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2024/8/29 Ecdysis Inc. Meta Contract on Steroids State FuzzingとTest Collocationを用いたLLM時代のスマートコントラクト開発 1. はじめに スマートコントラクト開発の世界は、これまで以上に複雑でありながらも柔軟性が求められています。 特にMeta Contractのようなモジュール型アーキテクチャでは、効率的かつ高精度なテスト手法が不 可欠です。本記事では、State FuzzingとTest Collocationを組み合わせ、さらにLLM(大規模言語モ デル)を活用することで、スマートコントラクト開発を次のレベルへ引き上げる方法を紹介します。 2. Meta Contractとは Meta Contractは、ERC-7546に基づいたアップグレード可能なスマートコントラクトのフレームワーク です。このフレームワークは、開発者に対して無限の拡張性と柔軟性を提供し、複雑な分散型アプリ ケーション(dApps)の構築を可能にします。特に、Meta Contractはモジュール性に優れ、各機能を 独立したコンポーネントとして実装することができるため、コードの再利用性や保守性が大幅に向上 します。 3. State Fuzzingとは State Fuzzingは、スマートコントラクトの状態を直接操作し、かつFoundryのFuzzing機能を用いてさ まざまなパラメーターを迅速にテストする手法です。従来のテスト手法では、各テストケースごとに複 雑なシナリオテストのセットアップが必要でしたが、State Fuzzingではその必要がありません。テスト 対象の関数の実行前に、ストレージ状態を直接操作することで、より効率的なテストが可能になりま す。 4. Test Collocationとその利点 Test Collocationとは、実装とテストを同じコードベースに配置する手法です。これにより、テストと実 装の整合性が保たれ、開発者はテストの網羅性を容易に確認できるようになります。また、LLMを活 用することで、実装とテストの一体化がさらに促進され、テストケースに基づいたコードの自動修正や テストの自動生成が可能になります。

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5. テストサンプル Fuzzテストを用いたテスト戦略は、ときにProperty-Based Testingと呼ばれます。これは、特定のプロ パティ(性質)が常に成り立つかどうかを確認するテスト手法です。例えば、Meta Contractの Borrow関数において、担保率が常に150%以上であることを保証するテストを行う場合、Fuzzingに よってさまざまな状態を生成し、そのすべてに対してプロパティが成り立つかを検証します。以下の コードは、Borrow.solに記述されるテストです。実装は次の章で示します。 6. このテストを満たす実装

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Meta Contractの原則に従い、ステート変数は実装コントラクトではなく、Schema.solで定義され、 Storage.solを介してアクセスされるデザインパターンで、以下にBorrow関数を含む Borrow.solの実装を示します。(簡単のため、コロケーションはまだ行いません。) 両者を一体化(コロケーション)させたサンプルは https://gist.github.com/shogochiai/b74cffd352de1720ecca55d7739839da です。LLMにコピー&ペーストし、生成物を単体テストすることで開発速度と品質を両立します。 Schema.sol Schema.solにはデータ構造が定義されています。

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Storage.sol Storage.solでは、Schemaのデータ構造にアクセスするためのインターフェースを提供します。 テストの実行方法 以下のコマンドを使用してテストを実行できます。 forge test ./src/main/functions/Borrow.sol

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このコマンドにより、Borrow.sol内のすべてのテストが実行され、実装が意図通りに動作している かを確認できます。 7. LLM時代のスマートコントラクト開発 LLM(大規模言語モデル)は、スマートコントラクトのコード生成やテスト自動化において非常に強力 なツールです。Meta Contractのような高度にモジュール化されたアーキテクチャにおいては、LLMが 生成したコードやテストを容易に組み込むことができ、迅速な反復開発を実現します。特に、State FuzzingとProperty-Based Testingを組み合わせることで、LLMが自動生成したテストケースに対し ても高い信頼性を持たせることが可能です。 LLMの活用により、開発者はビジネスロジックの設計や高レベルな機能実装に集中することができ る一方で、コード生成におけるLLMのハルシネーションは重大なバリデーション行を暗黙に削除する 危険性があり、これはスマートコントラクト開発の安全性を考える上で致命的でした。今回紹介する 手法を用いることで、開発者は既知の使用を高速に検査することができるようになり、ドメイン特有の 課題と安全性の確保に集中力を注ぐことができるようになります。 8. 結論 Meta Contractを活用したスマートコントラクト開発は、State FuzzingとTest Collocation、そしてLLM の力を借りることで、これまでにない開発スピードと品質を実現します。 LLM時代におけるスマートコントラクト開発は、まさに「Meta Contract on Steroids」と言えるでしょう。 この新しい手法を試して、スマートコントラクト開発の未来を体験してみてください。 この記事が、皆さんのMeta Contract開発における新たな視点を提供し、さらに効率的で信頼性の高 いdApps開発の一助となれば幸いです。