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化学プロセスシステム工学 第4回 2018年10月18日 (木) 0 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 専任講師 ⾦⼦ 弘昌

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前回までの復習 化学工学・プロセスシステム・制御で⼤切なことは︖ モデリングの⽅法2つは︖ PID制御とは︖ 制御性能を評価するための指標は︖ 1

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流体加熱プロセス︓問題設定 2 Q T, V, ρ, cP F, Ti F, T F [m3・s-1]︓⼊⼝・出⼝流量 Ti [K]︓⼊⼝流体の温度 T [K]︓タンク内流体の温度 V [m3]︓タンク内流体の体積 ρ [kg・m-3]︓流体の密度 cP [J・ kg -1・ K-1]︓流体の⽐熱 Q [J・s-1 (=W)]︓加熱量 i ︓input o︓output

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熱収支 式変形 3 ( ) i P dT F Q T T dt V V c ρ = − + 出⼒変数 (お湯の温度) と⼊⼒変数 (加熱量) との 間の関係を式で表せた︕モデリングできた︕

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熱収支 コンピュータシミュレーション 4 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) i P Q t t F T t T t t T T t t t V V c ρ   − ∆ = − ∆ + − − ∆ + ∆     ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) i P T t T t t Q t t F T T t t t V V c ρ − − ∆ − ∆ = − − ∆ + ∆ 繰り返し計算によって、T(t) の時間変化を求めていく T(tーΔt) Q(tーΔt) T(t) Q(t) T(t+Δt) Q(t+Δt) T(t+2Δt) ・・・ ・・・

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流体加熱プロセスのシミュレーション F [m3・s-1]︓⼊⼝流量・出⼝流量 = 0.00005 Ti [K]︓⼊⼝流体の温度 = 20 [℃] V [m3]︓タンク内流体の体積 = 0.01 ρ [kg・m-3]︓流体の密度 = 1000 cP [J・ kg -1・ K-1]︓流体の⽐熱 = 4200 Q [J・s-1] (加熱量) の最⼤値 = 3000 Δt = 0.1 ヒーターを on にしてから加熱が始まるまで 60 s かかるとする ヒーターを最⼤にして、3000 s シミュレーションしてみよう︕ 5

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PID制御 (⽐例・積分・微分) 出⼒変数の目標値との差 e をふまえて、⼊⼒変数の値をどうするか︖ ⽐例積分微分動作︓PID (Derivative) 制御 • ただ実際は、コンピュータで⾏うので、 ⁃ 微分 → 差分 / Δt 6 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 1 I 1 1 0 t P D r e t e t Q t K e t e r t T Q T t =   − − = + ∆ + +   ∆   

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出⼒変数と⼊⼒変数との関係 モデルを求める⽅法は、⼤きく分けて3つある • 理論的に攻める⽅法 ⁃ 物質収支 (マスバランス、マテリアルバランス) ⁃ 熱収支 (ヒートバランス) • メリット︓実験しなくても求まる • デメリット︓数式として表せないといけない • 実験データを使う経験的な⽅法 ⁃ モデルの概形を決めて、ステップ応答などの実験(運転)で 得られたデータから計算 • メリット︓数式で表せないものもモデル化できる • デメリット︓実験しないといけない • 理論的に攻めながら、データも使う⽅法 7

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実験データを使う経験的な⽅法 ① 実験する ② モデルの概形を決める ③ PID制御の3つのパラメータを決める 8

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① 実験する 1/2 ⼊⼒変数をあえて⼤きく変化させて、出⼒変数の応答を⾒る • ステップ信号 • インパルス信号 9 • ランプ信号 時間 ⼊⼒変数 0 時間 ⼊⼒変数 0 時間 ⼊⼒変数 0

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① 実験する 2/2 ⼊⼒変数をあえて⼤きく変化させて、出⼒変数の応答を⾒る • ステップ信号 → ステップ応答 [最も一般的] • インパルス信号 → インパルス応答 • ランプ信号 → ランプ応答 10

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② モデルの概形を決める まずは、どのようなモデルの概形があるか確認します 11

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② モデルの概形 積分 積分モデル (積分系、積分プロセス、積分要素) 12 ( ) S y t K t = t︓時刻 y︓出⼒変数 KS ︓定常ゲイン (定数) ステップ応答のとき、

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② モデルの概形 1次遅れ 1次遅れモデル (1次遅れ系、1次遅れプロセス、1次遅れ要素) y(∞) は︖ 13 ( ) ( ) ( ) C S dy t T y t K u t dt + = t︓時刻 y︓出⼒変数 u︓⼊⼒変数 TC ︓時定数 (定数) KS ︓定常ゲイン (定数) ( ) C 1 exp S t y t K T     = − −           ⼊⼒変数を0 → 1 としたステップ応答 (単位ステップ応答)のとき、 となります [後で詳しくやります]

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② モデルの概形 1次遅れ 1次遅れモデル (1次遅れ系、 1次遅れ要素) 14 単位ステップ応答

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② [クイズ] 15 ( ) ( ) i 0 P 1 exp exp t F F T t T t t Q t dt V c V V ρ     = + −          加熱流体プロセス について、Q(t) を 0 → 1 としたステップ応答のとき、T(t) - Ti が ( ) C 1 exp S t y t K T     = − −           と表されることを確認し、KS , TC を求めてみよう

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② [クイズ 回答] 16 ( ) i 0 P P 0 P P 1 exp exp 1 exp exp 1 exp exp 1 1 1 exp t t F F T t T t t dt V c V V F V F t t V c V F V F V F t t V c V F V F t F c V ρ ρ ρ ρ     − = −               = −                     = − −                     = − −          Q(t) = 1 より、 S P 1 K F c ρ = よって、 C V T F =

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② モデルの概形 1次遅れ+むだ時間 1次遅れ+むだ時間 モデル • tD [s]︓むだ時間 • t → t - tD 多くのプロセスを、このモデルで近似することができる 17 ( ) D S C 1 exp t t y t K T     − = − −           0 ≦ t < tD tD ≦ t ( ) 0 y t = 単位ステップ応答

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② モデルの概形 1次遅れ+むだ時間 1次遅れ+むだ時間 モデル 18

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② モデルの概形 2次遅れ(+むだ時間) 2次遅れモデル (2次遅れ系、2次遅れプロセス、2次遅れ要素) 減衰係数 DF の値 (の範囲) によって異なる挙動を⽰す • 後で詳しくやります 2次遅れ + むだ時間 モデル もある 19 ( ) ( ) ( ) ( ) 2 2 F p 2 2 d y t dy t a D a y t K u t dt dt + + = a︓パラメータ (定数) DF ︓減衰係数 (定数) KS ︓定常ゲイン (定数)

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② モデルの概形 2次遅れ(+むだ時間) 2次遅れモデル (2次遅れ系、2次遅れプロセス、2次遅れ要素) 20 DF = 0.1 DF = 1

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② クイズ1 「流体加熱プロセス」 は何モデルでしょうか︖ 21 ( ) i P dT F Q T T dt V V c ρ = − +

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② クイズ2 「流体加熱プロセス」の • 定常ゲイン • 時定数 はいくつでしょうか︖ 22

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② モデルの概形をどうやって決める︖ モデルの概形の種類は分かった︕ では、その中からどうやって選んだらよいでしょうか︖ • ① プロセスモデル (理論的なモデル) を⾒て選ぶ • ② 実験結果であるステップ応答のプロットを⾒て選ぶ 23

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③ PID制御の3つのパラメータを決める PID制御の3つのパラメータを決める前に、 どうやってモデルのパラメータを決める︖ 1次遅れ+むだ時間 モデルを対象にして考えてみよう 24 t︓時刻 y︓出⼒変数 u︓⼊⼒変数 TC ︓時定数 (定数) KS ︓定常ゲイン (定数) tD ︓むだ時間 (定数) ( ) D S C 1 exp t t y t K T     − = − −           0 ≦ t < tD tD ≦ t ( ) 0 y t =

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③ むだ時間・定常ゲイン・時定数を決める むだ時間 tD ・定常ゲイン KS ・時定数 TC をどう決めればよいか、 考えてみよう︕ 25 y 0 こんな単位ステップ応答の結果が得られたとする yi ye

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③ 一般的な⽅法 むだ時間・定常ゲイン 26 y 0 tD K KS = ye - yi yi ye

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③ 時定数は︖ 時刻 tD における接線を求めてみよう︕ 27 ( ) D S C 1 exp t t y t K T     − = − −           ( ) S D C C exp dy t K t t dt T T   − = −     t で微分すると、 接線の傾きは、 S C K T 接線は、( tD , yi ) を通るので、接線は ( ) S D i C K y t t y T = − +

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③ 一般的な⽅法 時定数 28 y 0 tD KS = ye - yi ( ) D i C K y t t y T = − + tD + TC TC yi ye

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③ ただ実際の(単位)ステップ応答は・・・ 29 きれいでない︕ t [s] y

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③ 実際の一般的な⽅法 30 t [s] y 傾きが最も急なところ (変曲点) に接線を引く tD tD + TC TC KS = ye - yi TC = KS 傾き yi ye

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③ 単位ステップ応答でないとき ⼊⼒変数を 0 → UMAX としたステップ応答のとき、 その結果から求められた それぞれの値を tD ’, KS ’, TC ’ とすると、 31 S S MAX ' K K U = C C ' T T = D D ' t t =

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③ 絨毯爆撃的な⽅法もある むだ時間・定常ゲイン・時定数をグリッドサーチ 実際のステップ応答の結果との誤差の二乗和が最小になるものを選ぶ 32

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③ PID制御の3つのパラメータを決める むだ時間 tD ・定常ゲイン KS ・時定数 TC はわかった︕ では、 PID制御の3つのパラメータは︖ ⁃ ① Ziegler-Nichols のステップ応答法 (ZN法) ⁃ ② Cohen-Coon 法 (CC法) ⁃ ③ Chien-Hrones-Reswick 法 (CHR法) 33 先⼈たちの知恵と経験を使わせていただきます︕

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ZN法 制御の種類 ⽐例ゲイン KP 積分時間 TI 微分時間 TD P TC / KS tD - - PI 0.9TC / KS tD 3.3 tD - PID 1.2TC / KS tD 2 tD 0.5 tD 34

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CC法 35 制御の 種類 ⽐例ゲイン KP 積分時間 TI 微分時間 TD P - - PI - PID C D S D C 1 3 T t K t T   +     C D S D C 9 10 12 T t K t T   +     C D S D C 4 3 4 T t K t T   +     D C D D C 3 30 20 9 t T t t T   +     +     D C D D C 6 32 8 13 t T t t T   +     +     D D C 4 2 11 t t T       +    

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CHR法 (目標値へ追従させるとき) 36 制御の種類 ⽐例ゲイン KP 積分時間 TI 微分時間 TD オーバー シュート量 P 0.3TC / KS tD - - 0% PI 0.35TC / KS tD 1.2 TC - PID 0.6TC / KS tD TC 0.5 tD P 0.7TC / KS tD - - 20% PI 0.6TC / KS tD TC - PID 0.95TC / KS tD 1.35 TC 0.47 tD

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CHR法 (外乱を抑制させるとき) 37 制御の種類 ⽐例ゲイン KP 積分時間 TI 微分時間 TD オーバー シュート量 P 0.3TC / KS tD - - 0% PI 0.6TC / KS tD 4 tD - PID 0.95TC / KS tD 2.4 tD 0.4 tD P 0.7TC / KS tD - - 20% PI 0.7TC / KS tD 2.3 tD - PID 1.2TC / KS tD 2 tD 0.42 tD

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制御しよう︕ ちょっと待って︕ 目的は、“実際の” 流体加熱プロセス のお湯の温度を制御すること だけど、、、 実験する︖ → 難しい どうしましょう︖ 38

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仮想的な『流体加熱プロセス』 「理論的に攻める⽅法」によって作ったモデル (シミュレーションしたもの) を 仮に、実際の 『流体加熱プロセス』 としよう︕ • パソコンの中にプロセスで”実験”する︕ 「実験データを使う経験的な⽅法」によって作ったモデル (これからやるもの) を今回のモデルとして、 仮想的な『流体加熱プロセス』 のお湯の温度を制御する • ZN法、CC法、CHR法で制御して、結果を⽐較してみよう︕ • 流量や⼊⼝温度を変えて制御してみよう︕ 39