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© Ubie,Inc. マネージャー不在の組織は機能する? 元VPoEから見たホラクラシーの実態 2025/4/25 (金) Ubie株式会社 Engineering組織Lead 橋山牧人 Engineering Manager Meetup #16 〜EMConf expansion〜

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© Ubie,Inc. 2 自己紹介 橋山牧人 (ojiki) これまで ・新卒で楽天グループに入社し、楽天市場のお買い物カゴまわりの開発・運用を担当 ・OLTA株式会社では、VPoEとしてプロダクト開発組織の立て直しや組織拡充を実施 ・(副業)複数社でプロジェクトマネジメントや技術顧問など 最近書いた記事: https://note.com/hashiyaman/n/n370739ca5879 Ubieでは プロダクト開発組織を中心に、ピープルマネジメント・プロジェクトマネジメント・リソースアロケーション ・採用・組織開発などを中心に、人や組織のよもやまについて担当

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© Ubie,Inc. Ubieは医師と元エンジニアが創業した ヘルステック企業です 社名:Ubie株式会社 (英文社名 : Ubie, Inc.) 代表:代表取締役 久保 恒太・代表取締役 医師 阿部 吉倫 役員:社外取締役 重富 隆介・社外監査役 弁護士 田邉 愛 ・常勤監査役 公認会計士 吉川 和美 設 立:2017年5月 従 業 員:245名 (2024年10月現在) 拠点:日本・米国 日本本社:〒103-0023 東京都中央区日本橋本町三丁目 8番4号 日本橋ライフサイエンスビルディング 4 5F 米国本社:1460 Broadway, New York, NY 10036 会社概要 代表取締役 久保 恒太 3 代表取締役 医師  阿部 吉倫

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© Ubie,Inc. 事業紹介 4 自分の症状を答えるだけで、 参考病名や近くの医療機関等 「受診の手がかり」が調べられます 医療現場で実際に使われ鍛えられた AIを、 生活者が適切な医療にかかる目安として開放しています (2020年提供開始 ) 無料で 誰でも いつでも ほぼ全ての症状で * *99% (1.3万超)の症状に対応 生活者 医療機関 製薬企業 生活者向け事業 情報 アクセシビリティ 好事例2023 選出 総務省

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© Ubie,Inc. 5 事業紹介 生活者 医療機関 製薬企業 AI x Function ユビーメディカルナビ 生成AI(2024年5月提供開始) ⽂章⽣成‧要約 画像認識 ⾳声認識 ⽣成AI プロダクト

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© Ubie,Inc. 製薬企業が持つ、疾患・治療啓発につながる情報を生活 者・医療機関に提供することで、早期かつ適切な受診や、 診療業務の支援を行います。薬剤の適正処方を最大化 し、治療アウトカム向上に貢献することを目指しています。 Ubie Pharma Innovation Suite 6 事業紹介 製薬企業向け事業 生活者 医療機関 製薬企業 Ubieが保有する医療プラットフォーム を通じて、製薬企業と生活者・医療機関を つなぐサービスです

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© Ubie,Inc. 7 組織 Identity 私たちが向き合っているのは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」という巨 大な課題です。未来を見据えたアイデアを具現化することが、ビジョンを実現する唯 一のルートとなりえます。非連続な価値を生み出す歴史的な技術革新は、全て社会 に実装されてこそ意味を成しました。今はまだ想像だにしない非連続な価値を生み 出し、着実に社会に届けていきます。 Giant Leap 非連続な未来を実装する

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© Ubie,Inc. 目指すのは”プロスポーツチーム”のような組織カルチャーです Giant Leapは、それぞれが専門性を持ちながらもお互いの背中を預け合う、プロスポーツチームのような価値観 ・行動原則から生まれると考えています。 8 組織 世界より早く落下する 深化と探索の両立 能力密度の最大化 多様性と率直 未来のあるべきに目を向け、社内外の環 境変化を素早く・適切にとらえ非連続成 長を実現し続ける 高い成果を上げ続けるため、 組織の能力を常に高密度に保つ 着実な深化と新たな探索の両立が加 速度的にユーザー・事業価値を拡大す る 多様なバックグラウンドを持った人々がフ ラットかつ率直にフィードバックする・意見 を出し合う Giant Leap 構成要素1 構成要素2 構成要素3 構成要素4 カルチャーガイド: https://www.notion.so/ubie-inc/Ubie-1d76bbd4e00f809bb282d93ce1552063

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© Ubie,Inc. 9 目次 1.EMが直面しがちな課題 2.ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 3.ホラクラシーの課題とそこから学べること

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© Ubie,Inc. 10 (1) リソース調整コストがマネージャーに集中する EMが直面しがちな課題 調整のためのミーティングや根回しを延々としている - 経営からのオーダーと現場から突き上げの板挟みで優先度の調整が困難 - 部署ごとに異なる目標やマネージャーの事情を考慮したステークホルダーコミュケーションが頻発 落ちているボールを拾い続ける - 誰の責任か曖昧なまま放置されたタスクや課題が組織構造の狭間に落ちる - 気づけばマネージャーが「なんでも屋」になっていて、本来やるべき未来の仕事に手が回らない

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© Ubie,Inc. 11 (2) 評価に膨大な手間と時間がかかるが、得られるものが実感しづらい EMが直面しがちな課題 全員が納得する評価を行うことは不可能 - 客観的な評価基準・プロセスであっても、全員に対して公平な評価を下すことは難しい - マネージャーが求める水準とメンバーが期待する評価になぜか差分が生まれる 評価者の顔を見て仕事をするという慣性が働く - 会社の状況が変わっても素早く方向転換ができず、本当に必要ことにすぐに向き合えない - メンバーの成果が、評価者(マネージャー)の期待を超えることが難しい

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© Ubie,Inc. 12 目次 1.EMが直面しがちな課題 2.ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 3.ホラクラシーの課題とそこから学べること

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© Ubie,Inc. 13 ホラクラシーとは?( 1/2) ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 自主管理型組織を主眼とする組織構造のバリエーションの 1つ - ホラクラシーワン創業者のブライアン・J・ロバートソンが提唱 - 従来の階層型組織では、変化への対応や意思決定のスピードに限界を感じたことがきっかけ ホラクラシーの特徴 - 意思決定や権限を個人ではなく 役割(ロール)に紐づけて分散させる - マネージャーではなく、明文化された憲法に則ってチームを運営する - ロールの集合体であるサークルは 階層構造を持ちつつ 、自律的に機能

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© Ubie,Inc. 14 ホラクラシーとは?( 2/2) ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて ホラクラシー組織におけるマネジメントとは? - 意思決定は、一番精通している人がロールとして実施 - 必要なマネジメント要素を分散し、ロールの「偉さ」に上下はない

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© Ubie,Inc. 15 意思決定プロセスの違い( 1/2) ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 階層型組織では業務の進め方やリソース配分の責任と権限がマネージャーに集中し 、ボトルネックになりがち。

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© Ubie,Inc. 16 意思決定プロセスの違い( 2/2) ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて ホラクラシー組織では各ロールが課題解決の責任と権限を持つ ため、迅速な判断が可能。

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© Ubie,Inc. 17 Ubieにおけるリソースアサインメントの実態 ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 各サークル・ロールが自律的に意思決定する範囲が大きく、 調整コストが省略・分散される。 ● 四半期ごとにOKRを基準に、各サークル内で大まかな優先順位とリソース配分を決定 ● 必要に応じてサークルやロールの組織構造や責任範囲、コミュニケーション設計などを再編成する ● 日常的な業務や優先順位の判断、リソース調整はロール間で実施される プロセス 階層型組織 Ubie OKRの決定 マネージャーが実施 担当サークル、ロールで実施 組織構造・優先順位の決定 マネージャーが実施 サークルリード、担当ロールが実施 リソースアサイン マネージャー間で相談、上位マ ネージャーの承認 ・担当サークル、ロール間で相談 ・専用サークル、ロールがサポート ・必要に応じて既定のプロセスで承認 サークルリード: ロールの割り当てやリソース管理の責任を持つが、 メンバーへの直接的な命令権はない

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© Ubie,Inc. 18 自律的に行われるリソースアサインメントの例 ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 関連ロール間で優先順位やリソース調整が行われる。相談や確認はあるが、明確な承認はない。

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© Ubie,Inc. 19 Ubieにおける目標設定・評価の運用 ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 前提 ● 能力開発の主体はメンバー 1人ひとりであり、その責任もメンバーにある( Self-Development Policy) ● 評価と報酬は直接紐付けない(業績連動型報酬) プロセス 階層型組織 Ubie 目標設定・評価 マネージャーが主導 メンバーが主導、FBペアが伴走 フィードバック マネージャーが一元的に実施 FBペア中心に、誰でもOK 報酬の変更 マネージャーが個別に判断 一律で業績に連動 能力開発 マネージャーとHRが担当 本人の責任のもと、専用のロール・サークル でサポートや仕組みづくりを実施 FBペア: 同サークルまたは隣接サークルにおいてマネジメント系のコアスキルに強みがあるロール

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© Ubie,Inc. 20 人材開発をサポートする仕組み( 1/2) ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて Ubieness / U-map で必要とされる人材要件とスキルの方向性を明瞭化 ● Ubieness: Ubie全員が持つべき人材要件を言語化したもの( 3種類) ● U-map: 個々の役割と能力開発の方向性を明瞭化したスキルマップ( 11種類)

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© Ubie,Inc. 21 人材開発をサポートする仕組み( 2/2) ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 変化進化会(フィードバック会) ● メンバー主導で、全社の方針や期待役割を元に、自身の現在地と Q末の目標・達成状態を明確にする場 ● 振り返り・目標設定に加えて、 Ubieness / U-map を元にした今期のチャレンジを宣言する 率直発信・受信の推進 ● Netflix のフィードバックガイドライン「 4A」をもとにフィードバックを実施 ● 個人やチームの成長を促進するため、 耳の痛いフィードバックでも率先して社員間で行う https://note.com/apfels/n/n8790a62e730f

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© Ubie,Inc. 22 目次 1.EMが直面しがちな課題 2.ホラクラシーで解決できる?  Ubieの実例を添えて 3.ホラクラシーの課題とそこから学べること

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© Ubie,Inc. 23 リソースアサインメントにおけるホラクラシーの課題 ホラクラシーの課題とそこから学べること 意思決定のリードタイムとコミュニケーションコストのトレードオフを見極める必要がある ● 階層型組織では、組織規模とコミュニケーション量は一定に保たれる ● ホラクラシーでは、組織規模に比例してコミュニケーションコストが大きくなる vs.

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© Ubie,Inc. 24 リソースアサインメントにおいてホラクラシーから学べること ホラクラシーの課題とそこから学べること マネージャーの仕事を構造的に分解し、組織で分担する ● ホラクラシーではなくても「役割の細分化」と「責任の可視化」は可能 ● マネージャーが全ての調整を行うのではなく、チームで分担・分散する形へ

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© Ubie,Inc. 25 評価・人材開発におけるホラクラシーの課題 ホラクラシーの課題とそこから学べること キャリアの一貫性・連続性を担保する難易度が高い ● マネージャーがいないので、自身が能力開発の主体となる必要がある(=採用要件として重要) ● 制度やサポートが充実していないと、キャリア選択において孤独感や迷いを感じやすい vs.

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© Ubie,Inc. 26 評価・人材開発におけるホラクラシーから学べること ホラクラシーの課題とそこから学べること 目標設定・評価のプロセスに本人に主体的に関与させる ● 目標や評価は「マネージャーから与えるもの」だという認識を変える ● 会社の目標やOKRを元に、求められている成果を本人自らが考えることで、目標設定や評価の納得感が変 わる(マネージャーは目標のブラッシュアップや達成をサポートする)

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© Ubie,Inc. 27 まとめ:ホラクラシーという組織から学べること ホラクラシーの課題とそこから学べること マネージャーは不要な組織でもマネジメントは必要 ● ホラクラシーであっても、マネジメント上の課題の多く発生する ● マネージャーが個人で向き合うか、チーム(ロール・サークル)で向き合うかの違い → マネジメント機能を構造的に捉え、仕組みに落とし込みチームで分担する ことで解決できることも多い あらゆる組織の課題を解決する銀の弾丸はない ● ホラクラシーは意思決定のスピードを優先する画面で最適な組織構造だが、デメリットもある ● 意思決定の精度や再現性が求められる状況においては、むしろ階層型組織のほうがよいことも多い → 事業の特性・フェーズ・人の状態に応じて、適切な組織構造を選ぶ ことが重要