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知識社会マネジメント 4月5日 第1回:ガイダンス 「After-AI: 知識創造社会の創造」 佐々木一 Hajime Sasaki Ph.D. 東京大学 特任准教授 未来ビジョン研究センター Innovation management in knowledge society 2024夏学期講義金曜2限(10:25〜12:10)

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授業形態についてのアナウンス •基本的に対面講義です。 @ラウンジ講義室(工学部3号館321室) •初回だけオンラインで実施しています。 •収録ですが、2限終了時間(12:10)まで視聴可能です。 •アクセスログで出席されたことは確認できます。 •なお、4/5 12:30以降の視聴については保証できませ ん。

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知の巨人はもういない(?) “If I have seen further it is by standing on the shoulders of giants.” Sir Isaac Newton

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知識の細分化 (リチウムイオン電池の論文数) 知識の爆発 科学技術イノベーションにおけるよくある課題の背景 課題の複雑化、アジェンダ設定とフレーミング ステークホルダーの多様化 影響力・意思決定の複雑化 時間

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知の構造化と第二種基礎研究

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知識の種別と意味づけの重要性 専門知識 それぞれの分野(ディシプリン)の論理に従う知識 (知識1.0) 学際知識 課題解決にむけて複数のレイヤー、主体で知識を生成する (知識2.0) メタ知識 知識を社会的に位置づけて活用する知識 (知識3.0) 連携を阻害する壁(あるいはチャンス) • 知識間の⾕、専⾨家間の⾕。 • ⽂系、理系、各種専⾨分野、研究者や現場作業者、企業の所 属、地域、国境などに存在する様々な壁。 • 集団に特有の知識や慣習を「つなぐ」⼈間の活動や組織を強 化する。 • 知識、規範、課題の共有は、つながりの基盤(エピステミッ ク・コミュニティ)として重要。 • DXの本質は既存の業種/部署からの開放。縦割りから横割りへ。 専⾨化された知識は、社会や組織で位置づけ他の知識と連携させることで 役⽴つ(川⼭, 2019)

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知識社会の概念の誕生 ・『知識産業』(フリッツ・マハルプ, 1962) •5分野(教育、研究開発、コミュニケーションメディア、情 報機器、情報サービス) ・『脱工業化社会の到来』(ダニエル・ベル, 1973) •「理論的な知識が活用され社会の中心となる。」 •「財の生産からサービスの生産に比重が変わることで知 識生産に経済活動が意向する」 ・『断絶の時代』(P.F.ドラッカー, 1968) •「知識の生産性が経済の生産性、競争力、経済発展の 鍵」となる知識経済が知識社会の前提となる。 •生産資源となるだけでなく、知識が社会の中心となる •同時に知識社会は熾烈な競争社会になる

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知恵 (Wisdom) 知識 (Knowledge) 情報(Information) データ(Data) 処理分析 Processed & Analyzed Internalized Understanding universal truth Sound Judgement Appropriate Execution 観測 Observation Externalized 対話 Dialogue Implicit Explicit 移転・獲得困難 移転・獲得⽐較的容易 Knowledge Management Data Science 8 データ 情報 知識 知恵(DIKWモデル) 表出化 内⾯化 それだけで 意味をなさない Know nothing それだけで 意味を持つ Know what Descript 教えられる Now-how to Instruction 判断する 論じる What Why (Ackoff., 1989; Davenport et al., 1998; Awad & Ghaziri, 2004; Bierly et al., 2000)

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+我々の価値観の変化

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欲求が飽和した社会において人類は何をしてきたか •1:消費の自己創出システムによる市場の無限化 (買い替え需要) Innovation:課題解決 Marketing:課題創造 •2:課題解決先の域外展開によるビジネスグローバリゼー ション:資源の域外調達/廃棄物の域外排出による生産の 「無限化」 「企業の⽬的は顧客の創 造“create a customer” = Marketingである」P.F.ド ラッカー

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成長の限界:ローマクラブ(1972)

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市場原理に委ねる社会はどこから着手してきたか ⼭⼝周︓ビジネスの未来 ESG経営 サステナビリティ 希少疾病

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この講義が重視する社会的背景 •価値観の変化 •解決しやすい課題が解決されてしまった高原社会。 •道具的(Instrumental) な資本主義的価値観の再考。 •科学技術の外側の領域にも目を向ける。

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科学技術基本計画の対象範囲 上⼭, 第6期科学技術基本計画へ䛾提⾔: , 科学技術基本法䛾課題 NISTEPフォーサイトシンポジウム

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イノベーションプロセスのパラダイム ■第1フェイズ(1950-1980):科学技術イノベーション • リニアモデル、基礎研究への投資拡大にもとづくイノベーション • 大学への政策的投資の拡大 • 基礎研究への投資と経済成長の拡大 ■第2フェイズ(1980-2010):ナショナルイノベーションシステム • リニアモデルへの疑問 • 大学を核としたイノベーションシステム • バイドール法による大学研究の特許か • TLO法による大学から産業界への技術移転 • 大学発ベンチャーの促進 • イノベーションの主体を企業、大学、政府等。主体間の相互作用関係を強化していく。 ■第3フェイズ(2010-Now):トランスフォーマティブイノベーション←New • 世界規模の課題に取り組むイノベーション。 • 人間の行動様式を含む社会システムレベルの変革。 • 政府が政策的に直接コントロールできる領域が制約される。 • 一般の市民が重要な主体 • 自然科学の成果のみならず人文社会学の厚み。 上⼭, 第6期科学技術基本計画へ䛾提⾔: , 科学技術基本法䛾課題 NISTEPフォーサイトシンポジウム

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人文・社会科学の厚みのある「知」の蓄積を図るとともに、 自然科学の「知」の融合による人間や社会の総合的理解と 課題解決に資する総合知 (第六期科学技術基本計画) • ⽇本の状況︓資源やエネルギーに乏しい。耕作可能な⾯積も⼤きくない。地震や⽕⼭、台⾵など の⾃然災害の頻度が⾼い。⾔語体系も異質。かつ⼈⼝減少が始まっている。 • 科学技術・イノベーションの競争⼒をぬきに、世界をリードできる「ターゲット」を探り出すこ とは困難。 • ⼀⽅で⾃然科学系を中⼼とした「専⾨知」のみで、打開することは困難。 そもそもわたしの 幸せとは何か。 科学技術による 解決の先にある 世界はどうなっ ているか ⼈とはどうある べきか。 倫理的であると はどういうこと か。

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第6期科学技術・イノベーション基本計画における ELSI/RRIに係る記述 • (1) 「新たな社会を設計し、その社会で新たな価値創造を進めていくためには、多様な「知」 が必要である。特に Society5.0への移⾏において、新たな技術を社会で活⽤するにあたり 生じるELSIに対応するためには、俯瞰的な視野で物事を捉える必要があり、⾃然科学のみな らず、⼈⽂・社会科学も含めた「総合知」を活⽤できる仕組みの構築が求められている。」 (p. 14) • (2) 「広範で複雑な社会課題を解決するためには、知のフロンティアを開拓する多様で卓越し た研究成果を社会実装し、 イノベーションに結び付け、様々な社会制度の改善や、研究開発の 初期段階からの ELSI 対応を促進する必要があ る。」(pp. 42–43) • (3) 「我が国や世界が抱える社会問題の解決や科学技術・イノベーションによる新たな価値を 創造するために、研究開発 の初期段階からのELSI対応における市⺠参画など、⼈⽂・社会科 学と⾃然科学との融合による「総合知」を⽤いた 対応が必須となる課題をターゲットにした研 究開発について、2021 年度より、関連のファンディングを強化する。」 (p. 45) • (4) 「社会課題を解決するためには、従来の延⻑線上の取組のみならず、新たな価値観を示 し、制度的なアプローチをと ることが求められる。新たな技術を社会で活⽤するにあたり生 じる制度⾯や倫理⾯、社会における受容などの課題に 対応するため、⼈⽂・社会科学も含め た「総合知」を活⽤できる仕組みを構築する。」(p. 82)

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正解を探すスキルから、問いを生み出すセンスへ

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正解のコモディティ化 出典︓⼭⼝周

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研究における「主役の問い」 •Research question:研究を通じて答えを出していこ うとする問い •Cf)「〇〇の正体は何だろう」「〇〇の理由は何だろう」 「どうして〇〇はこうなっているんだろう」「〇〇はどう やったら作れるんだろう」 •ただし Research questionそれ自体は自身の価値を説明でき ない •引き立て役の「問い」が必要

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引き立て役の問い ①注目対象についての問い 「何についての焦点をどこまで絞るのか」 ②現状についての問い 「注目対象の今の状況は誰にとってなぜ不満なのか」 ③理想についての問い 「注目対象がどうなると誰がなぜ嬉しいのか」 ④課題についての問い 「この研究で現状をどこまで理想に近づけるのが今の自分にとって現実的なのか」 ⑤問題についての問い 「何が難しくてこれまで課題が達成されなかったのか」 ⑥アプローチについての問い 「その問題はどんなアイデアでなぜ解決できそうか」 → これらそれぞれに答えると、実は論⽂のイントロが完成する。

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社会に、自分に、「問い」を投げかけられるセンス。 スペキュラティブデザイン

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Future cone

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「予測」をめぐる二つの立場 •自然科学的 •予測の中立性、客観性 •社会科学的 • 「予測」は、人ひとの行為と連動し社会を変える 「科学的な予測による社会への影響」と「社会による予測科学への影響」が存在する。 科学的な予測 → 人びとの行為 → 社会が変化 = 「行為遂行性(Performative)」(言語行為論) 「予測が事実を記述」 から「予測が社会を動かす」へ Austin, J. L. (1962) How to Do Things with Words ⼭⼝, 2020 予測の社会での使われ⽅, 未来ビジョン研究会

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経営手法(マネジメント)の3要素 $SBGU 4DJFODF "SU H. ミンツバーグ「MBAが会社を滅ぼす 正しいマネージャーの育て⽅」 (⽇経BP), 「エッセンシャル版 ミンツバーグ マネージャー論」(⽇経BP) (主観・ビジョン) 内省とビジョンを通じた包括的な統合 (分析・体系的知識) 情報の取得と評価を通じた体系的な分析 (経験・実務) ⾏動と実験を通じたダイナミックな学習

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スペキュラティブデザイン 問題解決のために 「未来はこうあるべきだ」と提唱するのでは なく 「未来はこうもありえるのではないか?」 という憶測(speculate)の提示。 現代の⼈類が直⾯する課題の多くは解決不能で、これらを克服する ためには、私たちの価値観、信念、考え⽅を変えるという⽅法があ る。 問題をあえて解決せず、思索するきっかけを与える「問い」を⽣み 出す。 科学と関わり︓ 科学の発展によって、起きるかもしれない世界を表現し、それを科 学者に戻すことで、研究の⽅向性を考えなおすきっかけを与える。 スプツニ⼦︕さんのRCA (英国王⽴芸術学院)時代の教官) ↓

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Ken Nakagaki https://note.com/ken_n/n/n2e610ad21327

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講義全体を通した課題意識 •自分の(研究)テーマ(もしくは興味の強いテーマ)は、社会(世界)と の関係の中でどのような立ち位置にあると考えるか。 •本当にそうなのか。 •最終課題はこの課題意識に基づいて設定します。

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トランス・サイエンスの時代 (Trans-Science Age) •科学技術の“光と影” •生成系AI、原子力発電、遺伝子組み替え作物、再生医療など •トランス・サイエンスの領域に属する問題(AlvinM.Weinberg) •科学によって問うことはできるが、科学によって答えることので きない問題群からなる領域 •科学的な合理性を持って説明可能な知識生産の領域と、価値や 権力に基づいて意思決定が行われる政治的な領域とが重なり合 う領域 例)原⼦⼒発電所の事故再発の確率が計算上低いとしても、 ⼈々がその発電所を受け⼊れるかどうかは、社会・経済・ 暮らし、さらには歴史や⽂化などの様々観点からの判断を 要し、科学だけでは決められならない。 科学的正当化(justification)には限界があるなか、 社会的に正統な(legitimate) 意志決定が必要。

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意思決定問題の分類と挑戦領域 CRDS 2018, 複雑社会における 意思決定・合意形成を⽀える情報科学技術

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コリングリッジのジレンマ 「技術の影響⼒を予測し完全に予防することは難しい」という情報の問題 VS 「既に普及した技術は問題が起きても取り返しがつかない」というチカラの問題 cf)Uber or Airbnb • 「情報の問題」「⼒の問題」の間でバランスをとり適切な段階で舵を切る(ガバナンス)べき。 • 研究や技術の設計の段階から、社会的、倫理的、法的、経済的、政治的、政策的影響を⾒通す。 OECD Observatory of Public Sector Innovation

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必要なのは超学際(トランスディシプリン)の視点 (第12回予定) Gunther Tress, Bärbel Tress, and Gary Fry. (2004). Clarifying integrative research concepts in landscape ecology. Landscape Ecology, 20, 479-493.) • マルチディシプリン ︓研究拠点などのように1つの傘の下で同じテーマを持つが、各ディシ プリンはそれぞれ独⽴している状態。 • インターディシプリン︓各ディシプリンが、共通する1つの⽬標に向かって活動している。 • トランスディシプリン︓⽬指す⽬標が、企業や⾃治体、地域のコミュニティなど、社会と交差 するところに設定されており、様々なディシプリンと多様なステークホルダーとの協働が⾏わ れている。

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本講義のメタ情報 1. 評価基準 2. 課題のバランス 3. これまでの成績分布 4. 過去の講義フィードバック 5. 生成系AIポリシー 6. 補助資料など 7. 講義担当教員紹介

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評価基準 •Presence:Contribution= 7 (+2) : 3(+1) •Presence(出席、課題提出) •小レポート、洗練された問い、chatbot(後述)との会話内容 •Contribution(周囲への貢献) •グループディスカッション/発表などがあります。 •根底にあるポリシーは「認知→適切な成績」

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成績分布傾向(2019~2023の全体) ༏ɿ履修者の60%以上 良︓履修者の20%以上 単位取得者︓履修者の85%以上 不可︓ごく⼀部。(要因は参加(出席)不⾜)。 要するに毎週⾦曜⽇の朝に負けなければ落ちるってことは無いと思います。(⼩声)

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講義フィードバック (4.8/5.0) ・自分のしている研究活動が社会との関係の中でどのような立ち位置にあるのかを知ることが でき、ためになる講義だった。 ・元々、非常に関心のあったテーマ(ナレッジマネジメント等)だったのですが、それがここまで体 系化されている講義があることに驚き、かつ、広い視野で自分の興味関心の領域を広げること ができた。 ・総じて非常に学びの多い講義であり、社会人学生として仕事をしていた中で、最も有用で実践 的な講義だと感じた。このような講義を用意してくださった佐々木先生と大学側には心より感 謝申し上げます。 ・予備知識のない中で様々な講義を受けてきましたが、この講義が一番わかりやすく(スライドも 説明も)、それでいて一番考えを深めることができました。1つ1つ丁寧に楽しみながら取り組め ました。 ・私は来年から人間科学寄りの研究者として企業に就職する予定ですが、引き続きただ研究す るだけでなく、それをどのように社会課題の解決や持続的な社会の形成と融合できるのか考え、 行動に移していければいいなと思います。

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補助資料 •必須ではありませんが、補助資料として[科学技術イノ ベーション政策の科学のコアコンテンツ] を一部活用して います。 • [0.1 変容する社会の中で、科学とは?技術とは?イノベーションとは?](https://scirex- core.grips.ac.jp/0/0.1/main.pdf) • [1.0.1 イノベーションとは](https://scirex-core.grips.ac.jp/1/1.0.1/main.pdf) • [1.0.2 イノベーション・プロセスのモデル](https://scirex- core.grips.ac.jp/1/1.0.2/main.pdf) • [1.2.3 なぜ既存企業はイノベーションへの対応が難しいのか](https://scirex- core.grips.ac.jp/1/1.2.3/main.pdf) • [2.2.1 STIガバナンスにおける意思決定のツール](https://scirex- core.grips.ac.jp/2/2.2.1/main.pdf) • [3.1.1 研究者の責任と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)](https://scirex- core.grips.ac.jp/3/3.1.1/main.pdf) • [3.1.2 ビッグサイエンスと社会](https://scirex-core.grips.ac.jp/3/3.1.2/main.pdf) • [3.2.2 研究者コミュニティと市民が交わる場づくり](https://scirex- core.grips.ac.jp/3/3.2.2/main.pdf)

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生成系AIポリシー •前提として相談相手、情報収集としての活用:出 力そのままのコピペを提出物としない。 •面白い使い方を提供したら加点。(プロンプトエ ンジニアリング、他のサービスと併用等) •講義用チャットボットを使ってください。 •LLMチャットボットを試験的に運用します。 •講義に関連する参考文献を検索拡張生成 (RAG)として学習させてます。 •一定の確率でハルシネーションは起こります。 修正をして下さい。(加点) https://qr.paps.jp/T9JS

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担当教員: 佐々木一 Hajime SASAKI, Ph.D. 興味の範囲: • イノベーションマネジメント • 技術経営 • 知識工学 • 意思決定学 • 予測と社会 • 技術の社会実装 重⼯業(航空機)にてエンジニア(制御、電気、ソフトウェア関連)。 東京⼯業⼤学⼤学院にて修⼠(技術経営)。東京⼤学⼤学院TMIにて博⼠ 号(⼯学)。 専⾨はイノベーションマネジメントやインテリジェンス(意思決定)。 社会と技術の接点にある課題や、科学技術の実装のありかたについて関 ⼼を持つ。2018年より東京⼤学政策ビジョン研究センター准教授。東京 ⼤学未来ビジョン研究センター准教授を経て、現在同特任准教授。 拠点︓中野→柏→名古屋→江東→川⼝→神楽坂→⾚⽻→葉⼭ 最近好きな⽇本酒︓あべ(阿部酒造, 新潟) 近年の対象技術領域: • 情報技術(AI含) • 航空機(UAV含) • 次世代エネルギー • ナノ技術 • 生体計測技術 ほか なにかあればこちらまで sasaki[at]ifi.u-tokyo.ac.jp https://www.sasakihaji.me/

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1 2 3 ・ナノテク ・航空宇宙 ・知的財産 ・A.I. 技術と経営/社会 ・情報学 45 学内活動 連携活動 学外コミュニティ

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科学レイヤー 技術レイヤー ビジネスレイヤー 時間 産業での発展 早期特定 知識の遷移 知識ノード(論文、特許、企業) 異種ネットワークにおけるイノベーションフローモデルの研究 R.Q.: 産業に資する可能性の高い科学技術知識は 実を結ぶ以前の段階で構造上の特徴が現れうるのではないか 46

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「革新的ドローンリモート技術の研究開発」と社会実装

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“CS分野を対象としたクローズドメイ ンにおけるQAシステムと問題解決に むけたGPT-3の適用” (ChatGPTプロトタイプリリース(11/30)の翌週…)

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この講義で整理すべき3つの問題。 •従順な問題 Tame problem :科学や工学で扱う問題のように、難易度はさてお き、その問題の定式に沿って解を探索することで問題を解決できることを期 待できる。(講義では殆ど触れません) •厄介な問題 Wicked problem :問題をどのように設定するか自体が不確定な問 題(フレーミング) 。原因を取り上げること自体に一種の価値評価を含む。 • 貧困問題(経済システムの問題、個人の能力の問題、民族性別などのアイデンティティの 問題?) • 子どもをどういう人間に育てればいいか(性格?健康?教育水準?) • 観光地のゴミのポイ捨て(清掃の頻度の問題、観光客のモラルの問題、商品を売る商店の 問題?) •適応課題 Adaptive challenge:自分自身のものの見方や、周囲との関係性が変 わらないと解決できない問題。自分も当事者であり、問題の一部である。 (Rittele and Webber, 1973) Heifetz, R., & Linsky, M. (2017).

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現実・ 課題 問題に対する姿勢 状態1:傍観者(批評家) 自分には関係ないことにしている 状態2:課題解決型 状態3:主体者(私も起点) 問題を分析し、解決する ただし、外側から対処する 問題を作り出している 可能性があるところに立つ 問題をシステムと捉え全体を俯瞰し、 自分もその問題に加担している(一部 を担っている)という所に立ち、自分の あり方(Being)からその問題自体に変 化を与えるセルフリーダーシップ。 問題を分析し解決する。ただし、問題 は絡み合って益々高度化し、次から 次へと新たな課題が発生する 飲み屋で会社の悪口を言ったり 、うちもトップが変わってたらいい のだけどね、と言う状態 ■旨み: 責任を取らなくていい、安心、居心地が いい、傷つかなくていい ■代償: ・現状は何も変わらない ・今の環境を生き続ける ・成長しない ■旨み: 達成感、成長・能力が上がる、頼られる、 承認される、自己効力感、自己価値の証 明 ■代償: ・分断が起こる可能性がある ・どこかむなしさを感じる ・孤軍奮闘、自分だけが頑張る ・責任ばかり上がる 現実・ 課題 現実・ 課題 これらを促す事のできる⼈材 システムリーダーシップ さらに

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履修される方向け: 初回練習ワーク この講義で整理すべき下記の問題について 、ご自身の研究テーマに関連した事例をそれぞれ挙げてください。 講義用チャットボットを用いてみてください。 • 従順な問題 Tame problem • 厄介な問題 Wicked problem • 参考:Rittel, H. W., & Webber, M. M. (1973). Dilemmas in a general theory of planning. Policy sciences, 4(2), 155-169. • 適応課題 Adaptive challenge • 参考: Heifetz, R., & Linsky, M. (2017). Leadership on the line, with a new preface: Staying alive through the dangers of change. Harvard Business Press. 提出先: [email protected] メールタイトル: 知識社会マネジメント初回ワーク提出 本文中に学籍番号を記載のこと。 締め切り: 本日 12:30

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講義用チャットボット(第一回) https://qr.paps.jp/T9JS RAG情報 Rittel, H. W., & Webber, M. M. (1973). Dilemmas in a general theory of planning. Policy sciences, 4(2), 155-169. Heifetz, R., & Linsky, M. (2017). Leadership on the line, with a new preface: Staying alive through the dangers of change. Harvard Business Press.

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スケジュール(2024.4.5現在の予定) 回(日時) 主題と位置付け 第1回︓4⽉5⽇(⾦) ガイダンス︓知識創造社会の創造と未来【オンライン】 第2回︓4⽉19⽇(⾦) 科学技術の兆しと未来洞察 第3回︓4⽉26⽇(⾦) QFTによる「問い」の構築 第4回︓5⽉10⽇(⾦) 予測と社会︓リスクと知識の関係 第5回︓5⽉15⽇(⽔) ビジネスにおける⽣成系AIとクリエイティブの未来 第6回︓5⽉17or24⽇(⾦) 科学技術と⼈間中⼼な社会 第7回︓5⽉30⽇(⽊) スペキュラティブデザインによる科学の未来 第8回︓6⽉7⽇(⾦) ビールゲームとシステム思考、システム原型、メンタルモデル 第9回︓6⽉14⽇(⾦) システムの理解とネクサスアプローチ 第10回︓6⽉21⽇(⾦) 持続可能な社会・環境課題解決型資⾦としてのインパクト投資 第11回︓6⽉28⽇(⾦) テクノロジーによる課題解決の⺠主化 第12回︓7⽉5⽇(⾦) マルチステークホルダープロセスによるオープンな知識創出活動 第13回︓7⽉12⽇(⾦) 最終課題 厄介な問題 Wicked prob. 適応課題 Adaptive prob. 主な焦点

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•次回は4/19(金) 10:25- です。(来週12日は入学式のため休み) 対面授業@工3号館 工ラウンジ講義室321室 良い週末をJ 佐々木一 [email protected] 知識社会マネジメント2024⽤ 講義関連共有フォルダ https://qr.paps.jp/1rawC