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ベトナム語文法の特徴 長岡技術科学大学 自然言語処理研究室 B4 Nguyen Van Hai 文献紹介

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2 文法の特徴 ● 中国語やタイ語は別系統であるが、文法面で共通の 特徴を持っている。 ● 孤立語と呼ばれる ● 以下三点を取り上げる 人称代名詞 機能語 語順

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3 人称代名詞 ● 人称間の関係性によって使い分けられるという相 対的な性質を持つ。 ● 固有の人称代名詞というものがなく、普通には親 族関係を表わす名詞を人称名詞として転用する。 ● 特徴な人称代名詞には、粗野な言い方である tao「おれ」、mày「おまえ」、nó「あいつ」が ある.

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4 人称代名詞 ● 人称代名詞は人称間の年齢と性別という相対的 関係に従って使い分けられるのであるがどのよ うな人称代名詞が選ばれるかによって人称間に 心理的な距離感であり、すなわち親疎感が生ま れる。 ● 例えばtôi「私」という語は一般には中立的な一 人称代名詞であるが、使われ方によって心理的 な意味合いが加わる。

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5 人称代名詞 ● 1人称と2人称の関係を表すと、以下のようになる。 ● tôiとt , mình ớ は人称代名詞であるが、この2つ以外はす べて親族名称が本義である。 1人称 2人称 em anh, chị cháu ông, bà, bác, chú, cô, dì, c u ậ tôi anh, ch , ông, bà, bác, ị chú, cô, dì, c u, em ậ t , ớ mình c u ậ

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6 機能語 ● 名詞、動詞、形容詞は具体的な、あるいは抽象的な 概念を表す語である、独立して用いることができ る。 ● 指示詞や接続詞、助詞などは何らかの概念を表す話 ではなく、独立用いることができない。 ● 名詞、動詞、形容詞など中心的な働きをする単語や 句、節などの成分に結合して、様々な文法的意味を 付与する働きをする。それで機能語を呼ぶ。

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7 機能語 ● 機能語が重要な文法上の役割を果たし、一つの 文法的特徴となっている。 ● 現在・過去・未来の時制や進行・断続・完了な どの相(アスペクト)、また名詞の数、受け身 や比較の表現 ● その他様々の文法的意味が機能語によって表わ される。以下具体的例を挙げる。

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8 時制・相表現 ● đã đ c ọ 「もう読んだ」過去 sẽ đ c ọ  「読みだろう」未来 ● đang đ c ọ 「今読んでいる」進行 ● ch a ư đ c ọ  「まだ読んでいない」未完了

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9 名詞の単数・複数表現 ● cu n ố sách này「この本」単数 ● nh ng ữ cu n sách này ố 「これらの本」複数 ● các cu n ố sách này「これらすべての本」複数

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10 受け身表現・比較表現 ● đ c ượ khen 「褒められる」 bị phê bình 「批判される」 ● khó b ng ằ 「同じくらい難しい」 khó h n ơ 「もっと難しい」

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11 強調表現・接続表現 ● ngay bây giờ「いますぐ」 cả anh tôi n a ữ 「私の兄さえも」 ● r ẻ và ngon「安くて美味しい」 khó nh ng ư hay「難しいけど面白い」 ● なお、名詞、動詞、形容詞など概念を表す話をま とめて実詞、機能語をまとめて虚詞とする分類も よく行われる。

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12 語順 ● いかなる単語においても、単語の配列には一定の 統語的決まりが利用する。 ● ベトナム語においてはかなり厳格な性質を持つ、 特に句構造において語順は重要な文法的機能を果 たす。 ● 名詞を中心とする句(名詞句)、動詞を中心する 句(動詞句)、形容詞を中心とする句(形容詞 句)。

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13 名詞句 ● 最も十分な名詞句の語順は次ようになる。 ● 0:名詞 1:修飾語 ● -1:類別語 2:指示語 ● -2:取り立て詞 ● -3:数量を表す語 ● -4:総数量、全体を表す語 -4 -3 -2 -1 0 1 2

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14 名詞句 ● 類別師とは事物(名詞)の種類を区別する語で あるり、cái(無生物)とcon(生物)が基本的 な類別語である。 ● cân(キログラム)、th c ướ (メートル)などの 量詞もこれに含める。 ● 0の位置の名詞が省かれる場合があり、その時 は−1の位置の類別詞が名詞句の中心となる。

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15 名詞句 ● -2の位置のcáiはいわゆる取り立て詞で、強調、指 示、軽蔑などの意味を添加する。 ● 数詞、複数を表す語などはすべて−3の位置にくる。 ● −4の位置の総数量、全体を表す話とは、t t c ấ ả(す べての), toàn thể(全体の)などを指す。 ● 1の位置には修飾語がくるが、必ずしも形容詞あるい は形容詞句ばかりでなく.

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16 名詞句 ● 2には指示詞「この」「その」「あの」がく る。 すべての位置を満たす名詞句の例を示すと、次 ようになる t t c ấ ả nh ng ữ cái cu n ố sách ti ng Vi t ế ệ y ấ -4 -3 -2 -1 0 1 2 「それらすべての例のベトナム語の本」

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17 名詞句 ● 実際の表現としては窮屈でむしろ不自然な感じ を与える。それぞれの位置の語の取捨選択が行 われ、より適切な形が与えられる。 Sách ti ng Vi t ế ệ (指示性なし、単複不明) 「ベトナム語の本」 cu n sách ti ng Vi t y ố ế ệ ấ (1冊だけ) 「その例のベトナム語の本」

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18 動詞句 ● 動詞句は比較、時制(アスペクトも含む)、命令 などの文法的意味の表出を担う。 ● đã...r i ồ (完了、終了)のような動詞の前後にくる 相関語句やl i ạ (反復)、đ c ượ (可能・愛身)など のように動詞の前にも後にも立ちうる語があり、 ● 複雑であるため、名詞句のような一般モデルを動 詞句において提示することは難しい。

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19 動詞句 ● 次ような句構造を持つ ● 0:動詞 ● 1:比較を表す語 ● 2:時制・アスペクトを表す語 ● 3:否定詞 ● 4:命令を表す語 1 2 3 0 4

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20 動詞句 ● 具体的例を挙げる 1. Tôi cũng đã không bi t. ế 〜も すでに 〜ない 知っている 2. Đ ng ừ khóc 〜してはいけない 泣く 命令文は主語を省略しない形の方が丁寧な表現になる 2’. Ch đ ng khóc ị ừ 「(泣いている女性に)泣かないで」

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21 動詞句 ● 時制・アスペクトや命令という文法意味は動詞 句の後置要素によっても表すことができる。 ● 先にも述べたように、ここではこれ以上立ち入 らないことにする。

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22 参考図書 世界の言語ガイドブック、第2アジア・アフリ カ地域(東京外国語大学語学研究所)