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間身体性における同期・同調を用いた 心理的に安全なコミュニケーション 2024/10/24 Yoshiki Kuchikura

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「間身体性」とは 身体と身体の間の可逆的な関係性のこと 私たちは、自分の身体を動かすことで知覚を通して自分の存在について理解する (これが身体性)。他者の存在についても、他者についての行為と知覚を用いるこ とで理解しあう関係性にある(これが間身体性)。 という、メルロ=ポンティ(1908-1961 仏)の提唱した概念。 http://www.philosophical-investigations.org/Users/PerigGouanvic - http://www.philosophical-investigations.org/Users/PerigGouanvic/Merleau-Ponty_and_the_Post-Modern_Non-Self, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12248562による むずかしいお話 ここまで

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今日の話題 ビデオ通話 1on1で自分の映像を 映すの、ほぼ意味ない説

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何のために映像を見る? 同調・同期 のため 同調:コミュニケーションにおいて、同じ内容の行動をとることで、伝達されている内容 が相互に伝わっていることを表現しあう行動。 「伝わっていますね」「伝わっていますよ」と互いに確認する行為。 例:視線を合わせる、うなずきあう、笑いあう 同期:一方が他方に合わせた行動をとることで、コミュニケーションの進行上の局面 を区切る行動。 会話の主導権や暗黙のルールの変化を確認する行為。 例:誰かが話し始めると他の人が話者のほうを見ながら話を聞く

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オンラインではなぜ意味がないのか?① 視覚的な同調は期待されていない たとえ視線を合わせようとしてカメラを見ても、構造的に目が合わない(自分 のカメラが見える)。 また、ビデオ通話のウィンドウが相手画面に表示されているかどうかも保証さ れず、互いにわからない。 田中彰吾・森直久(2022)間身体性から見た対面とオンラインの会話の質的差異 p.8(灰色箇所 の隠しは話者によるもの) ある実験によると、対面とオンラインを比較した場合の 同調の総数は48回から14回に減少し、視線に関する もの(カッコ書きされているもの)は 31回から0回になっ ている。

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オンラインではなぜ意味がないのか?② 視覚的な同期も期待されていない 対面での同期(話者のほうを見る、指差しているほうを見る、無意識的に手 の動きを合わせるなど)が、オンラインでは成立しにくい。 田中彰吾・森直久(2022)間身体性から見た対面とオンラインの会話の質的差異 p.8 さきほどと同じ実験によると、視線に関するもの(カッコ 書きされているもの)は 15回から0回になっている。

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1on1 with chango での出来事 会話しながら真横(👈こちら側)を向いていた。 「chango」こと 株式会社タイミー VPoE 赤澤剛 理由を聞いてみた。 「モニタがこっち👈側にあるからなんすよ」 それはそう。

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なぜか不安を感じず楽しく会話できる① 聴覚的な同調が多い 例:「わかるー!」「そうだそうだそうだ」「たしかにたしかに」、笑い声 前述の実験内でも、オンライン会話では視覚を媒介する同調が消失した一方で、 入れ代わりに「すごいね」等の同じ言葉を発話するという聴覚を媒介する同調が 新たに出現 していた*。 私たちは聴覚的な同調を期待しているのかもしれない。 * 田中彰吾・森直久(2022)間身体性から見た対面とオンラインの会話の質的差異 p.7,8

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なぜか不安を感じず楽しく会話できる② 聴覚的な同期も多い 例:「そう!そうなんですよねー、それだと……」「ん〜〜〜〜……たしかに……(う めき声)」 相槌をかぶせることで同調しつつ、次の自分の発言への移行がスムーズになって いる。発言と発言の間の無音時間がなくなり(同調の効果)、次の発言の主導権を 予約できる。 対面では、無言でうなずくなどして得られる効果。

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もっと声、出してこ 結論①

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オンラインでは視覚情報を聴覚情報で補完しようとしている? 視覚での同調・同期手段の大半が封じられているのがオンライン 対面で使い慣れている手段が使えないため、オンラインでの会話はなんとなく不安 になってしまう。 そこで、視覚による手段の代わりに聴覚による手段を積極的に用いることで、対面 と変わらない量の同調・同期を行い、心理的安全をオンラインでも確保できそう (chango style)。

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とはいえ、カメラ「も」見てるでしょ? みんな大好きメラビアンの実験の俗流解釈 * コミュニケーションの3つの要素のうち、意味や内容の伝達に占める割合は以下で ある、という話。 ● 言語:7% ● 声のトーン(聴覚):38% ● ボディ・ランゲージ(視覚):55% いかに視線が合わないからといって、互いにボディ・ランゲージをカメラに映すこと はできるので、映像経由でも情報を得ようとするはず! * A・メラビアンによる実際の実験内容からは、「上記の内容を実証した」というのはかなり無理がありそうだと私は思います。

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実際に質問してみた 弊社Slack内、エンジニア雑談 ch(参加人数381人)にて質問

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カメラ、消そ 結論②?

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とはいえカメラを見ている人も いるので、オンにしよう 結論②