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フックの法則 や ものの浮き沈み など 教科書上の実験 を 探究的な学習 に デザインする 筑波大学附属中学校 佐久間 直也 2021年12月27日 都中理冬季研修会 講座2② (新宿区立西早稲田中学校) 全20 枚+補

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自己紹介 佐久間 直也(Naoya SAKUMA) ■ 専門 科学教育,理科教育 ■ 経歴 2012-2016 東京学芸大学 A類理科撰修 2016-2020 東京都公立中学校 教諭(理科・多摩市) 2020-2021 (情緒障害・巡回拠点・北区) 2021-現在 筑波大学附属中学校 教諭 ■ 理科を勉強する機会 ・TSC(東京創造理科同人),アサリ会(阿佐ヶ谷で理科を学ぶ会) ・Science Book Club in Japan ・仮説設定勉強会 ・若手の会(理科勉強会) ・共同研究者との打ち合わせ # E-mail a120327s@gmail.com # twitter @sakunao_rika # HP(準備中) https://z- educationlab.com 2

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本日の要点 ■ 生徒が探究する場面をつくる ➣ どのように? 何のために? ■ 生徒の考え方を重視する 3 ➣ 私なりの授業のデザインを紹介します。

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理科の授業で大切にされてきたこと ■ 事象との出合いから始まる ◍ 授業導入時にものを提示する。 ◍ ものの提示が難しい場合でも,画像や動画を活用する。 ■ 観察・実験を重視する ◍ 教え込みの授業ではなく、生徒が観察・実験を行う。 ◍ 生徒実験が難しいものでも演示実験を行う。 4 ➣ 今後も大切にしていく必要がある。

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理科の授業で大切にしたいこと ■ 教科書のつくり ① 事象との出合い ② ちがいを見つける ➢ 水のあるなし ③ 原因を考える ➢ 水のあるなし ④ 学習の方向性をもつ ➢ 水を入れると,コインが見えるようになる。 光の進み方が,空気と水の境界で変わるのかな? 5 ➣ 生徒の考え方,探究の過程と同じ過程である。

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探究する ■ (自然)科学的に探究する ◍ 物事の真の姿をさぐって見きわめること。 ➢ 教科『理科』における方法 ■ 探究的な授業のデザイン ◍ 生徒が『知りたい』と思える授業。 ➢ 生徒が出会ったことがない事象? ➢ 教科書にはない,魅力的な教材? 6 ➣ 教科書上の実験を探究的な学習にデザインする

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教科書上の実験を『探究的な学習』にする ■ ものの浮き沈み ■ フックの法則 7 ➣ どのように授業をデザインしますか?

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生徒の自由な発想 vs 教師の教えたいこと ■ 過去の苦い経験 『木炭が燃えるとき,どのような変化が起こっていますか?』 〇 二酸化炭素が発生している。 △ 赤くなっている。 × わからない… ■ 適度な『統制』下にある生徒『主体』の学び ◍ 教えなければいけないことがある。 ◍ 発問の意図から逸れる発言をできる限り避けたい。 8 ➣ 授業デザインを提案させていただきます。

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ものの浮き沈みの実験をデザインする ■ よく観察する ◍ 物体A,液体A ◍ 物体B,液体B ■ 現象と出合う 実験① 物体Aの入った200 mLビーカーに液体Aを入れる。 実験② 物体Bを液体Bの入った200 mLビーカーに入れる。 9

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ものの浮き沈みの実験をデザインする ■ 何が起こったか(結果) ◍ 実験1は物体が浮いた。 ◍ 実験2では物体が沈んだ。 ■ 2つの事象を比較して,何がちがうか 1 液体の量 2 液体の密度 3 液体のにおい 4 物体の体積 5 物体の重さ 6 物体の白い部分 ■ 関係していそうなもの(原因)は何か 10 実験1 実験2

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ものの浮き沈みの実験をデザインする ■ 結果と原因を結びつける ◍ 液体の密度が小さいとき,物体は沈む。 ◍ 物体の体積が大きいとき,物体は浮く。 ■ 自分の学習の方向性をもつ 11 液体の密度が原因だと思うな。 食塩水の濃度を高くしたとき、卵が浮くよね。 物体の体積が原因だと思うな。 船は重いけど、大きいから浮くと思うな。

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提案する授業のデザイン ■ 2つの事象を提示して、適度な『統制』をする ◍ 生徒の実態を踏まえて,どのくらい条件を複雑にするか判断する。 ■ 段階的に,生徒の『知りたい』を引き出す 12 段階的に行う 事象との出会い 2つ事象の比較 ちがいを 見つける 原因を 考える 学習の 方向性 をもつ

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検証計画の立案につながる ■ 条件の制御に効果的 ◍ 『ちがい』や『原因』 ➢ 自然と条件に目が行くようになる。 ■ 提示した事象が実験操作のヒントになる ◍ 実験計画が苦手な生徒の足場かけとなる。 13 液体の体積? 物体の重さ? 液体の重さ? 物体の体積? 物の浮き沈みの原因

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発表活動につながる ■ チームサイエンス ◍ 多様な観点でアプローチする ➢ 班毎に実験方法が異なる ◍ 物事の真の姿をさぐることにつながる ➢ 『探究』 ■ 1人1台端末の活用 ◍ 口頭のみの発表活動よりも,視覚的な情報があると効果的。 ➢ 写真や動画を活用する。 ⇔ 全員経験主義 14 液体の体積? 物体の重さ? 液体の重さ? 物体の体積? 物の浮き沈みの原因

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フックの法則の実験をデザインする ■ 教えなければいけないこと ◍ おもりの数(力の大きさ)とばねの伸びが比例すること。 ◍ グラフをかき方。 ■ 弾性体のより深い理解へ ◍ 何が起こったか。 ◍ ちがいは何か。 ◍ 原因は何か。 15 ➣ どのような事象を提示しますか? 事象との出会い 2つ事象の比較

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日常生活の不思議を教材にデザインする ■ お茶の不思議 ◍ 『麦茶』と『ルイボスティー』をティーパックからつくる。 ■ 1円玉の不思議(考えるカラスより) ◍ 『1円玉』と『木片』を水に浮かべる。 ■ 気柱の不思議 ◍ 気柱に『大きな』水滴と『小さな』水滴を垂らす。 16 ➣ 何の教材で,どのように授業をデザインしますか?

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科学を理解する ■ 科学には,特有な方法がある。 ➢ 『探究の過程』 ◍ 自分の考えを,実験を通して検証する。 ➣ 実験結果が予想通り … 考えが正しいとは限らない。 ➣ 実験結果が予想とちがう … 考えが間違っているとは限らない。 ■ 科学とは,暫定的なものである。 ◍ 『COVID-19 の感染者数の激減』 ➣ 科学の方法が間違っていたわけではない。 17

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人は科学が苦手(三井,2019) ■ 知識が豊富であるほど、意見が分かれる。 ➣ 科学リテラシーの必要性 ⇔ 様々なバイアス(e.g.,確証バイアス) 18 科学的な知識の豊富さ 少ない 多い 民主党支持者 共和党支持者 人 間 活 動 が 地 球 温 暖 化 の 原 因 と 考 え る 人 の 割 合 理科の授業で何ができるか?

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理科を通して涵養したい人間性 ■ 1つの事象についてあらゆる可能性を考える『探究』 ➢ 涵養される『知的謙虚さ』 19 液体の体積? 物体の重さ? 液体の重さ? 物体の体積? 物の浮き沈みの原因 私は,物体の重さが浮き沈みに 関係していると思う。 死海だと人が浮くって 聞いたことがある。 もしかしたら,液体の濃度も 関係しているのかな…

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本日の要点 ■ 生徒が探究する場面をつくる ➣ どのように? 何のために? ➣ 科学の理解,人間性の涵養 ■ 生徒の考え方を重視する 20 段階的に行う 事象との出会い 2つ事象の比較 ちがいを 見つける 原因を 考える 学習の 方向性 をもつ

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宣伝 ■ 令和4年度 筑波大学附属中学校 研究協議会 令和4年11月12日(土) A.M. 全体会 P.M. 分科会(研究授業) ■ 理科について一緒に勉強しませんか? ◍ 本日の講座内容,日頃の授業についてなど, ☜ 連絡,いつでもお待ちしております! 21 連絡先 # E-mail a120327s@gmail.com # twitter @sakunao_rika # HP(準備中) https://z- educationlab.com ・TSC(東京創造理科同人),アサリ会(阿佐ヶ谷で理科を学ぶ会) ・仮説設定勉強会 ・若手の会(理科勉強会)