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事例から学ぶ アジャイル推進者のための 「アイデアを組織に導入すること」 を支える技術 Latte XP祭り2024

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自己紹介 •Latte •X(twitter): @latte158840 • アジャイルコーチ • コーチ/コンサル/研修/組織開発/スクラムマスター育成 • 個人事業主

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本日のテーマのきっかけ • メンティーのスクラムマスターから相談があった。 • 「プラクティスや、アイデアをチームに導入したいのに阻まれて しまう」 • 自分なりの過去を整理してお伝えしたら役に立つのではないか?

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本日の発表の形態 • 昔の私の体験談を会話とナレーション形式でお届け • 少しだけわかりやすいように脚色

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プロローグ

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うおー、やっと完成したぞー!

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Aくんは、事業会社の2年目の若手エンジニアです。

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ウォーターフォールのプロジェクトで、開発の一員として頑張り 残業を多くやって、期日を少し遅れる程度で完成させたようです。

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そして、Aくんのチームが作った機能は承認され、リリースされました。

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数日後。

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うーん、ユーザが伸びませんねぇ。 アプリのホーム画面に動線をおいてもらったのですが。 企画さん

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Aくんが開発したシステムは、作ったものがイマイチだったためか、 ユーザに使われることは殆どありませんでした。

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しかし、使われなかったこととは裏腹に、Aくんのチームは ウォーターフォールのプロジェクトの完遂が評価され表彰されました。

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うーん、ユーザから使われなかったということは、 会社のためにならないものを作ってしまったということなのに、

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評価されていいんだろうか。なんかモヤモヤするなぁ。

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ちょうど、そのときAくんは1年前に読んでいた本、 「リーンスタートアップ」を思い出していました。

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リーンスタートアップでは、ものづくりに時間をかけて世に問うのではなく、 早く世に問うて価値を検証するために作ることを重視していたはず。

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じゃあ、リーンスタートアップは、今の状況にピッタリじゃないか!

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わかったら膳は急げだ。

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初めての提案

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部長、部長!お疲れ様です

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開発部部長 B部長

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ああ、Aか。どうしたんだ?

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この前は表彰ありがとうございました!

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先月、アプリチームはよく頑張ったからな。

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でも、あの機能、正直あまり使われてないじゃないですか。

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そうだな、でもそれは企画部の問題だからな。 開発部は悪くないから気にしなくていいよ。

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そこでなんですが、もっと使われるサービスを作るための方法として リーンスタートアップってプロセスがありまして

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ん?あー、そうだなぁ。でも、あれは企画部の問題だからな。 開発部がコストを負担したり、リスクを追う必要はないよ

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みんなで使われるサービスにしていきませんか?

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そんなことより、アプリの作り方は完璧か? そんなことはアプリ開発がリーダーくらいにできてからだ

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はーい。(泣)

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スクラムとの出会い

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後日Aくんは、社内の勉強会でスクラムが題材のものがあると知り、 予習のためにスクラム開発についても書籍を読みました。

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アジャイル・スクラム開発であれば、 ものを少しずつ作っていくことができるみたいです。

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ええ!この方法を使ったら、やりたいって提案していた リーンスタートアップとすごく相性がいいじゃん!!

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これは、やるしかない!!

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部長、部長!お疲れ様です

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ああ、またAか。どうした?

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前に、使われるサービスを作るために リーンスタートアップやりましょう!って言ったじゃないですか?

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ああ、そうだな。

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それにすごく相性のいい開発手法を見つけたんですよ!!

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あー、そうなのか。

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そうなんですよ。その上、その方法を使ったら 残業をたくさんしなくても期日通りにリリースできるかもしれないんです

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まぁでも開発者は残業してなんぼだろ

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いやいや、効率よく作りましょうよ

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いまでも、みんなが頑張ってくれて 期日に近くリリースできているからなぁ

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いやいや、いまめっちゃ大変なんですよ。

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それに今の作り方だと、 出来上がってから思ってたのと違うってことも起こりやすいんです

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それは企画部が、しっかり想定してないからいけないんだよ。

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ちなみに、Aはその開発手法でやったことあるの?

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いえ、ありませんが・・・

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実績がないやり方は採用できないよ。

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B部長は今のやり方で評価され、部長にまで昇進した人物。

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だから、現状のやり方の否定は、 B部長の考え方の否定だと捉えられてしまいました。

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Aくんは、試しにはじめてみないと実績を作ることもできず。 実績がないことを盾にされるとお手上げでした。

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数日後、 Aくんは社内でアジャイルの推進をしているC先輩に相談しました。

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アジャイル推進本部 C先輩

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C先輩、部長にアジャイルの良さを伝えて説得を試みたのですが、 何度やっても駄目で。

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相手は、何を望んでいるのか知っている? 相手は、その活動を誰に説明しないといけないのか知ってる?

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いえ、考えたことなかったです

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じゃあ、それを考えてみようか

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そこでAくんは、B部長が何を望んでいるか、 どういったことを恐れているのか全く知らずに、

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自分のアイデアを強引に導入するための説得や、 正論しか話してないことに気づきました。

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部長!お疲れ様です

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ああ、またAか。

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先日は、いろいろと、すみませんでした。

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ああ。

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ちなみにですが、部長って何を望んでるんですか?

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ん?

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アジャイルを始めるとしたら、誰に説明しないといけないんですか?

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もう、そんなことはいいから、開発に集中しなさい。

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B部長に「何を望んでいるのか」「誰に説明しないといけないのかな」など 聞こうとしましたが、教えてもらえません。

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B部長はAくんが何か企んでいると思ったのか、何も教えてくれません。 「いいから、自分の開発に集中しなさい」と言うばかり。

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くそー、正論ではなく相手に寄り添おうとしたのに、 それすら駄目だった・・・

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正論でまくし立ててもダメ、相手の望みを聞こうとしてもダメ、 いったい、どうしたらいいんだぁ〜〜

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批評や提案は後回し

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後日、AくんはC先輩の アジャイル推進の社内コミュニティに参加していました。

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大切なのは相手の環境や立場を理解すること。批評や提案は後回し

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相手のことを理解せずに、批評や提案ばかりをしていたかもしれない

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Aくんは深く反省しました。

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それから数ヶ月、Aくんは何度もB部長の説得を試みましたが、 残念ながら報われず。

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そしてその間も、スクラム開発やリーンスタートアップについて 理解を深めるため勉強を続けてしました。

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さらに、アイデアを組織に導入する方法に関連する情報はないかと、 自分でも勉強をしていました。

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提案の方法にも詳しくなっているはずなのに、アジャイルに関する 提案は一向に通らなくって辛い。はぁ。。。凹むなぁ

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数分後

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腐っていてもしょうがないな、 前向きに動かないとずっと状況が変わらない。

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信頼の構造との出会い

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そして、その時期にAくんは仕事の役に立つ本はないかと、 社会心理学に関する本を読んでいました。

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心理学を学べば、会社の仕事で役立つはず。

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その時に出会ったのが「信頼の構造」です。

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信頼の構造は、社会心理学の観点から信頼について研究を 紹介してくれた本でした。

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この本を読んだことでAくんは、信頼の概念や、どのような信頼が存在し、 相手に対しどう影響を与えるのか、について理解を深めました。

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物事に対して「能力」と「騙さない」の2つの観点が重要であること。

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「騙さない」と認識されるためには、「騙す必要がない」と思われるか 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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「個人的に信頼できる」と思われるか「カテゴリとして信頼できる」と 思われる必要があること。 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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「カテゴリとして信頼できる」ような アジャイルの達人にいきなりなるのは難しいだろう 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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『個人的に信頼できる』と思われる人になろう。 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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ここでC先輩からのアドバイスが蘇ります。 「大切なのは相手の環境や立場を理解すること。批評や提案は後回し」 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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確かに、相手のことを理解する前に、批評や提案をしていたら、 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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上から目線だと捉えられたり、『こっちにはこっちの事情があるんだよ!』と 思われ、印象が悪くなり信頼も失われていくよなぁ 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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AくんはC先輩からのアドバイスの重要性に気づき、 言葉を噛み締めました。 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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C先輩の言葉は偉大だなぁ 騙さないと認識されるためには ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・カテゴリとして信頼できる と思われる必要がある

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C先輩が進めていた本

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また、C先輩がアジャイルの推進する人たちに 本を紹介していたのを思い出します。

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それがこの本「裏方ほどおいしい仕事はない!」です。

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雪かき仕事は、達成感も、賃金も、社会的権威も得られないが、 誰かがやらないといけないもの。 雪かき仕事は以下が得られない 達成感 賃金 社会的権威 しかし誰がやらないといけない

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たとえば、ホワイトボードをきれいにして、ペンがかけるか チェックしたり、会議の議事録を取る係などがこれに当たる 雪かき仕事は以下が得られない 達成感 賃金 社会的権威 しかし誰がやらないといけない

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「信頼の構造」にあった「個人的に信頼できる」と思われることと、 雪かき仕事には重要な関わりがあるのではないかな 雪かき仕事は以下が得られない 達成感 賃金 社会的権威 しかし誰がやらないといけない

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人事異動

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3月になり、辞令の時期です。

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3月になり、辞令の時期です。

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失礼します

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ここに呼んでいるのは、部署異動になる人なんだ

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Aくん、君は来月からXXサービスの部署に異動になった。

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え、異動!? B部長に提案するときに現状を否定したのがマズかったのかな。

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もっと、アジャイルに関心のないところだったらどうしよう。

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XXサービスは、まったく知り合いの居ないところで、 初めての部署異動です。

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辞令からの2週間は不安な気持ちで引き継ぎを実施しました。

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XXサービス

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Aくんは4月になり、XXサービスの部署に異動になりました。

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するとXXサービスは、幸運にもアジャイルを実践している部署でした。

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しかし、アジャイルを実践しているといっても、 研修を受けて始めたばかりで手探りで試しているところでした。

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そのため、一生懸命勉強してきたAくんにとっては ツッコミどころも多い状態でした。

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おおお、なんか自分の知っているスクラムと ちょっと違うけど実施はできているみたいだ。

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まずは、過去の失敗を繰り返さないためにも、 批評や提案をせずに相手の立場を理解することに注力しよう。

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チームの先輩に、今のやり方1つ1つがどんなきっかけで始めたのか、 ひたすらヒアリングしました。

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チームの状況を理解するために、いろいろ質問しないとなぁ。

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『なんで〇〇をやってるんですか?』のように、 批判的に聞こえるような聴き方をしないようにしないと。

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デイリースクラムって、何きっかけで今のようになったんですか? XXサービス 先輩

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ん? あー、そうだね、デイリーで細かく詳細を共有したほうが 仕事をしやすいって気づいて、伸びていったかなぁ。

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ちょっと長すぎるよね、おれも直接関係ない話があって疲れるもん。

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そうなんですね。ありがとうございます。

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やったぞ〜!先輩に嫌な感じを持たれずに、 すこしだけ立場を理解する事ができたぞ。やったぁ。

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雪かき仕事

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『裏方ほどおいしい仕事はない!』にあった 雪かき仕事は何をしようかなぁ。

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そういえば、今日教えてもらった問い合わせ対応って、 みんなやりたがらないんじゃないだろうか。

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なんか見返りを求めているみたいで気になっちゃうけど、 雪かき仕事として問い合わせ対応をできるだけ引き取ろう。

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これで個人的に信頼されることにつながるかなぁ?

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チームに来てサービスの技術にも詳しくなくて教えてもらうことも多いし、 せめてその恩返しになれば、いっかな。

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Aくんは、できるだけ問い合わせ対応などの 皆が避けたがる仕事を率先して行いました

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「信頼の構造」で学んだ、「個人的に信頼できる」につながったら 儲けものくらいの気持ちで。

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Aくんは前の部署で提案をしていたとき、途中でB部長が話を 聞いてくれなくなったのは、信頼関係の欠如が問題だと感じたので、

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今度は信頼関係を構築できるように 自分ができることは積極的に行いました。

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スクラムマスターがやりたい

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そのチームでは、スクラムマスターが1ヶ月交代で変わるルールでした。

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Aくんがチームに入って2ヶ月後、3人目の スクラムマスターに変わるときに、お願いしてみます。

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僕、スクラムの勉強を継続的にやっていて、スクラムマスターに 興味があるのですが、交代制ではなく継続でやってみてもいいですか?

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Aくんになら任せられるよ!

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これまで皆が避けたがる問い合わせ対応を 積極的にやっていたことも評価されたのか

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Aくんはめでたくスクラムマスターになることを 認めてもらいました

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過去に失敗して立ちいかなくなってしまった経験があるので、 Aくんは慎重に慎重に進めました。

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今回は「アイデアを組織に導入する」わけではありませんでしたが、

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信頼関係を構築するために頑張っていたため、 お願いを快く受け入れてもらうことができました。

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やったぁ!念願のスクラムマスターを任せてもらえたぞ! といっても、 チームでスクラムマスターをやりたい人は居なさそうだったけど笑

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誰かの課題を解決する

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そして、Aくんはまたも本を読んでいました。 知人に進められた本「SPIN営業」です。

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「SPIN営業」は、高額商品の営業職の人が契約を取るまでに 必要なプロセスを科学的に解明している本でした。

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書籍で推奨されている4ステップの営業法の2つ目のステップで 相手が抱えている課題を引き出すための「問題質問」を利用していました。

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そうか、アイデアを提案をするときには、 誰かの課題を解決することが重要なのか!

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そして、またC先輩からのアドバイスが蘇りました。

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C先輩の言ってた「相手は、何を望んでいるのか知っている?」、 「相手は、その活動を誰に説明しないといけないのか知ってる?」の質問は、

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相手の課題を解決することに繋がっていたんだ!!

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久々の提案

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後日、A君はアジャイルに関する勉強も続けてました。

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最近は「アジャイルな見積もりと計画づくり」という本を 熱心に読んでいるみたいです。

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アジャイルな見積もりと計画づくり実践してみたいなぁ。 チームに提案してみよう!

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ああ、ダメだダメだ。「提案は後回し」だ。 それで散々失敗したんじゃないか。

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「誰かの課題を解決する」ことできるときに提案しよう。

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そう思い、実践したい気持ちをこっそりしまいました。

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しばらくしたある日、開発メンバーの先輩が体調不良になりました。 しかし、先輩は「休めない」といって出勤して業務を続けていました。

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どうして、休まないんですか? 有給残ってないんですか?

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事前に決めた目標設定に関する期末までの スケジュールが押していて、休むと評価に響くからね。

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そこでAくんは、ひらめきました。

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(もしかして、 今がアジャイルな計画づくりをするタイミングなのでは??)

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というのも、詳しく話を聞いてみると、いつもなんとなく見積もりを出して

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部長からスケジュールを圧縮して欲しいと言われ、 カツカツのスケジュールを通り越して遅れた事になってしまうとのこと。

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その上、部長から言われたことは仕方ないと スケジュールの圧縮にも応じていたというではありませんか。

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(アジャイルな見積もりと計画づくりをすることで、 根拠のある見積もりを出せば、スケジュールの無理な圧縮を防げるのでは?)

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そこでAくんはチームに、 とくに休めなくて困っている先輩のことを話しました。

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「体調不良になっても休めない」という課題を解決するために、 「アジャイルな計画づくり」をやりませんか?

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これで、見積もりの根拠が明確になりますし、 無理にスケジュール圧縮がされにくいかもです。

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それはいいアイデアだ。なにか根拠が説明できれば、部長からの スケジュール圧縮にも反論できるかもしれないね!ありがとう!

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これは、やはり「誰かの課題を解決する」提案だったからか、 すんなりOKをもらえました。

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その上、チームからとっても喜ばれることになりました。

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アジャイルに関するもので「組織にアイデアの導入する」提案が 喜んで受け入れられたのは初めての経験だったのと、

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合わせて先輩から感謝までされたのでAくんはすごく嬉しくなりました。

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やったぁ!アジャイルに関する提案で、感謝までされちゃった!! 人の役に立てたんだ!わーい!わーい!

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やったぁ!勉強したことが実ったぞー!!

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Aくんは勉強をして、自分の中に知識をため込んでおくことで、 課題を発見したときに解決策を逆引きできるようになっていたようです。

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チームのお困りごとに対して、 「これで解決できるよ」と言える状態になっていました。

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このような流れを経て、Aくんはアイデアを組織に 導入することに対する熟練度をどんどん上げていきました。

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課題を解決するだけじゃない

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ある日の社内の集まりで、他のスクラムマスターと話をしていると、 「誰かの課題を解決すること」につながっているわけではないのに、

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アイデアの導入がうまくいってる場合もいくつかあることに気づきました。 どうしてでしょうか?

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不思議に思ったAくんは、そのスクラムマスターに話を詳しく聞きました。 Aくんが見つけられたケースは2パターンありました。

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1つは、いくつものプロジェクトでスクラムマスター経験があり、 熟練のスクラムマスターとしてチームに参画している場合。

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もう1つは、長年そのチームに所属していて、 チームメンバーとの関係性が深くなっている場合だと気づきました。

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おそらく前者の熟練スクラムマスターは、 信頼の構造で言われる「カテゴリとして信頼できる」と思われているようで、

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後者の長年チームに所属しているスクラムマスターは、 「個人的に信頼できる」と思われているようです。

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それと、かなり厚い信頼ができてくれば、「誰かの課題を解決する」わけ でなくとも、「組織にアイデアを導入する」ことができるようです。

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また、貴重な学びを得られた。 ありがたいなぁ。

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認められる

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さらに、半年くらいの月日が経ちました。

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Aくん、君が頑張っているのはみんなから聞いているよ。 来期からは開発推進室として、他のチームの課題も解決してくれたまえ。

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Aくんのアジャイルの推進活動が評価され、 10月からは開発推進室というチームにも兼務として配属されました。

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そして、開発プロセスに関する部署内の課題を 解決することも任されることになりました。

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そのため、自分の所属する開発チームだけではなく、

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同じサービス内の別のチームにも、サービス全体の課題に対しても、 アイデアを導入することが増えていったのであった。

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しかし、このときAくんは自分が解決のためのノウハウを溜め込んでいて、

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まわりの人がアジャイルに関する知識をAくん任せにして学ぶことが なくなってしまっていたことに、まだ気づいてはいなかった。

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次回作、アジャイルの知識をAくん任せにしたチームの違った悲劇。

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新しい提案の知識

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このころ、Aくんは新しい本を学んでいました。 その本はアジャイル界隈だとかなり知名度のある「Fearless Change」。

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こちらは、組織にアイデアを導入する方法をパターン・ランゲージ形式で 紹介されている今回の活動にピッタリの本です。

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この本を読んだことでAくんは、ものによっては組織に導入するときに 「小さくはじめる」や「やってみる」を試せばよかったと感じました。

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エピローグ

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その後Aくんは、また異動をきかっけに別の部署へ移りました。

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そして、スクラムマスターとしての活動が評価されたのか、

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新しい部署ではコーチとして、スクラムマスターの育成や、 部署内の研修などを任されるようになりました。

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このころには、部署でコーチとして認められたり、勉強会で登壇していたり していることで、アジャイルの推進者としてベテランのように受け取られ、

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信頼の構造でいう 「カテゴリとして信頼できる」と思ってもらえていたようです。

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さらに、コーチとして実践するときには、 今までと違った「組織にアイデアを導入する」経験を積むことができました。

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1チーム見ていたときだけではなく、部署に対して研修を依頼されたり、 制度の相談などもうけるようになりました。

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コーチとして、自分の所属するチーム以外に 「アイデアを導入する」ときには、

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直近で学んだ「小さくはじめる」や 「やってみる」を活用できる部分が沢山ありました。

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例えば、チームが沢山学ぶことに課題を感じているのであれば、 いきなりスクラムを導入するのでなく、ふりかえりだけを設定するような。

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あとは、新しい施策を導入するときに、 プロトタイプとして1チームで試しに実施して反応を見てみるなど。

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そして、A君はいつの間にか「組織にアイデアを導入すること」を 無意識に近くできるようになっていました。

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過去の経験の振り返り

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ここからは、Aくんが自在に「組織にアイデアを導入すること」が できるようになった要因や、意識的にやっていたことを洗い出してみます。

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Aくんは自己研鑽のため、アジャイル関係の本とは別に、 「組織にアイデアを導入すること」に関係する本を読んでいました。

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すると、今回の「組織にアイデアを導入する」までのプロセスに 関係しそうな本3冊と出会いました。

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「信頼の構造」と、「SPIN営業」、「Fearless Change」です。

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信頼は「能力」と「騙さない」の2つの観点が重要である。 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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「騙さない」と認識されるためには、「騙す必要がない」と思われるか 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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「個人的に信頼できる」と思われるか「カテゴリとして信頼できる」と 思われる必要がある 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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はじめは実績もないため、みんなが避けたがる仕事を率先して 受けることで、個人的な信頼を獲得できた。 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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その後は、チームに対して改善アイデアを伝えて 恩恵を得ることで、信頼を拡大していったと思います。 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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他のスクラムマスターの事例を聞く限り、信頼が厚くなってくると、 かなり簡単にアイデアの導入がうまくいくようになるみたい。 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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実績を積んでいくことで、だんだんベテランや経験豊富な人として 紹介してもらえることが増えて、カテゴリとして信頼されることが増える 信頼 ・能力 ・騙さない ・騙す必要がない ・個人的に信頼できる ・みんなが避けたがる仕事をする ・カテゴリとして信頼できる ・実績を積んでいく ・ベテランとして紹介される

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「SPIN営業」では、書籍で推奨されている4ステップの2つ目のステップで 「問題質問」という相手が抱えている課題を引き出すための質問をしていた。 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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この本を読んだことで、相手にアイデアを提案するときに、 「誰かの課題を解決する」ことが重要であると学べました。 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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だから、学んだことをすぐに実践するために提案するのではなく、 学んだことを溜め込んでおいて、 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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「誰かの課題を解決する」ときに、 脳内から逆引きして提案すると通りやすいとも気づけました。 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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B部長に懸命に提案していたとき、作ったものが使われるかどうかで 評価の変わらないB部長ではなく、 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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作った機能が使われないことで不利益を被っていたD部長に アジャイルの提案をすればよかったなぁ 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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相手の課題を解決するとしても、相手の情報がないと難しい。 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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そのためヒアリングする必要があるのだけど、一定水準の信頼がないと、 情報を教えてもらえないのではないか 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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「誰かの課題を解決する」に関しても、 信頼が元になっているなぁ 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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確かに、老人相手に訪問販売をする人は、最初はお客さんの御用聞きをして 信頼関係を構築してから高い布団を売りつけるよなぁ。 営業方法の4つのステップ ・状況質問 ・問題質問 ・示唆質問 ・解決質問 学び ・問題質問 ・相手の課題を引き出す ・解決質問 ・提案は相手の問題を解決する

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この本を読んだことで、ものによっては組織に導入するときに 「小さくはじめる」や「やってみる」ことをもっと早くから試せばよかった。 お気に入りのパターン ・小さくはじめる ・やってみる

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例えば、チームが沢山学ぶことに課題を感じているのであれば、いきなり スクラムを導入するのではなく、ふりかえりの時間だけを設定するような。 お気に入りのパターン ・小さくはじめる ・やってみる

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あとは、新しい施策を導入するときに、 プロトタイプとして1チームで試しに実施して反応を見てみるなどかな。 お気に入りのパターン ・小さくはじめる ・やってみる

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おしまい