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3.10 まとめ: 現実のネットワークはランダムではない 国際人間科学部 グローバル文化学科 岩永悠希

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実ネットワークはランダムか? ✓ ランダム・ネットワークモデルは,複雑なシステムで観察されたランダムに見えるネットワーク を,単純に(純粋に)ランダムなものとして描くべきだとする. →「複雑さ=ランダムさ」 ✓ しかし現実には,非常に複雑なシステムの背後には何らかの秩序があると考えられる. この秩序はネットワークの構造に現れるものであり、結果として実ネットワークは完全に ランダムな配位から組織的に逸脱してくる. ✓ ランダム・ネットワークがどの程度現実のシステムを説明できるかは,系統的に行われる定量的 な比較によって決められなければならない. ✓ ランダム・ネットワークモデルは定量的な予測を導くので実際に比較することが可能.

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RNモデルが導く定量的な予測 次数分布 • 二項分布に従う(𝑘 ≪ 𝑁のときポアソン分布で近似可能) →ポアソン分布では実ネットワークの次数分布を捉えることができない(ハブの存在) 連結性 • 𝑘 > 1のときどんなネットワークでも巨大連結成分が出現する(相転移) • 多くの実ネットワークでは 𝑘 < ln 𝑁なので(表3.1),孤立したクラスターに分かれているはず →多くの実ネットワークの連結性を説明できない 平均距離 • 平均距離 𝑑 は Τ ln 𝑁 ln 𝑘 で近似できる →観測された平均距離の良い近似であり,スモールワールド現象の出現を説明できる

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RNモデルが導く定量的な予測 クラスター係数 • 局所クラスター係数𝐶𝑖 は各ノードの次数𝑘𝑖 に依存しない • 平均クラスター係数 𝐶 はシステムの大きさ𝑁に依存する →実ネットワークの観測値によると,クラスター係数𝐶 𝑘 は次数の増加に伴って減少し,システムの 大きさからほぼ独立している 結論 ✓ 実ネットワークについて,ランダム・ネットワークモデルで合理的に説明できる性質は スモールワールド性のみ ✓ ランダム・ネットワークによって正確に説明される現実のネットワークは知られていない

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ランダム・ネットワークモデルの有用性 ランダム・ネットワークモデルは,実ネットワークの性質(現実のシステムの特徴)を 探究する上で重要なレファレンス(i.e., 帰無モデル)となる 1. 問題となっている性質がランダム・ネットワークにも存在する場合 →ランダム性によって(偶然の産物として)説明できる 2. 問題となっている性質がランダム・ネットワークに存在しない場合 →何か別の秩序の存在を示しており,さらなる調査・説明が必要となる 重要な問い:観察されたネットワークの性質は,偶然の産物だろうか?