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TMI夏学期講義金曜2限 知識社会マネジメント Innovation management in the knowledge society 4月15日 第2回 予測と社会・イノベーション・コンセプト 佐々木一 Hajime Sasaki Ph.D. 特任准教授 東京大学 未来ビジョン研究センター

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補助資料について • 補助資料として科学技術イノベーション政策の科学のコアコンテンツを活⽤しています。 h"ps://scirex-core.grips.ac.jp/index • 事前に通読いただくと講義での学習効果が⾼まります。 • 講義中には下記内容を丁寧になぞることはせず、むしろ所与として扱うことがあります。 (コアコンテンツ=科学技術イノベーション政策をよりエビデンスに基づくものにするために、政策と研究が相互作⽤しながら発 展する、新たな学問領域「科学技術イノベーション政策の科学」を理解する上で基本的に必要な知識のこと。) 「本講義に関連性の⾼いコアコンテンツ」ITC-LMSにも載せています。 • 0.1 変容する社会の中で、科学とは︖技術とは︖イノベーションとは︖ • 1.0.1 イノベーションとは • 1.0.2 イノベーション・プロセスのモデル • 1.2.3 なぜ既存企業はイノベーションへの対応が難しいのか • 2.2.1 STIガバナンスにおける意思決定のツール • 3.1.1 研究者の責任と倫理的・法的・社会的課題(ELSI) • 3.1.2 ビッグサイエンスと社会 • 3.2.2 研究者コミュニティと市⺠が交わる場づくり

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課題 •「A personal Computer for Children of All Ages」と「Moon Speech」を読み、両者に共通する特徴を⾃分なりに抽出 し、その特徴を有するもう⼀つの事例をあげよ。

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共通点をあげよ(⼀例) • 「未来についての語り」 • 未来について語られているという点 • 未来について実現されることを信じ、また実際に実現されたもの • 未来の社会の姿を描き、その到来の重要性と⼈々の影響 • 「⽬標/ビジョンを定める」 • ⽬標を定め、それらを達成するための⾦額や年数を⽰すことで読者、聴衆により現実感を持って実現可能 • ⽬標を実現することが⼈類を⼤きく進化させる可能性を感じさせる • 責任のある⽴場にいる当⼈がそうあるべきと考えるビジョン • ビジョンが実現されるべき理由を外界に向けて発信 • ⼤衆が取り組むべきビジョンとしてすり替え認識させたこと • 「困難を乗り越える道筋」 • 困難だと思えたとしてもまず未来の理想の姿を具体的にわかりやすい形で提⽰すること • 実現するのが⾮常に困難ではあるが、成功すれば⾮常に理想的な未来の予測 • イノベーションが起きなければ成し遂げられない • 実現困難かつ使命感のある未来を描き、それに向けた具体的・論理的な⽅法を提⽰し、社会に変化をもたらす • 実現したら社会の⾰新的なインパクトを与えることが出来る構想や⽬標 • 「技術/知識の活⽤と促進」 • 科学技術を⼈類のために使う • テクノロジーの進歩によってもたらされるものそれ⾃体には善も悪もなく、扱う⼈間次第 • ⼈の⽣活を豊かにするために作られたものだが、その効果は使う⼈に依存している • どのように知識を整理していくのか,テクノロジーを⽤いて解決策を⽰して • 新しい知識、学習とマッピングと観察による技術、新しいツールとコンピューター、によって科学や教育の成⻑が豊かになること • 達成しようとする⽬的が⾰新的であり、その⽬的のためにテクノロジーを利⽤すること。 • 後の世のイノベーションを促した

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• 表示装置 • 表示変更時のみ電力を消費し、それ以外の時には使わず、自然光の下で読むことができる何らかの技術が必要。 • 通常(画面を)見る距離で書籍と同様の品質になる文字を表示するには、視覚をうまくモデル化する必要があり、私た ちの研究室で最近なされた文字生成の技術に関する知見を利用する必要。 • ディスプレイ表面は、おそらく最低でも1インチあたり80〜100ピクセルの液晶であり、縦横比は垂直方向が1ピクセル に対して水平方向が約2ピクセル、かつ、全体のピクセル数が約1024x1024程度。 • キーボード • できる限り薄くなるべき。 • ノートブックの前面をディスプレイパネルが覆っていると仮定。 • どんなキーボード配置であってもディスプレイに表示することが可能。 • サイズとコスト • 教育のために子供1人当たり平均年総額:850 USD • 年間約90-95ドルの学生のお金が教科書の購入、管理 • 500ドル(現在のミニコンと比較してとんでもなく安く、現在のテレビと比較してとんでもなく高い)” ダイナブック構想 byアラン・ケイ 1972 • ヒューストンの指令センターから240,000マイル離れた月へ、 • 今まで人類が経験したことのない数倍の熱や圧力に耐えることができるような複数の新しい金属素材を • 最も高度な時計よりも正確無比に適合させることによって構築された、300フィートを超える高さと、このフットボー ル場の長さを持つ巨大ロケットを、 • 推進・誘導・制御・通信など全ての必要な機器と食料と非常用具を、 • 未知の飛行、未知の天体へと送り込み、 • そしてその後、それを地球へと安全に帰還させるために、 • 太陽の半分にも達する熱を生じさせつつ、毎時25,000マイルを超える速度で大気圏へ再突入させる。 • 以上のこと全てを迅速かつ正確にこの60年代が終わるまでにやり遂げる。 ムーンスピーチ by JFケネディ 1962

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⽬指すべき⼤きな⽬標を先に決める。意義を伝える。 “それではテクノロジーは教師の属性をもつマシンを提供することがで きるでしょうか︖おそらくは可能です。しかしまず最初に、そうする ことが必要で望ましいゴールなのかを決めなければなりません。” → テクノロジーを駆使したメディアを通して強化することができると 考えている学習過程の様々な側⾯の在るべき姿。 → メタメディアを有し、簡単に操作が出来る上に、⾮常にコンパクト で、⽚⼿でも持てるようなコンピューターを、低価格で提供する。 “私たちは⽉へ⾏くことを選択しました。私たちは今後10年の間に⽉へ 到達し、そして更なる次の取り組みを⾏うことを選択しました。それ は、それらが容易だからではなく、困難だからであり、その⽬標が、 私たちの熱意と技術の最⾼度を組織しそれを測ることに資するであろ うからであり、その挑戦が、私たちが喜んで受け⼊れ、後回しにする ことを善しとせず、そして私たちに、その⽬標と、その達成に付随す る他の成果物を獲得したいと思わせる挑戦だからです。”

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Backcasting 将来のある地点においた⽬標実現のために、今そしてその⽬標までの各時点で何ができるかを発想。

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Forecasting and Backcasting

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Essence of backcasting (Dreborg, 1996) Forecasting Backcasting 1. Philosophical views 因果性; 決定論; 正当化の文脈 因果性とテレオロジー(⽬的論) 部分的な不確定性 = +発見のコンテキスト。 2. Perspective 支配的なトレンド 可能性の高い未来 可能な限界の調整 どのようにトレンドに適応するか 解決を必要としている社会問題 望ましい未来 人間の選択の範囲;戦略的決定 行動の自由を保持する。 3. Approach トレンドを将来に外挿 感度分析 未来を定義する これらの未来が実現するための条件を提示 する 4. Methods 計量経済的 二極性と技術的限界を強調した、部分的で 条件付きの外挿。 5. Techniques 数理アルゴリズム など Dreborg, K. H. (1996). Essence of backcas?ng. Futures, 28(9), 813-828.

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Forecasting, Backcasting and Scenarios • 未来について仮定を⽴てるという ⽬的。 • 可能な開発経路とそれらの将来の 結果の探求。 • 将来の発展の可能性について、そ してこれらの発展に望ましい⽅向 に影響を及ぼす可能性のある特定 の⾏動について、政策⽴案者に情 報を提供することを⽬的とする。 • 最も有り得べき未来を提⽰するもの • 想定されうる社会を変⾰するドライ バのみを考慮するもの。 • 未来の幅は限定的であり与えられた 条件がなりたつことが前提。 • 過去のデータに依存するもの。 • すなわち、過去の継続として未来を 扱うという性質が利点でもあり⽋点 でもある。 • 現在から望ましい未来への架け橋を 回顧的に構築すること • その未来につながる中間的なステッ プを特定すること。 • 将来のビジョンを現在の意思決定に 結びつけ、現在および近い将来にな されなければならない重要な選択を 提⽰する。 Robinson, J., Burch, S., Talwar, S., O'Shea, M. and Walsh, M., 2011. Envisioning sustainability: Recent progress in the use of participatory backcasting approaches for sustainability research. Technological Forecasting and Social Change, 78(5), pp.756-768

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When is backcasting applicable? •扱う問題が複雑で、社会の多くのセクターやレベルに影響を与える場合。 •⼤規模な変化の必要性がある場合、すなわち既存の秩序の中での変化だけ では⼗分ではない場合。 •⽀配的な傾向が問題の⼀部である場合-これらの傾向はしばしば予測の基礎 となる。 •問題の⼤部分が外部性の問題であり、市場原理が⼗分に扱うことができな い場合。 •時間軸が⼗分に⻑く、意図的な選択の余地がある場合。 Dreborg, K. H. (1996). Essence of backcas?ng. Futures, 28(9), 813-828.

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データに基づく様々な予測システム 電⼒需要予測 予測型犯罪防⽌システム ⼤気汚染予測システム 開花予測 予測変換

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内挿と外挿 Extrapolated, D Measured, B Measured, A Interpolated, C 内挿(Interpolation) 外挿(extrapolation) ・未来に対する予測(forecast)は外挿 ・過去に⼀度も起きていないことを 語る意義とは

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「予測」をめぐる⼆つの視点 •⾃然科学的 •予測の中⽴性、客観性 •社会科学的 • 予測は⼈びとの⾏為と連動し社会を変える •科学的な予測 → ⼈びとの⾏為 → 社会が変化 •「科学的な予測による社会への影響」はもちろん「社会による予測科 学への影響」も存在する。 『カメラではなくエンジン(An engine, Not a camera: How Financial Models Shape Markets, 2006)』 ・“経済モデルは経験的事実を再現するためのカメラではなく、探求のためのエンジンである” ・カメラ(記述的)/ エンジン(遂⾏的) M. (2007) “What Does it Mean to Say that Economics is Performative” ⾔語⾃体が社会の構成要素(つまりエンジン)であり、 予測を⾔語として伝達することによる(相互)影響を無視することはできない。 • 記述的な予測︓予測は事実を記述する予測。⾔語によって世界を説明する。 • 遂⾏的な予測︓予測が社会を動かす。世界が⾔語に合わせてくる。 =⾏為遂⾏性(Performa?ve) ︔⾔語⾏為論 Aus?n, J. L. 1962 How do things with Words.

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予測の⾏為遂⾏性 •予測が社会を変化させるメカニズム ⾏為遂⾏的な発⾔の存在:予測的な語りが社会に向けての宣⾔や約束 • 「今後20年以内に、マグニチュード8~9級の⼤地震が起こる確率が70~80%である。」 • 「ゲノム編集⾷品がこの夏までには、販売許可になる⾒込み。」 技術ロードマップ、フォーサイト、⼯程表、経済予測にも、⾏為遂⾏性が ある→⼈びとの期待といった未来への意識が技術をつくる ex: ムーアの法則, ハイプカーブ van Lente, H. (2012). "Navigating foresight in a sea of expectations: lessons from the sociology of expectations." Technology Analysis & Strategic Management 24(8): 769-782. ■ムーアの法則 ・集積度について︓「半導体産業のニーズとそれに答える⼯場⽣産においては、1.5 年から2年で、集積回路の機能(トランジスタ数等)が倍になる。」 ・スピードについて︓「マイクロプロセッサの性能(クロック周波数×命令数/ ク ロック/ 秒)は、1.5年から2年で、倍になる。」 Moore⾃⾝の発⾔の経緯として⾒ると、 1965年の段階で、『ビットコストは年々下落 するので、年々集積度を⾼めてゆかなければならないし、それは可能である』という 主旨のより抽象的であるが原理的なことに⾔及している。いずれにしても、コストを 意識した指針。従って、ムーアの法則は、関係者が⾃らの⾏動を調整 するための道具として作⽤する。 (G. Moore, Electronics, vol.38 no. 8, (Apr.19, 1965).)

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予測が科学であることの副作⽤ 専⾨家の視点 社会の状況や期待の視点 地震、気象、市場、⼈⼝動態等、予測精度の向上 専⾨的になればなる程、⼀般の⼈には理解が難し くなる。 また、予測過程がブラックボックス化したと感じ る。 学術雑誌 Public Understanding of Science 科学の限界や不確実性の存在 例:地震予測 モデルの構築・検証が難しい。実物⼤の実験もできない。過去 の地震発⽣に関する経験が不⾜しているが、現状経験的アプ ローチを取ざるを得ない(鷺⾕ 2012;鈴⽊・纐纈 2019)。 ⻑期予測に対する政策的な期待 Aykut et al. (2019) “The Politics of Anticipatory Expertise: Plurality and Contestation of Futures Knowledge in Governance. Science & Technology Studies, 32 (4), pp. 2- 12. 予測の原理や⽅法論の探索 例:シミュレーション、モデリングなどの⼿法の洗練 何をすべきかを⽰唆するような予測への期待 (⽮ 守 2019)

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科学としての予測と政策の接続に関わる課題 台湾の感染症シミュレーションモデルの事例(日比野 2019) • 2009年のH1N1新型インフルエンザのパンデミック以来、予測と政策の 接続の為 の社会的基盤が整えられてきた • 行政のスタンス • 感染症予測モデルに対する肯定的な態度 • 対策に対して積極的に数理モデルを活用 • 行政官自身がシミュレーション科学を学習し分析できる能力を涵養 日本の課題(日比野 2019) 数理モデルの政策活用は遅れている • シミュレーション結果を使い対策を試みるものの、法律や既存の制度の壁に阻ま れ実行できない • 例:「学級閉鎖」 • すでに確立された社会的基盤との接続の難しさ • 例:AEDの配置

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未来を予測する最善の方法は、 自らそれを創りだすことである “未来は、あらかじめ引かれた線路の延長上にあるの ではない。それは、われわれ自身が決定できるような ものであり、宇宙の法則に逸脱しない範囲で、われわ れが望むような方向に作り上げることもできるのであ る”

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• 23項⽬のすべてが100年前の⼈々の欲求に深く根ざしたもの • 実現した13項⽬は主として電気・機械・通信・エネルギーなどの産業⾰命以降の技術⾰新をベースとしたもの • 実現しなかった7項⽬は環境と医療・⽣命科学に関するもの ⼆⼗世紀の予⾔ 分類 予言の内容と実現状況 実現した予言 無線電信電話(→携帯電話による国際電話) 遠距離の写真(→カラー写真の電送) 7日間世界一周(→航空機の発達、海外旅行の一般化) 暑寒知らず(→エアコン) 植物と電気(→人工光による室内栽培) 人声十里に達す(→電話) 写真電話(→テレビ電話・テレビ会議) 買物便法(→通信販売・ネットショッピング) 電気の世界(→電気エネルギー) 鉄道の速力(→鉄道の高速化) 市街鉄道(→地下鉄・高架) 自動車の世(→モータリゼーションの到来) 電気の輸送(→水力発電・電力網) 一部が実現した予言 サハラ砂漠の沃化(一部に砂漠の灌漑は実現した) 空中軍艦・空中砲台(爆撃機や戦闘機は発達したが、飛行船による戦闘は実現せず) 人の身幹・身長は6尺以上に(体格の向上はあるものの個人差大) 実現しなかった予言 野獣の滅亡 蚊及び蚤の滅亡 鉄道の連絡・5大陸に鉄道貫通 暴風を防ぐ 人と獣の会話自在 幼稚園の廃止 (出典︓報知新聞1901年1⽉2、3⽇、科学技術⽩書平成17年版、内閣府イノベーション25戦略会議資料) 「技術の進歩の予測」 よりも 「⼈々の欲求の強さ」

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なぜイノベーションが必要なのか •不確実性の増⼤。 • VUCA︓ (Vola)lity(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)) •知識/ 情報の爆発的増加と細分化 •利害関係者の多様化 変化に適応するため。のみならず、変化を作るため。 イノベーションは前提(ルール)を変える。 これまでの延⻑線上ではない価値創造。 →新しいコンセプト(概念)の創造

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イノベーションと聞いて連想するもの (2022年度第1回より) iPhone/ 技術革新/ 不連続性/ 現状の重要な課題を解決する技 術の応用の仕方/ 複数分野の連携/ 既存の概念を破壊し再構築す ること/ 技術/ ジレンマ/ 新しい技術の開発/ 不連続な変化/ 最新 技術/ 画期的な発明品/ 業務のAI化/ 新技術/ アイディア/結果/ 技術を使った革新/ 科学技術が社会に実装されることで人々に役 立つようになること特にそのうち影響の大きいもの/ ふとした発見 / 課題解決のための技術解決/ 新しいアイディア/ 視点を変える/ 試行錯誤/ 技術革新/ プロダクトイノベーション/ 産業革命/ イン ターネット/ Amazon/技術を用いた革新/新技術の開発/人類の夢 /技術的な新発見を活用した、世の中の多数の人の価値観・生活様 式を変えるもの/スマホ/人工知能/発見したことを活かす/ ビットコ イン/新規性/新しい領域or手法での課題解決/市民社会を生み出し た各国での西洋での革命/技術のブレイクスルーによる人々の生活 の変化/画期的なサービス/発見したことを活かす

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イノベーション(広義)とはなにか 「Innovation = “Value creation with something new”」 「新しい技術や製品、サービス、ビジネスモデルなどにより、 社会に価値 をもたらす⼀連のプロセスと結果」 A series of net value creation processes and their outputs and outcomes with something new to the world. 梶川, 2020,環境エネルギー科学技術委員会, MEXT Economic/ Social / Cultural / Environmental Process / Output / Outcome Technology/ Product/ Service/ System / Business Model / Usage/ Lifestyle / Institution New to the firm/ New to the industry / New to the market / New to the world などなど

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価値基準のシフト(イノベーションのジレンマの例) 性能 時間 市場A が求める性能 市場B が求める性能 破壊的 イノベーション 持続的イノベーショ ン(軌道延伸) 破壊的イノベーショ ン(軌道移⾏) Adopted from Cristensen (1997)

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チャットに投げて下さい •「コンセプト」と聞いて思いつくもの。 (⾃由に)

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イノベーションのためのコンセプト創造 •コンセプトとはなにか。 •辞書的な定義︓“概念。企画、広告などで全体を貫く統⼀的な視点や考 え⽅。” •コンセプトとは、視点を提供する思考形式。進むべき⽅向を与える指針。 ⾼根 正昭「創造の⽅法学」 苅⾕ 剛彦「知的複眼思考」 野中郁次郎「知識創造の⽅法論」 「コンセプトはサーチライトにたとえられる」 タルコット・パーソンズ(1902-1979) 社会システム理論の構築者

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経験的世界 コンセプト︓サーチライト 新たな思考形式(およびそれに基づく新範疇・類型) コンセプトによって範囲を定 められた属性(変数)の集合 コンセプトの光によって 照らされなかった部分 (残差カテゴリ) 変数 変数 変数 変数 変数 変数 野中郁次郎, “知識創造の⽅法論 ナレッジワーカーの作法” 新たな観点で現実を切り取る道具の役⽬を果たすものがコンセプト。現実を新たなものとして認識することで、 新たな価値や⾏動が展開されていく。 サーチライトが他の部分を照らしたりより広範囲を照らすことで、コンセプトは我々の思考によって実証、修 正、増幅し、知識として構成されていく。

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これまでのコンセプト 新しいコンセプト 覆された常識 新しい常識 イノベーションが起きるとき、そこにはコンセプトの変化が伴う イノベーションを起こしたいのであれば、常識を覆すコンセプトの創造が必要となる。 =今まで⾒えてなかった残渣カテゴリにある変数。 =これまで⾒えていた変数

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“The third place”

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古いコーヒースタンドの常識 • コーヒーを飲む場所(商品はコーヒー) Ø 回転率を上げ薄利多売。 Ø ⾯積あたりの座席数が多い。 Ø 座り⼼地の悪い椅⼦ Ø ⼿頃価格だが、飲んだら早く出なければいけない焦燥感 新しい常識 新コンセプト︓The third place • ⾃宅でもオフィスでもないくつろげる場所 (商品は空間と時間) Ø ソファ席 Ø 新鮮なコーヒーの⾹り Ø 刺激のないインテリア配⾊、壁の装飾品 Ø 適度な照明の⾊と強さ Ø ⼼地よいBGM ⼭⽥壮夫 “コンセプトのつくり⽅ たとえば商品開発にも役⽴つ電通の発想法”

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喫茶店(コーヒースタンド) サードプレイス 座り⼼地の悪い椅⼦etc ソファ席etc ⼭⽥壮夫 “コンセプトのつくり⽅ たとえば商品開発にも役⽴つ電通の発想法”

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“空⾶ぶバス”

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エアラインの常識 • 稼働率の⾼い⼈気区間の⻑距離国際便を多数持 つ会社が儲かる Ø 主要空港同⼠を結ぶハブ・アンド・スポーク Ø ⾼い運賃を⽀払える「⾶⾏機に乗れる⼈」だけを対象 Ø 顧客第⼀主義 Ø 最上級の乗り物に相応しいサービス サウスウエストの常識 新コンセプト︓空⾶ぶバス • 中距離路線で効率よく、格安で提供 Ø 機体は737のみ Ø 離発着毎にかかる旅客の搭乗や⼿荷物の積載にかかる時間 を短縮 Ø 社員第⼀、顧客第⼆ Ø スナックは有料

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エアライン 空⾶ぶバス 最上級の乗り物に相応しいサービス 無料のディナー 格安 有料スナック ⾃由席 ケハラーCEO「我々は航空会社ではありません」 ⼭⽥壮夫 “コンセプトのつくり⽅ たとえば商品開発にも役⽴つ電通の発想法”

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“伝えるのは、命の輝き”

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旭⼭動物園

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古い動物園の常識 • 動物の姿を⾒せる(形態展⽰) Ø どの動物も柵のなかで寝ていたり⼩屋にかくれてたり。 Ø パンダなどのレア動物がもてはやされるがそのパンダも⾒に⾏く ことが⽬的 Ø 動物が窮屈そうで退屈そう。 Ø 客から出るのは「かわいいねえ」という表⾯的な⾔葉。 新しい動物園の常識 新コンセプト︓伝えるのは命の輝き • 「⾏動展⽰」で動物が持っている⼀番特殊な能 ⼒を⾒せる Ø 動物ごとに合わせた施設で、いきいきと⼀⽇を過ごすことができ るように。 Ø おなじみの動物がスターになったり、どの動物も動きが違う。 Ø 客からでるのは姿形の表⾯的な⾔葉だけでなく、⽣きている動物 の動き、姿に感動する体験から出る⾔葉。

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これまでの動物園 伝えるのは命の輝き 動物を⾒せる場所「形態展⽰」。 名前あて。 表⾯的な観察。 いきいきとした本来の姿 を⾒せる「⾏動展⽰」 感動と体験。 ⼭⽥壮夫 “コンセプトのつくり⽅ たとえば商品開発にも役⽴つ電通の発想法”

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Step0(準備): 今の常識に⽬を向ける カタログギフト • デパートやギフト会社が売るもの。 • 雑誌/ ブック形式のもの。 • 最初に⾷べものがあって後の⽅に雑 貨が載っているもの。 • 申し込みはハガキやインターネット でするもの。 • 買う⼈と受け取る⼈が別なもの。 • 無難な贈りもの。 • 三〇〇〇円か五〇〇〇円のもの…… →「カタログギフトって、こういう ものだよねという常識」 例) 「ある地⽅新聞社の合弁会社が考える、あたらしいカタログギフトのコンセプト」

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コンセプト創造の4ステップ Step1: 感じる Step2: ちらかす Step3: 発⾒する (Step4: 磨く) 「どうすればターゲットの気持ちを動かせるか︖」をテーマに ブレインストーミング(批判なく、たくさん(質より量))。 その商品がもつ「画期的な機能」で本当にターゲットは動くのか︖ 説明の仕⽅を変えたらどうか︖ 全く別のアプローチはないか︖ ターゲットをそもそも変えるのはどうか︖ ひとは何故これを買うのだろう・買わないのだろう︖ 「⾃分がこの商品に持つイメージは**だ」「あのターゲット (⽼⼈、サラリーマン、⾼校⽣、などなど)ならこんなことを⾔いそうだ。この ひとならこんな反応をしそう」という感覚の集合体を集める。 これならターゲットが動くかもという予感の正体を⾔葉にす る。= コンセプト ポイント︓メタファー(暗喩)をうまくつかってみる。 本当にそのコンセプトがいけそうか(現実的か)。問題はない か (専⾨家の声を聞く等)。⾃分たちのビジョンにあうか。 (カタログギフトの例) 「カタログギフトの駅弁」 「贈り物で⾃分らしさを表現したい」 地⽅新聞ならでは→「旅︖」 「何故⼈は今あるカタログギフトを買う のだろう・そして買わないのだろう」 「僕カタログギフトって和⽜しか頼まな いんだよね。」 「いつの間にか期限切れてるよね」etc

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『贈りもの弁当』〜記憶に残るカタログギフト〜 Ұݟ͢Δͱ͓ห౰ശͷΑ͏ͳ໦ശʹೖͬͨϢχʔΫͳσβΠϯɻ໦ശͷϑλΛ։͚Δͱɺશࠃͷ஍ํ৽ฉ͕ࣾݫ બͨ͠ɺ౎ಓ෎ݝͷҳ඼ʢ঎඼Χʔυʣ͕࣍ʑͱإΛग़͠·͢ɻ৽ฉهࣄ෩ʹͦΕͧΕͷ஍ݩ΍঎඼Λ঺հ͠ ͓ͯΓ·͢ͷͰɺ๺͔Βೆ·ͰΏͬ͘ΓཱྀΛ͢ΔΑ͏ʹɺ঎඼Λ͓બͼ͍͚ͨͩ·͢ɻҰൠతͳ࡭ࢠܕͷΧλϩ άΪϑτͱ͸Ұຯ΋ೋຯ΋ҧ͏σβΠϯɺͦͯ͠બͿָ͠͞ɺಡΉָ͕͠͞٧·ͬͨΧλϩάΪϑτͰ͢ɻ

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グループワーク •コンセプト創造の4ステップを参考に「東⼤⽣」に対する新たな コンセプトを提案せよ。

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Discussion time

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知恵 (Wisdom) 知識 (Knowledge) 情報(Information) データ(Data) Processed & Analyzed Internalized Understanding universal truth Sound Judgement Appropriate Execution Observa?on Externalized Dialogue Implicit Explicit 移転・獲得困難 移転・獲得⽐較的容易 Knowledge Management Data Science 45 データ 情報 知識 知恵(DIKWモデル) (Davenport et al., 1998; Awad & Ghaziri, 2004; Bierly et al., 2000)

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交換と分業。そしてイノベーションへ。 •⼈類は交換と分業で発展してきた。 「交換と分業に基づく社会への参加」を前提に⽣活している理由は、それが「⾃ 給⾃⾜」よりも社会全体の労働の⽣産性を⾶躍的に向上させうるから。(アダム・スミ ス) •交換︓物々交換→市場取引。 •分業︓⽣産性向上。専⾨化。 •専⾨性の⾼度化 •部品としての知識。 •単独で役に⽴ちにくい。 •知識同⼠を組み合わせて解決。 •新たな知識の組み合わせ︓イノベーション。 •イノベータがすべきこと︔知識の交換・共有。

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知識社会マネジメント2022⽤ 講義関連共有フォルダ https://bit.ly/37rqoPB •次回、「新たなコンセプト」をスライド1枚 程度にまとめ、次回講義の冒頭で各グルー プ1分ずつくらい紹介してください。 •予め、発表者の名前に○をつけてください。 •次回は4/22(⾦) 10:25- です。 10:10より待機室open 10:20より順次⼊室⼿続き していきます 良い週末をJ 佐々⽊⼀ [email protected]