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クリエーションライン株式会社 AgileCoE 伊藤いづみ ゾウがいるゾウ! "伝えにくいけれど大事なこと"を伝える勇気

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■ 伊藤 いづみ (いづいづ) ■ クリエーションライン Agile CoEチームリーダー ■ スクラムマスター、アジャイルコーチとして現場を支援中 ■ 好きな動物はネコ、好きな草はパクチー ■ 宮城の思い出:田代島のネコ 自己紹介 2

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はじめに 3

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「ゾウがいるゾウ!」って? “elephant in the room”  放置しておくと大きな問題に発展することがわかっているのに、  誰もそれに触れない状況 4

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今日話したいこと という状況に直面したとき、この状況をどう越えていくかについて話します 5  放置しておくと大きな問題に発展することがわかっているのに、  誰もそれに触れない状況

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皆さんの現場では こんなことないですか? 6

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身近な “The elephant in the room” の例 ■ どう考えても納期に間に合わないスケジュールなのに、誰もその話をしない ■ ハラスメントまがいの発言や態度があるが、皆が見て見ぬふりをしている ■ 会社のビジョンや戦略が浸透しておらず、実際は誰もよくわかっていない 7

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ゾゥっとした? 8

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取りがちな行動 9

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「自分は気づかなかったことにしよう」 誰かが言ってくれる かもしれないし 10

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「自分は気づかなかったことにしよう」 「自分は気づかなかったことにしよう」 「自分は気づかなかったことにしよう」 「自分は気づかなかったことにしよう」 11

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その結果起きること ■ どう考えても納期に間に合わないスケジュールなのに、誰もその話をしない ■ ハラスメントまがいの発言や態度があるが、皆が見て見ぬふりをしている ■ 会社のビジョンや戦略が浸透しておらず、実際は誰もよくわかっていない 12 これが

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その結果起きること ■ どう考えても納期に間に合わないスケジュールなのに、誰もその話をしない ○ 残業&休日返上で対応、すべてのしわ寄せが開発チームに ■ ハラスメントまがいの発言や態度があるが、皆が見て見ぬふりをしている ○ 徐々にエスカレートし気づいたときには深刻な組織問題になっている ■ 会社のビジョンや戦略が浸透しておらず、実際は誰もよくわかっていない ○ 会社はどこへ向かっているのかわからないことに不安を感じ、優秀な人材 が流出 13 こう…

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その結果起きること ■ どう考えても納期に間に合わないスケジュールなのに、誰もその話をしない ○ 残業&休日返上で対応、すべてのしわ寄せが開発チームに ■ ハラスメントまがいの発言や態度があるが、皆が見て見ぬふりをしている ○ 徐々にエスカレートし気づいたときには深刻な組織問題になっている ■ 会社のビジョンや戦略が浸透しておらず、実際は誰もよくわかっていない ○ 会社はどこへ向かっているのかわからないことに不安を感じ、優秀な人材 が流出 14

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どうすれば? 15

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問題があることをちゃんと言う! 16 こういうことが起きていて、 放って置くと大きな問題になると 思います。

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17 いやいや、それができるなら こんな状況起きないですよね?

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「自分は気づかなかったことにしよう」 「自分は気づかなかったことにしよう」 「自分は気づかなかったことにしよう」 「自分は気づかなかったことにしよう」 なぜ気づかなかったことにしたくなるのか 18

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なぜ気づかなかったことにしたくなるのか 19 ■ 物議を醸していろいろこじれるのでは ■ 険悪な雰囲気になりそう ■ 言い出しっぺの自分に跳ね返りがくるのでは ■ とりあえず何も起きてないし黙ってたほうが安全 ■ 立場的に言いにくい ■ なんとなく触れちゃいけない空気 ■ 誰も何も言わないし自分も黙っておいたほうが ■ もしかして勘違いかも ■ 誰かが言ってくれるかも ■ 問題が大きすぎて今さら言ってももうどうしようもない

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なぜ気づかなかったことにしたくなるのか 20 ■ 物議を醸していろいろこじれるのでは ■ 険悪な雰囲気になりそう ■ 言い出しっぺの自分に跳ね返りがくるのでは ■ とりあえず何も起きてないし黙ってたほうが安全 ■ 立場的に言いにくい ■ なんとなく触れちゃいけない空気 ■ 誰も何も言わないし自分も黙っておいたほうが ■ もしかして勘違いかも ■ 誰かが言ってくれるかも ■ 問題が大きすぎて今さら言ってももうどうしようもない 対立や摩擦を避けたい 触れるなキケン 期待や逃避 あきらめ 面倒なことに直面 したときに 自然と起きる反応

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なぜ気づかなかったことにしたくなるのか 21 ■ 物議を醸していろいろこじれるのでは ■ 険悪な雰囲気になりそう ■ 言い出しっぺの自分に跳ね返りがくるのでは ■ とりあえず何も起きてないし黙ってたほうが安全 ■ 立場的に言いにくい ■ なんとなく触れちゃいけない空気 ■ 誰も何も言わないし自分も黙っておいたほうが ■ もしかして勘違いかも ■ 誰かが言ってくれるかも ■ 問題が大きすぎて今さら言ってももうどうしようもない 構造や関係性

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どうすれば? (2回目) 22 感情や反応 構造や関係性

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23 勇気

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スクラムには勇気が必要 スクラムの価値基準 ■ 確約(Commitment) ■ 集中(Focus) ■ 公開(Openness) ■ 尊敬(Respect) ■ 勇気(Courage) これらをチームの行動指針として、 透明性・検査・適応を回すのがスクラムチーム 24

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スクラムには勇気が必要 ■ 起きる変化に向き合う勇気 ■ ネガティブなことを隠さずに話す勇気 ■ 自ら行動する勇気 ■ チームを障壁から守る勇気 変な期待や逃避、恐怖に負けず成功に導くために必要な変化起こす行動が勇気 大きなゾウが部屋いるときこそ、こういった行動が不可欠 25

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勇気は人間の第一の資質である なぜなら 他の資質の土台となる資質であるからだ ― アリストテレス 26

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なぜ気づかなかったことにしたくなるのか 27 ■ 物議を醸していろいろこじれるのでは ■ 険悪な雰囲気になりそう ■ 言い出しっぺの自分に跳ね返りがくるのでは ■ とりあえず何も起きてないし黙ってたほうが安全 ■ 立場的に言いにくい ■ なんとなく触れちゃいけない空気 ■ 誰も何も言わないし自分も黙っておいたほうが ■ もしかして勘違いかも ■ 誰かが言ってくれるかも ■ 問題が大きすぎて今さら言ってももうどうしようもない あきらめ 今頃言っても もう遅すぎるよな どうせ変わらないのに 嫌な役引き受けたくない なぁ・・・

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“負をインパクトを少しでも抑えるため” と考える ■ 大きな問題は100→0にできなくても、100→80に減らせるかもしれない ■ 心のハードルを下げよう 28 家は救えなかったけど ケガ人は出さないぞ! 隣への延焼は 起こさないぞ!

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私の勇気の出し方 29

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私の勇気の出し方 30 めんどくさく なりそう 気づかない フリしたい 言っても なぁ

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私の勇気の出し方 31 めんどくさく なりそう 放っておい たら? やばい 気づかない フリしたい 言っても なぁ

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私の勇気の出し方 32 めんどくさく なりそう 放っておい たら? やばい 気づかない フリしたい 言っても なぁ 状況を変え たい? 変えたい

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私の勇気の出し方 33 めんどくさく なりそう 放っておい たら? やばい 気づかない フリしたい 言っても なぁ 状況を変え たい? 変えたい 向き合って ない 向き合って る?

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私の勇気の出し方 34 めんどくさく なりそう 放っておい たら? やばい 気づかない フリしたい 言っても なぁ 状況を変え たい? 変えたい 向き合って ない 向き合って る? このままだ と? このままだ

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私の勇気の出し方 35 めんどくさく なりそう 放っておい たら? やばい 気づかない フリしたい 言っても なぁ 状況を変え たい? 変えたい 向き合って ない 向き合って る? このままだ と? このままだ どうする? 確約 集中 公開 尊敬 勇気

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この部屋には ゾウがいる! 36 …ゾウ

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! ! ! ! ! 37

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勇気を出して言ってみたら起きたこと ■ 問題があることが現場の共通認識に変わった ■ 会議や議論の内容がより本質的で意味のあるもの変わり始めた 38

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勇気を出して伝えることこそ 問題解決への第一歩 39

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40 なのですが

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起こり得るガッカリな展開 ■ 勇気を出して声をあげただけではただの声デカ告発者 で終わってしまう場合があ る ■ 防御的、否定的な反応が起きたり、 問題解決よりも人に矛先が向き、対立構造をつくってしまう ゾウがいるゾウ! ゾウがいるゾウ! ゾウがいるゾウ! どうするんだゾウ! 早くしないと 大変だゾウ! 41

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どうすれば? (3回目) 42 感情や反応 構造や関係性 ガッカリな展開

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問題があることをちゃんと言う! 43 問題解決のための対話ができるように伝える

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44 例えばこんなガッカリな展開が起きます 防御的、否定的な反応が返ってくる 考え方、受け取り方に違いがあり 押問答になる 情報が正しく伝わらず 本質じゃないところでこじれる ボトムからだと提言を 受け入れてもらいにくい

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45 テクニック

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防御的、否定的な反応が返ってくる このままじゃ 期限までに開発が 終わりません 開発チームで なんとかしてよ やり方が 悪いだけじゃない? 46

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改善案をセットで伝え、いい提案に変える ■ 「今なにか良くないのであれば改善したい」が本質 ■ 改善案を添えることで「悪いニュースの告発者」ではなく、 「改善の運び手」となる このままじゃ 期限までに開発が 終わらない見込みです 取りうる対応として AとBとCが考えられます AとBは すぐ始められますね 47

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考え方、受け取り方に違いがあり押問答になる このままじゃ 期限までに開発が 終わりません 私達の計画では 予定の倍かかります いや終わるでしょ そんなにかかると 思えないけど 終わらない 終わる 48

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事実や数値、具体で会話をする ■ 事実や数値などを可視化し、同じ情報を見て会話する ■ 抽象的な会話は、実現可能かつ効果的かを具体レベルに落とし込む 具体的に どう頑張っていきましょう か このペースなら 頑張ればなんとかなるんじゃ ない? 総ストーリーポイントに対し て、ベロシティは◯◯です こういう方法は どうでしょう 49

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情報が正しく伝わらず本質じゃないところでこじれ る 50 順調!

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情報はオープン、かつ丁寧に扱う ■ 伝言ゲームは認識齟齬や誤解を生み、結果「人の行為」に注目やすくなる ■ 誰でも情報にアクセスできるようにし、伝言ゲームの構造を作らない ■ 情報は丁寧に(特にテキストの扱いに注意) ■ 行間が欠落しやすいため、受け手側も思い込みで安易に広めない ■ 「メモ」「検討中」「決定事項」など情報のステータスをわかるようにする 51 AチームはBチームのヘル プに入っており 今週はC機能の開発をス トップしています “Aチームは C機能の開発中断 ” Aチーム 開発やめたん だって Aチームは 協力的じゃない

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ボトムからだと提言を受け入れてもらいにくい 52 半分の時間でできそうなのに 開発時間もっとほしい 今日も2時間 定例ミーティング! ぼくが言っても聞いて くれないだろうな

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仲間を巻き込む 53 ■ 事前に合意形成し、ひとりの意見ではなくチーム全体の声として伝える ■ 同じ問題意識を持っている=改善によるインパクトが大きい ■ 共通の合理性がある内容だと聞き入れてもらいやすい 会議の時間を開発時間に 充ててもっと進めたいです 今◯◯開発の状況が … 会議はこう進めれば 半分の1時間でできます これだけの人が 言うなら・・・

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耳を傾けてくれそうな人から伝えてもらう 54 ■ 耳を傾けてくれる相手とそうじゃない相手がいるのは事実 ■ 経験、役職、専門性、信頼関係、伝え方、見ている情報の違い ■ そういう人から伝えてもらう

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55 防御的、否定的な反応が 返ってくる 考え方、受け取り方に違いが あり押問答になる 情報が正しく伝わらず 本質じゃないところで こじれる ボトムからの提言を受け入れ てもらいにくい ガッカリ これが

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56 告発者ではなく 改善の運び手になる 客観的な情報と 具体的な会話 情報はオープンに 透明性を保つ 総意として 伝える 防御的、否定的な反応が 返ってくる 考え方、受け取り方に違いが あり押問答になる 情報が正しく伝わらず 本質じゃないところで こじれる ボトムからの提言を受け入れ てもらいにくい ガッカリ テクニック こうなって

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57 告発者ではなく 改善の運び手になる 客観的な情報と 具体的な会話 情報はオープンに 透明性を保つ 総意として 伝える 対立を生まず、 前向きな議論にできる! 個人の感情対立を避け、 起きていることに向けた会話ができる! 誰が何を言ったかではなく、 起きていることに向けた会話ができる! 納得感が高まると 相手の考えを受け入れやすくなる! 防御的、否定的な反応が 返ってくる 考え方、受け取り方に違いが あり押問答になる 情報が正しく伝わらず 本質じゃないところで こじれる ボトムからの提言を受け入れ てもらいにくい ガッカリ テクニック 問題解決への対話に変わる! こう!

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58 つまりこうする (まとめ)

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59 このような状況が起きているとき、

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60 気づかない フリ 言う みんなが問題 を認知する 勇気 勇気で 問題解決の場を切り開き

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61 気づかない フリ 言う みんなが問題 を認知する 勇気 対話 対立 テクニック みんなが問題 に向き合う テクニック で 問題解決のための”対話”に導く

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62 気づかない フリ 言う みんなが問題 を認知する 勇気 対話 対立 テクニック みんなが問題 に向き合う テクニック で 問題解決のための”対話”に導く 勇気を出して伝えることこそ問題解決への第一歩 ■ 起きる変化に向き合う勇気 ■ ネガティブなことを隠さずに話す勇気 ■ 自ら行動する勇気 ■ チームを障壁から守る勇気 ■ ガラッと解決できなくても少しでもより良くするために

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63 気づかない フリ 言う みんなが問題 を認知する 勇気 対話 対立 テクニック みんなが問題 に向き合う テクニック で 問題解決のための”対話”に導く 問題解決のために、対話のかたちをつくる ■ 「悪いニュースの告発者」ではなく「改善の運び手」になる ■ 情報を揃え、事実ベースで、具体的に会話をすることで、 起きている「こと」に集中する ■ 考えを受け入れてもらいやすいかたちを作る

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64 誰もその話にふれない状態から 「問題 vs 私たち」のかたちを作っていく

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今日話せなかったけど大事なこと ■ 対話はどちらか片方だけががんばっても成り立たない、伝える側だけではなく、伝 えられる側も「対話のこころ」を持ちましょう ■ すべての人はもっと良くしていくために、ここにいる 65

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66 終わりだゾウ