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在宅透析における シングルニードルの有⽤性 医療法⼈ やまびこ会 福岡東ほばしらクリニック 佐伯 智博 2019年11⽉3⽇(⽇)第22回在宅⾎液透析研究会

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HHDの概要と条件 在宅⾎液透析は、在宅医療の⼀環であり患者が 主体となり⾏う治療である。 施設透析に⽐べ、透析回数や時間を増やすことが 可能となり⾼い透析量を確保することができる。 その結果、⻑期合併症予防やQOL向上に繋がるこ とが期待される。

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HHDの概要と条件 施設透析 在宅⾎液透析 透析回数 (/week) 3回 5回 透析時間 4 〜 5時間 3時間 ⾎流量 (ml/min) 200 〜 300 180 〜 200 透析液流量 (ml/min) 500 500 透析量の評価⽅法は︖

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HHDの透析量評価 例)週5回 3時間のHHD場合 HDP = (5)2 × 3 = 75 HDP ≧ 72 推奨 HDP(Hemodialysis Product) (1週間の透析回数の2乗) × (透析時間) = *2002年 Scribner

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HHDの治療実績 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2016年6⽉ 2016年8⽉ 2016年10⽉ 2016年12⽉ 2017年2⽉ 2017年4⽉ 2017年6⽉ 2017年8⽉ 2017年10⽉ 2017年12⽉ 2018年2⽉ 2018年4⽉ 2018年6⽉ 2018年8⽉ 2018年10⽉ 2018年12⽉ 2019年2⽉ HHD導⼊前後のBUN推移 (mg/dL) pre BUN HHD start 週3回5時間HDから 週5回3時間HHDへ変更 BUN値は⼤きく低下する 透析回数を増やすことは重要︕

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HHDの治療実績 50 52 54 56 58 60 2016年6⽉ 2016年8⽉ 2016年10⽉ 2016年12⽉ 2017年2⽉ 2017年4⽉ 2017年6⽉ 2017年8⽉ 2017年10⽉ 2017年12⽉ 2018年2⽉ 2018年4⽉ 2018年6⽉ 2018年8⽉ 2018年10⽉ 2018年12⽉ 2019年2⽉ DW (kg) HHD導⼊前後のDW推移 HHD start 52.0kg 59.0kg

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HHDの治療実績 50 52 54 56 58 60 2016年6⽉ 2016年8⽉ 2016年10⽉ 2016年12⽉ 2017年2⽉ 2017年4⽉ 2017年6⽉ 2017年8⽉ 2017年10⽉ 2017年12⽉ 2018年2⽉ 2018年4⽉ 2018年6⽉ 2018年8⽉ 2018年10⽉ 2018年12⽉ 2019年2⽉ DW (kg) HHD導⼊前後のDW HHD start デスクワーク 2000歩 ウォーキング 5000歩 散歩1時間 10000歩

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HHDの問題点 HHD = ⾼い透析量 頻回 透析 週5回の場合 ⾃⼰穿刺 約 50 本/⽉

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HHDの問題点 瘤や⽯灰化が顕著 “ ⼤きい ” “ 硬い (⽯灰化)” ⾎管は刺しやすい ⾃⼰穿刺はストレスが⼤きい 穿刺部位が集中しやすい傾向

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HHDの問題点 シャント⾎管の荒廃

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新たな取り組み 穿刺回数を減らす⽬的 シングルニードルを導⼊ 1本の穿刺で “ 脱⾎ ” と “ 返⾎ ”を⾏う⽅法

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SNの課題 1本の穿刺で “ 脱⾎ ” と “ 返⾎ ”を⾏う⽅法 実質⾎流量は、設定⾎流量の半分・再循環あり ⻑時間透析の必要性

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HHDの施⾏時間は、 = 9:00 〜 20:00の間 時間の拘束 & 介助者の問題 SNの課題

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☞ ⽇中は⾃由に時間を使うことが可能 ☞ 介助者の拘束も緩くなる 就寝時に透析を⾏う⽅法 ☞ スタッフがオンコール体制 ☞ 抜針事故対策 1回透析時間は6〜8時間 SNの課題

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SNへの取り組み 頻回透析によるシャント⾎管荒廃の対策として、 シングルニードルへ変更して穿刺回数を軽減︕ シングルニードル特有の問題点を改善する⽬的で、 短時間から⻑時間=オーバーナイトへ変更する︕ オーバーナイトの問題点である抜針事故に対し、 装置と連動するセンサーを導⼊して安全対策︕ シングルニードルの透析量の評価は︖︖

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SN-HHDの透析量評価 SNでもHDPで評価していいか︖ 実質⾎流量は半分 & 再循環の可能性 様々な評価項⽬で透析量を評価 ・ 透析前後採⾎ ・ 除去率 ・ Kt/V ・ 除去量 ・ クリアスペース率

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⽬的・条件 今回、施設透析の透析量評価項⽬を⽤いて、 DN­短時間頻回透析からSN­⻑時間頻回透析に 変更することで透析量に差があるか検討した。 DN­短時間頻回透析 穿刺本数 2本 透析回数 5回 透析時間 3時間 ⾎流量 200 ml/min 透析液流量 500 ml/min SN­⻑時間頻回透析 1本 5回 8時間 200 ml/min 平均 100ml/min 500 ml/min

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対象 年齢︓55歳 性別︓ ⼥性 原疾患︓末期腎不全 透析歴︓16年(うちPD歴5年) HHD歴︓1年9ヶ⽉ ダイアライザー︓FB-150Uβ DW︓42.8 kg 穿刺針︓メディカット クランピング付カニューラ 16G

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⽅法 透析前後で採⾎を実施。透析後採⾎は、再循環を考慮し透析 液停⽌で数分循環した後、⾎液回路のサンプリングポートか ら採⾎を⾏なった。 採⾎検体は遠⼼分離後、冷蔵保管とした。 採⾎ 排液 NIPRO社製⾃動採液装置「NISE」をコンソール排液側へ接続 し、透析開始5分後から持続採液を⾏なった。

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装置設置

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0 10 20 30 40 50 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ BUN値 (mg/dL) 週5回透析でのBUN推移 DN 3hrHD 結果

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0 10 20 30 40 50 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ BUN値 (mg/dL) 週5回透析でのBUN推移 DN 3hrHD SN 8hrHD 結果

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0 10 20 30 40 50 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ BUN値 (mg/dL) 週5回透析でのBUN推移 DN 3hrHD SN 8hrHD 結果

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結果 0 2 4 6 8 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ Cr値 (mg/dL) 週5回透析でのCr推移 DN 3hrHD SN 8hrHD

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結果 0 2 4 6 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ P値 (mg/dL) DN 3hrHD SN 8hrHD 週5回透析でのP推移

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結果 ○ Kt/V (Daugirdas式) DN–3hrHD 週5回の平均値 ・・・ 1.47 ± 0.08 SN–8hrHD 週5回の平均値 ・・・ 3.0以上 Kt/Vが3以上となり⽐較できない ○ 尿素除去率(URR) 0 30 60 90 120 * *︓p<0.05 DN−3hrHD SN−8hrHD (%)

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結果 0 3000 6000 9000 0 300 600 900 1200 0 200 400 600 800 DN−3hrHD SN−8hrHD ○ 除去量 UN Cr P N.S N.S N.S (mg) (mg) (mg)

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結果 ○ クリアスペース率 60 70 80 90 0 30 60 90 120 50 60 70 80 (%) (%) (%) DN−3hrHD SN−8hrHD UN N.S * * *︓p<0.05 Cr P

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考察 シングルニードルに変更しても ⻑時間透析 により、 透析量は⼗分に確保することが可能︕ 連⽇の⻑時間透析は透析量が過剰傾向 ・ ・ ・ ・

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⽬的・条件 今回、施設透析の透析量評価項⽬を⽤いて、 SN­⻑時間頻回透析において、透析回数を 週5回から隔⽇に変更することで透析量に差が あるか検討を⾏なった。 週5回 穿刺本数 1本 透析回数 5 回/週 透析時間 8時間 ⾎流量 200 ml/min 平均 100ml/min 透析液流量 500 ml/min 隔⽇ 1本 3.5 回/週 8時間 200 ml/min 平均 100ml/min 500 ml/min

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0 10 20 30 40 50 60 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ BUN値 (mg/dL) 隔⽇透析でのBUN推移 SN 8hrHD 結果

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0 2 4 6 8 10 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ Cr値 (mg/dL) 隔⽇透析でのCr推移 SN 8hrHD 結果

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0 1 2 3 4 5 6 pre post pre post pre post pre post pre post pre post pre post ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ ⽉ ⽕ ⽔ ⽊ ⾦ ⼟ ⽇ P値 (mg/dL) 隔⽇透析でのP推移 SN 8hrHD 結果

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結果 70 80 90 100 ○ Kt/V (Daugirdas式) 週5回の平均値 ・・・ 3.0以上 隔⽇の平均値 ・・・ 3.0以上 ○ 尿素除去率(URR) N.S *︓p<0.05 隔⽇ 週5回 (%) SN–8hrHD

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結果 0 2500 5000 7500 10000 0 400 800 1200 0 250 500 750 1000 週5回 隔⽇ ○ 除去量 UN Cr P N.S N.S N.S (mg) (mg) (mg)

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結果 60 65 70 75 80 85 62 64 66 68 70 72 0 20 40 60 80 100 120 ○ クリアスペース率 (%) (%) (%) UN N.S *︓p<0.05 Cr P 週5回 隔⽇ N.S N.S

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考察 体重増加量=除⽔量が多くなければ、 隔⽇透析への変更は可能︕

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患者の声 DN­週5回3時間透析 SN­隔⽇8時間透析 穿刺の回数が減り、失敗に対するストレスも減った︕ 昼間の時間が⾃由に使えて、介助者も喜んでいる︕ ⻑時間で除⽔をするので、除⽔速度がゆっくりになり 透析が終わってもきつくない︕ 交互に穿刺できるので、腕が綺麗になった気がする︕

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結語 透析医療を⾏う上でVA(=シャント)を守って いくことは⾮常に重要である。 多くのシャントトラブルは穿刺が⼤きな要因と ⾔える。頻回透析が⾏えるHHDでは、穿刺回数も 多くなってしまう。また、患者本⼈が穿刺を⾏う ため穿刺部が集中する傾向にある。 シングルニードルは⻑時間の透析時間が確保でき れば、在宅透析の条件として有⽤性がある。

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結語 安易に穿刺回数を減らす⽬的だけで シングルニードルを選択するのではなく、 個々の⾷事内容や体重増加量など ⽣活スタイルを考慮すると共に、 採⾎や排液から透析量が⼗分に確保できる ことを評価して選択することが重要である。

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第22回在宅⾎液透析研究会 COI開⽰ 筆頭発表者名︓佐伯 智博 演題発表に関連し、開⽰すべきCOI関係にある 企業などはありません。