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“規範的リスク分析”の確⽴に向けて ⽇本リスク研究学会第32回年次⼤会(2019/11/24@東京⼯業⼤学) の内容をもとにWeb資料⽤に改変 林岳彦 国⽴環境研究所環境リスク・健康研究センター 「リスク評価に求められる価値の フレームとはなにか」

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本⽇の構成 I. なぜ「規範的リスク分析」か? II. 「規範的リスク分析」とは(もしそれが あるとしたら)どのようなものか? III.「規範的リスク分析」のケーススタディ のイメージ IV.「規範的リスク分析」の確⽴に向けて

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本⽇の構成 I. なぜ「規範的リスク分析」か? II. 「規範的リスク分析」とは(もしそれが あるとしたら)どのようなものか? III.「規範的リスク分析」のケーススタディ のイメージ IV.「規範的リスク分析」の確⽴に向けて

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「リスク学は価値/倫理の重要性 を無視している」

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リスク学系の研究者の⼤部分は 価値・倫理は重要だと 本気で考えてますよ いやいやいやいや

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でも 価値・規範の問題にどうやって コミットすれば良いのか よくわからない ところはたしかにある

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また、 価値・規範の問題はほんらい われわれの守備範囲ではないと 思っているところはある

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たとえば われわれが 省庁の(”下”の⽅の)検討会で テクニカルな議論をして

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価値・規範については “上”の委員会で議論する ものですよね

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と思っていた時期もありました

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でも“上”の委員会でも 価値・規範の専⾨的な 議論なんてしてない

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そもそも 価値・規範の議論についての 専⾨性のある委員も⼊っていない (*ただし場合によるかも)

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つまり 政策形成において 価値・規範についての 専⾨的で公的な議論は 誰もしていないのである

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本当にそれでよいのか?

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リスク分析の結果だけから 公共政策の「べき」を導くことは 本来できない(例:喫煙への規制) いやいやいやいや

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たとえ⼀⾒ リスクベースドの政策形成でも 価値・規範に関する判断は 常に/既に ある リスク学プロパーの⼈々ほどそれは分かっている

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⺠主的な決定のためには 価値・規範のexplicitな 議論が必要

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⺠主的な決定のためには 価値・規範のexplicitな 議論が必要 そしてリスク分析は ⺠主的な議論のために あってほしい (「リスク分析は棍棒ではない」)

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価値・規範の議論は 「われわれの守備範囲ではない」 とはいえ テーブルに座って待っていれば 誰かが運んできてくれる というものではない

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われわれもテーブルを⽴って できることを探そう

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そのための ひとまずの道標としての 「規範的リスク分析」 というコンセプトを 今回は考えていきたい と⾔ってもすごく斬新な話をするわけではなく、今まで陰に 陽に議論されてきたことを「規範的リスク分析」というコン セプトのもとで整理してみる、というかんじになります

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本⽇の構成 I. なぜ「規範的リスク分析」か? II. 「規範的リスク分析」とは(もしそれが あるとしたら)どのようなものか? III.「規範的リスク分析」のケーススタディ のイメージ IV.「規範的リスク分析」の確⽴に向けて

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「規範的リスク分析」とはどのようなものか? 規範的な分析×リスク分析=? ■ よく考えてみると微妙に異なる ⼆通りのありようがある 規範的な観点を 踏まえた リスク分析 リスク分析を 踏まえた 規範的な分析

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「規範的リスク分析」とはどのようなものか? 規範的な分析×リスク分析=? ■ よく考えてみると微妙に異なる ⼆通りのありようがある 規範的な観点を 踏まえた リスク分析 リスク分析を 踏まえた ELSI分析

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規範的な観点を踏まえた分析:リスクの分配(1) 集団全体にとっては「<10 」のリスクでも 特定のsusceptible populationでは常に 「>>10 」である状態は、公正といえるか? ■サブ集団の間でのリスク分配 ありうべき規範的な議論の幅がサブ集団を巡 るリスク分析の解像度を規定する Susceptibilityのdistributionが確率的なものではなく 決定論的なものであるときほど、分配の考慮が重要 (10-5は集団内の”確率”なのか、”割合”なのか?) 特定のサブ集団へのリスク分配の偏りの分析 ・ -5 -5 リスク分析の段階で規範的な観点を踏まえることの重要性

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規範的な観点を踏まえた分析:リスクの分配(2) 項⽬間分配(いわゆるリスクトレードオフ) ■ 質的に異なる項⽬間での分配のコンフリクト ありうべき規範的な議論の幅がリスク分析 に含まれるべき項⽬のスコープの範囲を規 定しうる ・ ある項⽬Aによるリスクを減らすが、別の項 ⽬Bによるリスクを増す政策は、規範的に正 当化できるか? 質的に異なる項⽬間での分配のコンフリクトを評価 する上では、質的な価値についての何らかの重み付 けの判断が必要となる

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規範的な観点を踏まえた分析:リスクの分配(3) 通時的なリスク分配(世代内/世代間) ■ 異なる時点間での分配のコンフリクト ・ ある時点Aにおけるリスクを減らすが、将来 の時点Bにおけるリスクを増す政策は、規範 的に正当化できるか? 異なる時点におけるコンフリクトを評価する上では、 主体や状況の変化に応じた、価値についての何らか の重み付けの判断が必要となる ありうべき規範的な議論の幅がリスク分析 の時間的なスコープのとり⽅を規定しうる

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規範的な観点を踏まえた分析:リスクの分配(1ʼ-3ʼ) 加害/被害の⾮対称性 ■ 単なる数値上の対称/⾮対称性だけではなく、 「加害/被害の⾮対称性」や「交渉⼒における ⾮対称性」を考慮に⼊れることも重要 サブ集団への リスク分配 e.g.,将来世代、⼦供、⺠族的マイノリティ... 項⽬間分配 異なる時点間 での分配 加えて 「⾮対称性」 の観点

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規範的な観点を踏まえた分析:リスクの分配(1”-3”) リスク分配を巡るコンテクスト ■ サブ集団への リスク分配 項⽬間分配 異なる時点間 での分配 経緯・⽂脈 リスク分布の状況そのものだけではなく、どのよう な経緯・⽂脈でそのリスクの分布が⽣じたかもその 規範的な意味づけを考える上で重要

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「規範的リスク分析」とはどのようなものか? 規範的な分析×リスク分析=? ■ よく考えてみると微妙に異なる ⼆通りのありようがある 規範的な観点を 踏まえた リスク分析 リスク分析を 踏まえた 規範的な分析

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「規範的リスク分析」とはどのようなものか? 規範的な分析×リスク分析=? ■ 規範的な観点を 踏まえた を踏まえた 規範的な分析 解像度の リスク分析 よく考えてみると微妙に異なる ⼆通りのありようがある

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リスク分析を踏まえて:規範的な分析の軸(1) 公共政策規範における代表的な評価軸(総論) ■ 効率性 公正性 ⾃由 本質性 ・ ・ ・ ・ 例:リスクの過剰/過⼩規制により個⼈ の⾃由の⾏使が妨げられていないか 例:リスクの過剰/過⼩規制により格差 の拡⼤を助⻑していないか 例:リスクの過剰/過⼩規制により達成 可能な功利⽔準が低下していないか 例:リスクの過剰/過⼩規制が⽂化的価 値を損なっていないか リスクベースドの管理は単純な功利主義(効率性の最⼤化主義)と思われ がちだが、現実の管理はそう単純な話ではない(ことを⼀番わかっている のはおそらくリスク研究者だと思う) ⾃由主義 正義論 功利主義 本質主義

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リスク分析を踏まえて:規範的な分析の軸(2) 平等主義 公共政策規範における各論の例 :”公正な分配”の内実に関するもの ■ ・ 優先主義 ・ ⼗分主義 ・ ⼈々の相対的格差を縮めることにより⾼い価値 がある(反⾯、絶対的⽔準の低下をもたらしやすい) もっとも不遇な⼈々の絶対的な⽔準を改善する ことにより⾼い価値がある すべての⼈々が⼀定の閾値以上の⽔準にあるこ とにより⾼い価値がある c.f., 基準値

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リスク分析を踏まえて:規範的な分析の軸(4) パターナリズム vs ⾃⼰決定の観点 歴史的にもリスク分析は公共的意思決定の場⾯を 想定してきたが、「個⼈の⾃由(権利)の遂⾏の ためのリスク分析」というアプローチもあってよ いのでは? 公共政策規範における各論の例 :⾏為への規制の正当化に関するもの (1) ■ 例:本⼈の意志を上書きする形での規制を⾏う ことは個⼈の⾃由の侵害ではないか? 当然、規範論の分野では⻑年の議論の蓄積がある 近年は、リバタリアンパターナリズム(ナッジ) の是⾮なども議論となっている ・ ・ ・ “パーソナライズド・リスク分析”

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リスク分析を踏まえて:規範的な分析の軸(3) 他者危害原則 公共政策規範における各論の例 :⾏為への規制の正当化に関するもの (2) ■ 他者に危害を与えうる⾏動に対しては個⼈/集 団の⾃由を規制することも正当化される ・ 受動喫煙のリスクは他者危害原則から基本 的に容認できない ・ 温室効果ガス、“⾹害”のリスクは? ・ 不確実性のもとでの他者危害原則とその他 の規範軸との考量が求められる 基本的に公害問題は他者危害原則の論点を含む

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「規範的リスク分析」とはどのようなものか? 規範的な観点を 踏まえた を踏まえた 規範的な分析 解像度の リスク分析 サブ集団・項⽬間分配・通時的分配の 観点を含むリスクの分布計算 ⾮対称性・⽂脈を考慮したリスクの分布計算 計算されたリスク分布に対する 規範的観点からの整理・評価 +⾃⼰決定 +他者危害 +⼗分主義 etc

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本⽇の構成 I. なぜ「規範的リスク分析」か? II. 「規範的リスク分析」とは(もしそれが あるとしたら)どのようなものか? III.「規範的リスク分析」へのアプローチの イメージ IV.「規範的リスク分析」の確⽴に向けて

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる 他者危害原則が議論のベース

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる ⾼感受性・交渉⼒低 (優先主義・本質主義)

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる ⾼感受性・交渉⼒低 (優先主義・本質主義) パターナリズム (私的領域への公権⼒の介⼊の是⾮)

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる リスクの偏在 (優先主義か⼗分主義か?)

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる 労働安全・交渉⼒低 交渉⼒⾼(⽐較的に) 低暴露×多⼈数

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる 労働安全・交渉⼒低 交渉⼒⾼(⽐較的に) 低暴露×多⼈数 ⾼暴露×⼩⼈数

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アプローチ例:受動喫煙の例で考えてみる 曝露経路・対象別でのリスク分配の分析 規範的観点を踏まえた受動喫煙のリスク分析 家庭での曝露 ■ ・ 職場での曝露 喫茶店での曝露 路上での曝露 ⼩児・乳幼児への曝露 客への曝露 従業員への曝露 ⾼感受性集団への曝露 歩⾏者への曝露 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それぞれの組み合わせにごとにリスクの⼤きさと その規範的含意が⼤きく異なりうる 労働安全・交渉⼒低 個⼈喫茶店の⽂化的価値 (本質主義) 経営への影響 (功利主義・サブ集団) 交渉⼒⾼(⽐較的に) 低暴露×多⼈数 ⾼暴露×⼩⼈数

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アプローチ例: Betz and Cacean (2012) Betz and Cacean (2012) 気候変動への気候⼯学 ⼿法に対する規範的議論の分析とマッピング ETHICAL ASPECTS OF CLIMATE ENGINEERING Gregor Betz Sebastian Cacean

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アプローチ例: Betz and Cacean (2012) *Web資料では割愛*

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本⽇の構成 I. なぜ「規範的リスク分析」か? II. 「規範的リスク分析」とは(もしそれが あるとしたら)どのようなものか? III.「規範的リスク分析」のケーススタディ のイメージ IV.「規範的リスク分析」の確⽴に向けて

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考察:「規範的リスク分析」の確⽴に向けて 「規範的リスク分析」って何の役に⽴つの? ■ 異なる⽴場の⼈々の「重なりうる合意の領域」 を探りあてたい! 例えば、妊娠中絶についてのpro-choice派とpro-life派の 激しく対⽴する⼈々のあいだでも「望まない妊娠を減ら す」ことに関しては合意が形成できる、みたいな ・ 前提条件や社会通念の変化に伴う規制のアップ デートももっとロジカルに説明可能となる ・ 政策形成における規範的根拠を明⽰的にするこ とで、価値の選択に関する⺠主的議論を促す ・ 答えを⽰すことが⽬的ではなく、「意思決定者⾃⾝が答 えを⾒つけること」を⽀援することが⽬的

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考察:「規範的リスク分析」の確⽴に向けて 具体的にはどんな形をとりうるのか? ■ リスク分析の報告書内の章の⼀つを規範的分析 に充てるようにする ・ Betz and Cacean (2012)のようにガッツリと 規範的議論を主対象とした分析を⾏う ・ 規範的な観点を 踏まえた を踏まえた 規範的な分析 解像度の リスク分析 Problem formulationにおけるframingとgap-fillingのスコープ を規範的議論にまで拡張する試みとして捉えれば、今までのリ スク分析の素直な延⻑であるともいえる 例: リスク分配の 偏りの公正性の議論

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考察:「規範的リスク分析」の確⽴に向けて 「規範的リスク分析」を誰が担うのか? ■ リスク学者は規範論の専⾨家ではない (リスク学者はセンスだけで規範を語りがち) ・たとえば中⻄準⼦⽒は規範論をセンスだけでやっている ・⼀概に悪いとはいわないが、リスク学としていつまでも それで良いの? ・林の今⽇の議論も素⼈議論の範疇であり良くない 公共政策の礎を担える学術的レベル感を⽬指す べきであり、規範論の専⾨家との協働が必須 ・ ・ ・リスク学者の専⾨性を超える話題を「リスク学の内部」 で解決しようとするべきではない ・リスク学の素⼈がセンスだけでやるようなリスク評価に 公共政策の礎を担わせたいですか?

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考察:「規範的リスク分析」の確⽴に向けて 「リスク評価に求められる価値の フレームとはなにか」 「リスク分析を踏まえた規範的分析」の確⽴を可能とする incentiveやperspectiveがあるのは基本的にアカデミアの⼈間だけ なので、これはアカデミシャンの責務として引き受けるべき 規範的な観点を 踏まえた を踏まえた 規範的な分析 解像度の リスク分析 例: リスク分配の 偏りの公正性の議論 リスク分配・⾮対称性・コンテクスト この話の本来のアウトカムはこちらだと思う この確⽴のために、われわれに何ができるのか?

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本⽇のまとめ 規範的分析は椅⼦に座っていても運ばれてこない ・ 規範的分析×リスク分析 の構成要素: (1) 規範的的な観点を踏まえたリスク分析 (2) (1)を踏まえた規範的な分析 ・ 規範的分析にはより⾼解像度なリスク分析が必要 ・ アプローチ例:リスク分布の規範的評価、規範的 議論のマッピングによる整理など ・ 規範論の専⾨家との協働により「重なりうる合意 の領域」を⾒出すことが⽬指すべきところ ・