞かれるのは、採⾎というネガティブ‧アフェクトが出 る⾏為の前に⾃分で腕を決める(コントロールできる)状況を作ることで、ネガティブ‧ア フェクトをやわらげる効果がある。 第3章:感情

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■ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ 不確実性理論 「不確実性」も「コントロール感」と同様ネガティブな感情を⽣み出し、⾮合理な意思決定に 影響を及ぼす。 病院で「がんの疑いがあります」と⾔われた⼈を対象に⾏った調査。 「がんの疑いがあります」と告げられた直後は皆⼀様にネガティブな感情が強くなる 「結局、がんでなかった⼈」  ‧「がんではありませんでした」と⾔われた直後、急激にストレス値が軽減した 「実際にがんだった⼈」  ‧「がんでした」と⾔われた直後、ストレス値が急上昇したが、数⽇経過するとストレス値  は、「がんでした」と告げられる前よりも下がっていた。   => がんかどうかわからない状態の⽅がストレス値が⾼かった。対応策を⽴てたり、考える ステップに進むことができる状態になった。 不確実性が⾼い状態の⼼理的な負荷の⾼さが調査でわかった 第3章:感情

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1. 「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 2. 「サステナビリティ」と⾏動経済学 3. 「DEI」と⾏動経済学 エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ⼈それぞれ認知のクセの強弱やシステム1‧2の使⽤頻度も異なる ⾃⼰理解と他者理解が深まれば⾃分や他⼈がどのように意思決定をし、それがどう⾏動に つながるかがわかる ビジネスやプライベートでも⾃⼰を⾼めるために役に⽴つ 「これからの世界で⾃分はどのように⽣き抜くべきか」 エピローグ:社会における⾏動経済学

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エピローグ:社会における⾏動経済学 ■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 クイズ ⽇焼け⽌めの宣伝コピー。どちらのコピーを魅⼒的に感じますか? A: あなたならできる!A → B → C の⼿順でとても簡単です。⽇焼け⽌めのボトルを⻭磨き粉 の側に置いて、毎朝使えばいいだけです! B: 研究によると、この⽇焼け⽌めはたとえ短い時間だけ太陽の下で過ごすとしても、⽼ 化、⽇焼け、⽪膚がんに対して効果を発揮します。

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ① 制御焦点理論 性格特性を知るためのテスト A => 促進焦点タイプ B => 予防焦点タイプ ‧制御焦点理論  ⾃⼰理解と他者理解に⽋かせない⾏動経済学の理論  ⼈が⽬標を達成するときの動機には⼤きく「促進焦点」と「予防焦点」がある  例えば、新しいプロジェクトを任せられたら...  促進焦点タイプ:成功したいから頑張る  予防焦点タイプ:責任者として失敗したくないから頑張る  同じ「頑張る」でも動機が異なる エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ① 制御焦点理論 ‧促進焦点タイプ  ⼈⽣でやりたいことや成功の未来からモチベーションを得る。  成⻑、発展、昇進への欲求があり、前向きな結果や⽬標達成が動機づけ。  利益を最⼤化することに駆り⽴てられる。 ‧予防焦点タイプ  「こうなりたくない」「現在の状態より下がりたくない」  ⾃分がやるべきことや責任を果たすことがモチベーション。  安⼼や安定を求める。慎重かつ⼏帳⾯で、義務と責任を優先し、リスク回避。  潜在的な脅威や危険性に着⽬し、損失を最⼩限に抑えようとする エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 クイズ 次の休暇の予定を⽴てる時... A: 時間をかけて徹底的にリサーチする B: ⼈気トップ10に⼊っている観光スポットの中から適当にめぐる エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ② 「最⼤化」と「満⾜化」 A => 最⼤化タイプ  意思決定において重視するのはベストかどうか。  最善の選択をしよう広範囲に及ぶ情報収集をし検討を⾏う。  ⼀度決⼼しても迷い「もっと良い選択肢があるのでは」と、決⼼後にまた情報収集を再  開することもある。意思決定に時間がかかる。決断できない、迅速な対応が苦⼿。 B => 満⾜化タイプ  意思決定において重視するのは容易さと効率性。  ある程度ニーズを満たす選択肢を⾒つけたら、情報収集をやめ、直感やテキトーに選択  肢を選ぶ。⼀度決めたら迷うことは少ない。ベストではなくベターで満⾜する。 仕事とプライベートや対象のものやことで「最⼤化」と「満⾜化」が変わる エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 クイズ お気に⼊りのレストランの隣に新しいカフェができたとする。 カフェとしてはちょっと⾼めだけど、美味しそうなメニューが並んでいる A:「きっと美味しいだろう」と新しいカフェを試してみる B: 美味しくないかもしれないものにお⾦をかけたくないので、いつものお気に⼊りのレス トランにいく エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ③ 「楽観」と「後悔回避」 A => 楽観バイアスが⾼い。物事がスムーズにいくと考える傾向が強く、また、基本的に⾃ 分の未来が平均的な⼈の未来よりも良くなる、統計的な数値よりも良くなると信じる傾向 過度に楽観的な計画を⽴てたり意思決定をする。 ビジネスチャンスに対してより多くのリスクを取ることも。挫折からの回復⼒も⾼い。 B => 後悔回避バイアスが⾼い。潜在的な利益がコストを上回っていたとしても後悔する可 能性がある判断を避ける。リスクの少ない意思決定。 過度に慎重で保守的な意思決定。チャンスを逃してしまう。 エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「サステナビリティ」と⾏動経済学 ホテルに宿泊している客のタオル交換の頻度を毎⽇ではなく何⽇かに1回に促して、節⽔や 環境汚染への影響を削減したい... メッセージ1: 環境保護にご協⼒を! ‒ ゲストの皆様へ。滞在中、同じタオルを再利⽤することで、⾃然への敬意と環境を守る姿勢を⽰せます。 メッセージ2: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒ ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、当ホテルの環境保護プログラムに賛同したおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤しています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってください。 メッセージ3: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒ ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、この部屋(##号室)に宿泊したゲストいのおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤することで、環境保護プログラムに加わっています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってくださ い。 エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「サステナビリティ」と⾏動経済学 ホテルに宿泊している客のタオル交換の頻度を毎⽇ではなく何⽇かに1回に促して、節⽔や 環境汚染への影響を削減したい... メッセージ1: 環境保護にご協⼒を! ‒ ゲストの皆様へ。滞在中、同じタオルを再利⽤することで、⾃然への敬意と環境を守る姿勢を⽰せます。 メッセージ2: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒ ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、当ホテルの環境保護プログラムに賛同したおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤しています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってください。 メッセージ3: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒ ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、この部屋(##号室)に宿泊したゲストいのおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤することで、環境保護プログラムに加わっています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってくださ い。 エピローグ:社会における⾏動経済学 37.2% 44.0% 49.3%

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■「DEI」と⾏動経済学 Diversity: 多様性、Equity: 公平性、Inclusion: 包括性 ⾊々なバイアスが DEI を妨げる要因になっている — ⾬が降る夜、ある男性が息⼦を抱きかかえて病院に駆け込んで来ました。緊急⼿術が必要と なり、当直医が駆けつけます。当直医は男の⼦の顔を⾒た途端、叫びました。 「その⼦は⾃分の息⼦だ!私には⼿術できない...!」 エピローグ:社会における⾏動経済学

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■「DEI」と⾏動経済学 このストーリーに違和感を感じましたか? もし、違和感を感じたとするとどんな違和感ですか? 感じた違和感が「男の⼦を抱きかかえてきた男性 = ⽗親、当直医 = ⽗親」で⽗親が2⼈い る?という違和感であれば、無意識のうちに、「当直医(医師) = 男性」というカテゴ リー化がされているということ。 あなたが持っているジェンダーバイアス ◼ 対応例 ‧オーケストラのバイオリニストのオーディションの際に、審査員と応募者の間に幕を降ろ して純粋に⾳⾊のみでオーディションを⾏う(⼥性の合格率が向上) ‧映画の主⼈公の変化。主⼈公(ヒーロー) = ⽩⼈男性、というステレオタイプの払拭  ‧スターウォーズ、ディズニー エピローグ:社会における⾏動経済学