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メンバー目線から紐解く、 メルカリにおけるカルチャーが浸 透し続ける6つの仕組み 2023/10/26 @三菱マーケティング研究会

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Agenda ● 自己紹介 ● メルカリのカルチャーとは? ● 具体例から見るメルカリのカルチャーの実態 ● カルチャーが浸透し続ける6つの仕組み ● まとめ

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自己紹介

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Who am I ?? ■Name :  木下 雄策 (35歳・from 福岡)   @afroscript10 ■Career :  九州大学大学院で宇宙の研究  2013.04 ~ Leverages レバテック(法人営業) -> teratail (DevRel->技術ブランディングコンサル事業立ち上げ ->事業部長)  2019.03 ~ メルカリ Engineering Office (組織開発/カルチャー浸透/DevPR, etc) -> R4D (outreach) *より詳しい経歴はこちら ■Others :  ・子連れ専用ママ会ルーム ”mamaco”の運営  ・副業で技術ブランディングコンサルのコンサル  ・好きなもの: Jeepとキャンプと宇宙と娘

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Engineering Officeとは? ● Mission「すべてのエンジニアに最高の従業員体験を提供する」 ● エンジニア組織専属の組織開発チーム ○ 具体的には... ■ Developer PR ■ Hiring ■ On-boarding ■ Career Development ■ Culture & Engagement <- 木下が主に担当していたところ ■ Data & Mechanism ● 木下は2019年3月 - 2023年6月まで所属 ● 参考記事: Engineering Officeについて

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mercari R4Dとは? ● Mission「まだ見ぬ価値を切り拓く」 ● 2017年12月に設立したメルカリの研究開発組織 ● メルカリグループが目指す「限りある資源を循環させ、あらゆる人の可能性が発揮 される社会」の実現のために、価値交換のシステムや社会の価値観をも科学技術 の力でアップデートしていく組織 Research for Design Development Deployment Disruption

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mercari R4Dとは? ● 産学官や分野の枠を越え、多岐にわたる研究やプロジェクトに取り組んでいる 価値交換工学 Value Exchange Engineering 量子情報技術 QUANTUM INFORMATION TECHNOLOGY ELSI HCI AI Mobility Blockchai n Communication

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アウトリーチって何? ● ①アカデミック界隈の人、②メルカリ社内、③幅広く一般の方を対象に ● R4Dの活動や成果を「発信」 + 3つ領域とR4Dを「コネクト」 ○ -> メルカリやメルカリR4Dが目指すべき世界の実現を加速させる ● 参考記事: mercari R4DのOutreachという新たな役割に挑戦します。|afroscript

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おことわり ● 今日はメルカリ全体のカルチャーについてお話しますが、僕はメルカリJPのエンジ ニア組織内のカルチャー浸透は担当していましたが、全社のカルチャー浸透などに 従事していたわけではないです ● なので、今回は1人のメンバーの視点から見て、メルカリ全体のカルチャーがどのよ うなもので、どのように浸透しているのかを主観的に紐解きまとめたものになります ● メンバーやチームによって、カルチャーをどう捉えているか/どれだけ根付いている かには差異があるかもしれません。 メルカリグループ メルカリUS メルカリ(JP) メルペイ Engineering 木下の担当領域

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メルカリの カルチャーとは?

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メルカリのカルチャーとは? ● Culture Docとして社内外に公開されている ○ 「メルカリ(会社)とメンバー(社員)が大事にする、共通の価値観」 をまとめたもの ● 3つのValueとそれを下支えする4つのFoundationから 成る ○ Value: 行動指針。各メンバーが 意識的に発揮するもの ○ Foundation: Mission実現やValue発揮に必要な土壌。 1人のメ ンバーではなく、組織全体で育み、大切にする空気のようなも の ● なぜ言語化しているか? ○ 判断基準となり、バリューに沿って行動できる ○ 暗黙知を形式知に移行できる ● なぜ公開してるの? ○ これから一緒に働きうる仲間に会社の理解度を高めてもらう ○ 多様性を重んじるからこそ、共通の価値観が重要

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メルカリのカルチャーとは? (余談) 「それぞれのValueの関連性はじゃんけんみたいなもの」 (引用元) ● Go Boldが過ぎれば Too Boldに ● All for Oneが過ぎれば 主体性のなさに ● Be Professionalが過ぎれば 固執した動きに すべてを満たすのがものすんごく難しい...(ゆえによくできてるな〜(個人的感想))

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具体例から見る メルカリのカルチャーの実態

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いろんな情報が全社公開 ● 社内の情報は全社公開されている ○ グループ全体のロードマップ、各カンパニーのロードマップも全社公開 ■ ロードマップ作成中も途中公開しつつディスカッション ■ Open Doorという誰でも参加できて、議論できる社内イベントを複数回開催 ■ FYI: ロードマップを通して、メルカリの未来にワクワクしてほしい ——2024年度版ロードマップ策定 の裏側 ○ 誰でも参加できる全社会議 ”All Hands”が毎週開催 ■ Japan Region単位、メルカリ単位、メルペイ単位などなど ... ■ 数百人単位で集まる全社会議が毎週ある ■ もちろん他のカンパニーの All Hands資料/Videoも公開され、いつでも見れる ○ Slackも基本的にはOpenチャンネルでやりとり ■ 多くの人がオープンな個人チャンネルを持ってる。 DMレベルの会話もその個人チャンネルでやっ たり。(「ランチしましょうよ〜」「久しぶりに 1on1しましょう〜」など) ○ もちろんインサイダー情報や個人情報など重要度が高いものは除く ● -> Trust & Openness

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なんなら社外にもどんどん情報公開 ● mercan, Engineering Blog, Mercari Design Blog, リコマース総研 by Mercari, Mercari Analytics Blog, etc… ● 社外向け発信で社内の動きを把握することもしばしば。 ● なので、発信する側としては、発信内容に社内へのメッセージも込めていたりする ● 発信もまたカルチャー醸成の重要な要素。 ● 発信の中にもMission / Value / Foundationのキーワードがたくさん出てくる

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ManagerもExecもただの役割 ● Managerが自分よりグレードが高いメンバーをマネジメントすることも普通にある ● Manager<->メンバーを気軽に行き来できる ○ Managerからメンバーに戻ったことでグレードが下がることはない (その逆もしかり) ○ マネジメントを経験を経験したメンバーは、メンバーになってもチーム全体を見渡して動けるなどあきら かにレベルの高いメンバーになっているはず ● Expertとして最高グレードに行くこともできる ○ FYI: Engineering Ladder (エンジニアの評価指標 ) -> MG3からManager/メンバー両方の基準が書かれ ている ● Execも自分のことを「ただの役割だから」とよく言う ○ 会社をよりよく動かすためにうまく使ってくれ、といった感じで

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社内ルールは最小限に ● チームビルディング費用は金額の制限なし(最近目安はできた) ○ 事前承認は特にいらない ○ 承認するとしても口頭か Slackでサラッと伝えるくらい ● 有給の承認はカレンダー抑える程度で伝わる ○ 一応Slackでも「XX日はお休みもらいます〜」と伝える (特にルールはないけど、業務に支障がきたさな いように。Be a Pro) ● 5人集まれば部活つくれる ○ 毎月1人あたり上限3,300円の部活費を使っていい ○ 何部でもいい。承認不要。 ○ 条件は5人以上活動に参加すること + 社内の部活チャンネルで報告すること (興味ある人が気軽に入れ るように) ○ FYI: mercanの部活に関する記事 (日本語部、ビール部、不動産部、桃鉄部、福岡部、 etc…) ● -> Trust & Openess, Be a Pro

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働き方も多様に ● YOUR CHOICE ○ リモート/出社の有無や働く場所など、個人と組織のパフォーマンスおよびバリュー発揮がもっとも高ま るワークスタイルを、社員それぞれが 選択できる (日本国内であればどこで働いても OK) ■ (いずれは海外でもという話は出つつ、セキュリティなどの観点からだんだん整えていってるっぽ い) ○ 通勤交通費は上限月 15万円 ■ でも別にやたらと上限まで使う人はいない (普通にパフォーマンス落ちるので。 Be a Pro) ■ 対面にすべきときに迷わず対面で集まるための上限 15万円 ○ 育児や介護などでどうしても本社 /支社の近くに住めないときでも働けるという意味合いもある ● -> Trust & Openess, D&I, Well-being for Performance

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ダウンサイドリスクを減らす ● merci box ○ Sick Leave ■ 社員本人の病気・ケガを事由とした休暇を年 10日間、有給休暇とは別に付与する制度 )のの対象 範囲は、社員本人だけでなくペット、パートナーも含めた家族まで。 ■ 診断書などの証明書は原則不要 ○ 0歳児保育支援制度 ■ 社員が育休から復帰し、子が満 1歳になるまでの認可・認可外保育園およびベビーシッター利用 に関する費用の補助( 10万円/月) ■ 対象者は全社員のみでなく、社員の配偶者・パートナーも含む) ○ etc… ● -> Well-being for Performance

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他にも... ● LET(Learning Education Team) _ D&I ○ やさしい日本語 / やさしい英語トレーニングを社内で開催 (参考記事) ● GOT(Global Operation Team) _ D&I ○ 社内の通訳・翻訳をサポートする専門のチーム (参考記事) ● メルカリ社員、男女の賃金に37%の格差。職種・グレード同じ男女に「説明できない」差が生じた理 由 _ D&I ● Impact Report (旧Sustainability Report) _ Sustainability ○ 年に1回、メルカリの事業が社会にもたらすポジティブインパクトを定量的に評価 ● KOKUYOとメルカリ双方の担当者に聞く、メルカリの新オフィス「 Mercari Base Tokyo」はどのように カタチづくられたのか? _ Sustainability ○ 2フロアの窓際で本棚として使われていたシェルフを、一人用ブースのパーテーションとして活用したり、植木鉢をつなげて 天板を貼ってテーブルに ● etc, etc, etc………

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挙げるとキリがないほど、 いろんなところにカルチャーの要素が散りばめられている...!!!

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カルチャーが浸透し続ける 6つの仕組み ※注意: あくまで1人のメンバー目線で重要なんじゃないかと思うものを 6つにまとめました。 n=1の精度なのであしからず ...

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言葉の覚えやすさ ● 「メルカリ 小泉 バリュー」で検索してくださいmm ○ “メルカリのバリューはなんで覚えやすいかというと、あれは中学校 1年生の英語なのですよ。しかも短い のです。” > 引用元 ○ “バリューを5つ作るという会社はよくありますが、 5つだと使われ方にムラが出たりするんですよね。 (略) 一方、3つに絞り込んでいるとそんなことにはならない。 ” > 引用元 ○ “これはテクニック論なのですが、なるべく英語の短い表現にするのがコツです。ただし、異なったニュア ンスで受け止められる恐れもあるので、日本語でも捕捉しています。 ” > 引用元 ● 「簡単な英語で、3単語以下」を大事にしてるっぽい

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経営陣が率先して口にしまくる ● 毎週開催されるAll Hands(全社会議)などのExecがしゃべるイベントでは、話の中にと にかく大量のカルチャー要素が言葉としてがでてくる ○ 本当によくそんなスラスラと出てくるな ...といつも思う ○ 社内外のドキュメントなど、文字でもたくさん登場 ● ゆえに(??)Managerもメンバーも様々なディスカッションや意思決定の場でValueやカル チャーに基づいた判断・行動をとるのが普通になっている ● [余談] Valueの使い方には要注意 (元CTOの4,5年前のSlackより) ○ VALUEについてひとつだけ自分が心がけていることといえば、 ○ 何かをお願い する側 のときにはVALUEを出さない、というのをやっていて。 ○ 例えば、「xxお願いします!!」 →「良いですよ」→「あの人本当にBe ProだしAll for Oneだなぁ」 ○ これはVALUEの発揮だと思うんですよね。 ○ これを逆に「All for Oneにxxお願いします!!」としてしまうと、 ○ それをやらなかった方が VALUEが無い、と評されると、それは VALUEの発揮を強要していてもはやそれは VALUEではないのでは? というイメージで。そうしたら、どんなことでも VALUEをくっつければまかり通ってしまうじゃないですか。 ○ これらは同じように見えて全然違うと思ってる。

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ちゃんと評価に組み込まれている ● 目標設定のときにGo BoldかどうかはよくManagerとすりあわせる ○ メルカリの目標設定は OKRベース ○ KRにはRed / Yellow / Greenラインを設定する ○ Yellowが普通に難しい達成ライン、 GreenはGo Boldに難しい達成ライン ● Value賞に沿った評価が行われる ○ 評価時はValueに沿って、自身がどのような行動をとったかを記述する ■ -> それらが求められるグレードの各 Valueの基準を満たしているかどうかで評価される ○ FYI: Engineering Ladder ● Value賞の運用(MVP, Go Bold賞, All for One賞, Be a Pro賞etc…) ○ FYI: FY2022 Q3 最もバリューを体現している人は?メルコイン全定例で MVPの受賞者が発表されまし た!

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(社内外の) みんなの見える場所で言語化されている ● Culture Docとして言語化されている ● 迷ったときに立ちかえることができる ● Culture Docは社外に見える場所にも置かれている ○ -> 人事などでないただ 1人の社員でもメルカリのカルチャーについて外部からよく聞かれる ○ -> 説明をする機会がたくさんある ○ -> より理解が深まる / 浸透する ● メルカリに新メンバーが入社する際も、すでに一定の理解・共感を得られた上で仲間に 加わってくれる

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みんなの見える場所で育てる ● Culture Docの作成は、きわめてオープンに行われる ○ Open Doorとして、自由に意見を言えるイベントが何度も開催されたり、作成途中のドキュメントが公開 されていて自由にコメントをつけることができたり ■ FYI: ルールではなく議論の補助線をつくる、『 Mercari Culture Doc』の制作プロセス ○ -> 作成フローがオープンになることで、 ディスカッションに参加した人は強く自分ごと化されやすい ○ -> (逆に、これだけオープンに意見を言う場があるのに言わなかったのなら、それはもう同意するしかな いという見方もできる ) ■ FYI: メルカリCTO名村氏が明かす、エンジニア評価制度を変えるためにやったこと Part.2 ● >逆に言うと、「反論しなかったじゃん」というのをやっちゃおうと思って。 (略) そう思って、反 論できるチャンスをいっぱい作りました。作っていく課程で、まずベースのドラフトを作って全 体に共有して、何度かタウンホールミーティングのようなかたちで「もし何か意見があれば 来てください」というのを。月に 1回、1週間に1回、2週間に1回、というふうに何度か開催しま した。 ● (これはEngineering Ladder作成のときの話ですが )

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あらゆる手で浸透させる ● Valueノベルティがたくさん配布される ○ 昔はQに1回なにか配られていた (Tシャツ、パーカー、バッグ、ステッカー、缶バッジ、 etc…) ○ しかもちゃんとデザインされている (社内のクリエイティブチームが制作 ) ○ 「メルカリにいると洋服を買う必要がなくなる」とよく社員が言っていた ...(僕が入社する前) ○ ステッカーは社内の各所に置かれていて、社外の人にも好きに配ってよい ○ 登壇するときにmercari Tシャツ/パーカーなどを着るので社外 ● Slackスタンプをみんなで押し合う

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まとめ

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まとめ ● メルカリのカルチャー(=Culture Doc)は3つのValueとそれを下支えする4つの Foundationから成る ○ Value: 行動指針。各メンバーが意識的に発揮するもの ■ Go Bold, All for One, Be a Pro ○ Foundation: Mission実現やValue発揮に必要な土壌。組織全体で育み、大切にする空気のようなもの ■ Sustainability, Diversity & Inclusion, Trust & Openness, Well-being for Performance ● カルチャーは、実際に会社や社員の活動のあらゆるところに登場している ● それを支えているであろう6つの仕組み ○ 言葉の覚えやすさ ○ 経営陣が率先して口にしまくる ○ 評価に組み込まれている ○ (社内外の) みんなの見える場所で言語化されている ○ みんなの見える場所で育てる (Trust & Openess) ○ あらゆる手で浸透させる

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Culture eats strategy for lunch 企業文化は戦略に勝る Peter Ferdinand Drucker

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参考資料 ・【イベントレポート】メルカリCHROが語る 急成長企業を支える文化づくり | BizReach withHR ・ルールではなく議論の補助線をつくる、『Mercari Culture Doc』の制作プロセス|Ryo SAIMARU ・『急拡大したエンジニア組織の「成長痛」に メルカリはどう立ち向かっているか? 』