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「事業目線」の正体 〜3つのフェーズのCTO経験から見えてきた、EMが持つべき視 点 Sotaro Karasawa / 柄沢聡太郎 / @sotarok EMConf JP 2026.03.04

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「もっと事業目線を持って」

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自己紹介「CTO x クラフトビールといえば sotarok」 会社のフェーズ 自分のフェーズ 7人共同創業→30人ほど 事業立ち上げ、あらゆるこ とを自分たちで、買収後は 大企業の子会社 初めてのCTO ほとんど「開発リーダー」 開発頑張る、強い組織を作 る、自分が意思決定する 創業2年目くらい  80人→500人 事業の急成長、海外への チャレンジ、IPO、組織の 急拡大 2回目のCTO マネジメントとは、を知る 自分自身の成長とチームの 強い執行能力、組織カル チャー作り レイターステージ 3代目CTO 事業成長、黒字化、コロナ 対策、リモート環境 3回目のCTO これまでの全てを出し切る 経営・取締役としての目 線、組織カルチャーの再構 築、事業作り 💻Almoha 共同創業者CEO兼CTO / 🍺P2B Haus オーナー

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なぜ、EMが 事業を知る必要があるのか?

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「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室 日々の課題を解決するための17のアドバイス」 @ar_tamaさん著 https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798189840 「もっと事業目線を持って」は、自分だけじゃなかった

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● ピープルマネジメント? 人事評価・採用 ● 申請の... 承認係...? 雑用係? ● なんか大変なことをやる人 ● 事業活動を成功に導く、成果を出す ● そのために 自組織のアウトプットを最大化する そもそも「マネジメント」とは

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エンジニアならではの専門性を掛け合わせて「成果」につなげる ● 良い組織、良いプロダクト、良い開発環境、良い技術選定... ○ これら全ては 手段 ● 目的はあくまで「事業の成功」 「エンジニアリングマネジメント」とは ● 事業活動を成功に導く、成果を出す ● そのために自組織のアウトプットを最大化する ✖ エンジニアリング

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EMとは... エンジニアリングという専門領域を用いて、 事業を成功に導く (またはその支えとなる) ためのマネージャー 「エンジニアリングマネジメント」とは 事業の成功のためにマネジメントしているのだから、事業を知ることは必然 …では「事業目線」とは具体的に何なのか

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「事業目線」の正体

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経営の目線 「事業目線」 お客さまの目線 事業 営業・マーケ CS・運用 管理部門 事業開発 プロダクト ・・・ エンジニアリング 売上・利益・コスト・戦略... 価値・体験・使い勝手...

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経営の目線 EM初期の目線 お客さまの目線 事業 営業・マーケ CS・運用 管理部門 事業開発 プロダクト ・・・ 価値・体験・使い勝手... 売上・利益・コスト・戦略... エンジニアリング

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経営の目線 「事業目線」 自分の立場(エンジニアリング)から、事業の全体像への接続ができている状態 お客さまの目線 事業 営業・マーケ CS・運用 管理部門 事業開発 プロダクト ・・・ エンジニアリング 売上・利益・コスト・戦略... 価値・体験・使い勝手...

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Lv.1 数字を知る

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「自組織に関わる数字、言えますか?」 Lv.1 数字を知る

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具体的なアクション: ● クエリを叩く (SQL? BigQuery? etc.) ● ダッシュボード作り (Redash? etc.) ● 定例会議などで必ず確認 Lv.1 数字を知る / 自組織に関わる数字を知る ● トラフィック、売上、ユーザー数、登録数... ○ 決済に関わるチームなら? ■ クレジットカード登録リクエスト数、お客さまあたりの決済額・頻度、失敗数... ● 見えないものは考えられない まず、自組織に関わる数字を見える状態にする

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副次効果の実例: ● SMS認証リクエストのスパイク ● クレジットカード登録リクエストのスパイク セキュリティ施策のための工数をどれくらい取るか? ● プロダクトロードマップに影響 ○ 組織における「エンジニアリング目線」での工数の捻出戦略 数字を知ると... 「エンジニアリング」に響く副次効果の実例

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事業予算の構造を知る 具体的なアクション: ● 数字の因数分解 ○ 「売上」を要素に分解していく ■ ECサイトなら? ● 売上 = お客さま当たりの決済額 x MAU ○ MAU = 前月MAU x 継続率 ■ 継続率 = … Lv.1 数字を知る / 事業予算の構造を知る ● 売上目標 → 実現するための施策 → 各部門の役割分担 ○ 自分のエンジニアリング部門は、この構造のどこに作用しているのか → これがわかっていないと「言われたものを作る」になっちゃうよね...

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具体的なアクション: ● 数字の因数分解 ○ 「売上」を要素に分解していく ■ ECサイトなら? ● 売上 = お客さま当たりの決済額 x MAU ○ MAU = 前月MAU x 継続率 ■ 継続率 = … 例えば、この辺自組織の関わり … 自組織の活動と事業予算の接続 事業予算の構造を知る Lv.1 数字を知る / 事業予算の構造を知る ● 売上目標 → 実現するための施策 → 各部門の役割分担 ○ 自分のエンジニアリング部門は、この構造のどこに作用しているのか → これがわかっていないと「言われたものを作る」になっちゃうよね...

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経営の目線 Lv.1 数字を通じた事業目線の獲得 お客さまの目線 事業 営業・マーケ CS・運用 管理部門 事業開発 プロダクト ・・・ 価値・体験・使い勝手... 売上・利益・コスト・戦略... エンジニアリング

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ただし... 数字を見ることで「今日のギャップ」には気づける。それだけでも大きな一歩 しかし本質的には「明日の問題を今日解く」ことが求められる 今日のギャップを認識してそれを埋めるために、懸命に意思決定しよう としている人々があまりにも多い。 しかし、今日のギャップは、過去のいつかの時点での計画の失敗を表し ている。 … "明日" の問題を解決するために "今日" 何をすべきか 「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」 アンディ・グローブ著 日経BP社 https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/17/P55010/

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Lv.2 お客さまと隣接組織を知る

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Lv.2 お客さまと隣接組織を知る 結果を生み出しているもの... ● お客さまの行動 ● 複数部門の連携によるオペレーション 数字、見るようになったぞ! 意識上がったぞ! ばんざーい! 結果

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CS や PdM とは違う気づきが生まれる Lv.2 お客さまと隣接組織を知る / お客さまを知る 「何が起きたか」がわかる 数字 お客さま 「なぜそうなっているか」がわかる ✖ エンジニアリング

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カスタマーサポートの研修での気づき 実例: ● CSは「〇〇の問い合わせが来たら、こう返信する」というルー ルで対応していた ● その返信は間違いではない、CSとしては正しい対応。 エンジニアの目で見ると ● 「この声が毎月こんなに来ているなら、プロダクト側を変更すれ ばこの悩み自体が消える。UXも良くなるし、問い合わせ数も減 る」

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具体的なアクション: ● お客さまに会いに行こう: ○ ユーザーインタビュー、営業同行、ユーザビリティテストを観察、展示会・イベントで のブース対応、導入支援・オンサイトサポート、etc. ● お客さまの声を聞こう: ○ カスタマーサポート対応、アプリストアのレビューを読む、NPS・アンケートの自由記 述 (集計結果ではなく生の声) を読む、解約理由・失注理由を見る、ユーザーコミュニ ティ、etc. Lv.2 お客さまと隣接組織を知る / お客さまを知る お客さまを知る ● 数字の裏側にある「なぜ」の理解を深める ● エンジニアならどう解決できるのか? ○ あるいは、自組織や他部署がその解決法を取らないのはなぜか?

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Lv.2 お客さまと隣接組織を知る / 隣接組織の構造と力学を知る なぜ隣接組織を知る必要がある? → 組織によって、業務フローも、力学も異なるから 例: ● 経理: 毎月ちゃんと数字が締まることが重要 ● 営業: 数字をとってくることが最も重要 ● CS: お客さまの問題を迅速に解決すること ● 法務: リスクを最小化、法令遵守すること ● etc.

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例えば... 新しく課金機能を実装する 開発: UI と決済方法の実装を考える しかし影響はそこで閉じない: ● 経理・税務: 売上計上のタイミング、消費税処理、請求書フォーマット ● CS: 問い合わせ対応、返金オペレーション、マニュアル更新 ● 営業: 料金プランの説明、既存顧客への案内 ● 法務: 利用規約の改訂、新機能の法令遵守 etc. これらを前提とした... ● 設計・実装・業務フロー構築... ● 隣接組織との協力・コミュニケーション 自組織のアウトプットも変わる

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具体的なアクション: ● 隣接組織の構造を知ろう: ○ 他部署の業務フロー・マニュアルを読む、他部署のSlackチャンネルを見る、他部 署の定例をオブザーブする、自チームの開発の影響範囲をマッピングする、etc. ● 隣接組織とつながろう: ○ 他部署のマネージャーと1on1する、横断プロジェクトに参加する、etc. Lv.2 お客さまと隣接組織を知る / 隣接組織を知る 隣接組織を知る ● 「エンジニアリング」「プロダクト」と、「事業」の違いの理解 ● マネジメントに「なめらかさ」がでる

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経営の目線 Lv.2 お客さまと隣接組織を知った事業目線の獲得 お客さまの目線 事業 営業・マーケ CS・運用 管理部門 事業開発 プロダクト ・・・ 価値・体験・使い勝手... 売上・利益・コスト・戦略... エンジニアリング 事業

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Lv.3 戦略に反映する

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Lv.3 戦略に反映する ● 数字を知り、お客さまを知り、 ● 隣接部門の構造と力学を知る あとは、ここで知ったことを、 自組織の活動や戦略に反映させるだけ

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Lv.3 戦略に反映する / エンジニアリング戦略としての事業理解 ● ソフトウェアが事業に与える影響を理解する ● 「我々は一体何を作っているのか?」を理解した上での体制づくり ● 仕様策定から関わる体制、受け入れテスト・QAの融合、技術選定 "明日" の問題を解決するために "今日" 何をすべきか 戦略に反映する: 予算策定、事業ロードマップ、組織ロードマップ、採用計画、etc.

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Lv.3 戦略に反映する / マネージャーのアウトプットを最大化する マネージャーのアウトプット =  自分の組織のアウトプット + 自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット 「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」 アンディ・グローブ著 日経BP社 https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/17/P55010/

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具体的例: ● ダッシュボードを通じて、お客さまの動き・数字を常に見える状態にし、チーム全員が日常的 に意識できるようにする ● オンボーディングにカスタマーサポート研修を組み込み、実際のお客さまからの問い合わせに 返信する体験をさせる ○ メルカリ時代に全エンジニアの入社時に義務付けた Lv.3 戦略に反映する / 「自分の組織」のアウトプット … 仕組み化 マネージャーのアウトプット =  自分の組織のアウトプット + 自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット 自分だけが事業目線を持っていてもダメ でして... ↓ 仕組み化

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「事業目線」の正体

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経営の目線 「事業目線」 自分の立場(エンジニアリング)から、事業の全体像への接続ができている状態 お客さまの目線 事業 営業・マーケ CS・運用 管理部門 事業開発 プロダクト ・・・ エンジニアリング 売上・利益・コスト・戦略... 価値・体験・使い勝手...

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やれるとこまでやってみて、CTO目指してみてもいいし? いや、それもうCTOじゃね? ● 全部やる必要はない、自分のチームにとって重要なところから ● これらの「事業目線」の全体像を理解した上でどこからやるか

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明日からのアクション Step 1:自組織に関連する数字を把握する(すぐできる) ● 自分のチームに関わるトラフィック、売上、お客さまの数…まず言えるようにする Step 2:数字の範囲を広げ、事業計画と自組織の活動をつなぐ ● 事業計画・予算の構造を知り、自分の組織の活動がそのどこに作用しているかを理解し ていく Step 3:お客さまを知る活動を仕組み化する ● 自分だけでなく、チームのみんなでお客さまを知る仕組みを作る Step 4:隣接組織を知り、コミュニケーションを取る ● 自チームの開発が影響する他部署の構造・業務フローを把握する ● 特別なことではなく、意識して関係性を築いていくこと Step 5:戦略・ロードマップ・各種計画に関わる ● 自分自身で、あるいは上長と一緒に、事業ロードマップや開発計画の策定に踏み込んで いく

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