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考える技法 タイム・コンサルタントの日誌から:考える技法——人間は言葉で 考えるか https://brevis.exblog.jp/30375115/ 1

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目次 1. 人間は言葉で考えるか 2. 思考の3つのモードを使い分ける 3. 『考える技法』を学ぶ上で大切なこと 4. どう考えるかより、いつ考えるかの方が大事である 2

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想定読者 思考力を向上させたい人 ▶ ビジネスパーソン、学生、研究者 ▶ 人材開発に携わる人 ▶ 3

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Appendix: 用語辞書 言語思考仮説: 使用する言語が思考や世界認識に影響を与えるという仮説 ▶ サピア=ウォーフの仮説: 言語思考仮説の別名。エドワード・サピアとベンジャミン・リー・ウォーフが提唱 ▶ IPOモデル: Input-Process-Outputの略。システム分析で用いられる ▶ 三上: 「馬上、枕上、厠上」の略。考えるのに適した3つの場所を指す ▶ インプット学習: 知識情報の取得を中心とした学習方法 ▶ アウトプット学習: 取得した知識を基に自分で考え、表現する学習方法 ▶ Know-how: やり方、方法論 ▶ Know-when: タイミング、時機 ▶ 4

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1. 考える技法——人間は言葉で考えるか 「英語で考える」という概念への違和感 ▶ 英語で文章構築の必要性は理解できる - 人間が本当に言葉で考えているかは疑問 - 言語思考仮説(サピア=ウォーフの仮説) ▶ 20世紀初頭の言語学者が提唱 - 使用する言語が思考を枠付ける - 言語の構造が世界認識に影響を与える - 5

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1. 考える技法——人間は言葉で考えるか(続き) 言語と思考の関係性 ▶ 語彙の違いが思考に影響を与える例 - 雪を表す言葉の豊富さ(日本語、アイヌ語) - マネジメント関連用語の違い(英語と日本語) - 文法構造の影響 - 時制、単数複数の区別、仮定法などが思考の枠組みに影響 - 6

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1. 考える技法——人間は言葉で考えるか(続き) 言葉と思考の関係は複雑である ▶ 語彙の違いが思考の枠組みに影響を与える可能性がある - 文法構造も思考に影響を与える - 思考のプロセスは必ずしも言語化されない ▶ 7

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思考プロセスの図式化 1.非構造的な物理的世界からの情報入力 ▶ 2.言語・記号による情報の分節化 ▶ 3.概念のネットワーク形成(思考の表現形式) ▶ 4.無音の世界でのアイデア創出(最重要段階) ▶ 5.新しい概念ネットワークの構築 ▶ 6.言語化・記号化による定着 ▶ 8

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1. 考える技法——人間は言葉で考えるか(続き) 重要なアイデア創出の特徴 ▶ 言語化・定式化は自己への伝達として機能 - 結論 ▶ 言語・記号は思考に重要な役割を果たす - しかし、最も重要なのは非言語的な無音の世界でのアイデア創出 - 9

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2. 考える技法——思考の3つのモードを使い分ける 思考の3つのモード ▶ 1.リアルタイムに考える - 2.集中して深く考える - 3.何か他のことをしながらぼんやり考える - 11

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2. 考える技法——思考の3つのモードを使い分ける(続き) 1. リアルタイムに考える 情報のインプットとアウトプットを同時処理 - 営業職やプロジェクトマネージャーに多い能力 - 扱える情報の広さや深さに限界がある - 2. 集中して深く考える 静かな環境が必要 - 外部からの干渉を避ける必要がある - 職場では専用のスペースを確保することが重要 - 3. 何か他のことをしながらぼんやり考える バックグラウンドで思考プロセスが継続 - 「馬上、枕上、厠上」の三上が古くから知られている - 12

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2. 考える技法——思考の3つのモードを使い分ける(続き) 思考の無意識的側面 ▶ 意識的な行為だけでなく、無意識的にも行われる - 呼吸や歩行のように、習熟により無意識化される - 効果的な思考のための方策 ▶ 各モードの得意不得意を認識する - 状況に応じて適切なモードを選択する - バックグラウンド思考のためのトリガーを見つける - 13

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2. 考える技法——思考の3つのモードを使い分ける(続き) アイデア創出のプロセス ▶ ジェームズ・W・ヤングの5段階ステップを参考に - 1.情報収集:関連する材料やデータを集める - 2.消化:集めた情報を咀嚼し、関連性を探る - 3.無意識的な発酵:問題を意識の外に放り出す - 4.ひらめき:価値のあるアイデアが突然生まれる - 5.具体化と適応:アイデアを現実世界に適用する - 問題を心の外に放り出す段階が重要 - 結論 ▶ 3つのモードを適切に使い分けることが重要 - 自分の思考のフォームを確立することが効果的 - 14

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3. 『考える技法』を学ぶ上で大切なこと 従来の教育システムの問題点 ▶ 大学の講義は一方的な知識伝達に偏重 - 考えるプロセスを教えていない - 試験は知識の丸暗記を促進 - 効果的な学習方法 ▶ インプット学習とアウトプット学習の組み合わせ - 前半はインプット、後半(特に最後の1年)はアウトプット - 自分で考え、他者と議論するプロセスが不可欠 - 15

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3. 『考える技法』を学ぶ上で大切なこと(続き) 思考とモデリングの学び方 ▶ 問題を自分で考えてから答えを見る(仮説立て、のちに検証) - 答えが異なる場合、違いを検討し、自分の考えを伸ばす - データを自分で取得し、データの特性を体験的に理解する - 考えることは身体的行為である ▶ 脳は臓器の一つであり、体調管理が重要 - 睡眠と運動が思考力に影響する - データ収集と分析も体感的な行為 - 16

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3. 『考える技法』を学ぶ上で大切なこと(続き) 学びの態度を変える必要性 ▶ 科挙や軍隊教育の影響から脱却する - 創造性を育む教育方法を模索する - 思考の技法を意識的に学ぶ姿勢が重要 - 18

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かけられた魔法が解けるまでの個人差は想像以上に大きいん だよ --UTUTU REMIX · Jinmenusagi / daokoより Jinmenusagi 19

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4. 考える技法——どう考えるかより、いつ考えるかの方が大事である 「いつ考えるか」の重要性 ▶ ジェラルド・M・ワインバーグの言葉:方法(Know-how)より時機(Know-when)が重要 - 自分がどういう状態のときに考えるべきかを理解する必要性 - 思考・感情・欲求のシステムモデル ▶ Input(知覚)→ Process(思考・感情・欲求)→ Output(行動) - 思考は最上位層、その下に感情層、最下層に欲求層 - 20

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4. 考える技法——どう考えるかより、いつ考えるかの方が大事である(続き) 感情が思考に与える影響 ▶ 感情が思考をドライブし、方向づける - 強い感情下では思考の生産性が低下 - 感情によって想像力が活性化し、さらに感情を強める循環 - 欲求の構造と影響 ▶ 生理的欲求(食欲、睡眠欲など) - 社会的欲求(承認欲求、支配欲求、共感欲求、分離欲求など) - 欲求が感情を励起し、思考に影響を与える - 21

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4. 考える技法——どう考えるかより、いつ考えるかの方が大事である(続き) 効果的な思考のための方策 ▶ 自己の感情状態を点検する - 感情の波が通り過ぎるのを待つ(感情のサイクルは20-30分程度) - 「考えない」 「感じない」技術を身につける(例:茶道、音楽鑑賞) - 22

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4. 考える技法——どう考えるかより、いつ考えるかの方が大事である(続き) 自己認識の重要性 ▶ 人間は感情的な動物であることを理解する - 感情に動かされやすい自己を認識する - 感情的な行動や決断を後づけで合理化する傾向を自覚する - 25

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4. 考える技法——どう考えるかより、いつ考えるかの方が大事である(続き) 結論 ▶ 考えるべき時に考え、考えるべきでない時に考えるのをやめる - 自己の感情と欲求への理解が思考の生産性向上につながる - 26

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まとめ 1. 言葉は思考に重要だが、無音の世界でのアイデア創出が最も重要 2. 思考の3つのモード(リアルタイム、集中、バックグラウンド)を適切に使い分ける 3. 効果的な学習には、インプットとアウトプットの組み合わせる 4. 考えるタイミングを意識し、感情と欲求の影響を理解すること 5. 自己認識と体調管理が思考力向上の鍵。もっといい仕事がしたいなら、もっと寝よう。 27