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デライト・ベンチャーズで 実践した“リーン”なプロダクト開発 株式会社デライト・ベンチャーズ 坂東 龍 株式会社ウィズカンパニー 小林 南実

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デライト・ベンチャーズ(DV)とは DeNAグループのベンチャーキャピタル(VC)& ベンチャービルダー(VB) VC VB 成長が期待できる有望なスタートアップへ投資事業 DeNA内外の起業希望者と共に新規事業を立ち上げ、独立 起業を支援する事業。上場等の大きな成長目指す 本講演はベンチャービルダー(VB)の 事業立ち上げプロセスについてお話しします。

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登壇者紹介 株式会社デライト・ベンチャーズ プリンシパル(ベンチャー・ビルダー責任者) 坂東 龍 株式会社ウィズカンパニー 執行役員CTO 小林 南実

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無駄な失敗をなるべく避ける! 新規事業の企画・検証手法 デライト・ベンチャーズ 坂東 龍

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スタートアップは90%以上失敗する

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失敗する理由 ● 顧客に解決すべき課題がなかった(小さかった) ● 課題があっても充分に課題解決できなかった ● 参入タイミングが悪かった などが失敗の大きな要因 →プロダクト開発前からこれらの失敗要因を見つけて、  失敗確率を減らすべし!

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VB新規事業立ち上げのフロー ① 企画 ② 検証 ③開発・運営 ④スピンアウト (独立) 資 金 調 達 予算100万円+α (3ヶ月間) 累計予算5,000万円迄 (1年〜1年半) 外部調達 (約5,000万円〜) 予算〜10万円 (1ヶ月間) ● 各プロセスで投資判断・審査を実施 ● 大きく成功が期待できるプロダクトに絞りこんでから エンジニアに開発してもらう(失敗確率が高いものは開発しない) IPO(上場)等 大きな成長へ 約1,000件 約60件 11件 3件 ※VB内で開発せずに独立起業したのは6社

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ベンチャー・ビルダーの 企画フェーズ

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企画フェーズ ● 新規事業アイデアを明文化する ● その後のプロダクト検証・開発の羅針盤となる ① 企画 ② 検証 ③開発

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企画フェーズの提案要素 ① 企画 ② 検証 ③開発 ● ターゲット ● 顕在課題 ● 課題の大きさ ● ソリューション内容 ● 優位性 ● なぜ今? ● なぜあなた?

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企画フェーズの提案フォーマット ● 私の事業案は「                    」です。 ● ターゲットユーザーは「        」な状態を目指している「       」の人たちです。 ● その人たちには目指す状態を阻む「                」という大きな課題があります。 ● その課題の大きさを金額換算すると年間「    」億円程度となります。 ● 具体的には課題を抱えている人の人数・社数「     」人(社)× 1人or1社あたりの課題の大きさ 「      」円/年で算出しています。 ● その課題を直接的に解決するソリューション案は「             」です。  ● 具体的には「         」「         」が可能なサービスです。 ● 既存代替手段や競合には「        」「        」などがありますが、 ● 私の事業案は「             」という点が、課題解決する上で優れています。 ● 今この事業を始める理由は「                  」だからです。 ● この事業を私がやるべき理由は「                  」だからです。 ● 次の検証フェーズにおいては、「       」「       」を特に調べます。

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企画フェーズのチェック項目 項目 Ideation時点でのチェック項目例 ターゲット ・課題に直面し解決するための行動を起こしているターゲットは既に実在しているか? ・ターゲットは自身の周りやネット上で実在を確認できるか? 課題 ・顕在化している課題か?(想像や潜在課題ではなく解決しようとする行動事象があるか?) ・課題設定の抽象度が高すぎたり、逆に粒度が細かくなりすぎたりしていないか? ・課題を複数掛け合わせていないか?(検証が複雑になる) ・ソリューションありきで逆引きで無理矢理に課題設定していないか? 課題の大きさ ・金額換算すると年間1000億円以上の規模感が期待できるか? ・市場規模に希望的シェア率を掛けるのではなく、ボトムアップで算出しているか? ソリューション ・課題解決するためにターゲットが起こしている行動に則した解決策か? ・労働集約型ではなく、テクノロジー等を活用し指数関数的に伸び得るか? ・既に起こしている解決行動・競合に比べて10xな解決策か? ・明らかな法的・システム的なノックアウトファクターがないか? 代替手段・競合 との比較 ・課題解決する上での競合・代替手段は存在するか?(存在しないといけない) ・競合・代替手段との優位性は課題解決に即しているか? なぜ今? ・代替手段・競合がまだ存在ないのに参入しようとしていないか? ・同じ課題・ソリューションで攻めている競合は既に勝者になっていないか?

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ベンチャー・ビルダーの 検証フェーズ

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検証フェーズ ● アイデアの蓋然性や実現性を客観的に確認する ● 顧客の課題を深く理解する ● リーンに、クイックに検証を回す(開発はまだ着手しない) ● 事業成功に向けてネガティブな要素も前向きに捉える ① 企画 ② 検証 ③開発

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検証フェーズ ● 顧客課題の定性・定量理解 ● 代替手段・競合の調査 ● 技術・法令等実現性 ● 市場性・顧客リーチの検証 ● 商品価値の検証 (まだ開発はしない) 深く知る (ヒアリング調査) 実験する (簡易試作品検証)

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検証フェーズ(市場性を「実験する」) 検証手法例 ウォッチ指標例 サービス内容を示し顧客のヒキのボリューム(市場性)を検証する (ノーコード)LP +少額マーケティング 事前登録数 (数十は欲しい) to C to B 商談数 トライアル確約数 (5件程度は見つけたい) ppt営業資料で商談

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検証フェーズ(商品価値を「実験する」) 課題削減量 満足度(NPS) 事前予約 検証手法例 ウォッチ指標例 簡易試作プロダクトで満足度・利用意向を検証する 価格提案した上で ・(ノーコード)プロト ・各SNS等既存ツール アクション量・継続率 満足度(NSP) 事前予約数 to C to B 価格提案した上で ・(ノーコード)プロト ・人力でのソリューション

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前半(企画・検証フェーズ) まとめ

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前半(企画・検証フェーズ)まとめ 1. 前提として新規事業は90%以上失敗する 2. いきなり開発するのではなく、無駄な失敗を避けるために 上流工程でふるいにかける 3. 企画アイデアでは「課題」などの要素をシンプルに明文化し、 検証や開発の羅針盤をつくる。 4. 顧客や競合や環境を深く知り、 簡易な試作プロダクトを作り客観的にデータ検証する ① 企画 ② 検証 ③開発

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WITH Fitness立ち上げにおける 開発フェーズでの実践事例 株式会社ウィズカンパニー 小林 南実

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2019年秋 ・プロジェクト始動 : 企画フェーズ→検証フェーズ 2020年春 ・開発フェーズ突入 : リードエンジニア参画 2021年秋 ・スピンアウト : ウィズカンパニーとして引き続き開発/運営 WITH Fitness(ウィズフィットネス) オンラインパーソナルトレーニング

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トレーナーによるマンツーマン指導を オンラインで受けることができる トレーナー お客様 食事や運動に関する 日々の報告・質問 チャットでのアドバイス ビデオ通話での対面レッスン 専用アプリ WITH Fitness(ウィズフィットネス) オンラインパーソナルトレーニング

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前半のおさらい 事業立ち上げにおいて重要なこと ・リーンに検証を繰り返し、無駄な失敗を避ける 検証フェーズから開発フェーズへ   リリースさえすれば価値は実現する   具体的な検証のためにプロダクトを開発 ○ ×

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前半のおさらい 事業立ち上げにおいて重要なこと ・リーンに検証を繰り返し、無駄な失敗を避ける 検証フェーズから開発フェーズへ   リリースさえすれば価値は実現する   具体的な検証のためにプロダクトを開発 ○ ×

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MVP開発 (Minimum Viable Product) リーンに検証を繰り返し、無駄な失敗を避けるために

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MVP(Minimum Viable Product)とは MVP = “価値を検証できる最小限のプロダクト”   最初から理想形を開発 → 長い開発期間を無駄にするリスクが伴う   まずはMVPを開発   → 検証を繰り返しながら着実に開発を積み上げる ○ ×

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MVP(Minimum Viable Product)とは MVP = “価値を検証できる最小限のプロダクト”   最初から理想形を開発 → 長い開発期間を無駄にするリスクが伴う   まずはMVPを開発   → 検証を繰り返しながら着実に開発を積み上げる → ○ × “価値を検証できる最小限”ってどんなプロダクト?

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①“検証したい価値”を明確にする “価値を検証できる最小限のプロダクト”を定義するために

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検証内容 ・LP+SNS広告を用いた事前登録テスト ・既存チャットツールを用いたオンライン指導テスト 検証結果 ・事前登録数や満足度から、顧客ニーズやオンライン指導の価値を確認 ・“毎日繰り返される煩わしさ”がオンライン指導の大きな障壁に 検証フェーズ ①“検証したい価値”を明確にする 商品価値を実験 市場性を実験

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検証内容 ・LP+SNS広告を用いた事前登録テスト ・既存チャットツールを用いたオンライン指導テスト 検証結果 ・事前登録数や満足度から、顧客ニーズやオンライン指導の価値を確認 ・“毎日繰り返される煩わしさ”がオンライン指導の大きな障壁に 検証フェーズ ①“検証したい価値”を明確にする 商品価値を実験 市場性を実験

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検証内容 ・LP+SNS広告を用いた事前登録テスト ・既存チャットツールを用いたオンライン指導テスト 検証結果 ・事前登録数や満足度から、顧客ニーズやオンライン指導の価値を確認 ・“毎日繰り返される煩わしさ”がオンライン指導の大きな障壁に → 検証フェーズ ①“検証したい価値”を明確にする 商品価値を実験 市場性を実験 事業として提供しうる大きな価値が見えてきた

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[仮説] 提供しうる価値 ・“煩わしさ”を解決することで、オンライン指導の価値を最大化する 検証したいこと ・専用アプリによって、“毎日繰り返される煩わしさ”を解決できるのか 検証フェーズから開発フェーズへ ①“検証したい価値”を明確にする

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[仮説] 提供しうる価値 ・“煩わしさ”を解決することで、オンライン指導の価値を最大化する 検証したいこと ・専用アプリによって、“毎日繰り返される煩わしさ”を解決できるのか 検証フェーズから開発フェーズへ ①“検証したい価値”を明確にする

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[仮説] 提供しうる価値 ・“煩わしさ”を解決することで、オンライン指導の価値を最大化する 検証したいこと ・専用アプリによって、“毎日繰り返される煩わしさ”を解決できるのか → 検証フェーズから開発フェーズへ ①“検証したい価値”を明確にする これらを検証できる最小限のプロダクト = MVP

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②“必要な機能”を考えていく “価値を検証できる最小限のプロダクト”を定義するために

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開発対象の取捨選択 ②“必要な機能”を考えていく 毎日繰り返し行われる ・日々の生活を報告するレポート機能 ・指導内容を共有するノート機能 ・やり取りの中心となるトーク機能 開発する ・基本情報を記入するアンケート機能 ・オンラインレッスンを予約する機能 低頻度で行われる 開発しない

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開発対象の取捨選択 ②“必要な機能”を考えていく 毎日繰り返し行われる ・日々の生活を報告するレポート機能 ・指導内容を共有するノート機能 ・やり取りの中心となるトーク機能 開発する ・基本情報を記入するアンケート機能 ・オンラインレッスンを予約する機能 低頻度で行われる 開発しない

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開発対象の取捨選択 ②“必要な機能”を考えていく 毎日繰り返し行われる ・日々の生活を報告するレポート機能 ・指導内容を共有するノート機能 ・やり取りの中心となるトーク機能 開発する ・基本情報を記入するアンケート機能 ・オンラインレッスンを予約する機能 低頻度で行われる 開発しない

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開発対象の取捨選択 ②“必要な機能”を考えていく 毎日繰り返し行われる ・日々の生活を報告するレポート機能 ・指導内容を共有するノート機能 ・やり取りの中心となるトーク機能 開発する ・基本情報を記入するアンケート機能 ・オンラインレッスンを予約する機能 低頻度で行われる 開発しない 検証フェーズにて見えてきた観点を軸に 開発する機能を取捨選択 →

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③“必要なクオリティ”を考えていく “価値を検証できる最小限のプロダクト”を定義するために

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【再掲】検証したいこと ・専用アプリによって、“毎日繰り返される煩わしさ”を解決できるのか 価値を検証できる最小限のクオリティ   とりあえず専用アプリから食事を記録できる   専用アプリを使うことで日々の食事記録を無理なく続けられる “顧客体験の実現”をゴールに ③“必要なクオリティ”を考えていく ○ ×

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【再掲】検証したいこと ・専用アプリによって、“毎日繰り返される煩わしさ”を解決できるのか 価値を検証できる最小限のクオリティ   とりあえず専用アプリから食事を記録できる   専用アプリを使うことで日々の食事記録を無理なく続けられる “顧客体験の実現”をゴールに ③“必要なクオリティ”を考えていく ○ ×

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【再掲】検証したいこと ・専用アプリによって、“毎日繰り返される煩わしさ”を解決できるのか 価値を検証できる最小限のクオリティ   とりあえず専用アプリから食事を記録できる   専用アプリを使うことで日々の食事記録を無理なく続けられる “顧客体験の実現”をゴールに ③“必要なクオリティ”を考えていく ○ ×

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開発スタート〜最初のリリース   最初に決めた仕様をそのまま一直線に作り上げていく   プロダクト仕様のブラッシュアップを積み重ねる MVP開発中の主な取り組み ・ユーザーインタビュー ・メンバー自らオンライン指導体験 ・毎日の朝会でのデモ試用 / 仕様議論 “顧客体験の実現”に時間を使う ③“必要なクオリティ”を考えていく ○ ×

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MVP完成!祝ベータ版リリース!

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MVP完成!祝ベータ版リリース! MVPを用いて価値検証 ・専用アプリを用いたオンライン指導テストを実施 ・顧客の満足度、ダイエット継続率、ともに向上 →「“煩わしさ”を解決することで、オンライン指導の価値を最大化する」 そして次なる検証へ... ・アンケート機能、レッスン予約機能の追加 ・“事業として成り立つのか”という部分の検証に入っていく

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MVP完成!祝ベータ版リリース! MVPを用いて価値検証 ・専用アプリを用いたオンライン指導テストを実施 ・顧客の満足度、ダイエット継続率、ともに向上 →「“煩わしさ”を解決することで、オンライン指導の価値を最大化する」 そして次なる検証へ... ・アンケート機能、レッスン予約機能の追加 ・“事業として成り立つのか”という部分の検証に入っていく

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後半の話まとめ MVP = 価値を検証できる最小限のプロダクト ① “検証したい価値”を明確にする ○ 検証フェーズに何度も立ち戻る ② “必要な機能”を考えていく ○ 検証したい価値に絞って機能を取捨選択していく ③ “必要なクオリティ”を考えていく ○ 検証したい顧客体験の実現をゴールとする

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本日のまとめ デライト・ベンチャーズでの新規事業立ち上げ (1)無駄な失敗をなるべく避ける!新規事業の企画・検証手法 ・課題をしっかり設定し、リーンに検証を行なっていく (2)WITH Fitness立ち上げにおける開発フェーズでの実践事例 ・価値を検証できる最小限のプロダクトをまずは作っていく デライト・ベンチャーズ:https://delight-ventures.com/ WITH Fitness:https://with-fit.com/