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© 2024 Loglass Inc. 0 © 2024 Loglass Inc. SmartHR AI tech talk#2 ── コード生成×AI 現場のリアル #smarthr_ai AIコーディングエージェントを 「使いこなす」ための工夫と現在地 in ログラス r.kagaya 2025.4.24

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© 2024 Loglass Inc. 1 自己紹介 新卒でヤフー株式会社に入社、ID連携システムの開発 2022年に株式会社ログラスに入社 経営管理SaaSの開発、開発生産性向上に取り組んだのち、 生成AI/LLMチームを立ち上げ、複数LLM機能の開発を リード 現在は新規AIプロダクトの立ち上げに従事 株式会社ログラス シニアソフトウェアエンジニア r.kagaya(@ry0_kaga)

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© 2024 Loglass Inc. 2 おことわり ● 特定ツールの話より、全体的な取り組みの背景や大枠の話が中心です ● 別メンバー・スライドで紹介してる内容も一部含まれます ○ より詳細は元スライドもぜひご確認いただけたら幸いです

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© 2024 Loglass Inc. 3 AIコーディングエージェント

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© 2024 Loglass Inc. 4 「私たちが知っているプログラミングの終焉」 https://www.oreilly.com/radar/the-end-of-programming-as-we-know-it/ ● AI時代のプログラマは「コードを書く人」から「 AIを 活用し業務設計する人」 へと役割が変化 ● AIによる自動化が進む中でも、人間が「最後の 30%」を補完しなければならず、熟練したプログラ マーの知識が依然として不可欠 ● プログラマーの役割は変わるが、AIが新たな需要 を生み出し、より多くの人が「 AIを活用したプログ ラミング」に携わる ようになる

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© 2024 Loglass Inc. 5 過去30日間に書かれたAPEXコードの約20%がAgentforce(AI) https://venturebeat.com/ai/this-ai-already-writes-20-of-salesforces-code-heres-why-developers-arent-worried/ ● 「Vibe Coding」の登場、AI生成コード には新しい品質管理が必要 ● アルゴリズム的思考や小さな問題に分解 する能力などは変わらずに重要 ● 開発者は「実装者」から「戦略家・パイロット」へ ○ “何を作るか ” と “どう品質を守るか ” に重点を移していく ● AIエージェントを監督・指導する立場となり、最終的な成果物に対する責任を負う ● これは職の喪失ではなく、役割の「超越(transcendence)」

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© 2024 Loglass Inc. 6 https://venturebeat.com/ai/this-ai-already-writes-20-of-salesforces-code-heres-why-developers-arent-worried/ “Are you going to build the next-generation database with vibe coding? Unlikely. But could you build a really cool UI that makes database calls and creates a fantastic business application? Absolutely.” 訳)「バイブコーディング "で次世代データベースを構築する?ありえない。し かし、データベースを呼び出し、素晴らしいビジネス・アプリケーションを作成 する、本当にクールなUIを構築できるだろうか?もちろんだ。

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© 2024 Loglass Inc. 7 AIコーディングエージェント活用の現在地

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© 2024 Loglass Inc. 8 前提 Cursor/Devinなどのツールを使うことだけがゴール ではない AIを活用することに慣れ親しむこと、AIを前提に既存のプロセスやHowを疑う・アップデート余地 の探索が各所で起こっているのがポジティブ ≒ 結果として今はCursorを愛用してるが、将来的な移行や他ツールの可能性を閉じているわけ ではない

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© 2024 Loglass Inc. 9 Cursorアカウントを全開発者に配布してみて ● Cursorの利用者・頻度は順調に増加(8割以上が毎日利用、IntelliJと並行稼働) ● デザイナーやQAメンバーによるRules整備やCursor活用の模索も生まれている https://speakerdeck.com/yuitosato/how-to-create-a-culture-of-using-ai-agents-in-a-50-person-organization

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© 2024 Loglass Inc. 10 ざっくり総論 AIコーディングエージェントのオンボーディング を 文化とドキュメント で加速する

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© 2024 Loglass Inc. 11 AIコーディングエージェントを使う文化を作る

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© 2024 Loglass Inc. 12 参考) by @Yuiiitoto https://speakerdeck.com/yuitosato/how-to-create-a-culture-of-using-ai-agents-in-a-50-person-organization

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© 2024 Loglass Inc. 13 AIコーディングエージェントを使う文化を作る https://speakerdeck.com/yuitosato/how-to-create-a-culture-of-using-ai-agents-in-a-50-person-organization ● 「トップダウン“だけ”でもボトムアップ“だけ” でも炎は広がらない」 ● 配布 → トレーニング → 専用Slack → ルー ルDocsを1か月内に一気に整備。 ● 週1回 “自分でコードを書かない” 縛りで実タ スクを解く。ワイガヤでノウハウを共有

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© 2024 Loglass Inc. 14 AIコーディングエージェントを使う文化による利点 ”集合知”でAIのオンボーディングを加速させる ● AIオンボーディングのプロセスが回り続ける重要性 ● 組織・チーム全体での利用が増えることで、ノウハウやTipsの共有のみならず、 オンボー ディングプロセスの加速にも寄与 ● 各々が普段の開発で気づいた/改善したことをRules等で組織全体に反映

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© 2024 Loglass Inc. 15 AIコーディングエージェントを使う文化 特定メンバー・基本ルールから始まり、 Cursor Rulesを育てる動きが広がりつつある ● Rulesを修正したことがあるユーザー: 約13人 / 50 ● 4月は特定機能に向けた個別ルールの策定など、より具体な修正も増加

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© 2024 Loglass Inc. 16 AIコーディングエージェントを育成・オンボーディングする 「ガードレールで守り、評価で改善して、Docsで学ばせる。」

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© 2024 Loglass Inc. 17 いかにAIが知っていることを増やすか、 AIができることを増やすか クローズド × 複雑な 問題 オープン × 複雑な 問題 オープン × 簡単な 問題 クローズド × 簡単な 問題 簡単 複雑 情報がオープン 情報がクローズ

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© 2024 Loglass Inc. 18 参考) mdc育成 by @yodakeisuke https://speakerdeck.com/yodakeisuke/dot-mdc-driven-knowledge-management

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© 2024 Loglass Inc. 19 AIコーディングエージェントを育成する 「.mdcでAIを“社内ルール を一部知っている ”状態に育成」 AIは多くのことを知っているが 逆に実業務においては 知っておいて欲しい事を知らない 社内や暗黙知として存在する知識 を継続的に与える・学ばせ続ける https://speakerdeck.com/yodakeisuke/dot-mdc-driven-knowledge-management

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© 2024 Loglass Inc. 20 AIコーディングエージェントを育成する 「.mdcでAIを“社内ルールを一部知っている ”状態に育成」 AIは多くのことを知っているが 逆に実業務においては 知っておいて欲しい事を知らない 社内や暗黙知として存在する知識 を継続的に与える・学ばせ続ける https://speakerdeck.com/yodakeisuke/dot-mdc-driven-knowledge-management 特にプロダクト特有のドメイン知識 さらには規約やお作法

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© 2024 Loglass Inc. 21 AIコーディングエージェントを育成する 「.mdcでAIを“社内ルールを一部知っている ”状態に育成」 AIは多くのことを知っているが 逆に実業務においては 知っておいて欲しい事を知らない 社内や暗黙知として存在する知識 を継続的に与える・学ばせ続ける https://speakerdeck.com/yodakeisuke/dot-mdc-driven-knowledge-management ファジーにルールを扱えることの強さ e.g. 「PRの変更行数は200行を目安に」 (その分だけ発生するゆらぎやブレをどうコント ロールするか?)

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© 2024 Loglass Inc. 22 mdcの育成プロセス 前述の@yodakeisukeさんのスライドに詳しい https://speakerdeck.com/yodakeisuke/dot-mdc-driven-knowledge-management

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© 2024 Loglass Inc. 23 AIコーディングエージェントのガードレール 変わらないガードレールとしての型・自動テスト・ Lintの重要性は 今までコードで規定していた制約を自然言語で実現可能に。多少の揺れと幅を許容できるの はメリットもデメリットもある = ”決定論的な”制約の表現・検証方法との使い分け 自動テストや型、静的解析ツールの資産はガードレールとして使える。 自動テスト・関数型などの文化が整っていたおかげで一定やりやすかった

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© 2024 Loglass Inc. 24 AIコーディングエージェントのガードレール 自動テストやコード規約の作り方、育て方にもアップデートの余地 AIコーディングエージェント等を活用した”改善”

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© 2024 Loglass Inc. 25 v0のEval Driven Development https://vercel.com/blog/eval-driven-development-build-better-ai-faster テストではなく評価( Eval)が開発サイクルの主役 プロンプト変更やモデル更新を合格率という数値ゲートで判定し、失敗例を評価セットへ追 加して学習ループを回し続ける 修正→評価→改善→再評価のループ

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© 2024 Loglass Inc. 26 みんなで継続的に育てる・オンボーディングすることの重要性 「最新の“社内ルール ”に対応し続ける、改善し続ける」 普段の開発プロセスの中で生まれた“上手くいかない ”をチームで拾う = エージェントを育て続けるためにAIを育てる人・仕組みの重要性

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© 2024 Loglass Inc. 27 個人の”学び”を、組織の資産に 上手くいった作業のワークフロー・手順化、ルール化 作業手順をまとめたmdファイルを生成して、次回以降に使い回せるように Cursorに手順をまとめさせるだけでも一定レベルの再利用可能なフローは作れる

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© 2024 Loglass Inc. 28 個人の”学び”を、組織の資産に Cursorルールを更新する Cursorルール

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© 2024 Loglass Inc. 29 既存ドキュメントの活用でオンボーディングを加速

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© 2024 Loglass Inc. 30 人が“読む”だけでなく、AIに“答えてもらう/学んでもらう”ためのドキュメント 生きたドキュメントがさらに開発速度を左右する テキスト資産をより使い込むことが可能な時代に 公開導入事例を食べさせたNotebooklmを用意し、質問するなどの使い方もできる -> テキスト資産/ドキュメントの重要性☝

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© 2024 Loglass Inc. 31 人が“読む”だけでなく、AIに“答えてもらう/学んでもらう”ためのドキュメント 例: ドキュメント MCPサーバーの提供による開発の効率化 MCPやMastraのようにMCPサーバー、with LLMでの開発手順を提供する開発者向けサービ スは増加する -> 社内向けにも同様の仕組みで生産性向上ができるか?

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© 2024 Loglass Inc. 32 AIエージェントからのアクセシビリティ担保 既存のドキュメント資産を AIコーディングエージェントが使う仕組みの構築 MCPでかなりやりやすくなった、MCPサーバーも簡易なものであればAIが開発可能 AI Developer Experienceへの投資が、開発者の作業量の生産性向上の源泉に

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© 2024 Loglass Inc. 33 これから

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© 2024 Loglass Inc. 34 ログラスのAIコーディングエージェント活用のこれからを考える ● AIアクセシビリティ、AIリーダブルの向上 ● ルール改善プロセスのアップデート ● AIネイティブな開発プロセスの再定義

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© 2024 Loglass Inc. 35 AIアクセシビリティ、AIリーダブルの向上 まだまだAIからアクセス不能になってる既存資産が多い Notionを代表に活用しきれていないドキュメントが存在。プロジェクト・チームによっては、仕様 ドキュメントのGitHub管理やドキュメント自動生成のトライ中 短期ではMCPサーバー内製の必要も一定感じる ドメインモデリング図なども扱えるようにしていきたいが、取り扱いコストが高い マークダウン等のシンプルテキストで表記されていることの価値が高くなっている

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© 2024 Loglass Inc. 36 ルール改善プロセスのアップデート Meta‑Rule (ルールを評価するルール )や、複数モデルの実行・結果を評価する仕組みなど ● ルールを評価する仕組みや評価セットの需要 ● ルールの中にもタイプ・分類がある、それぞれ評価や動作確認の仕方が変わりうる ● 同一ルールでもモデル毎に挙動は変わりうる ○ e.g. 「Playwright MCPでの画面テストがモデルによっては上手く動かない」、「必ずxxxを させるルールで必ず実行されていることを確認する」 ○ 例えば、規約やMCP操作を行うルールであれば、可能な限り同じ/正確な挙動をして欲し い ○ 手動で細かく修正・モデル変更を繰り返すのは辛い...! ● 現時点ではRules/コンテキストが増えすぎても性能は劣化しがち

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© 2024 Loglass Inc. 37 ルールの分類(例) 名称 主眼 カテゴリ例 ルール例 Quality Basis コード品質 スタイル / Lint / フォーマット Prettier相当のimport並び順 デグレ防止 「既存xxxxxを壊す変更は禁止」 Architecture 構造保全 レイヤ責務 「service層から直接dbへのアクセス禁止」 依存ライブラリ制御 「暗黙依存ではなくDI経由で」 Domain 業務知識 ドメイン知識 / ユビキタス言語 「net_sales = quantity × unit_price」 UI/UX 用語統一 「“Investors” を必ず “IR投資家” と訳す」 Workflow 開発プロセス Pull‑request テンプレ / チケット連 携 「AI が書いたコミットには ai: prefix」 Meta‑Rule(ルール自体の管理) 古い/未使用ルールを 90 日ごとに警告

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© 2024 Loglass Inc. 38 自動化された改善プロセス Devinのナレッジが自動で増えていく体験は GOOD 利用を続けていれば勝手に”育っていく”体験 ルールやドキュメント、ワークフロー化の拡充は開発者の善意と気づきで行われているが、自 動化・仕組み化の余地を探したい (e.g.コード<->仕様ドキュメントの相互更新、Slack/PR等からのルール自動提案、自社環境/ タスクにおける最適モデルの発見) LLM As a JudgeやEval Driven Developmentの考えは一定は転用可能と考えている(の で試行錯誤していきたい)

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© 2024 Loglass Inc. 39 AIネイティブな開発プロセスの再定義 “AIが活躍することを前提とした業務の再設計 ”の探索 AIコーディングエージェント前提での再設計の余地はあるはず

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© 2024 Loglass Inc. 40 AI-based operations from scratch. https://hrmos.co/pages/loglass/jobs/1813462408235663396144 いかにAI前提の業務フローを構築、試行錯誤できるか? 開発組織に限らず、AI前提の業務プロセスを構築できるかが競争力に直結する時代 ログラス社も“AIが活躍することを前提とした業務そのものの再設計”するJDを公開 開発組織に限らず、AI前提での業務 のあり方の探索が求められる

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© 2024 Loglass Inc. 41 まとめ

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© 2024 Loglass Inc. 42 まとめ ● ログラス社のAIコーディングエージェント活用の取り組みについて紹介 ● 利用が当たり前の文化は一定生まれたと言っても良さそう ● これからは、”AIコーディングエージェントの活躍の場を増やす”ための工夫が求められている ○ e.g. 既存ドキュメント資産の再利用性、コーディングタスク以外での活用、ソフトウェア開 発プロセス全体での活用、etc… ● AIコーディングエージェントによる割れ窓の拡散問題にも向き合う必要がある ○ “どう品質を守るか” 、レビュー・テスト・評価の重要性 ● サーバーサイドKotlin問題は、Jetbrains社のJunieに期待

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