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更新 ” しない ” ドキュメント管理 「イミュータブルドキュメントモデル」の実運用 kosui (@kosui_me) 1

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自己紹介 X / Twitter: @kosui_me 株式会社カケハシ (2022/08- 現在) 社内プラットフォームシステムの開発・運用 認証認可基盤 組織アカウント管理サービス 株式会社ディー・エヌ・エー (2019/04-2022/08) タクシー配車アプリ「GO 」( 当時MOV) 認証認可基盤 kosui ( 岩佐 幸翠 ) 2

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「現在の仕様や設計」の考古学あるある 「おや、ここはなぜこの仕様になったんだ」 何かを意図してこの仕様? 特に何も考えずこの仕様? 「こんなに丁寧で詳細なドキュメントが!」 しかし、よく見ると記事の作成日は古く 中途半端に更新されているが知りたいことは書いてない 「結局、何でこの仕様になったの? 」 ①謎の仕様を見つける ②ドキュメントを探す ③何もわからないことが分かる 3

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ドキュメントの悪循環 「じゃあ、最新の仕様・設計とその背景を全部書けばいいんだ!」 「全ての開発プロセスにドキュメント執筆を義務化して... 」 悪貨は良貨を駆逐する " 天才的 " な発想 4

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「最新の仕様・設計」を更新し続けるのは不可能 5

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意思決定に目を向ける 仕様・設計は変化していくが、それを決めた当時の意思決定は不変 意思決定の記録は、後から更新する必要がなく、仕様や設計の背景を端的に示せる 「結局、何でこの仕様になったの? 」 最新の仕様・設計は意思決定の積み重ね 不変である「意思決定」を中心に記録する 6

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イミュータブルドキュメントモデル イミュータブルデータモデルから影響を受けたドキュメント管理の考え方 継続して更新すべき「可変なドキュメント」をできるだけ減らし それらの元となる意思決定を「不変なドキュメント」として記録する 「なぜこの仕様にしたのか」「設計にあたって何を検討したのか」という 重要な情報は後世に残しつつ、ドキュメントの運用負荷を低減させる 7

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イミュータブルドキュメントモデル① 不変な情報 合意したら合意日を明記し、その後は更新しない 意思決定を不変な情報としてドキュメントにする 8

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イミュータブルドキュメントモデル② 可変な情報 大前提: なるべく書かない あくまで意思決定の要約として記述 関連する意思決定を冒頭で明示 仕様・設計は可変な情報としてドキュメントにする 9

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運用上の課題と解決策 10

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運用上の課題 11

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課題① テンプレ埋めが目的化しがち 意思決定を記録する上でPRD やDesign Doc は有用な手法 しかし、意思決定の規模によってはもっと手軽に書きたい 例) PRD の「競合分析」に「特になし」と書きがち ADR をベースとした、非常に軽量な意思決定の記録手法 背景: なぜその意思決定を下すか 決定: 何を決定したのか 影響: 決定による影響は何か 問題提起の時点で「背景」から記述しチーム内の認識合わせに利用 MTG で「それDR にしましょう!」「DR 書いたらそれベースでMTG しましょう」と声掛け PRD や Design Doc は目的に対して重厚な時も Decision Record 12

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運用事例 ( 弊チームの場合 ) 基本的には意思決定をDecision Record で記録している ディレクトリ構成 比率 13

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課題② 誰がいつレビューしたか分からない 当初はSlack でレビューコメントをしていた 過去の意思決定の記事は「これ、結局合意したの?してないの?」になりがち ドキュメントのテンプレートを変更し 記事の冒頭にてステータス・承認日・関係者が分かるように ステータス 提案中 承認日 2023/--/-- 関係者 この意思決定へ合意する場合は ☑ してください PdM 田中花子 ( 任意) エンジニア 山田太郎 記事の作成日や更新日は 誤字修正や操作ミスによって更新される 「意思決定を下した日」を明示すべき 組織の編成は不変ではないため チーム名ではなく個人名を書く 「この記事にある話、結局どうなったの ? 」 一目でわかる意思決定のステータス 14

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まとめ 意思決定を記録するハードルを下げる 軽量なドキュメント手法「Decision Record 」 問題提起のタイミングから書き始めて認識合わせに用いる 意思決定を理解するハードルを下げるため、意思決定のステータスを明示する 可変なドキュメントはなるべく増やさない 運用のコツ 15