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COVID-19制御戦略設計の理論的基盤を整備する試み 2021.08.12 鈴木基

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COVID-19のパンデミック対策における課題の一つが、パンデミックが我々の社会にどのよ うな影響を及ぼすかについての認識が共有されていないことである。その結果、多くの場面 で対話のすれ違いがみられる。 パンデミックは災害である。ただし、地震や水害のように限定的な地域や期間に発生するも のとは異なり、それは我々の日常生活の隅々にまで入り込み、長期間にわたって影響を及ぼ す。 歴史的にパンデミックは人間社会に不可逆的な変化をもたらしてきた。その変化は制度や経 済にとどまらず、日常の習慣、モラル、価値観といったものにまで及ぶ。 COVID-19のパンデミックにおいても、我々の社会はすでに一定の変化を受け入れつつある。 その変化が何であって、今後さらにどのような変化が起こりうるのか、またそれらは可逆的 であるのか不可逆的であるのかについて、我々は認識を共有していく必要がある。 これは、パンデミックの収束に向けた議論のための共通言語を整備する試みである。本論そ のものが解決法を示すものではない。また、ここで提示される概念は、ある程度定量化する ことも可能であるが、それがすべてではない。 はじめに

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健康と社会 • 社会的な意味で健康であるということは、社会活動の主体であるということである。 • 疾病は身体機能に制約を及ぼすことで社会活動の機会を奪う。これに対して、医療公衆衛生 は制約を取り除いて身体に社会活動の機会を与える。 • 医療公衆衛生はそれ自体が社会活動である。すなわち集団は医療公衆衛生という手段を用い て、社会活動の主体をつくりだす。 • 一方で、健康であるということには、社会には還元されない意味もある。

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定義:潜在的疾病負荷と累積疾病負荷 • 疾病負荷とは、特定の疾病が原因で発生する集団内の健康被害の総計である。ここでいう健康 被害には、罹患、入院、重症、死亡、合併症等による健康的生活の喪失、家族を失うことの精 神的負荷等が含まれる。 • 集団から潜在的に発生しうる(まだ発生していない)疾病負荷を潜在的疾病負荷と呼ぶ。実際 に発生した疾病負荷の累積を累積疾病負荷と呼ぶ。潜在的疾病負荷から累積疾病負荷に疾病負 荷が移動することを(疾病負荷の)発生と呼ぶ。 • 以下ではCOVID-19を原因とする疾病負荷に限定して論ずる。

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定義:疾病負荷の発生と制御 • 疾病負荷の発生は経時的に変化する。 • 発生を規定する要因には病原体要因(感染力、重症度)と社会環境要因(人口構成、社会活動 度、衛生習慣、経済情勢、気象条件、免疫保有率等)がある。 • 発生をすべてあるいは部分的に人為的に操作可能である場合、その操作を制御と呼ぶ。 発生 時間 制御

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潜在的疾病負荷の増加と減少 • 潜在的疾病負荷をストック、疾病負荷の発生をフローとみなす。 • 潜在的疾病負荷は疾病負荷の発生によって減少するが、それ以外に外部要因によって増減す る。外部要因には自然要因(時間経過や加齢による獲得免疫の減弱、重症化に関わる変異ウ イルスの出現)と人為的要因(ワクチン、治療薬の導入)がある。 時間 自然要因による ストックの増加 人為的要因による ストックの減少 時間

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潜在的疾病負荷(ストック) 発生(フロー) 新規変異ウイルスの出現 感染力の上昇 → ↑ 重症化リスクの上昇 ↑ ↑ 重症化リスクの低下 ↓ ↓ 再感染リスクの上昇 ↑ ↑ ワクチン接種 ↓ ↓ 治療薬 ↓ ↓ 外部要因が潜在的疾病負荷と発生に及ぼす影響 • 新規変異ウイルスの出現による感染力の上昇は、ストックには影響しないが、フローを上昇 させる。 • ワクチン接種による感受性人口の減少は、ストックを減少させ、集団内で感染者と非感染者 の接触機会を低減することから(実効再生産数の低下)フローを抑制する。したがってワク チン接種はストックを減少させる人為的要因であり、制御の手段でもある。 • 新規変異ウイルスの出現による再感染リスクの上昇は、ワクチンと逆のメカニズムでストッ クおよびフローの上昇に関係する。

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定義:医療公衆衛生の需要 • 疾病負荷の発生に伴う医療公衆衛生に関する需要の総計を医療公衆衛生の需要と呼ぶ。この需 要には、健康被害に対して求められる制度的、社会的な予防、治療、介護、補償等のすべてが 含まれる。 • 疾病負荷の発生と医療公衆衛生の需要はともにフローであり、両者はある程度連動しているが、 その相関は必ずしも一定ではない。ただし、以下では議論を単純化するために、特に断りがな ければ、疾病負荷の発生とそれに伴う医療公衆衛生の需要のフローを共にフローと呼ぶ。

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定義:医療公衆衛生の供給 • 医療公衆衛生の需要に対する医療公衆衛生の供給を医療公衆衛生の供給と呼ぶ。供給の主体は 公的である場合も私的である場合もある。 • 医療公衆衛生の供給に伴う社会経済的コストを供給コストと呼ぶ。 • 医療公衆衛生の需要と供給は連動しているが、現実的に両者には時間的、量的、質的なギャッ プがある可能性がある。以下では議論を単純化するために、このギャップはないものとみなす。 需要 時間 供給

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定義:医療公衆衛生の供給閾値 • 医療公衆衛生の供給には最大閾値があり、これは制度的、社会的な医療公衆衛生の質的、量的な キャパシティによって決定される。これを供給閾値と呼ぶ。 • 医療公衆衛生の需要が供給閾値を上回ることを破綻と呼ぶ。破綻しても医療公衆衛生は供給され るが、それに伴って医療公衆衛生制度及び社会生活に負荷が発生し、社会経済的コストが発生す る。これを破綻コストと呼ぶ。 • 破綻期間中に発生する疾病負荷には、追加の疾病負荷が伴う(通常の医療公衆衛生の許容範囲内 では生じない重症化、死亡、心理的負荷等)。したがって同程度の疾病負荷の発生であっても、 破綻期間中の累積疾病負荷は破綻期間外のそれより大きくなる。

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定義:破綻の回避と制御コスト • 破綻をあらかじめ回避するための手段には2つある。ひとつは、制御を強化してフローが供給閾 値を上回らないようにすること、もうひとつは医療公衆衛生のキャパシティを拡大することで 供給閾値を上げることである。前者に伴う社会経済的コストを制御コスト、後者に伴うそれを 受容コストと呼ぶ。 • 供給閾値が上昇することで、同程度のフローを維持するために要する制御コストは低下する。 このとき制御コストは、受容コストによって供給コストに転換されたことになる。

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供給コストと3つの緊急時コスト • 平常時には、疾病負荷の発生に際して供給コストが伴う。疾病負荷が急激に増大するときは、 これに加えて制御コスト、受容コスト、破綻コストが伴う。この3つを合わせて緊急時コスト と呼ぶ。 制度的なもの 社会的なもの 経済的なもの 平常時 供給コスト 平時の医療公衆衛生サービスの提 供、コミュニケーション 平時の社会環境、衛生観念の維持 左記に伴うもの 緊急時 制御コスト 公衆衛生対応(サーベイランス、 検査、接触者追跡)の強化、医療 対応(治療、感染対策)の強化、 ワクチンの開発と導入、短期的コ ミュニケーション等 日常の感染対策、行動変容(接触 削減)、社会文化活動の変容、社 会心理的負荷、間接的要因による 疾病負荷(慢性疾患、精神疾患の 悪化) 左記に伴うもの 受容コスト 医療公衆衛生関連の設備投資、関 連人材の再配置・育成、長期的コ ミュニケーション、法令改正等 疾病概念の受容、受療行動の変化 左記に伴うもの 破綻コスト 一時的な他疾患の医療公衆衛生提 供体制の大規模な変更 一時的な通常医療・公衆衛生サー ビスへのアクセス制限、間接的要 因による疾病負荷(超過死亡等) の発生、社会心理的負荷 左記に伴うもの

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定義:定常状態と理想状態 • 一定の制御下で、需要が一定の範囲内で安定的に変動した状態を定常状態と呼ぶ。 • 制御コストがゼロの状態で、供給閾値の範囲内で定常状態にあるとき、これを理想状態と呼ぶ (例:日本における麻疹、季節性インフルエンザ) 。排除(elimination)も理想状態である。 • 制御戦略のゴールは理想状態の維持である。 需要 制御コスト 定常状態〇 理想状態× 定常状態〇 理想状態× 定常状態〇 理想状態〇 供給閾値

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パンデミックにおける戦略 • COVID-19のような新興感染症のパンデミックにおいて、集団は莫大な潜在的疾病負荷を背 負った状態にある。 • 潜在的疾病負荷は集団にとっていずれ受容=発生しなくてはならない健康被害(いわば突 然背負わされた負債)であり、累積疾病負荷は実際に発生した健康被害(いわば返済した もの)である。 • 一方、疾病負荷の発生による医療公衆衛生の需要に対する供給には、平常時の供給コスト に加えて、緊急時コスト(制御コスト、受容コスト、破綻コスト)が伴う。 • 集団にとってのゴールは安定状態である。したがって、集団にとって合理的な戦略は、累 積疾病負荷と緊急時コストを共に最小化しつつ安定状態に到達することである。

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定義:戦略設計と初期状態 • しかし、累積疾病負荷と3つのコストの関係が自明ではないことが、合理的な戦略設 計を困難にする。 • 多様な現実をある程度捨象し、戦略について理論的に考えることは、個別の対策や事 象を中長期的な視野の中に位置づけるうえで重要である。 • ワクチン、治療薬がなく、新規変異ウイルスが発生していない状態を初期状態と呼ぶ。 この初期状態を前提に基本的な戦略を定義する。 コスト 累積疾病 負荷 ?

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フローを最大化させる:最大化戦略 • 制御を全くしないので制御コストはゼロである。 • 需要は供給閾値を大きく上回る。そのため破綻コストが最大となる。 • 破綻期間中に追加の疾病負荷があることから、一定期間に発生する累積疾病負荷は最大となる。 • 短期間でストックは減少するが、自然要因による増加があるのでゼロになることはない。需要はど こかで定常状態となるが、供給閾値を下回る(理想状態となる)保証はない。 潜在的疾病負荷 供給閾値 医療公衆衛生の需要 初期状態での制御戦略:最大化戦略

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フローを最小化させる:最小化戦略 • 制御コストは最大である。 • 需要は常に供給閾値を下回ることから、必ずしも供給閾 値を上げる必要はない。 • 一定期間経過後の累積疾病負荷は最小である。 • ストックは不変であり絶えず最大限の制御を継続する。 初期状態での制御戦略:最小化戦略、最適化戦略 フローを供給閾値に最適化させる:最適化戦略 • 最小化戦略に比べるとフローは大きいが、ストックの自然 増加を上回らなければストックは大きく減少しない。 • 供給閾値を継続的に上昇させることでフローは大きくなり ストックは減少する。 • 制御の強度は経時的に変化し、そのコストは最小化戦略よ りも小さい可能性がある。

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• 最大化戦略の場合、一定期間経過後に定常状態となる可能性があるが、閾値を上昇させない限り 理想状態に到達しない可能性がある。破綻コストおよび累積疾病負荷は最大となる。 • 最小化戦略の場合、ストックが減らないので理想状態に到達することはない。理想状態に到達す るためには、ワクチンや治療薬の導入、あるいは感染力や重症度の低下した新規変異ウイルスの 出現を待つ必要がある。 • 最適化戦略の場合、閾値を継続的に上げることでフローを増大させることができれば、やがて理 想状態が達成される可能性がある。ただしそれに要する制御コストと受容コストの総計は、最小 化戦略のそれに近づく可能性がある。また理想状態に至る期間が長期に及ぶ場合には、最終的な 累積疾病負荷は最大化戦略のそれに近づく可能性がある。 3つの制御戦略の比較 最大化戦略 最小化戦略 最適化戦略 疾病負荷および需要のフロー +++ ± + 制御コスト ± +++ +~++ 受容コスト ±~+ ± +~++ 破綻コスト +++ ± ±~+ 一定期間経過後の潜在的疾病負荷 + +++ +~++ 累積疾病負荷 +++ ± +~++

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問1 初期戦略の選択 有効なワクチン、治療薬の開発、導入、あるいは新規変異ウイルスの出現が期待されないとき、 最大化戦略、最小化戦略、最適化戦略のうちのいずれか1つを選択することが他の2つを選択す るよりも合理的となる条件はそれぞれ何か? 暫定的な解答 初期状態で累積疾病負荷、制御コスト、受容コスト、破綻コストのそれぞれについて最小化す ることを優先する場合の合理的な戦略は以下のようになる。例えば累積疾病負荷の最小化を優 先する場合には、最小化戦略、最適化戦略、最大化戦略の順に選択することになる。いずれの 最小化を優先するかは社会的な価値判断である。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い 最大化戦略 最小化戦略 最適化戦略 累積疾病負荷 × 〇 △ 制御コスト 〇 × △ 受容コスト △ 〇 × 破綻コスト × 〇 △

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暫定的な解答 続き 制御コストを問わなければ最小化戦略は選択肢となりうるが、最小化戦略は外部要因による ストックの減少がない限り理想状態に到達することがない。したがって、外部要因について の見込みがあることが最小化戦略を選択するときの必要条件となる。 制御コストの最小化を優先し、累積疾病負荷を問わなければ最大化戦略は選択肢となりうる が、最大化戦略は定常状態に到達した時のフローの大きさによっては理想状態に到達しない。 したがって、定常状態のフローと供給閾値についての見込み(あるいは拡大コストについて の見込み)があることが最大化戦略を選択するときの必要条件となる。 最適化戦略は外部要因なしに理想状態に到達する可能性がある。ただし、他の2つの戦略に 対して最適化戦略を合理的に選択するには、累積疾病負荷、制御コスト、受容コスト、破綻 コストのすべて、および理想状態に到達するまでの期間についての見込みがあることが条件 となる。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い

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ワクチン、治療薬の開発、導入により理想状態に到達する場合 潜在的疾病負荷(ストック) • ワクチン、治療薬の開発、導入によって到達した理想状態とは以下のようなことをさす: ➢ 有効なワクチンが集団内に広く接種されることで集団免疫が達成され、輸入例をきっかけに散発 的なアウトブレイクが発生するのみとなる(例:現在の麻疹) ➢ 流行は持続するが有効な治療薬によって後遺症、重症化、死亡リスクが大きく減少し、社会的に 受容できる程度となる(例:ペニシリンが登場後、耐性菌が問題化する前の肺炎球菌感染症) • このとき制御コストをゼロにしてもフローは供給閾値を下回る(理想状態の達成)。 定常状態〇 理想状態〇 供給閾値 フロー 制御コスト

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問2 人為的要因による理想状態が期待される場合 初期状態において、一定期間が経過した後に、ワクチンあるいは治療薬によって理想状 態に到達することがあらかじめ見込まれるとき、いずれの戦略を選択することが合理的 か?またその合理性は何によって決まるか? 暫定的な解答 人為的要因によって理想状態に到達することが見込まれる場合、制御コストを問わなけ れば最小化戦略を選択することが合理的である。 制御コストの最小化を優先する場合には、最大化戦略が選択肢となる。この時、受容コ ストの見込みを考慮する必要がない。ただし、その定義上、最大化戦略の制御コストは ゼロであることから、ワクチンあるいは治療薬を導入する時点で最小化戦略あるいは最 適化戦略に戦略を変更することになる。 制御コストと累積疾病負荷を共に最小化することを優先する場合には、最適化戦略が選 択肢となる。このとき最小化戦略に対して最適化戦略を選択する理由は、制御コストが 相対的に小さいことである。最大化戦略に対して最適化戦略を選択する理由は、累積疾 病負荷と破綻コストが相対的に小さいことである。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い

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問3 自然要因による累積疾病負荷の増大が期待される場合 新規変異ウイルスの出現により免疫逃避が起こる、あるいは重症度が上昇する(=潜在 的疾病負荷の増大)ことがあらかじめ見込まれるとき、いずれの戦略を選択することが 合理的か?またその合理性は何によって決まるか? 暫定的な解答 潜在的疾病負荷の増大は、累積疾病負荷と発生に伴うコストを増大させ、理想状態に到 達するまでの期間を延長する。これらを考慮したうえで、初期戦略の選択の場合と同様 に考える。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い

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ワクチン、治療薬が開発、導入されても理想状態に到達しない場合 • ワクチン、治療薬の導入によっても理想状態に到達しない場合、最大化戦略をとっている場合 は、フローの下方シフトが起こるが供給閾値を上回る可能性がある。このとき閾値を上げるこ とで理想状態に到達する可能性がある。 • 最小化戦略、最適化戦略をとっている場合は、同程度のフローを維持するための制御コストは 低下する可能性がある。 • 最小化戦略、最適化戦略からワクチン、治療薬の導入に合わせて最大化戦略に変更するとき、 フローは当初から最大化戦略をとっていた時よりも大きくなり、閾値を上回る可能性がある。

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問4 人為的要因によって理想状態に到達しないときの戦略変更 いずれかの戦略下で、ワクチン・治療薬では理想状態に到達しないとき、戦略を変更す ることが合理的となる条件は何か? 暫定的な解答 人為的要因によって減少した潜在的疾病負荷の状態から、初期戦略の場合と同様の選択 となる。 問5 自然的要因によって潜在的疾病負荷が増大するときの戦略変更 いずれかの戦略下で、ワクチン接種・治療薬使用の拡大によって免疫逃避あるいは重症 化に関わる新規変異ウイルスが発生する(=潜在的疾病負荷が増大する)可能性がある とき、戦略を変更することが合理的となる条件は何か? 暫定的な解答 人為的要因によって減少した潜在的疾病負荷の状態から、見込まれる増大に基づいて初 期戦略と同様の選択をする。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い

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問6 破綻が発生した場合の戦略 いずれかの戦略下で破綻が発生した時に戦略を変更することは合理的か。 暫定的な解答 最大化戦略はその定義上、破綻が発生した場合にも制御を強化しない。最小化戦略、最 大化戦略の場合は、制御の強化、受容の促進を行い、回復を目指す。したがって、破綻 の発生自体は戦略を変更する理由にはならない。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い

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問7 複数集団の戦略 複数の集団があるとき、ある集団の戦略が別の集団の戦略の選択に影響するか。 暫定的な解答 潜在的疾病負荷が異なる2つの集団があって、相互に交流があるとき、潜在的疾病負荷は 一方では増加し、もう一方で減少する。これは他集団の潜在的疾病負荷が外部要因であ るということであり、他集団の選択する戦略は外部要因となる。また他集団の制御、受 容、破綻に関する情報の伝達が社会的閾値に影響する可能性がある。このとき他集団の 戦略を考慮して、戦略を選択することになる。 集団がお互いに独立しており、相互に交流がない場合は戦略の選択に影響しない。 理論的、定量的分析によって明らかにされるべき問い

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パンデミックが社会に及ぼす影響について、用語の定義と考え方の整理を試みた。この 試みは、専門性を問わず広く認識を共有し、議論の発展の基盤となることを目指してい る。 我々は、個人であれ社会であれ、健康とはコストをかけて獲得するものである、という 考えを共有している。このとき、どのコストをどれだけ費やすかという戦略を決めるの は価値観である。パンデミックにおける戦略の選択は、おのずと価値観の選択とならざ るを得ない。 本論はあらゆる意味で暫定的なものであり、不定期に更新していく。 暫定的なまとめ