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NHK放送科学基礎研究所
福島邦彦. JNNS創立の頃. 日本神経回路学会誌 16, 51–56 (2009). https://doi.org/10.3902/jnns.16.51
このような流れを受けて日本でも神経回路研究が次第に広がっていった. 当時筆者が勤めていたNHK技研でも, 1965 年に技研
から分離して基礎研(正式名称 は放送科学基礎研究所)が設立され, 視聴科学研究室 が設置された. 視聴科学研究室では視覚
や聴覚に関す る脳の研究を始めるというので, 筆者も基礎研創立と同時に視聴科学研究室に転勤させてもらった. 視聴科学研究
室は, 放送で送信する視覚.聴覚情報の最終的な受け手である脳の仕組みを, 生理学, 心理学, 工学 (モデル)の 3分野の研究者が
三位一体になって研究を進めるのだという樋渡涓二(ひわたしけんじ)さんの研究理念にしたがって開設されたものであった. 研
究室は, 境界領域の研究を, 各自のアイディアにしたがって自由に進めていける雰囲気に満ちていた.
研究室には専門分野の異なる研究者が集まってきていたので, お互いの研究内容を知りあおうということで, 頻繁に談話会が開
かれた.談話会では, 自分自身の研究成果を発表するだけではなく, 自分の専門分野の最新の研究の現状を他の分野の研究者に
分かるように解説することも重要な行事であった. このような雰囲気の中, 多くの優れた研究者が集まり, 育っていった. しかし
開設から約20年後に基礎研が閉鎖される と, その多くは, 全国の大学や研究所に散っていき, 各所に新たな研究の拠点を形成し
ていった.
(* NHKにはぜひ、現代のAI・深層学習の源流の一つとなった(今はなき)NHK放送科学基礎研究所の特集番組を作って欲しい。
福島邦彦先生、田中啓治先生、外山敬介先生ら、主要メンバーがお元気のうちに)
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