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1 日本経済新聞社 技術戦略ユニット 大崎壮太郎 2023年 4月20日 日経テレコンのコンテンツ供給基盤 内製化の道のり

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2 日経あるある 「どこで働いてるの?」 「日経です」 「え、記者?」 「SEです」 「あ、電子版?」 「ではないんです」 「……」 「……」

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3 日本経済新聞社のデジタル事業 日経電子版 日経テレコン 日経NEEDS to B to C \今日はココ/

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● 「日経テレコンは、日本最大級の会員制ビジネスデータベースサービスです」 ● 端的に言えば、過去の新聞記事が検索・閲覧できる ● 大手SIerのA社とB社が構築 4 日経テレコンとは 他紙 日経 他サービス ユーザー テレコン

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● テレコンのコンテンツを他サービスが利用しづらい ● コンテンツの入出力部分をプラットフォームとして切り出すことにした 5 日経テレコン(〜2019年) 他紙 日経 他サービス ユーザー

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● ESをB社、フィードとDBをC社、APIをD社、全体のインフラをE社が担当 ● 日経テレコンとは別に「コンテンツ・プラットフォーム」と呼ばれる 6 日経テレコン(2020年〜) 他紙 日経 テレコン 他サービス API DB ES フィード

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7 外注の難しさ 既存産業の業界構造は、ユーザー企業は委託による「コストの削減」を、ベンダー企業は受託による「低リスク・ 長期安定ビジネスの享受」というWin-Winの関係にも見える。しかし、両者はデジタル時代において必要な能力を 獲得できず、デジタル競争を勝ち抜いていくことが困難な「低位安定」の関係に固定されてしまっている。 ベンダー企業 低い利益水準→多重下請け構造、売り上げ総量の確保が必要 労働量が下がるため生産性向上のインセンティブ働かず、低利益率のため技術開発投資が困難 "デジタル"の提案ができない 経済産業省DXレポート2.1

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8 社内での内製化の先行事例 ● 「日経電子版 内製化」とか 「日経電子版 爆速」とかでググると出てくる ● 内製化の文化がtoCからtoBに染み出してきた ● かくいう自分も電子版の事例を見て日経に入社した人

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9 コンテンツ・プラットフォームを内製化する意味 ● コンテンツDB構築は、アジャイルなアプリ開発と違って一見外注向きにも思える ● しかし上流と下流にも日経のサービスがあり、それらの期待に応えるには内製化が一番 ● そもそも「コンテンツ・イズ・キング」 ○ 生殺与奪の権を他人に握らせるな ○ お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな

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● APIレイヤーから日経社員のコミットを開始 ● 2年かけてES、DB、フィードまで範囲を拡大した ● 他紙コンテンツを受け取る変化が起きづらい部分は今でもレガシーを活用している 10 ゆるやかな内製化 他紙 日経 テレコン 他サービス API コンテンツプラットフォーム DB ES フィード 内製化

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11 ゆるやかに内製化していくためにやったこと ● まずシステムの理解、コードの理解 ● ドキュメントはExcelではなくMarkdownで書く ○ GitHub→Qiita Team→Kibela→notion ○ ペアプロならぬペアドキュメンテーション ● 可読性の高いコードはドキュメントに優る ○ 動いてるからヨシッの現場猫受け入れをしない ○ コードレビューに日経社員も参加 ● 新規開発の技術選定では型付き言語(Golang・TypeScript)を採用 ● インフラをAWSコンソール・ハンドメイドからTerraform Cloudに統一 ● デプロイをGitHub Actionsで自動化

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12 完全に内製化するには人が足りない ● 電子版に比べるとまだまだ人手不足 ● 実はコンテンツプラットフォーム所属の日経のエンジニアは2人 ○ スポットで他チームの人がコードを書いてくれることもある ● 今年の新卒も75%が記者

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13 内製と外注の折衷 ● 足りない人手は外部の開発会社を頼りたい ● ただし開発を丸ごと依頼するのではなく、まるで同僚のように一緒に作っていきたい ● そのためにベンダーの管理者とだけではなく、開発担当者とも直接やり取りする ● それってもしかして……

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14 偽装請負にならないように ● 開発者同士の密なコミュニケーションには偽装請負の影がちらつく ● カジュアルにSlackのハドルを始められる関係が理想 アジャイル型開発においても、実態として、発注者側と受注者側の開発関係者が対等な関係の下で協働し、受注者 側の開発担当者が自律的に判断して開発業務を行って いると認められる場合には、受注者が自己の雇用する労働 者に対する業務の遂行に関 する指示その他の管理を自ら行い、また、請け負った業務を自己の業務として契約の 相手方から独立して処理しているものとして、適正な請負等と言えます。 厚生労働省 37号告示関係疑義応答集

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15 適材適所 ● とはいえ今も丸ごと依頼する形で外注することもある ○ 最後まで実際の開発担当者とほとんど会話しないこともある ● 機能追加が少なく長期的に保守運用が必要な部分は切り出しやすい ● いつかここも内製化するぞという強い気持ちでコードレビューに参加する

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16 まとめ ● 日経のデジタル事業は日経電子版だけじゃない ● 日経テレコンのコンテンツ・データベースをプラットフォーム化した ● コンテンツプラットフォームの開発の内製化を段階的に進めた ● 日経社員だけでは手が足りないので共創できるベンダーとチームを作っている ● それでも手が足りないところは切り出しやすい部分から外注 ● 内製化の範囲は広げていきたい