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猶予は3ヶ月!期限付き専任スクラムマスターの 失敗談から学ぶチームとの向き合い方 Scrum Fest Sendai 2024

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自己紹介 2022年9月にサイボウズ株式会社に入社。 kintone開発チームでスクラムマスターを担当。 今年の抱負:アウトプット とうま Masato Ito 2

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本発表について 過去勤めていた事業会社に所属していた時の話。 チームを支援していく中で、ある失敗をします。 その失敗から、チームとの向き合い方についての学びを共有します。 チームを支援する上で大事なこと 3

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4 当時の状況について

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役割やチームの状況 当時の役割やチームの状況について簡単に紹介。 5 QA兼SM FE QA PO 私 チーム構成 (合計10名) BE 開発プロセス スクラムをベースに開発(スプリントレビューやってない) スプリントは2週間

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当時抱いていた課題感 兼任スクラムマスターとして頭の片隅で考えていた課題感 6 職種間の受け渡し リソース効率重視 プロセス (スプリントレビュー未実施) フィードバックループが 回っていない フィードバック POとチームの垣根 つよつよエンジニアへの依存 チームサイズ肥大化 人・チーム

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当時抱いていた課題感 兼任スクラムマスターとして頭の片隅で考えていた課題感 7 職種間の受け渡し リソース効率重視 プロセス (スプリントレビュー未実施) フィードバックループが 回っていない フィードバック POとチームの垣根 つよつよエンジニアへの依存 チームサイズ肥大化 人・チーム 課題への対応に注力できない悩み

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QAを優先してしまいがち 第1領域 第3領域 第4領域 第2領域 QAとして 注力 重要度・高 重要度・低 緊急度・低 緊急度・高 SMとして 注力

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QAを優先してしまいがち 第1領域 第3領域 第4領域 第2領域 QAとして 注力 重要度・高 重要度・低 緊急度・低 緊急度・高 SMとして 注力 どうしてもQAが優先されてしまい、SMがおざなりに

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その他、兼務による影響 兼務を言い訳にする QAで評価されてきたキャリア、SMとして評価されないかもしれない QAも担っているしSMとして頑張れないのはしょうがないと自分を正当化する 冷静に振り返ると、こんな心理的な面もあったように思う そもそもSMの評価ってどうやる の? 評価に関する不安

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11 期限付きスクラムマスター爆誕

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兼任から専任になるための交渉 フラットな組織でやりたいといえば挑戦させてもらえる文化。 周囲へのスクラムに対する理解もある程度醸成できていた。 兼任の弊害を伝え、スクラムマスター専任になりたい旨を相談 SMとして結果を残せるかは懸念 そこにコストかけるべきかは見極めたい 12

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兼任から専任になるための交渉 フラットな組織でやりたいといえば挑戦させてもらえる文化。 周囲へのスクラムに対する理解もある程度醸成できていた。 兼任の弊害を伝え、スクラムマスター専任になりたい旨を相談 SMとして結果を残せるかは懸念 そこにコストかけるべきかは見極めたい 13 そして誕生したのが期限付き専任スクラムマスター

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期限付き専任スクラムマスターについて 14 スクラムマスターとしての活動期限は3ヶ月 ※ただし、結果を出せれば以降は専任スクラムマスターとして継続する (結果の判定方法は後ほど検討する) 3ヶ月は厳しいかもと思いつつ やる気に満ち溢れていたのだが・・・

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15 しかし、このやる気がから回ってあんなことになるなんて 当時の僕は知るよしもなかった...

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16 課題への取り組み

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スクラムマスターになってからの進め方 やみくもに3ヶ月やっても成果があがらないと考え、見える形に戦略を立てるべきと判断。 ロードマップの策定 対策を検討 注力トピックを厳選 チームの観察 17 特に注力トピックを厳選した点は集中する上で大事 このステップ自体は、特段悪いやり方ではなさそう

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具体事例:POとの垣根 POとメンバー、POとスクラムマスターそれぞれの関係性があまりうまくいっていなかった。 ・外注関係のような関係性になっている ・シニアエンジニア以外との会話が少ない ・誤解を生むコミュニケーション 18 ・コミュニケーションが少ない ・信頼関係が築けていない ・POを支援することができていない リーダーズインテグレーション 毎週1on1 + EMからの支援 PO メンバー SM

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リーダーズインテグレーション 匿名による率直なフィードバックを与えるアクティビティ 1 リーダーが心境を表明し、リーダーが退室する 2 リーダーに関することでわいわいする(期待すること/やめてほしいこと、など) 3 メンバーが退室し、代わりにリーダーが入室する 4 誰が言ったかは明かさず、ファシリテーターがリーダーにフィードバックする 5 メンバーが入室する 6 リーダーがフィードバック内容を元に感じたことや考えを共有する 参考情報

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施策した効果 それぞれの垣根に対して一定の改善に貢献することができた。 20 リーダーズインテグレーション 毎週1on1 + EMからの支援 PO メンバー SM 開催1ヶ月後行ったアンケートではPO との関係性に改善が見られた 会話を重ねる中でお互いの価値観を共有 でき、距離を縮めていけている実感 根本解決とは言えないが、多少なりともチーム貢献できた

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専任SMとして活動してみて 考える余力や集中できる時間が増えた QAが忙しいという言い訳ができない状況 専任でやると決めたことによる覚悟や勇気 ゆっくりチームのことを考えられなかった じっくり考えようとしても緊急タスクで中断 モチベーションが保ちづらい 根が深い問題ほど特に 兼任 モチベーション高く取り組める 専任 ・・・ ・・・

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22 立ち込める暗雲

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根本原因への追求 POとの垣根 根底の原因 POとの垣根は明らかに目に見えていた課題。 しかし、根本的な解決をするには、目に見えていない水面下の原因にアプローチしたい。 POに限らないチームの一体感の醸成が必要なのでは

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チームの一体感を生むための施策 チームビルディングをやったことがなかったため、チムビルを実行。 チームメンバーがお互いの強みや価値観を知る 24 仕事の進め方や行動規範に関する合意事項 明確な成果が得られないどころか、メンバーから不満の声や やる意義がわからないなどの意見が挙がる結果に ワーキングアグリーメント ドラッカー風エクササイズ 軽く共有するだけの時間しかとれず、対話し て深くお互いを知るまでには至らず 様々な意見が挙がり合意までに時間がかかり すぎ、合意できず

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チームの一体感を生むための施策 チームビルディングをやったことがなかったため、チムビルを実行。 チームメンバーがお互いの強みや価値観を知る 25 仕事の進め方や行動規範に関する合意事項 明確な成果が得られないどころか、メンバーから不満の声や やる意義がわからないなどの意見が挙がる結果に ワーキングアグリーメント ドラッカー風エクササイズ 軽く共有するだけの時間しかとれず、対話し て深くお互いを知るまでには至らず 様々な意見が挙がり合意までに時間がかかり すぎ、合意できず 施策をやる納得感が醸成されていないことが大きな要因 チームサイズが大きいことを特に問題視

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26 想定外の失敗

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チームサイズが大きいことによる問題 • 深いディスカッションができない • 合意形成が難しい 10名の場合、45のパスが存在する https://agilepainrelief.com/blog/scrum-team-size.html

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チームの分割 チーム分割するにしても納得感の醸成が重要。だが、チームサイズが大きく対話と合意形成が難しい 実際はそんな単純に合意できるわけはなかったのだが、、、 全員で対話 1on1で各人と対話 まずは1on1で一人ひとり対話して 納得感の醸成に努める 全員で集まる場を設けて合意する

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1on1で各人と対話 対話により懸念がでなくなったので納得感の醸成ができたと判断 あとは全員集まる場を用意して、合意するだけ チーム分割する理由や効果について 私 メンバー (懸念) 懸念に対する説明 ・・・ ・ ・ ・

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全員で対話 納得してもらっているのでスムーズにいくはずだったが・・・ ぼく メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー 余裕っしょ

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全員で対話 全くの想定外の状況・・・ 重苦しい雰囲気の中、合意できずに終了 メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー メンバー 合意した覚え はない ・・・ ・・・ ぼく オワッタ

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32 スクラムマスターの終焉

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スクラムマスターの継続判断アンケート スクラムマスターの継続判断方法:メンバーへのアンケート調査に決定 メンバーからの不満が溜まっている可能性を考慮し、まだ期限の3ヶ月まで猶予はあるが 中間アンケート調査をすることになった。 アンケート結果は・・・

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スクラムマスターの継続判断アンケート スクラムマスターの継続判断方法:メンバーへのアンケート調査に決定 メンバーからの不満が溜まっている可能性を考慮し、まだ期限の3ヶ月まで猶予はあるが 中間アンケート調査をすることになった。 アンケート結果は・・・ 専任スクラムマスターを推す意見はほぼなかった ただし、予想していたほど厳しい意見はなかった

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期限付きスクラムマスターの終焉 メンバーへの謝罪 期限まで猶予はあったが挽回する自信もなく混乱させた責任もあるため 無用な混乱を招いたり強引に進めたことに対する謝罪 本気で怒っていたりうんざりしている人がいたわけじゃない(と思う)ので、 すんなり受けれいてもらったように思う。それだけが唯一の救い。 専任をやめて兼任に戻ることにした

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36 失敗の振り返り

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何が問題だったか? チーム分割という対策にメンバーが納得していないまま推し進めてしまった チームサイズが大きいことによるデメリットを メンバーみんなは実感していない 深いディスカッションができない 合意形成が難しい 責任が分散されてコミットしにくくなる ・ ・ ・ チームサイズ肥大化によるデメリット メンバーからすると身に覚えのない課題を持ち出して、 ただただチーム分割をやりたいだけの人に映る

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問題の本質 チーム分割をただやりたいだけに見えたというのは間違っていない、というか実際そうだったかも 期限付き専任スクラムマスター 3ヶ月以降も専任スクラムマスターでいるために、 周りに評価されることを目標にしてしまった 3ヶ月でなんとか実績を残さないと・・・

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どうすればよかったか 無理に説得しようとするのではなく、 メンバーが気づくまで中長期的に見守っていく姿 勢 もちろん、メンバーが気づいていない課題感にスポットを当てる取り組 み自体も大事ではある、今回はそれを強引に解決しようとしてしまった

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チームとの向き合い方 あ、これはマズイ!対策考えなきゃ メンバー 私 チーム分割すべきだ! 何としても理解してもらわないと! ・・・ (必死に説得) なんだか話しづらい メンバー 私 なんでだろう・・・ (チームサイズに関する助言) チーム分割検討してみたい! 今回の アプローチ 別の アプローチ

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自分との向き合い方 チーム分割する理由や効果について 私 メンバー (懸念) 懸念に対する説明 ・・・ ・ ・ ・ 本当に納得して くれてるのかなぁ 思い返すと自分自身不安もあった 自分自身が感じたことを認知する

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振り返りまとめ スクラムマスターとしてやるべき目標を見失わないようにする そのためには短期的だけじゃなく中長期的な視野で考える チームとの向き合い方も重要だが自分ともしっかり向き合う

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43 エピローグ (おまけ)

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現職における専任スクラムマスターの気付き 現職に転職後、QAとの兼任スクラムマスターとして振る舞ってきた。 今年7月に専任スクラムマスターに転向。 2024年7月 2022年9月 現職 入社 専任スクラム マスターへ転向 44 現職においても兼任だとスクラムマスターに注力できない悩みはあった 解決方法は専任になるしかないかも QAとの兼任スクラムマスター 専任スクラムマスター

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現職における専任スクラムマスターの気付き 短期・長期の幅広い視野で考えられる分、 どこが重点ポイントかを整理しておくのが重要 やるべきこと見つかるだろうかという 漠然とした不安 むしろ課題は無限に見つかる 課題を挙げすぎて自分の中で優先順位付けができていない状態。 マネージャーの1on1で「おもちゃ箱をひっくり返したような」と いうフィードバックをもらう程に。 1on1 オススメ

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以上です!! ご清聴ありがとうございました!!! 46