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1 Turing saids Turing saids - 機械は考えることができるか - - 機械は考えることができるか -

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想定読者 AI・コンピューター科学に興味がある学生・研究者 ▶ 数学と計算機科学の歴史に関心のある方 ▶ テクノロジーの哲学的・歴史的側面に興味がある一般読者 ▶ AIの未来について考えたい技術者・政策立案者 ▶ 3

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目次 1. チューリングの論文と機械思考 2. AIブームと認識の急激な変化 3. コンピューターの歴史とAIの未来 4. コンピューターと数学の関係 5. 計算可能性と証明可能性の歴史 6. プログラムと数学の関係 4

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1. チューリングの論文と機械思考 1950年、アラン・チューリングが「機械は考えることができるか」(Can machines think?)という論文を発表 ▶ 現在はこの論文から75周年 - 現代のAI時代を切り開いた重要な礎石 - チューリングの予言: 「今世紀の終わりには、矛盾なく機械の思考について語ることができるようになる」 ▶ 当時は議論に値しないほど無意味と思われていた - チューリングの悲劇:1954年、自ら命を絶つ ▶ 社会的迫害や思想理解の欠如が背景に - 5

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1. チューリングの論文と機械思考(続き) チューリングの科学的方法論に関する洞察 ▶ 科学的思考は常に正しいことだけを言うべきではない - 検証されない考えも科学の発展に重要 - 当時の一般的な科学観とは異なる革新的視点 - 6

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2. AIブームと認識の急激な変化 チューリングの予言実現までの時間:75年(予測より25年長い) ▶ 現代のAIブームの特徴 ▶ IT業界全体と一般人を巻き込む - 変化の急激さが示すAIの強いインパクト - AIブームの問題点 ▶ 深い理解を持つ時間の不足 - 言葉の普及と理解の深さの不一致 - 7

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3. コンピューターの歴史とAIの未来 チューリングの予言から約75年 ▶ コンピューターの誕生から成熟までの全歴史と一致 - AIの未来を考える新しい視点 ▶ 「AI」ではなく「コンピューター」 「機械」として捉え直す - コンピューター科学全体の文脈でAIを理解 - 「機械の未来」という広い文脈でのAI ▶ 人間と機械の関係性の再考 - 技術進化の社会的影響を総合的に考察 - 8

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4. コンピューターと数学の関係 コンピューター自体の数学的能力の再評価 ▶ 大規模言語モデルへの疑問 - コンピューターの本質的数学能力の過小評価の可能性 - 言語能力と数学的能力の「大統一」 ▶ 言語処理と数学的処理の統合的視点 - この考えの萌芽は古くから存在 - コンピューター科学者の認識変遷 ▶ 初期の科学者たちはこの関係性に気づかず - 現代研究で両者の深い結びつきを再認識 - 9

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5. 計算可能性と証明可能性の歴史 1930年代の計算理論研究勃興 ▶ ゲーデルの不完全性定理(1931年)が契機 - 「計算とは何か」 「証明とは何か」の根本的問い - 主要な計算可能性理論 ▶ ゲーデルの原始帰納関数(1934年) - チャーチのラムダ計算(1936年) - チューリングのチューリングマシン(1936年) - これらの理論の同値性証明 ▶ 異なるアプローチが同じ計算可能性概念を捉える - 10

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5. 計算可能性と証明可能性の歴史(続き) 1950年代の展開 ▶ 計算可能性と証明可能性の同一性認識 - チャーチ・チューリングの定理として知られる - 数学的概念のアルゴリズム的解釈 ▶ 数学をチューリングマシンの特徴として捉える - 数学の機械的・アルゴリズム的側面の認識 - 後のコンピューター科学と数学融合の基礎 - 11

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6. プログラムと数学の関係 1970年代の重要な認識転換 ▶ プログラムの役割が数学の証明に匹敵 - 「計算 = 証明 = コンピュータープログラム」 - 型理論の発展と影響 ▶ 従属型理論(ディペンデント・タイプ・セオリー) - マーティン・レーフらによる展開 - プログラミング言語理論と数学的論理学の融合 - ホモトピー型理論(21世紀) - 数学、特にカテゴリー論に大きな影響 - 20世紀カテゴリー論を「古典的」とする革新性 - 12

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6. プログラムと数学の関係(続き) ヴラディミル・ヴォエヴォツキーの構想 ▶ 全数学的議論をプログラムで記述する試み - 早世により中断も、思想は継続研究 - 数学形式化とコンピューター支援証明に影響 - 現代の数学とコンピューター科学の融合 ▶ プログラミング言語理論と数学的論理学の密接関係 - 証明支援システムの発展と数学研究応用 - 数学的思考のアルゴリズム化と機械支援の可能性 - 13

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まとめ コンピューターと数学の深い結びつきの歴史的展開 ▶ 初期計算理論から現代型理論まで、常に進化する関係 - この理解がAIの本質的能力再評価に繋がる可能性 - 人間の数学的認識能力への新たな洞察 ▶ コンピューター科学の発展が人間の認知プロセス理解に寄与 - 数学的思考の本質に対する新しい視点獲得 - 将来の展望 ▶ AIと数学の関係性のさらなる深化 - 人間とコンピューターの協働による新しい数学創造 - 数学教育や研究方法の根本的変革の可能性 - 14

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用語 チューリングマシン: アラン・チューリングが1936年に考案した抽象的な計算モデル ▶ ラムダ計算: アロンゾ・チャーチが開発した関数の計算と抽象化のための形式体系 ▶ 原始帰納関数: 自然数上の関数を定義するための形式的体系 ▶ 従属型理論: 型理論の一種で、型が値に依存することを許す理論 ▶ ホモトピー型理論: 数学的構造と計算を統合する現代的な型理論 ▶ カテゴリー論: 数学的構造とそれらの間の関係を抽象的に扱う理論 ▶ 大規模言語モデル: 大量のテキストデータから学習し、人間のような文章を生成できるAIモデル ▶ 15