Touhou Project as "Trademark"
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ざるさん
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商標としての 「東方プロジェクト」 ‐ Touhou Project as “Trademark” ‐ 2019.01.26(土)/ざる 「東方プロジェクト」は 上海アリス幻樂団 様の 登録商標です
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自 己 紹 介 ざる ※あまり呼称にこだわりがないですが…… 2006年 (○ Д ○) こまっちゃん(小野塚小町) ※「彼岸帰航~Riverside View」を推すんじゃあ! 妖々夢,風神録,三月精, 花映塚!!! PN/HN 参入時期 推し死神 推し作品 ステータス SSとか書いてた気がする SML(ビルド系) ,STG(スマホ ゲーもやるよ!) ,パズル , 心の綺麗なミステリ読者 ,法律ネタヲチャー
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1. 時には昔の話を 2. さわって・変わって 2011年に発生し、その後数年にわたる炎上事案となった、謎の第三者による 「東方プロジェクト」商標登録出願及びそれに係る諸騒動を題材に同人活動 と関連する法令の理解を深めることで、誤解やそれに基づく非難による萎縮 を招くことなく各種ファン活動を継続可能なものとすることにより、もって、 今後の同人活動が自由で豊かなものとなることを目的とする。
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東方商標異変略史 -時には昔の話を その1- 3月8日 K氏(仮名)「東方プロジェクト」 を商標登録出願 (第9類の「ゲーム」等) 4月14日 「東方プロジェクト」出願公開 5月頃から界隈でも騒ぎに 7月6日 登録査定(=権利化の承認) 9月9日 設定登録(=権利化) 10月某日 2011
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東方商標異変略史 -時には昔の話を その2- 2011年11月17日 ZUN氏(の代理人)は、特許庁に対して 商標法第43条の2に基づき 登録異議申立て あの日のぼくたちは 自らの勝利を信じて疑わなかった けれど、現実は 残酷だったんだ……
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東方商標異変略史 -時には昔の話を その3- 2012年5月14日 特許庁のくだした判断は、 K氏の登録商標の 維 持 決 定 “「東方プロジェクト」…は、 需要者の間に広く認識されている… とは認められない” (本文から悪意ある抜粋)
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東方商標異変略史 -時には昔の話を その4- 7月某日 暫くは東方十字軍がレコンキスタに励んでいたものの、や がて人々の多くは争いがあったことすら忘れていった…… そして2014年 時は動き出す 2012
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東方商標異変略史 -時には昔の話を その5- 3月28日 「東方プロジェクト」の商標権 K氏 → ㈱P社 へ権利移転 4月18日 「東方プロジェクト」の商標権 ㈱P社 → ZUN氏 へ権利移転 5月下旬 とあるtweet(の2ch転載)により 商標権の移転が周知され、騒ぎに 5月某日 2014
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いやな事件だったね・・・ でも、もう終わったことだろう? ※一部音声等を変えています 商標に関するトラブルは 今後、確実に増えるはず むしろ これからが本当の地獄だ‥
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数字で見る商標の怖い話 1 出願件数の増加 (特許行政年次報告書2018年版) 登録数は 近年再び増加 出願件数は 大幅に増加 勿論これには 裏があって‥‥
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数字で見る商標の怖い話 2 悪意ある者による大量出願 2018年の出願 約16,300件!
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数字で見る商標の怖い話 3 うわっ…商標権侵害、多すぎ…? (知的財産別輸入差止実績/財務省) たとえば 東方発表会 を 今この瞬間 どこかで誰かが 商標登録出願 しているかも‥
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「東方プロジェクト」はね・・・・・・ 使われていないんだよ?だよ? 継続して三年以上使用していない 登録商標に対しては、誰でも商標 登録の取消(権利の消滅!!)を請求でき る(某社とか某社とか…) 不使用取消審判(商標法第50条) 勿論、審理をするのは 特許庁(はぁと
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今昔東方パッケージ(2009) 「東方Project」?
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今昔東方パッケージ(2018) (´・ω・`) 「東方プロジェクト」 の危険が危ない!?
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2012年5月14日 特許庁が述べたのは どんなことだったのか 藤の花が咲く頃に - Retour a jour du jugement -
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七年目の東方審判 審判で否定されたのは、 「東方プロジェクト」の著名性ではなく、 商標としての 「東方プロジェクト」 の著名性
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「東方プロジェクト」の文字が……申立人に係る ゲーム、音楽、漫画等の商品について使用 する商標として、需要者の間に広く認識さ れていることを示すものは見当たらない。 ……申立人の業務に係る商品を表示するも のとして……需要者の間に広く認識されている 商標とは認められない。 決定理由をもう一度見直そう
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「東方プロジェクト」という文字は 「商標として」使用されていなかった ZUN氏の「東方プロジェクト」が 「自分の商標である」主張が否定された 「著名な商標である」 という主張が否定された 噂の真相!著名性騒動の真犯人 商標でない 「商標かつ著名」でない
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商標であるとはどのようなことか? 保護すべき商標が有する 機能を発揮している標章 商標として使用している標章 ⇔ 第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもの のうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その 他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。 一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用を するもの 二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの (前号に掲げるものを除く。)
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この法律は、商標を保護することにより、商 標の使用をする者の業務上の信用の維 持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的 とする。 商標法入門!! の入門 第1条(目的)
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図解! 5秒でわかる可能性はある 「ブランド」 1 2 3 4 桃福 黒福
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自他商品識別機能 信用の蓄積で開放されるスキル それが商標法の保護する”機能” 出所表示機能 品質保証機能 広告宣伝機能 1 「“桃福”は“黒福”ではない」 “桃福”は ワシが作った 2 おやつはやっぱ り桃福だぎゃ 3 お客さん!これ! これが桃福やで! 4
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それは、誰の、商品ですか? オリエンタリズムコンセプトの 「特別養護老人ホーム 東方Project」 ZUN氏の事業だと思いますか? 「東方例大祭」の開催主体は? 「東方紅魔郷」の頒布主体は? 「東方鈴奈庵」の販売主体は?
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株式会社アニプレックス
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白黒が必要なときもある “東方プロジェクト” の出所が ZUN氏である ことの立証 “である”ことは みんな知っていたかもしれない それを“説明する”こと は誰もできなかった_・`]
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やっかいな「商標」と 向き合って暮らしていくための 作品頒布・主催イベントを…守りたいッ!! ・権利化は審査段階で阻止も可能 ※商標登録出願に関する情報提供は匿名OK! 商標登録は本当に 必要だろうか? ・費用(出願手数料,登録料……) ・個人情報の公開 ・商標として使用はしていないかも
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やらないか:原作者表記+商標表示 東方+ミステリ 楽しいよ!! 著作者(原作者)の情報にプラスして 『登録商標「東方プロジェクト」の出所』 も記載できないだろうか? メディアスケープ㈱ を参照
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幻想を語り続けること 商品⇔出所の繋がりは儚い 人々が忘れれば消えてしまう幻想 Ex.正露丸(大正製薬)、あずきバー、コーラの瓶…… 幻想を現世へ繋ぎ留めるために わたし達はこの幻想の存在を認め 正しく語り続けなければならない
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Appendix ・好事家のための資料出典 ・本発表を動機づけた何かについて ・僕が法律入門に商標法を推す たったひとつの理由www
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付録1 : 大丈夫だ!問題ない! 商標審査基準 https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm 商標審査便覧 https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/syouhyoubin.htm 工業所有権法逐条解説[第20版] https://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/cikujyoukaisetu.htm 商標登録出願に関する情報提供について https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/touroku_jouhou.htm
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付録2:もう何も怖くない 『異議2011-900420』 「東方プロジェクト」商標登録第5436765号 http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1258391.html 『異議2011-900419』 「上海アリス幻樂団」商標登録第5436764号 http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1258395.html 商標登録異議の申立て https://www.jpo.go.jp/seido/shinpan/shouhyouigi.html
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付録3:本スライドで使った資料類 ・上海アリス幻樂団/ZUN 様 ・風切羽/銘宮 様 ・時には昔の話を/aho 様 ・いらすとや 様 ・商標速報bot 様 「東方神霊廟」(2009) 「秘封ナイトメアダイアリー」(2018) 「東方ミステリ合同2 心地よく幻想めいた場所」(2009) (http://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/60/1223659216)
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異議申立の審判におけるもうひとつの謎だったりする。 登録しない商標(の条件)を列挙した4条1項各号の、一番最後の条文。それまで の1号~18号の不登録事由に該当しないが、それでも登録すべきでない商標。 「最後の手段 ≠ 一番強い」なことに注意。 他人の周知な商標を勝手に出願(冒認出願)した相手に対してであれば、普通は 10号や15号が適用できないかを先に検討する。 ・外国で周知な商標について外国での所有者に無断で不正の目的をもってなさ れる出願・登録を排除すること、 ・全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがなくても出所表示機能の 稀釈化から保護すること 相手の図利加害の目的が認定されれば、それだけで勝てるわけではない。 この謎に与えるべき答えは、今のところまだ用意できていない…… 補論1:なぜ「4条1項19号」だったのか問題
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確かに、異議申立てでは「商標を使用していない」と判断されたわけで。 その答えは…… 出願時には「使用」していなくてもいいから つまり出願時点で「使用」していなくても、後で使うつもりであればOK! 補論2:なぜ後からした出願は登録できたの? 商標審査基準 3①柱書 (1) 「使用をする」とは、指定商品又は指定役務について、出願人又は出願 人の支配下にあると実質的に認められる者(以下「出願人等」という。)が、 出願商標を現に使用している場合のみならず、将来において出願商標を使 用する意思(以下「使用の意思」という。)を有している場合を含む。
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そもそもなんで誰でも勝手に出願できる制度になっているんだ! そんな疑問(憤り?)を抱くひとか多かったように思う。 この事情をしっかり説明するには、そもそも行政法、さらには90年代後半あ たりからの行政改革やら司法制度改革やらにまで言及しないといけない。 乱暴にまとめてしまうと、規制緩和で自由な経済活動、オカミはうるさく言わ ない、というのが底流にある。「事前規制」から「事後チェック」。とりあえず 出願があったら余計な疑いはかけず処理。異論が出たら審査しようぜ。 権利に義務が伴う素敵な市民社会! ビバ自由! なのだとしても、趣味でやっているひとたち、本来関係ないはずのひとたちま で巻き込まれるのは釈然としない。とはいえ、すっかりメジャー化して商業との 境目も薄くなった同人”業界”は、そう遠くない未来に向き合わなければいけない 事なのかもしれない…… 補論3:こんな制度絶対おかしいよ!?
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①民事の論点 商標の使用許諾(物権法! 契約論!) 侵害行為に対する差止や損害賠償したり(不法行為論!) ②刑事の論点 罰金や懲役、故意・過失、非親告罪 などなどなどなど ③行政法の論点 特許庁への出願、他諸々の対応(行政手続法!行政不服審査法!) 商標法は法律の入門にうってつけ!! なんと!商標法ひとつで、 3ジャンルの基礎が学べてしまう! かも
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実のところ「東方プロジェクト」異議申立の審判に限っても商標 法絡みの論点はまだまだたくさんある。 発表では、主に発表者の能力と時間の都合で、商標法の核心であり ながらあまり触れられて来なかった「商標的使用」に話を絞らざる を得なかった。 それでも、東方でこれからも楽しくやっていくためのヒントとし て、商標法というものがあるということを 自分が!! 話しかっただけでした!! 本発表も東方Projectの二次創作です(?) もしまだ時間があったら最初のスライドへ戻って 左下の辺りを眺めてみてくだしあ すまんな