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1 PMFを生み続ける意志力 株式会社LayerX 花村直親

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2 株式会社LayerX 花村直親(はなむらなおちか) B2BSaaS「バクラク」のプロダクトマネージャー。主に請求 書を担当。 バックグラウンドはB2B・テクノロジー分野。 エンジニア / ITコンサル / データアナリストなどを経験 自己紹介

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3 今日のテーマは「PMFを生み続けるためにPMの意志力が重要」ということ。実際の「バクラク」の事例を用いて話す ● PMF(Product Market Fit)とは、製品が市場に適切に受け入れられること ● 成長するB2BSaaSはPMFを生み続ける必要がある ● しかし、一度PMFをすると挑戦を行わない力学が生じてしまう ○ 「PMFをしたらそのマーケットにリソースを全力投球すべき」という通説がある ○ ただそれは安定的な挑戦に甘んじて、他のマーケットへの挑戦や新しい成長機会を捨てていないか ● 安定に抗い、PMの意思決定次第でプロダクトの成長は変わる ○ PMは意思決定をしていく仕事。その意思決定次第でプロダクトの成長は変わる

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4 会社紹介:LayerXは3事業を展開しているスタートアップ。本日の話はバクラク(SaaS)事業が対象 本日の対象範囲

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5 現場〜コーポレートまで支払業務の一本化を支援 回収 稟議 承認 データ 入力 仕訳/支払 データ作成 保管/税務・監査対応 会計ソフト反映 デジタル受取 AI OCR スマホ・Slack 自動入力 自動入力 AIで経費申請の 手入力をゼロへ API連携自動出力 クラウド管理・電子帳簿 保存 利用する“前後”の 業務もラクになる 支払 本日の対象範囲 バクラクは「法人の支出管理をなめらかに、一本化する」コーポレート向けB2BSaaSシリーズ。 「請求書」と「申請」が今日の事例の範囲

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6 バクラクの立ち上げ初期はITスタートアップ向けにPMFを生み出した。そこから類似のマーケットでの要望に応えること で初速の良い成長を実現できていた 最初はITスタートアップ向けに PMFを行った 急成長中のITスタートアップにお いて、採用が追いついていないた めバックオフィス業務を効率的し なければならないペインを解決し た 立ち上げ期 PMF第1フェーズ (ITスタートアップPMF) 黎明期 PMF第2フェーズ (人材・メディアスタートアップ PMF) 次のPMFではメディア・人材など ITスタートアップに近い業種での PMFを行った ITスタートアップと同様に業務委 託者への支払が多いなど類似 業務が多く横展開しやすかった。 拡大期 PMF第3フェーズ (新プロダクト追加販売) お客様の規模が大きくなるに連 れて稟議機能が求められ「バクラ ク申請」プロダクトを増やした 立ち上げ期〜拡大期までのPMFの流れ リリース リリース 導入企業数 年初から 30倍超 スタートアップ中心に導入企業数は2021年 で年初から30倍超に成長

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7 順調に成長していたが、これでいいのか?という疑問 ● ITスタートアップや小規模企業では導入が進んでいる ● 新プロダクトを開発して単価を上げることでも成長はできる ● 社内でも「このままいけば順調に成長するよね」という雰囲気があった ● 一方で伝統的企業や大手企業では導入が進まず「IT業界・スタートアップ業界」に甘んじていた

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8 今のマーケットの要望に向き合うだけでも無難にこなすことができる。 ● チームの要望に応えられる ○ 一度PMFした後、「数字が上がるように」営業活動やカスタマーサクセスを続けていると要望の8割はPMF しているマーケットからのものになる ● 事業上成長できる ○ 要望に応えることで事業成長する ○ 市場の頭打ちも、マルチプロダクト化していくことでTAM自体を増やすという手段はある ● PM自身も評価される ○ PMF済マーケットの要望に応えていけばPM自身も評価される PMはPMFしているマーケットの要望へ応える力学が強くなり、一度PMFをすると挑戦を行わない力学が生じてしまう

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9 あるエンジニアメンバー 「経理の方全てに使われるサービスになってほしい」 これを聞いて新しいPMFを作ることを決めた。 何もしなくても成長することはできるが、 「何も変えない」という意思決定は「挑戦しない」という文化を作り出す。 それは長期的に成長を阻害するものになるし、今の成長が続くとも限らない。 数字が順調に伸びているときこそ「PMFを生み続ける」ための意志力が試される。 自分達はどうありたいか?を考え、新しいPMFを生み出す意思決定をした

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10 「PMFとは強力な価値仮説を見つけることである」(Andy Rachleff)

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11 新しいPMFを探すために、ユーザーのN1分析を数十社繰り返しニーズの抽象化を行って、価値仮説を抽出した。マクロ な市場分析からは価値仮説は出てこないと考え、徹底的に定性調査に振り切った ①数10社分の商談録 画を2倍速で視聴 ※オンライン商談時に許可を得て 商談を録画している ③汎用的なペインとPMFの価値仮説を抽出 ②1社ずつ業務フローとペイン・価値仮説を整理 … 紙をなくしたい 電子帳簿保存法への対 応強化することで解決で きるか 仕訳業務に手間がかか っている 仕訳学習機能による手 入力工数削減ができる か プロジェクトでの予算管 理の効率化 支払申請と購買申請の 紐付けで予算管理がで きるか ペイン 価値仮説

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12 現在の PMF状況 整理した価値仮説から筋の良い仮説を採択した結果、「特定のユースケースならエンタープライズ企業でも導入できる」 という価値仮説の元にPMFを目指すことになる 10数種類の価値仮説についてユースケースや業界 例を整理。最も筋の良い仮説を採択した ◎ PMF評価と 対策 既に一定評 価されており PMFできて いる PMFプロダ クトもマーケ ティングも改 善余地があ る ユースケース ペイン 価値仮説 ・記帳業務が手作 業で、効率化され てない ・プロジェクトの予 算管理を効率化し たい 申請で予算 管理を効率 化 ・電帳法対応によっ て紙の保管や郵送 をなくす ・紙をなくしたい。そ のための業務フロー 構築 紙をなくす 1 ・記帳業務が手作 業で、効率化され てない ・目視での記帳作 業 ・既存ソフトだけで は効率化できない 仕訳工数削 減 2 3 △ 電帳法対応 は一定評価 されており磨 き込む余地 はある ○ 現在PMFで きていないが、 ビジネスイン パクトも大き い ・特定のエンタープ ライズでよくあるユ ースケース xxx xxx △ … 筋の良い仮説 として採択 業界例 業界B 業界C 業界A, 業界B 業界A, 業界C 業界xx … 紙をなくしたい 電子帳簿保存法への対 応強化することで紙をな くせるか 仕訳業務に手間がかか っている 仕訳工数削減。仕訳学 習機能によって解決でき るか プロジェクトでの予算管 理が難しい 支払申請と購買申請の 紐付けで予算管理がで きるか ペイン 価値仮説 1 2 3 ③汎用的なペインとPMFの価値仮説を抽出

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13 しかしいきなりエンタープライズ企業に導入できるはずもなく3つの大きな壁があり、解決のための方法を模索することに なった エンタープライズ企業での運用に必要な機能が相当足りていない 1 プロダクトの壁 ● エンタープライズ企業では複雑な業務フローが存在 ● 本社の意思決定者と現場での利用者が異なり本社からの情報だけでは業務フローが不明瞭なことも多い 2 導入の壁 多くの時間を使うことにより、結果が出るまで社内からも反対の意見があった。上司・役員から「エンタープライズに寄り添い すぎではないか。他にスタートアップ向けに作りたい機能はたくさんあるし、ビジネスインパクトもある」 3 社内の壁

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14 足りない提供価値はPMが現場に同行して差分を解消した。PMF前だとセールスから又聞きの情報だけでは本当に必 要なものはわからないため現場にいくことを大事にした エンタープライズ企業での運用に必要な機能が相当足りていない 1 プロダクトの壁 PMが現場で一次情報を得て愚直に差分を解消 ● PMが商談に常に同行した ● 導入ユーザーが存在する本店、事業所、経理現場全てに赴きヒアリング。地方出張も行った ● 得た情報から必須機能、Nice to haveの機能を分類し、必須のものから汎用化して開発

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15 PMが導入コンサルの役割も担って導入の壁を乗り越えた。PMは価値の届け方を築き、新しいマーケットへの扉を開く ことができる ● エンタープライズ企業では複雑な業務フローが存在 ● 本社の意思決定者と現場での利用者が異なり本社からの情報だけでは業務フローが不明瞭なことも多い 2 導入の壁 PMが導入コンサルの役割も担って導入の壁を乗り越えた ● セールス・CSとチームを組んでバクラクシリーズが関わる本店、事業所、経理現場それぞれで現場利用者のヒアリング。業 務フロー整理して運用方法を提案 ● 本社にも現場での整理内容を共有して意志伝達を調整

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16 社内からの反対については顧客の声を元に正しいと考える材料を伝えた。現場で顧客の声を聞いているPMはプロダ クトの意思決定についてプロであるので安易に折れるべきではない 多くの時間を使うことにより、結果が出るまで社内からも反対の意見があった。上司・役員から「エンタープライズに寄り添い すぎではないか。他にスタートアップ向けに作りたい機能はたくさんあるし、ビジネスインパクトもある」 3 社内の壁 周りの意見には耳を傾けるべきだが、現場の声を聞くPMはプロであるはずなので現場にいない上司の反対に安易にYESと は言わない ● プロダクト戦略、現場ヒアリングでのペイン、顧客の反応を共有して視点や解像度のずれを補正 ● 他の施策と両立できるよう、開発リソースは最短で向かおうとしていることを元に説得

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17 エンタープライズ企業での導入事例抜粋。アパグループ様 では2年目のSaaSにも関わらず、200以上の事業所で利 用していただく事例を作ることができた。 1つ1つ解決してエンタープライズ企業での導入実績を作ることができた。課題設定が正しければ、PMの意志力で 壁は乗り越えられる 1 プロダクトの壁 2 導入の壁 3 社内の壁 3つの壁はPMの意志で乗り越えられる PMが導入コンサ ルの役割も担って 導入プロセスを磨 いた PMが現場で一次 情報を得て愚直に 差分解決 Noというべきな ら意志を持って Noという

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18 「エンタープライズ向けはまだ早い」 → 企業規模は本質ではない。本質はユースケースとペインであり、その軸で考えるべき 「まだ売り方が確立されていない」 → 「今できていないことをできるようになること」はPMFの本質。 それで止めるのは本質的ではなく、売り方のプロセスもプロダクトとして捉えて一緒に進化させる 「まだ既存マーケットからUIの改善や受けている要望がある。それよりも優先度が高いのか」 → B2BSaaSにおいてはPMFを繰り返す、という前提を持たなければ成長角度は保てない。 今PMFしているマーケットの勢いがあっても永遠ではないことは念頭に置く。 新しいPMFに挑戦する時に出る「まだ」。これらは全て意志力で打破することができる

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19 「PMFを生み続ける意志力」まとめ。PMはプロダクトが成長して、新しい挑戦をしない力学が発生するフェーズを打破 することができる 一度PMFをすると 挑戦を行わない力学が生じてしまう しかし、PMの意志力次第で 新しいPMFに挑戦できる PMの意思決定は新しいマーケットへの挑戦を促せる PMの意思決定はプロダクト提供価値に大きい影響 を与える。目の前の要望に応える以外で非連続的な 成長を生むこともできる PMは意思決定をするプロであり、プロダクト提供価値 の最大化を考えるべき 目の前の要望に応えることで短期的には成長する PMはPMF済マーケットの要望へ応える力学が強くな る 事業が順調に推移していると新しいPMFに挑戦しな くても、PMは評価される 将来の成長への種まきをやめていないか? 上司・役員から反対を受けるくらいで折れていないか? なりたい姿、提供したい価値を脇に置いていないか? 問いかけ 問いかけ 問いかけ

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20 最後に。LayerXでは全職種積極採用中です LayerX 採用情報 https://jobs.layerx.co.jp/ 「次のPMF」を実現するために、意志力に自信のあるPMを募集しています。 バクラクではエンタープライズ向け「1人目」のコンサル職も求めています。 meetyでカジュアル面談をお待ちしています。「#meety_pmconf2022」で検索してください。 https://meety.net/matches/DNcCHmsVqKnU