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DMI Webアクセシビリティセミナー ~改正障害者差別解消法の2024年4月1日施行にあたり、企業は何をすべきか~ 第1部 改正障害者差別解消法の概要説明 2023年8月4日 森田 雄 / 株式会社ツルカメ / デジタルマーケティング研究機構 幹事

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スピーカー紹介 森田 雄(もりた ゆう) 情報アーキテクチャ、UXデザイン、アクセシビリティの専門家です。 株式会社ツルカメ 代表取締役社長 UXディレクター 公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構 幹事

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改正障害者差別解消法 国連の「障害者の権利に関する条約 (Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」の批准にともなう国内法整備の一環として、2016年4月1日より障害者差別解消法が施行されています。 現在は、改正法が公布(2021年6月4日)、あわせて基本方針の改定も閣議決定(2023年3月14日)されており、いずれも2024年4月1日より施行・適用されます。 改正法で「合理的配慮の提供」が民間事業者においても法的義務となったことで、大きく注目を集めているともいえます。

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合理的配慮の義務化とは? 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 【障害者差別解消法 第8条2項より】 「するように努めなければ」を「しなければ」に改め、努力義務が義務になったというのが今回の改正です。 ※合理的配慮は、東京都障害者差別解消条例(2018年10月1日施行)ではそもそも「義務」だったりしています。

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合理的配慮とは?【定義】 「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 【障害者の権利に関する条約 (Convention on the Rights of Persons with Disabilities) 第2条より】

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合理的配慮とは?【法】 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うこと(以下「合理的配慮」という。)を求めている。 【障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 より】 つまり、個別の当事者による困りごとの申し出にそれぞれ対応しましょうねということですが、義務化なので「対応しなければならない」ということです。

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Webアクセシビリティは、 改正法にどう関わるのか? Webサイトやデジタルの各種サービス等においてWebアクセシビリティを確保することは、合理的配慮の文脈ではなく、環境の整備として要請されています。

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環境の整備 法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要である。 【障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 より】

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環境の整備は努力義務 Webアクセシビリティの確保に努めることを求めているだけでなく、技術進歩の動向にアンテナをはることや、職員の教育にまで言及されていることについて、なんというか、姿勢を正す必要があるかと思います(個人の感想です)。

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合理的配慮と環境の整備 オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。 【障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 より】

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環境の整備の必要性 合理的配慮は個別対応ですが、その個別に対応を必要とする当事者はずっと個別に対応してもらわねばならないのでしょうか?(あるいは、企業からの目線でいうと、その当事者へずっと個別に対応し続けなければならないのでしょうか?) 答えは「Yes」です。 なぜなら法的義務だからです。 しかし環境の整備を行うことで、合理的配慮をあえて実施する必要がそもそもなくなることが期待されます。そのひとつに「Webアクセシビリティ」があるのです。

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Webアクセシビリティとは Web(インターネット)は、私たちの社会や生活において必須のインフラです。 障害の有無にかかわらず、誰もがWebを利用できるようにすること、また、その度合いのことを「Webアクセシビリティ」といいます。 Webアクセシビリティが民間事業者に対して義務化されている国も多くあります。アメリカ、EU、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国など。アメリカの航空アクセス法により、日本の航空会社もWCAG 2.0 AA準拠が求められているなど、取引のある事業者は各外国法も注視する必要があります。

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WCAG (Web Content Accessibility Gudelines) WCAGはWebアクセシビリティに関するガイドラインです。 WebサイトをWCAGに準拠させることで、障害のある人にとっても使いやすくなるだけでなく、(障害の有無にかかわらず)あらゆる使用環境や状況でも使いやすいWebサイトになります。 WCAG 2.0が現在もっとも広く浸透しているガイドラインのバージョンで、世界各国の法律が参照しているバージョンでもあります。

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WCAGのバージョン WCAG 2.0 / 2008年 勧告 (Recommendation) JIS X 8341-3:2016はWCAG 2.0を包含し、日本語環境に起因するガイドラインを追加しています。 WCAG 2.1 / 2016年 勧告 (Recommendation) WCAG 2.0に加え、モバイル環境への配慮、弱視、認知・学習障害への対応強化。 WCAG 2.2 / 2023年7月 勧告案 (Proposed Recommendation) WCAG 3.0 / 2023年3月 作業草案 (Working Draft)

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ということで 本日のセミナーでは、 「合理的配慮の提供」はもちろんのことですが、 その土台となる「環境の整備」についてまでを含めて、 企業は何を取り組めばいいのか?ということにつきまして、プレゼンターと参加者の皆さまとでディスカッションできればと考えております。 どうぞよろしくお願いいたします。