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AIエージェントを導入する [ 社内ナレッジ活用編 ] 2025年11月05日 第34回 BJCC Meetup 株式会社クラウドネイティブ 前田 章

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[ 自己公開 ] 前田 章 @glidenote 株式会社クラウドネイティブ 専門領域 Site Reliability Engineering 認証(authentication) 生成AI その他の活動 memolist.vim 開発者 サーバ/インフラエンジニア養成 読本 DevOps編 共著 など

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[ 筆者と生成AIとの関わり ] 社内向け、社外向け、個人の開発で利用 コーティング 調査、資料作成など通常業務で利用 通常業務 情シスコンサルとして、お客様環境への 生成AI導入を技術検証支援 お客様環境へのAI導入

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話すこと [ 今日話すこと、話さないこと] 情シスの方向けのAIエージェント、MCPの概要 情シス領域でのAIエージェント、MCP活用 2年間の生成AIの導入支援で得られた知見 AIエージェント、MCPの詳細なセキュリティの話 情シス領域以外でのAIエージェント、MCP活用 開発領域では何周か先行 話さないこと

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[ AIエージェントとは ] ユーザーの代わりに自律的に判断し行動するAIシステム 01 ユーザからの指示に従うだけでなく、状況を理解し、計画を立 て、タスクを実行・調整する 02 複数の機能を組み合わせたり、外部ツールと連携したりして、 複雑なタスクを遂行できる 03 MCP(後述)との組み合わせ利用されることが多い 04

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AIエージェントが登場するまで

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[ AIエージェント登場以前の生成AI活用(2023年頃) ] 1. ユーザーはブラウザでチャットからプロンプトを通じてAIに指示を与える PDFやその他情報も必要に応じてアップロード 2.生成AIから回答が返ってくる 3. チャット画面を通じ、目的の回答が得られるまでやり取りを繰り返す 4. 得られた回答を手作業でファイルなどに反映 生成AIが必要な情報はユーザーが手動で用意

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[ 人間が関わる箇所が多い ] 1.ユーザーが指示、データ提供 2. 生成AIが回答 3. 回答を反映 意図した回答を得るまでに やりとりが複数回発生しがち。 (それでも大変便利だった)

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AIエージェントの登場

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[ AIエージェントを利用したフロー (2024年後半) ] 1. ユーザーはAIエージェントにタスクを指示 2.AIエージェントが状況を理解し、 計画を立て、タスクを実行。完了したらユーザーに通知 AIが自律的に動き、タスクを遂行

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[ 自律的にタスクを行う ] 1.ユーザーが指示 4. タスクが完了したら通知 2. 外部システムと 連携 3. データ書き込み ユーザーと生成AIとのやりとりも最小限。 1回の指示でタスクの完遂する One Shotの成功率も高め

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MCPの登場

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[ MCP(Model Context Protocol)とは ] 生成AIが外部データやシステムに安全にアクセスするための 共通プロトコル 01 2024年11月にClaude開発元のAnthropicが発表 02 生成AIが外部システムとつながるインターフェースを提供。 それまでは外部システムとの繋ぎ込みはそれぞれ開発が必要 03 AIエージェントと組み合わせて業務自動化や機能拡張が可能 04

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[ MCP Serverの代表的なツール ] インターネットから最新の情報を収集し回答に反映させる Web検索 データベースなどから情報を取得する データベース照会 外部サービス、社内システムと直接連携しデータ取得、 書き込み処理などを行う 外部APIの呼び出し コード解析、コンテキスト保存、ドキュメント参照 コーディング支援 自分たちで開発することも可能なため、 公式のもの以外に、オープンソースのものも多数存在

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[ 当社ブログでMCPのわかりやすい解説があります ] MCPとは何か 〜AIエージェントの為の標準プロトコル〜 – CloudNative Inc. BLOGs

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[ 生成AIと外部システムとの連携を行う] 2. 外部システムと 連携 3. データ書き込み MCP MCP

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[ MCPの登場で何が出来るようになったのか ] AIエージェント 自律的に動く MCP 外部システム連携 自律的に外部情報やシステムと連携し、 タスクを実行できるようになった

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MCP Host(Client) Claude, Cursorなど [ MCPの動作イメージ ] Box MCP Server Slack MCP Server Notion MCP Server Box Slack Notion

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[ 複数のサービス、システムと連携ができる ] 画像引用元: https://zhuanlan.zhihu.com/p/29301066811

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MCP Host Claude, Cursorなど Box MCP Server Slack MCP Server 〇〇〇 MCP Server Box Slack [ AIエージェント + MCPのセキュリティ ] 悪意のあるMCPから 情報漏洩や破壊的行為など

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[ ユースケース1: Notion AI 議事録からAsanaにタスク起票]

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[ ユースケース2: Box上のファイルを検索してNotionにまとめる ]

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Box MCP Server (Remote)

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[ Box MCP Server (Remote) とは ] Box公式のMCP Server。Box環境で動いているのでRemote。 Localで動くBox Community版もありますが今回は割愛 01 生成AIからBox上のコンテンツにアクセスし、 コンテンツに関連した操作を実行できるようになる 02 03 AIエージェントにBoxに関連した機能を拡張できる

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[ Box MCP Server (Remote)で出来ること ] ファイル内容の取得、アップロード、詳細情報の取得 ファイル操作 フォルダの作成、内容の一覧表示 フォルダ操作 キーワード検索、フォルダ名検索 検索 Box AIを利用し、Box Hubに質問応答、メタデータ抽出、 複数ファイル分析 Box AI機能 ファイルに関連するすべてのタスクを一覧表示 コラボレーション Box Hubから情報取得。2025-11-05 時点で作成系はなし Box Hub管理

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BoxのAPIを利用して、Box上のコンテンツにアクセスしている どのようにBoxの操作を実現しているのか? Q 利用者の認証情報を使用してBox APIにアクセス。利用者の持っている権限で各種操作が可能 実行権限はどのようになっているのか? Q Box管理者側でMCPを許可していないと利用不可。ClaudeなどMCPに対応したソフトから利 用が可能 https://ja.developer.box.com/guides/box-mcp/remote/ どうやったら利用できますか? Q Box MCP Server経由した操作は通常の課金対象のBox Platform APIコールとして計上される 利用料金はどのようになっている? Q [ Box MCP Serverのあれこれ ]

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社内ナレッジとRAG

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[ RAGとは ] Retrieval-Augmented Generation の略 01 社内情報資産と生成AIを接続し、生成AIに質問をして社内情報 資産についての回答を得る 02 社内情報資産の活用として情シス領域ではRAG取り組んでいる 会社が多い 03

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[ RAGの構成イメージ ] 画像引用元: https://aconnect.stockmark.co.jp/coevo/rag/

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[ RAGとGIGO問題 ] Garbage In, Garbage Out (ゴミを入れればゴミしか出てこない) 計算機科学の言葉で1957年から言われている模様(Wikipediaより) RAGを構築すると必ず遭遇する問題 生成AIは最先端技術なので、そこはクリアしていると勘違いしがち かつての私もそうでした 取得してくる情報が正確でないと回答も精度が上がらない

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[ Garbage In, Garbage Out ] 整理されていない情報 不正確な回答

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Box MCP Server (Remote) の 話に戻ります

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良い点 [ Box MCP Serverを実際に利用してみて筆者の感想 ] 管理者権限でなく、実行ユーザーの権限で動作する AIエージェントと組み合わせBox操作が自動化できる 一番手間のかかる「ファイルを探して、AIエージェント に渡す」を人間がしなくて良い ファイル検索など都度Box APIを呼び出し速度が遅い RAGはあらかじめファイルをスキャンしベクトル 化しているので動作が早い Box管理者側設定でMCP禁止にしていると利用不可 RAGと同じGIGO問題も抱えている イマイチ

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AIエージェントを導入するために 重要なポイント

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[ GIGO問題を放置すると ] 1.GIGOを放置 2. 生成AIからまともな回答が返ってこない 3. 誰も使わなくなる 4. 生成AIの導入失敗 GIGOの放置は生成AI導入の失敗につながるケースが多い

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[ 本資料で一番重要なポイント ] 情報資産の整理が出来ていないと、 生成AIはうまく活用できない 過去2年間、いろんなお客様のAI導入支援しての得た知見 社内情報資産活用の領域において情報の整理は必須 とりあえず生成AIを入れれば、いい感じの成果が出るは幻想 これは2025年11月時点で最新のLLMを利用しても同じ

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[ 生成AIが見ていい情報、見たらダメな情報 問題 ] AIが見ても良い情報 AIが見たらダメな情報 社内規定 業務マニュアル 公開情報 など… 機密情報 人事情報 顧客情報 など… 議事録は どっちになる? 生成AIが回答したらダメなものも対象から除外する NG OK

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[ 情報整理の難しさ ] 情報整理は大変手間がかかる ドキュメントを見て、機密情報、社外秘、公開情報、分類分けは非常 に難しく、手間もかかる AIが見てよい情報、AIが見てはダメな情報、重複ファイル、新旧ファ イルの混在など分類が多岐にわたる

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[ 情報整理をどう進めていくか ] 情報整理にAIエージェントを利用する Box MCP ServerはRAG用途では現時点で使い勝手がイマイチだった が、AIエージェントと組み合わせて、情報整理をさせるという目的におい ては非常に有用 小規模のデータから分類を始めていき、徐々に拡大をしていく

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[ AIエージェントが情報を整理 ] 整理されていない情報 整理された情報

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[ 情報整理の例 ] 漏洩すると深刻な損害が発生する情報 レベル4:Restricted/Secret(機密・極秘) レベル3:Confidential(社外秘・秘密) レベル2:Internal(社内限定) レベル1:Public(公開) この分類をAIエージェントにしてもらう。 AIエージェント導入の下準備をAIエージェントが行う。 AIエージェント + Box MCP Serverが担う 組織や顧客に営業がある機密情報 公開は想定していないが、漏洩しても重大な損 害には至らない情報 外部に公開しても問題のない情報

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[ 生成AIが回答に利用する情報を整理する ] 参照する情報 回答に利用しない情報 レベル4:Restricted/Secret(機密・極秘) レベル3:Confidential(社外秘・秘密) レベル2:Internal(社内限定) レベル1:Public(公開) 回答に利用する情報 そのほか重複の排除、古いドキュメントを除外など 人間だと工数がかかる作業をAIエージェントに任せる NG OK

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[ AIエージェントと始める情報整理のステップ ] 目標と現状の把握を明確にする。 どのように情報の分類と重要度の評価をするか 1. 準備と計画 チーム向け文書など対象範囲を限定し小さく始める 2. 小さく始める どのように作業、運用をしていくかを策定。 1回で終わりではなく、情報整理は日々の運用が必要 3. 運用ルールの策定 4. 対象範囲の拡大 各ステップはAIエージェントに 相談しながら作業するのがおすすめ 1-3の対象を少しずつ拡大していく。 小さいサイクルを高速に回す

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[ 整理された情報から正しい回答が得られる] 整理され、参照して良い情報を 回答に利用する 正しい回答 整理されていない、参照不可の情報は 回答に利用しない 小さく始め、徐々に拡大し、 回答の精度を上げていく

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まとめ

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[ まとめ ] AIエージェントの登場し、AIが自律的にタスクを行うようになった 01 MCPの登場により、外部システムとの連携が容易になった 02 Boxをはじめとした社内ナレッジと生成AIの活用は情報整理が 成功の鍵を握っている 03 情報整理をAIエージェント+MCPに委任し効率化 04 整理された情報をもとにAIエージェントの導入を進めていく 05

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[ おまけ: 過去2年間の業務で得た生成AI導入のポイント ] いきなり全社展開などはうまくいかない。 小規模から展開し、徐々に広げて導入していく 1. 小さく導入する 施策に数カ月かけていると、完了したときには別の良いも のが登場し、周回遅れになっている可能性が高い。 2. 素早く導入する 1つのツール、サービスに全賭けしない。 常に複数のツール、サービスを併用する 3. 複数の選択肢を持つ RAG構築は情報整理が必須。 いきなりだと構築難易度も高め 4. RAGは情報整理と必須 今回は割愛しましたが、AIエージェント、MCPはセキュリ ティリスクがあります。リスクを理解し、適切に対処する 5. セキュリティリスク セキュリティの話は別の機会があれば

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社内ナレッジの活用のために AIエージェントを導入していきましょう

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ご清聴ありがとうございました。