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コロナ禍における交通事業者への支援 20201224 早稲田大学スマート社会技術融合研究機構 研究院客員准教授 井原雄人 公共交通マーケティング研究会

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国からの支援 2 地域公共交通確保維持改善事業補助⾦ 地域公共交通における感染拡大防止対策 地⽅創⽣臨時交付⾦  2次補正より国土交通省が実施する感 染拡大防止対策や、車内等の密度を上 げないよう配慮した運行等の実証事業 の支援  運輸局経由で交通事業者より申請  補助率1/2、感染防止対策の遡りに制 限あり  地方自治体に交付される交付金  支援内容が交付金の対象となるか 内閣府への確認が必要  運輸部門だけが対象でないため、 地方自治体内での配分について調 整が必要 補助対象に適合させるためには具体的な事例が欲しい  コロナの影響による輸送人員の補助要 件(15人)を緩和  早期の回復が困難であることからR5 年度までを対象

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国⼟交通省からの情報発信 3 実は意外に早い時期にあったけど 中部運輸局のWEBサイトの隅っこで公開 メールマガジンで配信され始めたけど 月単位な上に、受動的な調査で抜けが多い

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コロナ下で求められた情報発信 4 誰も体験をしたことのない事態(過去の蓄積がない) 日々変わっていく状況(情報はすぐに陳腐化) 時間をかけて整理された情報より、即時性のある情報 新たな情報に対して、能動的・網羅的に収集された情報 網羅的ではあるけれど、原典まで遡った正確な情報

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地⽅⾃治体からの支援例のまとめ(特設サイト) 5

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支援理由別の支援数 6 都道府県 市町村 0 100 200 300 400 500 600 4月末 5月末 6月末 7月末 8月末 9月末 10月末 感染防止 事業継続 利用促進 0 20 40 60 80 100 120 4月末 5月末 6月末 7月末 8月末 9月末 10月末 感染防止 事業継続 利用促進  都道府県  6,9月の定例議会により成立しているものが多く初動が遅かった。  支援理由は感染防止の補助が多いが、同一自治体で複数理由の事業を同時に実施している事例が多い。  市町村  4月末にから徐々に増加し、臨時議会での議決や専決処分により実際されているものも多い。  全体としては、事業継続の割合が多いが、7月以降は利用促進を目的としたものも増えている。  同一自治体で感染防止→事業継続→利用促進と理由を変えながら継続的な支援を実施している事例もある。 44⾃治体(93.6%) 110事業 407⾃治体(23.4%) 518事業

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手を変え品を変え(沼津市) 7 第1弾 04.22 第2弾 07.15 第3弾 10.16 地域公共交通シンポジウムin中部「ウィズコロナ」の地域公共交通 沼津市資料より

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利⽤促進の事例 8 プレミア乗⾞券の販売 貸切バス借上げの補助 移動困難者への利⽤補助  タクシー券やバス回数券の販売に際 して割り増し分を補助  例)500円×6枚のタクシー券を2500 円で販売(プレミア率20%)  事前にタクシー券を買い上げて配布 or利用者の事後申請による補助  移動そのものを避けるために、買い物 代行やデリバリーにも利用可能(尾花 沢市など)  従来から行われていた移動支援に上 乗せして実施(実施自治体多数)  貸切バスの借上げ費⽤の⼀部を利⽤ 者側に補助  例)市内の観光に利⽤すための貸切 バス50000円/日の費⽤の1/2を補助  プレミア率は20%から100%、∞(無 料)まで様々  事業者をからの直接販売の他にクラウ ドファンディングを用いた販売例(つく ば市など)  キャッシュレス決済時にポイント還元 (福山市など)  県2/3、市1/6の協調補助により実質 5/6補助(島根県)  密回避のために使用車両の大型化に 上乗せ補助(徳島県など)  観光業への支援のために、観光地への 立ち寄りを条件化(実施自治体多数)  高齢者・障がい者、妊婦、学生など 交通弱者への利⽤補助  例)密をさけて移動する必要が⼈へ タクシー券を10000円分配布

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交通モード別の支援数 9 都道府県 市町村  当初(3-4月)は貸切バスを対象としたものが多いかったが、徐々に乗合バスの支援に対象が移行  普段は公共交通(?)となりがちなタクシーへの支援数が多い。  福祉タクシーや高速バスなどを「対象外」とした事例が多い。  地域鉄道など地域間幹線バスなど市町村を渡った協調補助の事例がある。 0 200 400 600 800 1000 1200 4月末 5月末 6月末 7月末 8月末 9月末 10月末 タクシー 乗合バス 貸切バス 地域鉄道 旅客船 0 50 100 150 200 250 300 4月末 5月末 6月末 7月末 8月末 9月末 10月末 タクシー 乗合バス 貸切バス 地域鉄道 旅客船

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事業継続のための面的支援 10 路線バスへの広域支援 (大井町、⼭北町、松⽥町) 東三河地域での広域支援  地域間幹線と運行するバス事業者に対して、 沿線の3町が案分して支援の実施  鉄道・バス・タクシーの沿線自治体が連携するこ とで支援の実施

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感染防止のための面的支援 11 感染拡大防止ガイドラインの策定普及(北海道)  北海道が支援し各業界団体ごとに感染防止策 の策定、ガイドラインの普及啓発まで含めて支 援  交通事業者はガイドラインを遵守すると給付金 安全・安心啓発ポスター(三重県)  三重県内の鉄道・バス・タクシーにおいて共通 的に利用できるポスターを配布  共通のポスターを使うことで、どこにいっても 「あのポスター」ということで認知度を高める

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支援数と実施率 12 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 北海道 ⻘森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 ⻑野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 ⻑崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 支援数 実施割合  都道府県別の市町村数をベースとした実施率の差異は極めて大きい。  実施率の高い茨城県や長崎県などでは、実施時期の早く、複数の事業を実施している事例も多い。  隣がやってるからやる、隣がやってないからやらないというのは妄想ではない。

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⾃治体との調整への活⽤ 13 隣の⾃治体はやってないよね しばらく様⼦を⾒ようよ (だからやらない) 路線が隣の⾃治体まで⾏くから うちだけじゃできない (調整する気はない) 日々追加される情報を毎日更新 「やっている」事例を示す 沿線⾃治体での協調補助  松浦鉄道(2県4市2町)  東三河地域(5市1町)  万葉線(2市) など もう1回やったし あとは⾃分たちで何とかしてよ (つまりやりたくない) 理解のない⾃治体の⾔葉 情報を持って⽴ち向かう (いい意味での)地⽅⾃治体の横並び感を利⽤する 必要な支援は変わっていきます フェーズに合わせた継続的支援

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関係性の再構築と役割の再確認 14 普段は面倒なことが多いけど 関係性を再構築するきっかけ ⾃治体担当者と交通事業者の連携が 取れているところほど的確な支援が実施された 交通事業者にお願い どうやらコロナ前に戻らなそう 公共交通に対する役割の再確認 ⾃治体にお願い 新しい時代の持続可能な公共交通を一緒につくりましょう