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効果検証入門から見直す
 「データサイエンス」
 @データサイエンス協会セミナー
 2020.08.28
 安井翔太


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2 自己紹介
 名前:安井翔太(32) 職業:Economic Research Scientist Data Science Center 副所長 経歴: 2011年 立教大学 経済学部卒業 2013年 Norwegian School of Economics MSc in Economics 2013年 Cyberagent 入社(総合職, 微妙な分析の量産) 2015年 アドテク部門へ異動(専門職, MLの応用) 2017年 AILabへ異動(研究職, ML + CI回りの応用) @housecat442


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書籍紹介
 ● 効果検証に関する本を書きました
 ● 因果推論/計量経済学を使った効果の検証
 ● 今日の前半部分の内容


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なぜ因果推論が大事なのか?
 4 ● よく見るデータサイエンスの問題
 ○ 効果の検証はかなりいい加減なことができる
 ○ データのバイアスは無視されがち
 →この2つに対してリスクがよく理解されていない
 
 ● 因果推論はリスクの理解と対応策を教えてくれる
 ○ 「効果」について正面から取り組む唯一(?)の分野
 ○ データのバイアスの対処方法がわかる


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今日の内容
 1. 効果検証の入門
 
 2. 効果検証の考え方に基づく
 データサイエンスに対する2つの疑問
 
 3. 効果の出せるデータサイエンス
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1.効果検証の入門
 効果検証の入門の入門


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効果検証(因果推論)の大まかなイメージ
 1.効果を定義する
 2.統計学を使って
 データから効果を推定する


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効果検証(因果推論)の大まかなイメージ
 1.効果を定義する
 2.統計学を使って
 データから効果を推定する


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効果の定義
 何かしらの施策 
 世界線Aの鍋 
 世界線Bの鍋 
 9 鍋
 ● 鍋Aと鍋Bの味の差(効果)を知りたい
 塩を加えるか否か... 


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Donald Rubin@Harvard 
 ポテンシャル  アウトカム フレームワーク
 Potential Outcome Framework
 世界線Bの鍋の味 
 世界線Aの鍋の味 
 施策の効果 


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効果検証(因果推論)の大まかなイメージ
 1.効果を定義する
 2.統計学を使って
 データから効果を推定する
 世界線Bの鍋の味 
 世界線Aの鍋の味 
 施策の効果 


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統計学とは?
 手元にあるデータから、母集団のことを考えるための学問
 
 ● 例: 味噌汁
 ○ 味噌汁の味見をするとき、全部飲むのではなく小皿ですくって確認する
 
 ● ざっくりした用語のまとめ
 ○ パラメータ(期待値): 鍋全体の塩辛さ
 ○ 推定量(平均): 小皿の塩辛さ
 ○ 推定値: 推定量の実際の値のこと。(データで得られる値) 
 12

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効果検証(因果推論)の大まかなイメージ
 1.効果を定義する
 2.統計学を使って
 データから効果を推定する
 世界線Bの鍋の味 
 世界線Aの鍋の味 
 施策の効果 
 母集団
 手元のデータ
 サンプリング


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1.効果検証の入門
 セレクションバイアスについて


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クーポンの効果を考える
 クーポンを付与(介 入)
 世界線Aのユーザー i さん 
 ユーザー i さん
 15 世界線Bのユーザー i さん 
 購入:2000円
 購入:3000円
 ECサイトであるユーザーにクーポンを配布 


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クーポンの効果を考える
 16 クーポンを付与(介 入)
 世界線Bのユーザー 
 世界線Aのユーザー 
 購入:3000円
 購入:2000円
 効果:1000円


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理想的なデータ
 17 ● クーポンをユーザーに割り振る
 ● クーポンがある場合とない場合の売上がわかるとする
 ● 差分を取ればクーポンの効果が1000円であることがわかる


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因果推論の根本問題
 クーポンを付与(介 入)
 世界線Aのユーザー 
 ユーザー
 同時に観測が
 できない
 18 世界線Bのユーザー 
 購入:2000円
 購入:3000円


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実際に得られるデータ
 19 ● クーポンを渡せば、クーポンのありの売り上げが観測される。
 ● クーポンを渡さなければ、クーポンなしの売り上げが観測される。
 ● 直接差分を計算することはもう出来ない。


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適当な集計の問題
 20 クーポンが配布されなかった 
 ユーザーの平均売り上げ 
 クーポンが配布された 
 ユーザーの平均売り上げ 
 1000円
 3000円
 効果は
 2000円?


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セレクションバイアスの問題
 21 クーポンがなくても
 発生する売上
 クーポンの効果
 1000円
 単純な比較で
 効果と思い込む部分 
 2000円
 セレクション 
 バイアス


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発生源が存在する
 22 例えば購買予測を行って、予測値が高いユーザーにクーポンを配布する場合・・・ 
 予測購買確率:80%
 予測購買確率:70%
 何かしらの予測モデル
 予測購買確率:60%
 予測購買確率:40%
 担当者
 Z = 0
 Z = 1


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発生源が存在する
 23 例えば購買予測を行って、予測値が高いユーザーにクーポンを配布する場合・・・ 
 予測購買確率:80%
 予測購買確率:70%
 何かしらの予測モデル
 予測購買確率:60%
 予測購買確率:40%
 担当者
 クーポンがなくても 売り上げが高い    が高い    が低い Z = 1
 Z = 0


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バイアスの発生にはパターンがある
 ● 介入Zは何かしらの意思決定を元に割り振られる
 ○ 誰が、何のために、何を参照して割り振っているか?
 
 ● クーポンの場合・・・
 ○ 担当者がクーポン施策の成功を目指して割り振る。
 ○ 何をもって成功と考えるか?
 ■ 単純な集計の結果で売り上げが高くなることを成功とすると・・・ 
 24

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一応式で理解しておく
 25 データ上で平均の差を効果と考える 
 クーポンが配布されなかった
 ユーザーの平均売り上げ 
 クーポンが配布された
 ユーザーの平均売り上げ 


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一応式で理解しておく
 26 データ上で平均の差を効果と考える 
 期待値
 期待値
 これらの平均は母集団上では 
 条件付き期待値の推定になっている 


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一応式で理解しておく
 27 期待値
 期待値
 セレクションバイアス 
 データ上で平均の差を効果と考える 
 本当に推定したい効果 


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1.効果検証の入門
 A/Bテストのご利益


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Golden Standard Research Design: A/Bテスト(RCT)
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A/Bテストの流れ
 ● 介入(Z)を定義する
 ● 介入の有無をランダムに決める 
 ● 介入有無のグループ間を比較する 
 30 出典)A/B Testing at Scale Tutorial given at SIGIR 2017 and KDD 2017)

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A/Bテストとセレクションバイアス
 31 クーポンがなくても
 発生する売上
 クーポンの効果
 1000円
 ランダムに
 クーポンを割り振り
 ● クーポンをランダムに選んだユーザー に配布
 ● その結果Y0がZ=1とZ=0のグループに おいて同等になった 


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一応式で理解しておく
 32 期待値
 期待値
 セレクションバイアス = 0 
 データ上で平均の差を効果と考える 
 本当に推定したい効果 


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1.効果検証の入門
 実験できないとき:回帰分析


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回帰分析とは・・・?
 34 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 


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回帰分析とは・・・?
 35 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね


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回帰分析とは・・・?
 36 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね
 ● VIFとかみて多重共線性も確認しないとですね 


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回帰分析とは・・・?
 37 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね
 ● VIFとかみて多重共線性も確認しないとですね 
 ● 予測の性能を最適化するためにstep wise AICでモデル 選択したり


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回帰分析とは・・・?
 38 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね
 ● VIFとかみて多重共線性も確認しないとですね 
 ● 予測の性能を最適化するためにstep wise AICでモデル 選択したり
 ● Cross-Validationで汎化誤差を考慮してモデル選択したり 


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回帰分析とは・・・?
 39 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね
 ● VIFとかみて多重共線性も確認しないとですね 
 ● 予測の性能を最適化するためにstep wise AICでモデル 選択したり
 ● Cross-Validationで汎化誤差を考慮してモデル選択したり 
 ● あとR^2もありましたね・・・


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回帰分析とは・・・?
 40 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね
 ● VIFとかみて多重共線性も確認しないとですね 
 ● 予測の性能を最適化するためにstep wise AICでモデル 選択したり
 ● Cross-Validationで汎化誤差を考慮してモデル選択したり 
 ● あとR^2もありましたね・・・
 ● え、分散不均一性・・・?


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回帰分析とは・・・?
 41 回帰分析ってあれですよね・・・
 ● 誤差を最小にするように線を学習するやつですよね 
 ● データの分布に合わせてロジスティック回帰とか考えな いといけないですよね
 ● VIFとかみて多重共線性も確認しないとですね 
 ● 予測の性能を最適化するためにstep wise AICでモデル 選択したり
 ● Cross-Validationで汎化誤差を考慮してモデル選択したり 
 ● あとR^2もありましたね・・・
 ● え、分散不均一性・・・?
 ● い、因果効果・・・


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元ネタ: Empirical Strategies Short Course by Joshua Angrist

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複雑怪奇な回帰
 43 いろいろな分野の常識が持ち込まれて 
 キメラ化した回帰分析 
 因果 効果 説明 予測

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複雑怪奇な回帰
 44 いろいろな分野の常識が持ち込まれて 
 キメラ化した回帰分析 
 効果検証だけ考えた 
 シンプルな回帰分析 
 因果 効果 説明 予測 因果 効果

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効果検証での回帰分析の考え方
 バイアスのある 母集団 サンプル 45 母集団 推定したい真の効果 


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効果検証での回帰分析の考え方
 バイアスのある 母集団 サンプル 46 母集団 セレクションバイアスの原因と思われる変数 
 ・過去の購買量
 ・年齢や性別などのデモグラ 
 ・etc...
 推定したい真の効果 
 Zの効果を表すパラメーター 


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効果検証での回帰分析の考え方
 バイアスのある 母集団 サンプル 47 母集団 セレクションバイアスの原因になる変数をモ デルに入れると近づく 
 セレクションバイアスの原因と思われる変数 
 ・過去の購買量
 ・年齢や性別などのデモグラ 
 ・etc...
 推定したい真の効果 
 Zの効果を表すパラメーター 


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効果検証での回帰分析の考え方
 バイアスのある 母集団 サンプル 48 母集団 セレクションバイアスの原因になる変数をモ デルに入れると近づく 
 推定したい真の効果 
 Zの効果を表すパラメーター 
 この母集団も観測できない
 =この回帰分析は実行不可能
 母集団で回帰分析!


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効果検証での回帰分析の考え方
 バイアスのある 母集団 サンプル 49 母集団 セレクションバイアスの原因になる変数をモ デルに入れると近づく 
 推定したい真の効果 
 ● 母集団におけるγの推定値 
 ● 真の効果の推定値 手元のデータで回帰分析!
 母集団で回帰分析! 
 推定!


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きになること・・・
 ● xってどう選べば良いの?
 ● 入れちゃダメな変数は?
 ● 多重共線性考えなくて良いのか?
 ● 予測性能みなくて良いのか?
 ● 線形回帰で良いのか?
 →効果検証入門をぜひ


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1.効果検証の入門
 実験できないとき:傾向スコア


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傾向スコアとは?
 ● 介入が割り振られる確率のこと
 ○ ロジスティック回帰などで推定が可能
 ● これを使ってバイアスを小さくする
 ● 主な使い方
 ○ マッチング
 ○ IPW(IPS or Holvitz-Thompson Estimator)
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クーポンを配ってみる
 53 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%
 ● クーポンの効果は一律1000円 
 ●   が高いユーザーにはクーポンが配られないという設定 
 ● セレクションバイアスは負の値になる 


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集計で効果を推定する
 54 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 平均売上=2556
 平均売上=3359
 →推定された効果は約800円 
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 55 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 このデータが全て観測できた 
 場合の平均が知りたい 
 このデータが全て観測できた 
 場合の平均が知りたい 
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 56 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 このデータが全て観測できた 
 場合の平均が知りたい 
 このデータが全て観測できた 
 場合の平均が知りたい 
 この差分が効果の推定値になる 
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 57 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 5人中1人しか観測されない 
 →このユーザーを5人分カウントしよう 
 x5
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 58 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 5人中2人しか観測されない 
 →2人を2.5人分ずつカウントしよう 
 x5
 x2.5
 x2.5
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 59 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 4人中2人しか観測されない 
 →2人を2人分ずつカウントしよう 
 x2.5
 x2.5
 x5
 x2
 x2
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 60 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 {(3824x5) + (3726x2.5) + (2506 x 2.5) + (3015x2) + (2727x2) } / 14 = 3477
 x2.5
 x2.5
 x5
 x2
 x2
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 61 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 {(2047 + 2953 + 2833 + 2866)x1.25 + (2482 + 2443 + 2102)x1.66 + (2234 + 2044)x2 } / 14 =2492
 x1.25
 x2
 x1.25
 x1.25
 x1.25
 x1.66
 x1.66
 x1.66
 x2
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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IPWのイメージ
 62 ユーザーグループA 
 ユーザーグループB 
 ユーザーグループC 
 推定された売上
 =2492
 推定された売上
 =3477
 →推定された効果は約985円 
 売り上げ:高
 クーポン確率:20%
 売り上げ:中
 クーポン確率:40%
 売り上げ:低
 クーポン確率:50%


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(余談)マッチングのイメージ
 63 →推定された効果は約940円 
 
 
 3824 - 2833 = 991
 3726 - 2482 = 1283
 3506 - 2443 = 1063
 3015 - 2334 = 681
 2727 - 2044 = 683
 傾向スコアの近いユーザーをペアにして、差分 を効果として計算する。 


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広告テンプレート選択@CyberAgent
 64 slot _1 slot _2 slot _3 slot_1 sl ot _2 ユーザー
 セグメント{A,B,C}
 予測モデル
 意思決定
 ルール
 slot_1 sl ot _2 広告表示
 クリック
 広告画像の
 選択肢
 セグメントにより選ばれやすい画像が異なる
 ● セグメントA
 ○ 80%の確率でZ=1
 ○ 20%の確率でZ=0
 ● セグメントB
 ○ 60%の確率でZ=1
 ○ 40%の確率でZ=0
 ● セグメントC
 ○ 40%の確率でZ=1
 ○ 60%の確率でZ=0


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考えるお題
 広告画像の選択肢を評価・比較したい
 →無駄なものは削除したい
 
 65 slot_1 slot_2 slot_3 slot_1 slot _2 template_id: 26 template_id: 75

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とりあえず集計した結果
 ● template_id毎にCTRを計算する ● template_id:26のCTRが高そう →Biasを含んだ結果 営業や事業責任者の方が見るデータ 66 26以外いら ないね!!

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● バイアスがある程度減っているはず。 ● 26がよかったというのは幻想だった。 ● CTRはどれも大差ないという結果。 傾向スコアを使ったIPW
 67

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2.効果検証から出る疑問
 教師ありの機械学習を例に考える


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効果検証から得られる観点
 69 観測されるデータには
 バイアスが存在する
 世界線Bの鍋の味 
 世界線Aの鍋の味 
 施策の効果 
 効果は2つの世界線の差にある
 →これらの観点は他のDS技術でどう捉えられているのか?


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2.効果検証から出る2つの疑問
 教師あり学習を例に考える
 - バイアスはどう考えられているのか?
 


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学習データがある母集団から手に入る
 71 母集団 サンプル (学習データ)

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誤差を定義する
 72 母集団 サンプル (学習データ) あるモデルfの誤差を定義


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モデルを学習する(誤差の最小化)
 73 母集団 サンプル (学習データ) あるモデルfの誤差
 誤差を最小にするように 
 モデルを学習する


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データ上の誤差は推定値
 74 母集団 サンプル (学習データ) あるモデルfの誤差の推定値
 あるモデルfの真の誤差(母集団におけるの誤差) 
 実は誤差の推定値を最小にする ようにモデルを学習している 


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同じ母集団からテストデータが得られる
 75 母集団 サンプル (学習データ) サンプル テストデータ 誤差の推定値を最小化して得られるモデル 
 同じ母集団から得られたデータなので 
 誤差は小さくなるはず 


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母集団 学習データにバイアスがある場合
 76 バイアスのある 母集団 サンプル (学習データ) サンプル テストデータ バイアスのある母集団の誤差の推定値 
 を最小化して得られたモデル 
 別の母集団への誤差を最小にしているので 
 誤差は思うように小さくならない 


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おさらい
 ● 学習データにはバイアスがあるかも
 ○ 調査に協力してくれたユーザーのデータしかない
 ○ でも予測は全部のユーザーにしたい
 
 ● 何も考慮しなければどうなるのか?
 ○ バイアスのある母集団への誤差を最小化する
 ○ これはバイアスの無い母集団への誤差最小化とは一致しない
 77

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実際どう捉えられているか?
 ● 技術的には対応策はいろいろ提案されている
 ○ Covariate Shift
 ○ Domain Adaptation
 ○ etc...
 ● 技術に関して手に入りやすい情報があまりない
 ○ 日本語の教科書とかにはほぼ情報がない
 ○ 特にどんな時に使えば良いのかが議論されてない
 78

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母集団 他の分野でも起きること
 79 バイアスのある 母集団 サンプル (学習データ) 得られるデータにはバイアスがある 
 単純に損失の最小化をしても本当に行いたい 予測や知識は得られない 
 バイアスの無い母集団での損失が最小化できると 
 予測ができたり何かがわかったりする 


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例:モデルの解釈性とバイアス
 ● 教師あり学習を行ってモデルから情報を得る
 ○ Aという要素が重要!
 ○ といった情報を得ることができる(と考えられている)
 ● 学習データにバイアスがあるとどうなる?
 ○ 結果がコロコロ変わることが示唆されている
 ■ バイアスがあるデータではAが重要 
 ■ バイアスのないデータではBが重要 
 ○ 参考)Robust and Stable Black Box Explanations @ ICML20
 80

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2.効果検証から出る2つの疑問
 教師あり学習を例に考える
 - 効果について考える


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よくあるデータサイエンスプロジェクト
 82 予測モデルの作成
 知識や示唆の発見
 ビジネスへの応用
 適当な効果検証
 データの取得
 データ
 サイエンティスト


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データサイエンスの効果検証が行われるとする
 83 予測モデルの作成
 知識や示唆の発見
 ビジネスへの応用
 効果検証
 ・ABテスト
 ・因果推論
 データの取得
 データ
 サイエンティスト


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テック企業では常識
 84 +1000 test /day +200 test /day 2013年に行われていたABテストの数 
 →1000 test/day in 2017 
 出典)A/B Testing at Scale Tutorial given at SIGIR 2017 and KDD 2017)

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テック企業以外でも・・・
 85

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86 最後に因果効果で評価されるなら、
 因果効果を直接最大化すれば良いのでは?


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例えば・・・
 ● 因果推論を使った意思決定してみよう
 ● 個人の因果効果を機械学習で予測してみよう
 などが考えられる
 87

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こういう意見もある
 88 えーでもあれですよね
 
 機械学習の予測をビジネスで使う場合、 予測性能が向上すれ ばビジネス上の意思決定も改善されますよね? 
 
 だからCross-Validationでの評価を改善してゆけばビジネスで も改善が起きるはずですよね? 
 
 だからわざわざPotential Outcome Frameworkとか持ち込まな くても良いのではないでしょうか? 


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23回ABテストした結果・・・ 
 ● 横軸:機械学習のオフラインでの予測能力の改善 
 ● 縦軸:ビジネスKPIの改善 
 ● オフラインの予測能力とビジネスKPIに関係無し 
 Lucas Bernardi, Themistoklis Mavridis, and Pablo Estevez. 2019. 150 Successful Machine Learning Models: 6 Lessons Learned at Booking.com. In Proceedings of the 25th ACM SIGKDD International Conference on Knowledge Discovery & Data Mining (KDD '19). 89 残念なお知らせ@KDD2019


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なぜそうなるのか?
 ● 意思決定の質との繋がりが明確か?
 ○ 計測可能な予測性能の改善と意思決定の繋がりが見えているか?
 ○ 多くの場合繋がりが曖昧だったり弱かったりする
 ● 補足)
 ○ 予測がビジネスKPIに明確に関連する場合は問題なし
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利用可能な技術もある
 ● 因果推論を使った意思決定
 ○ Aの効果がよかったから、Aを使おうという話。
 ● 機械学習で因果効果を予測する
 ○ いろいろ工夫して効果を予測する
 ○ Uplift Modeling / ITE Prediction
 ● 強化学習で報酬(累積因果効果)を最大化する
 ○ Bandit Algorithm
 →こちらは日本語でも情報がちらほらある
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DSをビジネスで使ってみることと、
 成果につなげることの間には大きな谷がある。
 92 効果検証
 応用・実装
 成果
 データサイエンティスト


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3.効果の出せる
 データサイエンティスト


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効果検証から得られる観点
 94 観測されるデータには
 バイアスが存在する
 世界線Bの鍋の味 
 世界線Aの鍋の味 
 施策の効果 
 効果は2つの世界線の差にある
 →様々なケースでこれらの観点が重要になる


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何が必要なのか?
 ● 技術的な話
 ○ バイアス対処にまつわる技術
 ○ 効果を改善する技術
 ● ソフトな話
 ○ 自分のデータにバイアスがあるのかを発見できるか?
 ○ 重要な効果が何かを先に定義できるか?
 
 →バイアスの検知や効果の定義がなければ技術は無意味
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効果を出すために重要なスキル
 ● バイアスの存在に気がつけるか?
 ○ 体系はない(経済学が近いかも?)
 ○ バイアスのあるデータだけみてもバイアスはわからない
 ○ なので、実はドメイン知識が非常に重要
 ● 推定したい効果を明確に定義できるか?
 ○ 因果推論では、Z = 0 or 1の効果しかわからない。
 ○ 何がビジネスに重要なのかをよく議論する必要がある
 ○ 「どの要因が一番効いているのか?」はかなり難しい
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 勝手に提案
 現状:バイアスに関連する内容ほぼ無し
 
 提案:
 
 ● バイアスに気が付けるスキル入れてみませんか?
 
 ● 効果を定義できることは重要ではありませんか?
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98 Enjoy!