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第1次AIブーム シリーズAI入門 探索 © FSCjJh3NeB 2021 (※ 但し画像を除く)

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最初期の人工知能研究者が考えたこと n 知能とは…おそらく “記号処理” に本質がある n コンピュータは “数” という記号を処理して計算 n コンピュータで,知能を実現できるのでは!? 2 ※ 論理回路の塊で,論理演算できる。

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記号処理に知能の本質??? n 記号処理 = 論理的な演算 u 例: ソクラテスは人,人は死ぬ,ソクラテスは死ぬ n なんで? u なぜ,記号処理が知能の本質だと考えたのか?? u 例えば… p 人間が高度な知能を持つとして,その他の動物との違いは? • 言葉をもっている!!!言葉をしゃべれてエライ! • 言葉=記号 u いろいろな実体を記号(概念)に変換して, 操作できる能力,それこそが知能なのでは? 3 すごーい

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ヨハネによる福音書 n 例によって,おそらくはキリスト教文化の影響も n ヨハネによる福音(冒頭) u 日本語では ”はじめに言葉ありき” と訳される p Logos = 神の言葉,真実,真理,論理,理性,概念 神様(ヤハウェ)が そう言うんなら,間違いない! ※ 著者は別に,キリスト(ユダヤとかイスラムなども含む)教徒 ではないです 4

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鳥の視点 と 虫の視点 n 前掲の宗教的・文化的背景は,問題の捉え方に影響 u 一神教的な世界観では,神はすべてを見渡せる u 東洋的な世界観では,様々な視点が混合する p 当然,どちらが優れているという話ではない。優劣は場合による。 u 人工知能についても,神の視点(鳥の視点)から見て 構築するか,虫の視点(環境内部)から見て構築するか というので,アプローチが全く異なる可能性 環境を外から眺める 神・鳥の視点 環境を内部から眺める 虫の視点 5

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物理記号仮説(記号主義) n すべての知的作業の本質は記号操作にある …という作業仮説,記号主義とも呼ばれる u 色や形などの物理量はうわべのものであって, それらを捨象し,カテゴリー化した後の記号が本質 u この記号操作によって,高度な知的処理が可能! 作業仮説 : 本当かどうかは知らんが,その検証のためにも,とりあえず仮に そうだとして・考えて,やってみよう…という,暫定的な仮説 …っていう気がする。多分そう。 6

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コンピュータで記号処理? n コンピュータは AND,OR,NOT を組合わせて処理 u 論理的な処理がいろいろできる装置 u 知能が記号の論理的処理だとすると, この論理的な処理ができる機械で当然,模倣できる u まぁすぐに人間同等は無理でも,チェスみたいに, 完全に論理的に話が進むところならすぐできるハズ! 7 ここから下は,当時の研究者が考えたであろう事

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記号接地問題 n 体を持たないAIにリンゴは理解できるか? u 概念(記号)としてのリンゴが理解できたとして, 目も耳もないAIは,真にリンゴを知っているといえるか • …でも,そもそも「真のリンゴ」とは…リンゴのイデアって何? n 人間は様々な情報をうまく抽象化(記号化)して 処理をしている n 抽象化された情報と,実体を対応づけること =記号接地 8 将来補足

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推論 n 知識を元に新しい結論を得ること n 三段論法も推論 u 知識1: 人間は死ぬ u 知識2: ソクラテスは人間である u 結論 : 知識1&2 → ソクラテスは死ぬ n 論理学は推論のための基礎 u AならばB,AかつBならばC…のような演算規則 u これを用いて,知識を操作していくと推論できる 操作自体は,後述する探索とほぼ同じ 9

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推論の種類 n 推論にも種類が u 演繹(De-duction)← 記号処理系はこれ p 既存の知識・ルールを組み合わせて行って結論を得る u 帰納(In-duction) ← 機械学習系はこれ p 観測された事実や事例をまとめ上げていって結論を得る u アブダクション(Ab-duction) p 仮説形成とも。観測された事象を説明する仮の理論を考える 10 環境・外部 内部 Deduction 内から外へ Abduction 外から内へ Induction ぐるぐる かけ算・⾜し算 のイメージ 公約数・因数分解 のイメージ

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どのようにすれば推論できるか? n 例えば現在であれば,プログラミング言語の Prolog などを 用いて,記号処理ができるが… n 1950年代の計算機は,基本的に電卓の状態 u 単純な問題であれば,“こうなったらこう” という状態を あらかじめ書き下すことはできる p オセロであれば,そもそも石を置ける場所は限られる p この状態の時,ココに石を置くと,相手はココに置ける …も,あらかじめ分かる u であれば,推論そのものが難しくても,状態を書いておいて, その中から適切なモノを選び取らせれば,行動は模倣できる p いつか,状態そのものの演算(推論)ができるとして,結局,あり得る状態から 適切なモノを選び取る…という行動は必要になる 11 推論そのものと並んで,探索も主要なテーマとして扱われた

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探索 Start Goal 12

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探索 Start Goal A C D G B E H F 13

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探索 Start Goal A C D G B E H F 14

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木構造(Tree) : 2分木 binary-tree root A C F K B G L J M D I E H Node Edge 終端のNodeはLeafともいう root ひっくり返すと木のように見えるので, Tree(木,木構造)と言う名前 情報工学における基礎的かつ 重要なデータ構造の一つ AI分野でも多用される 線でつながっている上のNodeを親, 下のNodeを子という。 ここでは2分木のみを示したが,子が2人以上のものや, トライ木,赤黒木など,様々なタイプの木構造が存在 15

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探索:幅優先探索 Start Goal A C D G B E H F > 親は一人なので,Goalを見つけたら, 親をたどっていけば正解がわかる 16

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探索:深さ優先探索 Start Goal A C D G B E H F > 親は一人なので,Goalを見つけたら, 親をたどっていけば正解がわかる 17

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探索 ハノイの塔 小さな円盤の上には,大きな円盤はおけない 逆の棒にすべての円盤を移したい 18

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探索 19

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探索 21

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探索 22

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探索 23

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探索 24

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探索 25

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(小,中,大 ) P Q R ( P,P,P ) 26

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(小,中,大 ) P Q R ( P,Q,Q ) 27

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探索 P,P,P Q,P,P R,P,P Q,R,P R,Q,P R,R,P Q,Q,P R,R,Q Q,Q,R P,R,Q P,Q,Q Q,Q,Q P,Q,R P,R,R R,R,R Q,R,Q Q,P,Q R,P,Q R,Q,Q R,Q,Q P,R,P P,Q,P R,Q,R R,P,R P,P,R Q,P,R Q,R,R 循環グラフであるため, 木構造の探索はそのまま使えない 28

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グラフ A B F C D E G Node と Edge の集合で表現できるデータ構造 無向グラフと有向グラフ,循環路の有無で扱いがことなる 要素間の関係性や,状態遷移の表現に用いる.“グラフ理論”や“ネットワーク解析”などで扱う A B F C D E G 無向グラフ 有向グラフ 最短経路の探索などにはこのグラフ表現を用いる 著名な最短経路の探索手法は ダイクストラ法 29

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このどこが知能なのか?? n 一つには歴史的背景 u 探索問題は AI 研究の初期課題 p ENIAC 誕生は1946年頃 p AI という言葉ができたのは1956年 • 探索がブームになったのは1950年代〜70年代 u コンピュータは,いまの電卓に当たるイメージ p 弾道計算など,四則演算を高速に行うことがメイン p そうした視点に立った場合,こうした問題を自動的に解く… ということも,十分に先進的で知的なタスクだった 30

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このどこが知能なのか?? n 人間も似たような行動をとる …こともある u 将棋などゲームの定石 u スポーツにおける戦略 u 格闘技(主に武道)における型 p “こう来たらこうする”という一連の遷移パタンについて, 反復練習することで無意識的に出せるようにする p その分の演算リソースを先読みを含めた対応策に割ける 31

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このどこが知能なのか?? n 単純なロボット的なものも作成できる u 例えばお掃除ロボットを考えると… p この位置はすでに通過したか? p 前方に進むことができるか? など,いくつかの条件の組み合わせで実現できる 32

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単純な探索の限界 n オセロや将棋も探索で解けるのではないか? u と,考えるのは自然な流れではある u が,実際には難しかった… なぜか? 組み合わせが爆発するから 円盤3枚のハノイの塔でも状態は27通り 64枚だと最短の遷移だけに絞っても… 264 通り = 18,446,744,073,709,551,616 通り = 1844京6744兆737億955万1616 通り ゲームでは相手の動作もあるので, 先読みしつつベストな手を探す必要…だが, 探索するのに莫大な時間が… 33

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ボードゲームの複雑さ n オセロ : 10^30 10^60 n チェス : 10^50 10^120 n 将棋 : 10^70 10^220 n 囲碁 : 10^160 10^360 盤面の数 探索木 盤面の広さ,駒の数,動きの種類,とった駒を再投入できるか?などで変化 囲碁は石(駒)の数が多く,配置自由度も高い上,盤面も広いので難しい ※ 宇宙にある水素原子の数は 10^80 個と見積もられている 34

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数え上げの困難さ:組み合わせ爆発 n 単純な経路探索は なかなか大変… u どのくらい大変か, ちょっと見てみましょう u パタンの組み合わせは 容易に爆発!!! u ただの紙も 42回 折ると 月に届く厚さになる… https://www.youtube.com/watch?v=Q4gTV4r0zRs 35

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数年前,囲碁とAIが話題になったような…? n いくつかのブレイクスルーを経て,最近ようやく この問題を解決できるようになったと言うこと u 取り得る状態を列挙して,有利そうな手を取るのは同じ u すべて列挙するわけではなくて,良い感じの手… というのを学習することで,全探索を回避する ここではいったんここまで 詳細は別の回で説明 36

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トイ・プロブレム n 初期のAI研究においては,迷路やハノイの塔など ごく単純化された条件下での問題を扱った n 単純化された問題 = トイ・プロブレム u いきなり複雑な条件は扱えないので, 簡単な例から考えていくのは,問題を解く上での定石 u しかし,初期のAIはこの段階を超えることができず, “知能”の難しさ,複雑さが明らかとなった Toy:おもちゃ 37

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トイ・プロブレムの成功例 n トイ・プロブレム とはいえ,成果を上げたものも u STRIPS ( Stanford Research Institute Problem Solver ) p 前提,行動,結果 という3要素で 仮想ロボットの動作を実現 • ロボットが自動的に動作計画を立てることを“プランニング”という p 仮想ではあるが,いろいろな動作を実現できた u 積み木の世界 SHRDLU(シュルドゥル) p 仮想空間上に配置された 積み木 を操作させることができた • 人「ブロックの上に,四角錐はおけるか?」,AI「Yes」 • 人「四角錐の上に,四角錐はおけるか?」,AI「No」 …といった対話形式で,積み木を操作させたり説明させられた = 対話的にAIにプランニングを実行させることができた 38

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SHRDLU と Google n SHRDLE の 開発者 u SHRDLE を 開発したのは スタンフォード大学の テリー・ウィノグラード 博士 u この ウィノグラード博士 の 教え子 ラリー・ペイジ が 後に Google を創業することになる 39

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まとめ n 初期のAI研究では推論・探索などに注目があった u 具体課題:迷路やハノイの塔,積み木など u 探索木などを用い望ましい状態への遷移を探索 p 遷移のパタンを自動で組み立てること=プランニング u トイプロブレムは解けたが,少し複雑になると破綻 p チェスや将棋,囲碁は解けなかった… • 組み合わせ爆発に伴う計算量の増加に対応できなかった 40

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同時代の関連研究 n 自動翻訳も最初期に取り組まれたものの一つ n 精密な文法書と,辞書さえあれば簡単にできそう u 多義語の存在や,構文解析の複数解釈可能性… p 核: 原子核? 細胞核? 核心的利益? 議論の核? p 黒い目の大きな女の子 • 目が大きくて黒い女性 の 子供 • 目が黒くて 体が大きな 女の子 • 黒目の部分が大きい女性 の 子供 • 体の大きな女性 の 黒い目をした子供 • etc. 41

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明らかになった課題 n 限定された環境下では, 単純な探索でもそれなりに問題を解くことができる n 少し複雑になってくると計算量の問題から, うまくは機能しなくなってくる u そもそも複雑な問題を扱えてこその知能なのでは? n コンピューターが極めて高価な時代, できるだけ実用上の問題を解きたい…!!! 42

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トイプロブレムは知能の本質を捉えられない? n 捉えられない面も多分にありそうだが, 逆に,本質を捉えやすくする部分もありそう ドア 衝立 窓 ハエの閉じ込め ランダムに動けば出られるが 明るい窓の方へ移動するので, 閉じ込められてしまう 走光性 は 条件反射か 知能か? ランダムよりは知的っぽい 条件反射も知能の一部? 43

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探索における遠回り・外乱の必要性 n 最適な解にたどり着くためには, あえて遠回り(評価値を悪化させること)が必要なことも u どの程度まで,遠回りのコストを許容すれば良いのか? u どういうときに,遠回りを検討するべき・するのか? 局所解 局所解 最適解 外乱を与えないと, 最適解にはたどり着けない c.f. 焼きなまし法 網 肉 犬は肉を食べるために 遠回りすることができるか? 44