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AI半導体に活かす64-bitプロセッサ技術のポイント.md 2026-01-27
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第1章 プロセッサ開発の背景
1.1 はじめに
現在、多くのAIアクセラレータ等の最先端のAIプロセッサ製品の開発が各社で進められています。しかし、
国内のAIプロセッサの開発ではなかなか競争⼒ある製品が作り上げられず、世界の最先端への道に性能向上
の壁ができてしまっています。その原因の⼀つに、AIアクセラレータの⾼速化に必須となる、AIアクセラレ
ータの制御を⾏う競争⼒ある64-bit プロセッサの開発の難易度が⾼いことがあげられます。特に昨今の設
計・実装が⾃動化された設計フローでは、⾼速化を強く指向する競争⼒の⾼い64-bit プロセッサ設計に柔軟
に追従できなくなっています。
64-bit プロセッサは近年、サーバーやPC向けだけでなく、スマートフォンやハイエンドの電⼦機器にも必須
のIPとなってきており、10兆円を超えるような市場規模となっています。その64-bit プロセッサの⼤部分が
RISCアーキテクチャに基づくもので、そのRISCの誕⽣をリードしてきた主要なアーキテクチャの⼀つがMIPS
でした。そのRISC構造は、現在はRISC-VやARM等の64-bit プロセッサに引き継がれ、これらRISCプロセッサ
の組込が特にAI⽤途のプロセッサやスマートフォン向けのアプリケーションプロセッサではデファクトとな
っています。筆者は1991年に世界で初めて⽣まれた単体の64-bit 商⽤マイクロプロセッサである1991年の
MIPS R4000の誕⽣後の黎明期の歩みに半導体メーカー側から携わって来ました。しかし、それから35年経っ
た現在でも、海外でも64-bit プロセッサを開発できる企業はかなり限られ、競争⼒の⾼いプロセッサ製品は
ごく⼀部の会社しか出せていません。国内でも近年はAI向けなどに64-bit プロセッサを開発しようとする会
社はいくつもありましたが、難易度が⾼く、なかなか競争⼒ある製品にまで⾄らない状況にあり、現在製品
化できているのは特殊⽤途向け以外ほぼ無くなってしまった感があります。しかし、それは64-bit プロセッ
サ誕⽣直後から利⽤されてきた競争⼒ある64-bit プロセッサ設計技術を今⼀度積み上げなおすことで、⼀気
に有⼒なプロセッサ製品のメジャーサプライヤーになれる良い機会でもあります。
そこで、64-bit プロセッサ開発の原点に⽴ち戻り、この64-bit プロセッサ誕⽣時の特徴・課題や各社の開発
とその後の事業展開を振り返って、現在でも継続して追い求め続けなければならない競争⼒ある64-bit プロ
セッサを開発するための製品化⼿法を考察していきたいと思います。特に難易度が⾼いと思われる、通常の
電⼦機器に搭載する組込向けに使⽤可能な、⾼性能でありながら⽐較的低コストで低消費電⼒の64-bit プロ
セッサの技術の解説をすることが、より64-bit プロセッサの製品化への技術障壁を少しでも下げてビジネス
を広げるのに役⽴つのではないかと考えます。
そして、当時世界最先端の技術でもあった64-bit プロセッサ開発での知⾒は、同じ半導体LSI開発である以
上、近年でのプロセッサ開発と同様に、昨今の最先端のAIアクセラレーター開発でアーキテクチャや内部構
成の検討を進める際の⼤きな推進⼒にもなると思います。世界トップの性能を⽬指す低消費電⼒で低コスト
な技術推進の⼿法の根幹は今も昔も変わるものではありません。AIハードウェア開発の関係者の⽅々にも時
代を先取りした事例として、性能に決定的な影響を与える半導体の適切な扱い⽅を振り返り、競争⼒ある最
先端製品開拓の可能性を検討する⼀助としていただければ幸いです。
1.2 ⾼性能化需要による64-bit プロセッサの誕⽣
1990年代当時でも、当時C⾔語以降の多くのプログラミング⾔語ですでに32-bitのデータ⻑が必要となってお
り、それらを頻繁に使⽤するワークステーションやパソコンでは32-bit プロセッサが使⽤されていました。
しかし、性能に対する要求が⾼まるにつれ、特にワークステーション向けで⾼性能な処理需要が主にビジネ
ス・科学⽤途で拡⼤し、32-bit プロセッサでは数値の桁数として、あるいはプログラムサイズとして、32-bit
で表される232=4ギガという値だけでは⾜りない場⾯が出てくるようになりました。特に仮想空間のサポー