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3.8 スモールワールド 国際人間科学部 グローバル文化学科 岩永悠希

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スモールワールド現象 「6次の隔たり」として一般に流布した • 世界のどの二人であっても、6人程度 の知人を介してつながっている • ネットワーク科学の言葉では 「スモールワールド性」とも呼ばれる ネットワーク内で無作為に選ばれた二つのノード間の距離が短いこと Barabási, A.-L. Network science (Cambridge University Press, 2016). http://barabasi.com/networksciencebook/.

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スモールワールド性から生じる疑問 1. 何に比べてノード間の距離が「短い」のか、また「小さい」とは 何を意味するのか? 2. 短い距離が存在するということをどのようにして説明するのか?

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平均次数 𝑘 のランダム・ネットワークで考える 𝑘 = 2 距離 1ステップ 2ステップ 3ステップ 𝑑ステップ ノード数 𝑘 1 = 21= 2 𝑘 2 = 22= 4 𝑘 3 = 23= 8 𝑘 𝑑 = 2𝑑 𝑁(𝑑):起点となるノードから距離𝑑の位置までに含まれるノードの総数 𝑁 𝑑 ≈ 1 + 𝑘 + 𝑘 2 + ⋯ + 𝑘 𝑑 = 𝑘 𝑑+1 − 1 𝑘 − 1 (3.15)

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スモールワールド性の定式化 𝑁(𝑑) ≤ 𝑁より, 距離𝑑が無限に大きくなることはない. ネットワークの直径(最大距離)を𝑑𝑚𝑎𝑥 とすると 𝑁 𝑑𝑚𝑎𝑥 ≈ 𝑁 と近似できる. 式(3.15)において 𝑘 ≫ 1と仮定すれば, 𝑁 𝑑𝑚𝑎𝑥 = 𝑘 𝑑𝑚𝑎𝑥+1 − 1 𝑘 − 1 ≈ 𝑘 𝑑𝑚𝑎𝑥+1 𝑘 = 𝑘 𝑑𝑚𝑎𝑥 ∴ 𝑘 𝑑𝑚𝑎𝑥 ≈ 𝑁 両辺の対数をとって整理すると 𝑑𝑚𝑎𝑥 ≈ ln 𝑁 ln 𝑘 (3.18) (3.16) (3.17)

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現実のネットワークの直径 (3.18) Barabási, A.-L. Network science (Cambridge University Press, 2016). http://barabasi.com/networksciencebook/.

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スモールワールド性の定式化 𝑑𝑚𝑎𝑥 ≈ ln 𝑁 ln 𝑘 この式は無作為に選ばれた二つのノード間の平均距離についての良い近似となっている. • 最大距離𝑑𝑚𝑎𝑥 は数少ない極端な経路の影響を強く受ける • 平均距離 𝑑 では, ノードのすべての組み合わせに関する平均をとるため, そのようなゆらぎの影響が抑えられる (3.18) スモールワールド性: 𝑑 がノード数𝑁と平均次数 𝑘 にどう依存するかを表す関係式で定義される 𝑑 ≈ ln 𝑁 ln 𝑘 (3.19)

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現実のネットワークの直径 (3.19) Barabási, A.-L. Network science (Cambridge University Press, 2016). http://barabasi.com/networksciencebook/.

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式(3.19)の解釈 𝑑 ≈ ln 𝑁 ln 𝑘 (3.19) • 平均距離 𝑑 は, 𝑁や𝑁のべきに比例するのではなく, ln 𝑁に比例 する • 分母のln 𝑘 はネットワークが密になるほど, ノード間距離が小 さくなることを表す • 一般にln 𝑁 ≪ 𝑁であるため, ランダム・ネットワークにおいては ノード間距離がネットワークの大きさに比べて何桁も小さい • スモールワールド性の「スモール(小さい)」という言葉は, ネットワーク内のノード間平均距離,あるいは直径がシステムの 大きさの対数に依存することを意味している(疑問1) • 同じサイズの規格格子の場合と比べて, ノード間距離が平均し て「短い」(疑問2) Barabási, A.-L. Network science (Cambridge University Press, 2016). http://barabasi.com/networksciencebook/.

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さまざまなスモールワールド性 19次の隔たり(1999年) • WWW内の二つの文書は平均して19回のクリックでたどり着ける • 有限サイズスケーリング(WWWのサンプルサイズを大きくするにつれて平均距離がどのよ うに増加するか測定)の結果から導いた下記の評価式から算出 𝑑 ≈ 0.35 + 0.89 ln 𝑁 6次の隔たり(1967年):ミルグラムの郵便実験 友人に手紙を転送してもらうことを繰り返すことで、 遠く離れた人に手紙が届くかを実験したもの • 住所と名前が記されている手紙がある • その人を知っていれば直接送る • 知らなければ、ファーストネームで気軽に呼び合える仲の友人に手紙を転送する 実験の結果、平均して6人を介して目的の人に手紙が届いた。 Barabási, A.-L. Network science (Cambridge University Press, 2016). http://barabasi.com/networksciencebook/.

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3.8節のまとめ スモールワールド性: 𝑑 がノード数𝑁と平均次数 𝑘 にどう依存するかを表す関係式で定義される 𝑑 ≈ ln 𝑁 ln 𝑘 (3.19) ネットワーク科学における重要性 • スモールワールド現象は、ランダム・ネットワークモデルの範囲内で かなりの程度まで理解できる スモールワールド現象はランダム・ネットワークモデルによって合理的に説明することができる 唯一の性質である。(p105)