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CtoCシェアサイクルサービスにおける 新しいマッチングモデルの提案と実装 知能モデリング研究室 Koki Kazaore 2025/2/26 第4回KP

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2 【研究背景】シェアサイクルサービス概要 自由なタイミング・場所・期間で利用可能な自転車共有サービス 利用方法 01 ポートの検索・ポートにて自転車の選定 04 目的地のポートに自転車を返却し利用終了 02 スマートロックにて認証・解錠 03 目的地を設定し利用開始 ※ポート:自転車を駐輪するための場所。

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3 【研究背景】シェアサイクルサービスの課題 ポート設置数の偏り 都市部と地方の格差 地方ではポート数が少ない ポートの存在による 移動自由度の制限 ポートが無い場所で乗り捨てできない 自転車の調達 サービスを提供するために 大量の自転車を確保する必要性

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4 【研究目的】 個人間(CtoC)ドックレスシェアサイクルシステムの実現 ● 自転車を調達する必要がない ● 未使用自転車の有効活用 ● ポート設置数の偏りに依存しない ● 乗り捨て可能な範囲の拡大 特徴 ※ドックレス:自転車を駐輪・固定するための特定のドックが不要。 研究対象 研究対象 既存事業

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5 Bikeying API API開発 【研究アプローチ】 IoT(スマートロック)プロトタイプ構築 NFCもしくは指紋認証による解錠 自転車割り当てモデリング 発表対象

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6 前提 【数理最適化ベースの自転車割り当てモデルの構築】 ● 個人所有の自転車 ● ドックレスで乗り捨て可能なシステム 対象 ● 乗り捨てによる不法駐輪などの法的な側面 対象外 複数のリクエストを最適化処理するため 1分間のユーザーリクエストをストックし、バッチ処理する.

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7 【数理最適化ベースの自転車割り当てモデルの構築】 制約条件 ユーザーに割り当てられる 自転車は1台以下 自転車に割り当てられる ユーザーは1人以下 ユーザーから半径250m以内の 自転車のみを割り当てる ※ I(⋅)はインジケータ関数

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8 【数理最適化ベースの自転車割り当てモデルの構築】 目的関数 可能な限り多くのユーザーに 自転車を割り当てる(最大化) 割り当て移動後の自転車とその自転車の駐輪場までの距離を最小化 ※α(>0)はトレードオフの調整を担う重み 割り当て/移動後 ※自転車とその駐輪場の色は  対応している ▼この場合,  - - - - - - - - - -  - - - - - - - - - -  の距離の和を最小化している ▼どの自転車も割  り当てられない  状況を防ぐ

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9 3種類の自転車割り当てモデルを別途構築して比較する 【モデル評価方法】 ランダム割り当てモデル リクエストに対してランダムに自転車を割り当てる 最近傍割り当てモデル リクエストに対してユーザーに最も近い自転車を割り当てる 逐次最適化割り当てモデル 1リクエストに対して数理最適化を適用する 自転車の再配置コストを比較評価指標とする 「割り当て移動後の自転車とその自転車の駐輪場までの距離」の総和を再配置コストと定義 バッチ最適化割り当てモデル 1分間リクエストをストックして数理最適化を適用する

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10 【モデル評価方法】モデル入力データ データの概要 ● 提供元:タクシー・リムジン委員会(TLC) ● 2023年1月1日の24時間のNYCのイエロータクシー利用履歴 ● 合計約7.7万のリクエスト数 データ選定理由 サービス利用者がX地点からY地点へ移動する際の自由度の面で 親和性が高いため。 ニューヨーク市のタクシーデータを利用し、 構築した自転車割り当てモデルを検証する。

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11 - ある1分間にストックされたリク エスト位置と自転車の分布を プロット。 - 制約条件の 1つである ユーザーから半径 250mの 自転車を対象とする。 - 最適化処理に必要なユーザー の進行方向と自転車オーナー までの位置関係を取得する。 - 2台の自転車の割り当てが 成功する。 【バッチ最適化割り当てモデルの場合のシミュレーション例】 ユーザーリクエスト 自転車駐輪位置

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12 - ある1分間にストックされたリク エスト位置と自転車の分布を プロット。 - 制約条件の 1つである ユーザーから半径 250mの 自転車を対象とする。 - 最適化処理に必要なユーザー の進行方向と自転車オーナー までの位置関係を取得する。 - 2台の自転車の割り当てが 成功する。 【バッチ最適化割り当てモデルの場合のシミュレーション例】 ユーザーリクエスト 自転車駐輪位置

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13 - ある1分間にストックされたリク エスト位置と自転車の分布を プロット。 - 制約条件の 1つである ユーザーから半径 250mの 自転車を対象とする。 - 最適化処理に必要なユーザー の進行方向と自転車オーナー までの位置関係を取得する。 - 2台の自転車の割り当てが 成功する。 【バッチ最適化割り当てモデルの場合のシミュレーション例】 ユーザーリクエスト 自転車駐輪位置 自転車所有者 ユーザーの目的方向 自転車と所有者の位置関係

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14 - ある1分間にストックされたリク エスト位置と自転車の分布を プロット。 - 制約条件の 1つである ユーザーから半径 250mの 自転車を対象とする。 - 最適化処理に必要なユーザー の進行方向と自転車オーナー までの位置関係を取得する。 - 2台の自転車の割り当てが 成功する。 【バッチ最適化割り当てモデルの場合のシミュレーション例】 ※自転車とユーザーの色は割り当て成功後のペアに対応している 同様の処理を24時間分繰り返し行う。 ユーザーリクエスト 自転車駐輪位置 自転車所有者 ユーザーの目的方向 自転車と所有者の位置関係

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15 再配置コストはバッチ最適化割り当てモデルが最も良い結果となった 【結果①】モデル別再配置コスト比較 ランダム割り当てモデル 最近傍割り当てモデル バッチ最適化割り当てモデル 逐次最適化割り当てモデル

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16 自転車の台数を増加させることでバッチ最適化割り当てモデルがより有意 【結果②】スケールアップ検証 ランダム割り当てモデル 最近傍割り当てモデル バッチ最適化割り当てモデル 逐次最適化割り当てモデル 自転車台数10台 自転車台数50台 自転車台数100台

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17 リクエストをストックする時間を最大 5分にした場合でも , 1分間ストックした 場合と同程度のリバランスコストに収束する 【結果③】バッチサイズ検証 ストック時間: 10秒 ストック時間: 1分 ストック時間: 5分

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18 【考察】 ● 24時間継続して割り当て処理を試行した場合 , 提案したモデルの再配置コストの推移が有意. ● 対象となる自転車のスケールや時間帯に応じて適切なモデルが変化する ○ 小規模の場合, 割り当て処理開始後8時間程度までは, リクエストを1分間ストックするかどうかに影響は見られない. ○ 大規模であるほど, バッチ最適化モデルがより再配置コストを抑えられる ことが期待される。 ○ 長時間運用することになる場合はリクエストをストックするバッチ最適化 割り当てモデルが適しているが, 短時間の運用である場合は逐次最適化 割り当てモデルが適している傾向にあると考えられる. ■ ストックする時間幅に関しては , 1分以上大きくしても , 再配置コス トに大きな改善は見られないことが示唆される . ● 自転車よりも移動距離が大きくなるタクシーデータを利用したため , 実際の自転車利用の場合はもう少し再配置コストは小さくなることが考えら れる.

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19 【まとめ】 CtoCシェアサイクルサービスにおける新しいマッチングモデルの提案と実装 検証方法 1分間のユーザーリクエストストックして最適化処理するバッチ最適化割り当てモデル に加え, 3つのベースラインとなるモデルを構築して比較. 結果 1分間のリクエストをストックして数理最適化処理を行った バッチ最適化割り当てモデルが再配置コストを最小化することができた. 今後の課題 ❏ ユーザーリクエストの時間帯による偏りによる影響は否定できないため, 割り当 てを行う時間帯に応じたより最適な割り当て手法を探る. ❏ 目的関数で定義したトレードオフの重みの最適解を探る.

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21 2点間のユーグリッド距離 2点間の座標: 2点間の差: ユーグリッドノルムの計算: これを各々の自転車に対して求め,その総和を再配置コストとしている ただし,本研究では再配置コストのスケールを統一するため, 10台あたりの再配置コスト として計算している. 再配置コスト算出方法

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22 再配置コスト(度単位)から距離(メートル単位)に変換 緯度の差Δlatを変換: 経度の差Δlonを変換: これら2つの成分からユーグリッド距離として実際の距離を算出 再配置コストの実態調査①

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23 実際に収束した再配置コストを確認 1. バッチ最適化割り当てモデル a. 約0.63くらいに収束 b. 前述した手順で度をメートルに変換 c. 結果は約54200mであった 2. 最近傍割り当てモデル a. バッチ最適化の約2倍の再配置コスト b. 実態は100km以上と推測 再配置コストの実態調査②

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24 IoTプロトタイプ実装 NFC Finger Print

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25 - ランダムに 10個の自転車を配 置する。 課題の整理

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26 - ランダムに 10個の自転車を配 置する。 - シェアサイクルのユーザーが ★にいるとする。 課題の整理

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27 - ランダムに 10個の自転車を配 置する。 - シェアサイクルのユーザーが ★にいるとする。 - ユーザーは →の方向を目的 地として自転車を利用した い。 課題の整理

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28 - ランダムに 10個の自転車を配 置する。 - シェアサイクルのユーザーが ★にいるとする。 - ユーザーは →の方向を目的 地として自転車を利用した い。 - 直感的にはユーザーは 〇の どちらかを利用したい。 - これらが乗り捨てされた自転車 だった場合は? 課題の整理

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29 - 自転車(乗り捨て含む )とユー ザーの方向をプロット。 課題の整理

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30 - 自転車(乗り捨て含む )とユー ザーの方向をプロット。 - それぞれの自転車の所有者 の位置を考慮。 課題の整理

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31 - 自転車(乗り捨て含む )とユー ザーの方向をプロット。 - それぞれの自転車の所有者 の位置を考慮。 - それぞれの自転車の所有者 までの位置関係をベクトルで 表現。 課題の整理

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32 - 自転車(乗り捨て含む )とユー ザーの方向をプロット。 - それぞれの自転車の所有者 の位置を考慮。 - それぞれの自転車の所有者 までの位置関係をベクトルで 表現。 - 「乗り捨て可能なシステム」を 実現するにあたっては、直感 的に〇をユーザーに割り当て ることが最適。 課題の整理

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33 移動後 シミュレート(ユーザリクエストj=1) = 1071.71 = 813.96