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組織作りに「プロダクト開発のエッセンス」 
 を取り入れ、不確実性に向き合い続ける 
 Developer Experience Day 2024


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2 ⽵⽥ 祥 / Yoshi Takeda Engineer 2005~ 執⾏役員 VPoE freee株式会社 常務執⾏役員 VPoE プロダクトグロース開発本部 本部⻑ Product Manager Engineering Manager

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3 趣味:うさぎ x4を触りまくること。 (個人的な)DX上がりまくり。 


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  # 今回お話しすること

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5 このセッションでは具体的な DX施策というよりは 
 その土台となる組織作りの進め方、必要なデータの活用方法 
 などのフレームについて話します。

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6 こんな方の参考になれば幸いです。 
 
 ○ CTOやVPoE、EM、チームリーダーとして良い開発組織 
 良い開発者体験を作るために日々悩んでおり、夜も眠れない方 
 
 ○ それらを感覚だけではなく、少しだけロジカルに自信を持って進め ていきたい方 


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7 前提情報
 ○ freeeの事業、プロダクトのご紹介 (超さらっと )
 ○ freeeの開発組織のアウトライン 
 ○ 「Engineer Success」という組織 
 本題 ○ 組織作りに「プロダクト開発のエッセンス」を取り⼊れる 具体的な施策を元にポイントをご紹介

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会社概要 Corporate Overview

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9 スモールビジネスを、世界の主役に。 


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10 VISION だれもが⾃由に経営できる 統合型経営プラットフォーム。

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11 従業員数 1,299⼈ ※従業員数は、2023年6⽉末の連結会社の正社員総数

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13 経費精算 ⼈事労務 電⼦契約 固定資産 請求管理 会計 ⼯数管理 販売管理 会計‧⼈事労務‧販売管理を核とした 統合型経営プラットフォーム 電⼦稟議 債権債務 管理

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14 2019年 6月期 2020年 6月期 2017年 6月期 2018年 6月期 2021年 6月期 有料課⾦ユーザー企業数(件) 有料課金
 ユーザー企業数 (1)は 
 約 54万事業所 2022年 6月期 45.1万 2023年 6月期 ※(1) 2024年3⽉末時点。有料課⾦ユーザー企業数には個⼈事業主を含む 37.9万 29.3万 22.4万 16万 12.1万 8.3万 54.3万 2024年 6月期

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15 最近新キャラが誕生しました (LINEスタンプあります )
 Sweee
 スイー


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  # 開発組織のアウトライン

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17 プロダクトとチームの変遷

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18 freeeの開発組織の特性 ‧新プロダクトを毎年リリース ‧ 開発組織の⼈数はスケールし続けている   (特に2021年からは年に100⼈overの増加) ‧地⽅拠点、グローバル採⽤、未経験者採⽤など  多様性の広がりもどんどん加速している

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19 このあたりでVPoEに就任 (= ちょうどやばそうな成⻑カーブ描き始めた時期)

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20 新規 プロダクト たくさん ⼤規模な 組織 スケール 開発拠点 拡充 グローバル チャレンジ 働き⽅ アップデート Dev Branding ⼭ほどの etc.. これらの変化、進化を⽀え 促進するための機能が組織に必要

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21 取り組むべきテーマが多すぎて 正直なにから⼿をつけたらいいか分からん

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22 ひとまず開発組織作り専任チームを作ってみた まずは形から

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23 参考にしたのは「カスタマーサクセス」という職種 サービスを契約してくださったユーザに対して 能動的に関わり続け、あらゆる⽅法で 「ユーザの成功体験」をサポートしていく役割 (BtoB SaaS企業ではメジャーなファンクション) https://www.amazon.co.jp/dp/4862762603 このエンジニア組織版を作ろう! 「Engineer Success チーム」を組成

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24 開発メンバーの「成功体験(サクセス)」に 繋がることだけを考え、実⾏し続ける専任チーム

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25 freeeのエンジニアにとってのサクセス ユーザにとって価値のあるプロダクトを 変化を楽しみながら最速で⽣み出し続けること

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26 そこに繋がることはなんでもやる ユーザにとって価値のあるプロダクトを 変化を楽しみながら最速で⽣み出し続けること

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27 組織作りのコンセプトとチームはできたが 具体的にどう進めればいいんだ‧‧‧

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  # 組織作りに 「プロダクト開発のエッセンス」 を取り⼊れる

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29 VPoEになって組織作りにフォーカスしている中で 「組織作りはプロダクト開発と⾮常に似ている」ことに気付いた ユーザ理解 調査‧分析 設計‧実⾏ 要求定義 評価

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30 組織作りをプロダクト開発のプロセスに沿って進めてみた ユーザ = 開発組織のメンバー ①メンバーや組織を深く理解し ②組織に必要なことを⾒極め ③実際に試してみて ④結果を⾒ながら改善していく この仮説検証サイクルを⾼速で回す ユーザ理解 調査‧分析 設計‧実⾏ 要求定義 評価

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31 組織作りにプロダクト開発の概念を取り⼊れることの効果 ● 不確実性の⾼い活動に対して「思考の拠り所」を作ることができる ○ プロダクト開発には不確実性に向き合う叡智が詰まっている。「プ ロダクト開発だとどうするだろう?」という拠り所になる ● 普段慣れ親しんでいる概念なので認知負荷が低く、話が早い ○ フェーズの概念や⽤語など、既に共通認識、概念が⼀定ある ○ 組織作りとかHRって遠い存在でしょ?という前提を壊せる

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32 数年やってみた結論:めちゃくちゃオススメです。 ユーザ理解 調査‧分析 設計‧実⾏ 要求定義 評価

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  # 各フェーズごとのポイントと 具体的な施策の例

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34 まずはこのフェーズ ①メンバーや組織を深く理解し ②組織に必要なことを⾒極める ①ユーザ理解 調査‧分析 ③設計‧実⾏ ②要求定義 ④評価 組織作りにおける意思決定に 根拠を⽰し、仮説を作る

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35 今の組織状態 の把握 構造としては意外とシンプル、ただ本気で向き合えているか ⽬指したい 組織状態 の可視化 実現のために 必要な組織施策

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36 今の組織状態 の把握 構造としては意外とシンプル、ただ本気で向き合えているか ⽬指したい 組織状態 の可視化 実現のために 必要な組織施策 ⼈増えすぎて良くわからん... まだ先だし変化も⼤きい から具体性が... テーマが多すぎて どれから⼿をつければ...

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37 今の組織状態 の把握 このそれぞれに対するfreeeのアプローチ事例をご紹介 ⽬指したい 組織状態 の可視化 実現のために 必要な組織施策 事例① Engineer Success ダッシュボード 事例② 3年分の開発組織のポートフォリオ

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38 まずはこちらのアプローチ ⽬指したい 組織状態 の可視化 実現のために 必要な組織施策 今の組織状態 の把握 事例① Engineer Success ダッシュボード

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39  ユーザ理解 調査‧分析 - freeeでの事例① 「Engineer Success ダッシュボード」の作成 
 ○ 取り扱っているデータ 
 1. 基本情報や評価などの定量データ 
 2. 対話やサーベイ等による定性データ 
 3. 開発チーム共通の役割定義を元にした can/will/expect
 
 ○ これらのデータを掛け合わせて、あらゆる角度から分析できる 
 ➢ いわゆるタレマネを本気でやっている状態 


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40 「Engineer Success ダッシュボード」の作成、活用 
 イメージしやすいように私 (takeda)というエンジニアを例に説明 


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41 takeda
 ① 基本情報や評価などの定量データ ● 基本的な社員情報 
 ○ 在籍年数
 ○ 報酬
 ○ 所属の変遷 など
 
 ● 評価情報
 ○ Qごとの評価 
 ○ 入社からのグレードの変遷 など


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42 takeda
 ② 対話やサーベイ等による定性データ ● 対話による情報 (※共有範囲は非常に限定的 )
 ○ 新規入社メンバー全員との入社 2on1
 ■ with VPoE & successメンバー
 ○ VPoEとしての日常的な観察、うろうろ など
 
 ● サーベイによる情報 
 ○ コンディション (体調、メンタル )
 ○ 本人視点での組織評価、わくわく感の変遷 など


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43 takeda
 ③ 開発組織共通の役割定義を元にした can/will/expect ● can / 本人+マネージャー の認識
 ○ 既に実行できるロール、ラダー 
 
 ● will / 本人の意思 
 ○ 今後目指したいロール、ラダー 
 
 ● expect / マネージャーが設計 
 ○ チームや会社としての期待値として 
 今後担っていって欲しいロール、ラダー 


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44 ※ ここは少しコンテクストが深いので、補足 
 freeeの開発組織では ⼈、チーム、プロダクトが増えていき 開発において求められる仕事や役割が多様化し、複雑に。

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45 Engineer Successチームが主体となり freeeで求められるロール定義とラダーの明⽂化を進め freee内で役割分担を語る際の「共通⾔語」とした

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46 PdL Product Lead 役割、ロール EM Engineering Manager TL Technical Lead IC Individual Contributor インパクトを出す 主な領域 プロダクト 組織‧⼈材 技術 技術 ※卓越した専⾨性 インパクトを出す 主なアプローチ チームで チームで チームで 主に個⼈で

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47 [余談] 価値提供に責任を持つロールめちゃくちゃ盛り上がっていますが freeeでも2023年頃からこのロール(PdL)がプロダクト開発のコアになっています。 https://speakerdeck.com/niwatakeru/about-product-engineer
 https://speakerdeck.com/shnjtk/layerx-improve-development-pr oductivity-of-product-engineers


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48 各ロールに求められる責務の概要

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49 各ロールに求められる 責務の詳細、責任の段階

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50 たとえばこんな使い⽅ Middle EM Middle PdL Junior PdL(若⼿エンジニア) x 2 新規プロダクト開発チームを組成する際に必要な構成を表現

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51 たとえばこんな使い⽅ Middle EM Middle PdL Junior PdL(若⼿エンジニア) 新規プロダクト開発チームを組成する際に必要な構成を表現

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52 takeda
 ③ 開発組織共通の役割定義を元にした can/will/expect   に具体的なパラメータを当てはめるとこういうイメージ ● can / 本人+マネージャーの認識 
 ○ Middle PdL, Junior EM を担当できる 
 
 ● will / 本人の意思 
 ○ 今後 Senior PdL を目指していきたい 
 
 ● expect / マネージャーが設計 
 ○ 今後 Senior PdL として活躍して欲しい 


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53 各メンバーに関する人事データが一元的に集まっている状態 
 もちろん横断的な分析も可能 (セグメンテーション、傾向把握など )
 ③ 開発組織共通の役割定義を元にした can/will/expect ① 基本情報や評価などの定量データ ② 対話やサーベイ等による定性データ

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54 ロールとラダーの分布(=組織のケイパビリティ) と そのロールの体験、コンディション PdL
 EM
 TL
 IC
 例えば、このダッシュボードがあるとこういうことができる #1 junior
 middle
 戦略理解、納得感 ワクワク感 体調

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55 PdL
 EM
 新卒⼊社者の成⻑状況とキャリアイメージの把握 PdL
 EM
 TL
 IC
 例えば、このダッシュボードがあるとこういうことができる #2 FY23 新卒⼊社 can will

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56  ユーザ理解 調査‧分析 のポイント ● 近道は意外とない。一次情報から触れていき、把握していくことが大事 
 ○ 土台を作るまでは大変だが、メンバー 1人1人の解像度をできる限り上 げ流努力を惜しまない。これが後々の意思決定の質に直結する。 
 
 ● 定量と定性、両面のデータをミックスして使う 
 ○ 相手は人なので、定量データだけでは見えない行間も多い 
 
 ● 継続的にいつでもこのデータを参照できるようにしておく 
 ○ 組織的な意思決定をする際に必ず側に置いておき根拠を持つ 


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57 今の組織状態 の把握 次はこちらのアプローチ (※これを先ほどのダッシュボードと組み合わせると超強⼒) ⽬指したい 組織状態 の可視化 実現のために 必要な組織施策 事例② 3年分の開発組織のポートフォリオ

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58  ユーザ理解 調査‧分析 - freeeでの事例 ② 「開発組織のポートフォリオ」の作成 
 ○ 現在〜3年後までの組織構成の内訳の可視化 
 1. 組織全体の人数 
 2. (先述の)ロール、ラダーの分布、人数 
 3. 各属性(例えば JP, global や 新卒, 中途 など)の分布、人数 
 4. 他にも多数の切り口で具体的な人数と割合をシミュレート 
 
 ○ これを毎年事業状況に応じてアップデートし続ける。 


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59  事業やプロダクトの計画から逆算した数字 + 開発組織としてありたい像の意思ごめ サンプル(データはダミー、項⽬は多少リアル)

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60  ユーザ理解 調査‧分析 のポイント ● リアルな状況を織り込みつつも、縮こまらず理想像をイメージする 
 ○ 現実的な案に落としていくといつの間にか保守的になりすぎる 
 ■ +現実的すぎるとシンプルに面白くない。 
 ○ 開発的な理想を考えイメージを広げる 
 
 ● このイメージは経営メンバーと認識を合わせ続ける 
 ○ これは開発組織への将来的な投資イメージそのもの 
 ■ ここがずれていると、今後の事業やプロダクトに対する認識自体 がずれたまま進んでしまう可能性がある。 


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61 今の組織状態 の把握 ここまで⼟台ができれば、意思決定はかなりしやすくなる ⽬指したい 組織状態 の可視化 Engineer Success ダッシュボード 3年分の開発組織のポートフォリオ

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62 ここまで⼟台ができれば、意思決定はかなりしやすくなる この前後のGAPはなにか どうやったら埋めていけるか を考えればOK 👍 Engineer Success ダッシュボード 3年分の開発組織のポートフォリオ 今の組織状態 の把握 ⽬指したい 組織状態 の可視化

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63 freeeでの使い⽅の⼀例(リアルなやつ) ● FY27の組織&プロダクトのスケール見据えると 
 このままでは Middle EMがxx人、Senior PdLがxx人足りない! 
 ○ willに該当ロールを挙げている人の成長支援を整えよう 
 ○ 採用計画、 JDをこのGAP、ロール定義を元にアップデートしよう 
 ○ (ちなみにwill/canを踏まえると異動調整はめっちゃスムーズ )
 


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64 freeeでの使い⽅の⼀例(リアルなやつ) ● グレードxxになると次のグレードに上がる平均期間が大幅に伸びている 
 ○ この層に対して効果的なチャレンジアサインができているのか 
 ■ 評価キャリブレの際に次のアサインまで具体的に話そう 
 


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65 実はここまでに書いた意思決定の⼟台が作れると この後の「実⾏&評価」はかなり進めやすくなります。 なので、今回はさらりとポイントだけ紹介します。

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66 ①ユーザ理解 調査‧分析 ③設計‧実⾏ ②要求定義 ④評価

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67 ● 必ず前フェーズの結果を元にした仮説を持って進める ○ 組織テーマは無限に湧いてくるので、選択と集中が超⼤事 ● スモールスタートする ○ 制度や組織の話になると何故かいきなり⼤きくなりがち ○ プロダクトと同じで、実際やってみないと分からないこと多い ■ 特定のチーム、部署でプロトタイピングするなど⼯夫する  設計、実⾏フェーズのポイント

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68 ①ユーザ理解 調査‧分析 ③設計‧実⾏ ②要求定義 ④評価

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69 ● 感覚だけではなく、必ずデータをしっかり⾒る ○ ここまでに意思決定の基盤ができていれば、そこに必ず影響がある (例えば先述の Engineer Success ダッシュボードに現れてくる) ○ むしろそういうデータドリブンなサイクルが回るような設計にしておく ● 現実に向き合い、どんどんブラッシュアップする ○ 組織的な取り組みは思ったより成果が出ないことも多い ○ スモールに試しつつ、どんどん改善していく  評価フェーズのポイント

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  # まとめ

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    プロダクト開発と組織作りは⾮常に近しく その概念を応⽤することで より良い意思決定に繋げることができる

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    プロダクト開発と組織作りは近しい ↓

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    プロダクト開発と組織作りは近しい ↓ 良いプロダクトを作れる組織は 良い組織も作れるはず(逆も然り)

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74     ご清聴ありがとうございました!