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知識社会マネジメント 佐々⽊⼀ Hajime Sasaki Ph.D. 特任准教授 東京⼤学 未来ビジョン研究センター Innovation management in the knowledge society 6⽉10⽇ 第9回 シビックテックと 地域課題解決の⺠主化

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(事前告知)本⽇の課題 •あなたの⾝近にある、⾃販機モデルで対応が困難な地域課題、 を取り上げてください。 •課題に対して、シビックテックを活⽤した市⺠参加型のソ リューションのアイディアを提案してください(アプリ、フレーム ワーク、データベース等)。 •ポイント •市⺠や⾏政をまきこむ⼯夫(ムーブメントの起こし⽅) •データの取得・収集・組み合わせ •持続可能な運⽤のしくみ(資⾦・⼈材・ビジネスモデル) etc. •締め切り 6/16 23:55 JST (ITC-LMSへ提出) •スライド1~3枚︓次回冒頭で、ランダムに発表いただくかもしれ ません。

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誰がなおす︖(チャットに投げてください。10秒 )

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サービス消費者 VS サービス提供者 市⺠︓街をメンテナンスするのは市役所の仕事、 税⾦も払っているんだからきちんとやって欲しい。 役所︓市⺠のためにメンテナンスしたいのは⼭々だが、 予算にも限りがあり、すぐに全部をやるのは到底不可能。 市⺠︓役所はきちんと仕事をしてくれない。 役所︓市⺠は市役所の仕事をわかってくれない。 『ベンチを直す⼈は出せないが、ペンキならある』、FixMyStreetでわかったこと, http://okfn.jp/2013/02/12/fmsj/ 解決するわけがない。

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lͱ͔͘ࢲͨͪ͸ɺ੓෎ʢ࣏ࣗମʣͱ͍ ͏΋ͷΛҰछͷࣗಈൢചػ˞ͷΑ͏ͳ ΋ͷͩͱߟ͕͑ͪͩɻ ੫ۚΛ౤ೖ͠ɺಓ࿏΍ڮɺපӃɺফ๷ɺ ܯ࡯ͳͲͷߦ੓αʔϏεΛऔΓग़͢ɻ ͦͯࣗ͠ಈൢചػ͔Β๬Έͷ΋ͷ͕ग़ ͯ͜ͳ͍ͱจ۟Λݴ͏ɻ ࢲͨͪ͸ࢢຽࢀՃͱ͍͏΋ͷΛɺͳͥ ͔ͩࣗಈൢചػΛ༳͞ͿΔ͜ͱͱಉҰ ࢹ͢ΔΑ͏ʹͳͬͯ͠·ͬͨɻz Gov 2.0: It's All About The Platform, https://techcrunch.com/2009/09/04/gov-20-its-all-about-the-platform/ Tim OʼReilly ※「⾃動販売機型政府」の概念⾃体 は⾏政学者ドナルド・F.ケトルに よるものが起源。

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社会課題は制度の狭間にあるロングテール • 福祉、交通、教育etc︓変化していく社会、増える課題の数と種類 • ⾼齢化、少⼦化 → 税収減、⼈員減 ⽩川展之, シビックテックの実践とオープンサイエンスの公共政策, より抜粋 ※ • 提供されるサービスのメニューが予め全て決まっている。 • ⾃分の製品を⾃販機に⼊れてもらえるベンダーは限られている。 • その結果、利⽤者の選択肢は限られ、価格も⾼い。 ⾃治体の既存ビジネスでのサービス 「⾃動販売機モデル※ 」で対応するには限界がある。

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⾃動販売機から市⺠政府へ Input 税⾦ 政府 (地⽅)⾃治体 Output ⾏政サービス (橋、道路、 警察、消防 etc.) 不満があれば、叩く、揺さぶる 抗議活動 政府 (地⽅)⾃治体 市⺠ ⾃販機モデル 市⺠政府 Input 税⾦ Output ⾏政サービス 稲継裕昭 編著, シビックテックより⼀部改変

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Adopt a Hydrant https://www.esri.com/esri-news/arcwatch/1215/adopt-a-fire-hydrant-app-makes-a-splash-in-land-of-10000-lakes

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GetCalFresh(カリフォルニア) • フードスタンプの応募の簡便化 • 取り忘れのリマインダ・適切な⽀給 Honolulu answers(ホノルル) DiscoverBPS(ボストン) ・⾃治体のサイトがわかりにくい ・⾃前の検索エンジンを実装した⾃治体のはしり ・公⽴⼩学校の選択時 ・必要な情報、⼿続きの⼀元化 Clear my record(S.F.)

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活動︓ • フェローシップ︓⾏政⾃治体への派遣 • ブリゲード︓ 各⾃治体におけるコミュニティ活動 • スタートアップ︓ 起業家への助成⽀援 • ピアネットワーク︓成功事例の横展開 • 国際活動︓ Code for All 派遣都市 成果 シアトル、ボストン、フィラデルフィア 学校進学選択マップ、犯罪歴消去 シカゴ、デトロイト、ニューオリンズ他 311プロセス⽀援、バス通知システム サンフランシスコ、ラスベガス他 コミュニティヘルスシステム アトランタ、デンバー、チャタヌガ他 オープンデータ活⽤、エコシステム サマービル、インティアナポリス他 教育⽣徒⽀援、故郷安全情報提供 フェローシッププログラム成果例 Mission︓ ”21世紀における市⺠による市⺠のための政府”の実践

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Delivery-driven goverment Deliver driven goverment の原則 1. ユーザニーズを理解し、ユーザに合わ せる。 2. 何年も経った統計データから推測する のではなく、リアルタイムなユーザ データをもとに考える。 3. 意図してから、実装されるまで、反復 的に開発を⾏う。

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https://www.ushahidi.com/blog/2018/03/07/elections-are-important-to-ushahidi Ushahidi ︓スワヒリ語 =⽬撃者 週末3⽇の作業でプロトタイプをリ リース その後 ハイチ⼤地震 クライストチャーチ地震 メキシコ湾の原油流出などでも活⽤

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sinsai.info sinsai.info を1ヶ⽉やってきて思うこと【関治之】https://techwave.jp/archives/51650191.html ■震災4時間後にサイト⽴ち上げ ʮ໾ʹཱ͔ͭͲ͏͔෼͔Γ·ͤΜ͕ɺͱΓ͋͑ ͣ6TIBIJEJαΠτΛ্ཱͪ͛·ͨ͠ʯ ■2ヶ⽉後 レポート 1万件以上 アクセス数 100万PV/⽉ 訪問者 65万⼈ ユニークビジター 50万⼈ 参加ボランティア 延べ300⼈ 関治之 ⽒ Georepublic Japan代表 コードフォージャパン代表 政府CIO補佐官

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Code for Japan:「ともに考え、ともにつくる」をコンセプトに、技術活 ⽤をしながら課題解決を⾏なっていくコミュニティ

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Code for Japanの理念

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伽藍とバザール (Eric S. Raymond, The Cathedral and the Bazaar, 2007) •伽藍(⼤聖堂)⽅式︓ •⼀部の開発者のグループ内で開発が⾏ われ、形になるまで外部に公開しない。 •開発の経過は基本的に部外者には⾒せ ない。 •バザール⽅式︓ •参加者を限定せず、⾃由に⾃主的に開 発を進められる。 • 「早めのリリース。しょっちゅうリ リース」 を基本とし、開発過程も公開 することにより、⽣産性を上げる。 https://cruel.org/freeware/cathedral.pdf

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•中央集権な組織ではなく、素早く意思決定、こまめに フィードバック。 •意思決定のルールの例 •多様なメンバーが参加しているので皆が同じ⽅向を向 くのは難しいことを前提に議論する。 •「全員の合意」ではなく「⾏動につながる仮説を」つ くることを意識する。 •「⾃分以外の誰かが◯◯をやるべき」ではなく、「⾃ 分がどう貢献できるか、⾃分が何をしたいか」を基本 に考える。

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出典: 川⼈隆央, FixMyStreet Japanの取り組み • ⽣産年齢⼈⼝は急激に減るが、あわせて地域が狭くなるわけ でもない。街の問題も急激に減ることはない。 • インフラは⽼朽化。 • ⼈⼝の減少に合わせて⾃治体職員も減る。 • 問題に対応できるリソースも減る。 ⼀⽅で • 住⺠は専⾨知識はなくても⾃分の地域に起こった問題を⾒つ けることはできる。 • ⾒つけることは住⺠が⼀部にない、専⾨知識を持った職員が 道路の修繕等必要なことに注⼒できるようにする。

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出典: 川⼈隆央, FixMyStreet Japanの取り組み

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•60%が開庁時間外に投稿されたレポート(半⽥市) •道路の修復にかかる時間の短縮。早ければ数時間。 (複数) •「道路の⽳はだいたい1⽇で直っています。これ は⾃信を持って⾔えます。お褒めをたくさん頂いて います。」(⽣駒市) •防犯灯の故障が多数⾒つかる。 「特に防犯灯につ いては助かりました。暗い時にいつも職員は ⾛って (パトロールして)いませんので」(⽣駒市) •⼟⽇出勤が減った。(半⽥市) 出典: 川⼈隆央, FixMyStreet Japanの取り組み

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Fixe my street の横展開例 ひぐまっぷ

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旧来の電話の仕組みを使ってシステム︓初期費⽤だけで数百万の⾒積もり →広告枠による協賛だけで、税⾦を使わずに提供 CROSSEED 株式会社 株式会社エイゾク スマホアプリがすべてではない すべての地域・世代にスマートフォン、インターネットが 普及しているわけではない。 ⾼齢者などデジタル弱者に情報が届かない問題を旧来のし くみ(電話)を使って解決。

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アプリ < コミュニティ

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Brigade(ブリゲード)︓ Code for Japanが提供する連携プログラムに参加している各地のコ ミュニティ

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Code for Kanazawaから全国展開 オープンソースにして横展開した事例 Open Knowledge Foundation Japan から全国展開 Code for Sapporoから全国展開 Code for Tokyoから全国展開

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vTaiwan(市⺠と台湾⾏政が運営するプロジェクト) • 運営主体︓シビックテックコミュニティg0v 零時政府(ガブゼロ) • ひまわり 抗議運動(2014)を契機に市⺠が⽴法のあり⽅をめぐって 政府への意⾒提案。 • 当初からのg0vメンバー唐凰(Audley Tang)がITデジタル担当になっ てより正式な権限獲得。 • 誰でも法規制に関する議論を提起できるプラットフォーム。 • 多様なステークホルダー (⾏政、企業、消費者)との議論 • 積極的なデジタルツールの活⽤。 • 対⽴する⽴場をあえて明らかにし、相互の考える機会を提供。 • 問題点の集約と解釈。 • ステークホルダー間のコミュニケーションギャップを埋める。 • 意思決定過程の⽂書化(市⺠オブザーバーがフォローできるよう に) シビックテックにおける市⺠参加型 プラットフォームの機能分類,⽯⽥ 聖

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vTaiwanにおけるプロセスとツールのシームレスな接続 Hsiao et al. 2018 • ⼀部が⽴法院で提出 され法案。 • 議論の80%以上が政 府のアクションに。

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vTaiwanにおける市⺠による政府への提案事例 •アルコールのオンライン販売案(2015) •財政部、酒店、市⺠の協議→うまくまとまらず。 •vTaiwan上で450⼈が議論。 •合意形成といくつかの提案。 •販売は限られた電⼦商取引プラットフォームと流通業者のみ •決済はクレジットカードのみ •受けわたしはコンビニで(⼦どもの不正購⼊が不可能) •→2016︓台湾政府草案にまとめ議会提出。

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例)vTaiwanにおける市⺠による政府への提案事例2 •UberX︓台湾進出への規制要請(2015) •公開競技トピックとしてUberX案件の議論開始。 •Pol.isによるリアルタイム意⾒集約 •運転⼿、タクシー組合、企業代表、学識経験者、消費者の利 害を可視化。 •ライブキャスト1875⼈の参加。 •3115投票、145コメント。 •2016︓⾃動輸送管理規則の改正および施⾏。 •⻩⾊に塗る必要なし •既存料⾦を下回らない限り営業は⾃由。 •配⾞システムにドライバーの識別、運賃、評価の表⽰ •ライドあたり課税の報告義務

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市⺠参加のスペクトラム(国際市⺠参加協会(IAP2)) バランスのとれた 客観的な情報を提 供することで課題、 代替案、機会、解 決策について理解 すること (政府による)分 析、代替案、また は決定について市 ⺠からの意⾒を得 ること。 すべてのプロセス を通じて市⺠と⼀ 緒に作業し、市⺠ の懸念や要望が理 解されるように検 討すること。 代替案の作成や望 ましい解決策の特 定など、意思決定 の各局⾯において 市⺠と共同するこ と 最終的な意思決定 を市⺠に移譲する こと。 国際市⺠参加協会(IAP 2)(https://www.iap 2.org/page/pillars)を参考に訳出 シビックテックにおける市⺠参加型 プラットフォームの機能分類,⽯⽥ 聖 ウェブ ファクトシート 会議のweb cast SNS (⼀⽅⾏) Fix my street SNS (双⽅向) インタラクティ ブなweb活⽤ ワークショップ 討論型世論調査 市⺠諮問委員会 コンセンサスビ ルディング 参加型意思決定 決定の委任 直接投票 市⺠陪審制 ⼿段の例

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データ中⼼科学における社会技術シビックテックは、融 合技術領域

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社会課題は制度の狭間にあるロングテール • 福祉、交通、教育etc︓変化していく社会、増える課題の数と種類 • ⾼齢化、少⼦化 → 税収減、⼈員減 ⽩川展之, シビックテックの実践とオープンサイエンスの公共政策, より抜粋 ※ • 提供されるサービスのメニューが予め全て決まっている。 • ⾃分の製品を⾃販機に⼊れてもらえるベンダーは限られている。 • その結果、利⽤者の選択肢は限られ、価格も⾼い。 ⾃治体の既存ビジネスでのサービス 「⾃動販売機モデル※ 」で対応するには限界がある。

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(事前告知)本⽇の課題 •あなたの⾝近にある、⾃販機モデルで対応が困難な地域課題、 を取り上げてください。 •課題に対して、シビックテックを活⽤した市⺠参加型のソ リューションのアイディアを提案してください(アプリ、フレーム ワーク、データベース等)。 •ポイント •市⺠や⾏政をまきこむ⼯夫(ムーブメントの起こし⽅) •データの取得・収集・組み合わせ •持続可能な運⽤のしくみ(資⾦・⼈材・ビジネスモデル) etc. •スライド1~3枚︓次回冒頭で、ランダムに発表いただくかもしれ ません。

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重層的なガバナンスの下での調整⽅策 ①情報技術の利⽤ • 情報処理によって複雑性に対処する技術的解決⼿段の追求 ②評価基準の多元化 • 複数の基準と指標を受容する評価基準の設定 ③相互交渉の促進 • アカウンタビリティの責任を持つ代理⼈側とその他の⽴場の 主体との相互交渉の促進 ④枠組規制 • 政策の与件や⽬標を遵守すべき個別⽬標を設定するのではな く、全体の枠組みを規定するルール設定、柔軟に修正・調整 を許容することでダイナミックな変動に対処 ⑤ステークホルダーのプロ セスへの参加 • アカウンタビリティを付託する依頼⼈側の政策形成・意思決 定のプロセスに参加させる参加促進 課題に対して、複雑なネットワークでマネジメント⽬標に向けた設計を⾏うための⼿段としては、次 の5つの⼿段がある。 (Klijn and Koppenjan,2014)

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みんなに必要なものを提供できる社会は、みんなでつくり上げな ければ実現することはない “Cities have the capability of providing something for everybody, only because, and only when, they are created by everybody.” Jane Jacobs, The Death and Life of Great American Cities

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知識社会マネジメント2022⽤ 講義関連共有フォルダ https://bit.ly/37rqoPB 10:10より待機室open 10:20より順次⼊室⼿続きしていきます。 良い週末をJ 次回は6/17(⾦) 10:25- です。