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1 © LayerX Inc. 2022/9/13 LayerX PrivacyTech事業説明会 (事業部長 中村 龍矢) LayerX Inc.

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2 © LayerX Inc. 中村 龍矢 (執行役員 兼 PrivacyTech事業部長) スピーカー紹介 ● 株式会社Gunosyにてデータ分析及び、AI/機械学 習アルゴリズムの実装に従事 ● LayerXの創業より参画、研究開発をリード ● セキュリティ・プライバシーの学術論文を国内外 の学会にて発表 ● 2020年度IPA未踏スーパークリエータに認定 ● 東京工業大学との共同研究が2020年度インター ネットアーキテクチャ研究賞(最優秀賞) ● Ethereumの脆弱性を複数発見し、仕様策定に貢 献し、Ethereum Foundationのグラントを日本拠 点のチームで初めて獲得 Twitter: @nrryuya_jp

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3 © LayerX Inc. 本日のトピック ● 「データ利活用とプライバシー」について、手触り感を持っていただく ○ 特に、普段からデータに関わる方にぜひ知っていただきたい! ● 私のパートでは、前提となる事業や技術の概要をお話しします ● (本日のイベント全体を通して、プライバシー保護技術の専門的な話は割愛し ます)

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4 © LayerX Inc. PrivacyTech事業の概要と LayerXが取り組む理由

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5 © LayerX Inc. ● 「企業の経済活動のデジタル化」を支援し、3つの事業を展開 ● PrivacyTech事業では、プライバシー保護技術「Anonify」のソリューションを提供 LayerXの事業紹介 自社プロダクト(SaaS)を提供 プライバシー保護 /秘匿化技術 三井物産様とAM合弁会社 出資・出向 SaaS事業 Fintech事業 PrivacyTech事業

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6 © LayerX Inc. LayerXのミッション ● 「すべての経済活動をデジタル化」するため、「企業や組織を横断したDX」に創業時より着目 ● プライバシーやセキュリティの観点から生まれる「信用のコスト」を減らしたい ● 当初、ブロックチェーンなどに着目していた(詳細は割愛) ○ しかしながら、ブロックチェーンで企業横断のインフラなどを実現するのは少し早かった、、、

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7 © LayerX Inc. 社外(お取引先様・行政など) グループ会社 PrivacyTech事業のフォーカス ● 企業間連携などではなく、まずは個別の企業の保有するパーソナルデータの外部提供から実現していく 自社 利活用の促進 パーソナル データ 「眠れるデータの解放」

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8 © LayerX Inc. 「Anonify(アノニファイ)」とは ● 世界中で進む先端的なプライバシー分野の学術研究を土台に、実務的なデータ利活用に応用できるよう LayerXが独自に開発したプライバシー保護のアルゴリズム群

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9 © LayerX Inc. PrivacyTech事業の取り組み実績 ● 次世代金融における秘匿化技術の活用可能性に関する共同研究 ● 秘匿性を担保した複数企業間の取引記録インフラの事業検討・技術検証 協業事例(一部) メディア掲載(抜粋) ● 住民意見収集システムとして採用(秘匿化技術国内初の実用化事例) ● インターネット投票の実現に向け、公職選挙法の規制緩和の提案 ● 「Anonify」を活用した自動車走行データの分析サービスの提供を開始 ● プライバシー保護とデータ利活用のさらなる高度化に向けた共創を開始 ● テキストデータのプライバシー保護技術適用の共同研究 JCB様 つくば市様 リクルート様 あいおいニッセイ 同和損保様

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10 © LayerX Inc. プライバシー保護 データマイニングの紹介 (時間の関係で少しだけ!)

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11 © LayerX Inc. ● LayerXにおけるプライバシー保護データマイニング技術のユースケースは、データ外部提供先でのプラ イバシーリスクを守るもの ● 攻撃者は、データ提供先の内部や、ハッキングや情報流出等での外部の人 データ外部提供における問題設定 生データ (保護対象) 匿名化 処理 データオーナー データ利用者 加工後 データ 攻撃者 ?

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12 © LayerX Inc. 平均年収:800万円 平均年収:799.9万円 Aさん在籍時の合計年収 = 平均800万円 * 51人 Aさん退職後の合計年収 = 平均799.9万円 * 50人 Aさんの年収 = 800 * 51 - 799.9 * 50 = 805万円 Aさん在籍時 (51名) Aさん退職後 (50名) ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ たった1000円分の平均年収の 変化から、Aさんの給与がわ かってしまう プライバシー保護の難しさ ● 統計情報だけを提供しても、差分から特定個人のデータが炙りだされてしまう ● 1970年代(もしくはもっと前)から続く、長い研究の歴史 ● 実際にはもっともっと色々なリスクがある!

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13 © LayerX Inc. 差分プライバシーとは ● 機密なデータに基づく統計データに、プライバシーを保護するノイズを注入する ● 誤差が発生するが、統計的な分析では活用できる 年齢 性別 住所 年収 32 男性 東京都中央区 650万円 24 女性 神奈川県横浜市 600万円 56 男性 東京都中央区 1000万円 44 女性 千葉県松戸市 950万円 ノイズ付与後の 平均年収: 810万円 平均年収: 800万円 (真の値) 公開しない 元のデータの 復元困難 元のパーソナルデータ 差分プライバシー のアルゴリズム +10万円の ノイズを付与

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14 © LayerX Inc. 差分プライバシーの数学的な定義 ● ただランダムにノイズを加えるわけではなく、数学的な証明に基づいている ● プライバシーの担保を「しっかり説明できる」ことが重要視されているのがポイント(後述) 出典: https://www.cis.upenn.edu/~aaroth/Papers/privacybook.pdf 差分プライバシーによるノ イズ付与 統計量 差分プライバシーによるノ イズ付与 統計量 Aさんあり Aさんなし Aさんがいるか 区別ができない 意味:特定の個人が含まれていてもいなくても、「同じような」統計量となることを保証 差分プライバシーの数学的な定義

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15 © LayerX Inc. 実社会における差分プライバシーの活用事例 参考:差分プライバシーとは - AppleやGoogleも活用する最先端のプライバシー保護技術 Linkedinの広告主向けダッシュボードでは、広告の表示 数やクリック数を可視化。ユーザーの閲覧情報などを逆 算する攻撃を防ぐため、差分プライバシーの亜種を導入 (出典) 差分プライバシーの活用事例 人口統計や、大卒者の収入と雇用に関する統計情報を公 開する際に、差分プライバシーを活用。(出典) コロナ禍におけるFacebookユーザーの行動情報(1日 の間にユーザーが移動する量と、家にいる人の数の指 標)を疫学研究を目的として公開する上で、差分プライ バシーを活用。(出典) 機密性の高いユーザーの位置情報を、社内のデータサイ エンティストがプライバシー保護を担保したまま分析す るために、差分プライバシーを活用。(出典) ● 米国政府や、グローバル大手IT企業などにも利用されている。 ● 社内における機密データの分析や、データを外部公開する等のケースにおいて、プライバシー保護をア カウンタビリティをもって保証する目的で利用されている。 Meta (旧Facebook) LinkedIn Uber 米国政府 Apple, Google, Microsoft

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16 © LayerX Inc. 事例: COVID-19の疫学研究のためのFacebookユーザーの行動情報 ● コロナ禍におけるFacebookユーザーの行動情報(1日の間にユーザーが移動する量と、家にいる人の数 の指標)を疫学研究を目的として公開する上で、差分プライバシーを活用 出所:https://visualization.covid19mobility.org/ https://about.fb.com/news/2020/04/data-for-good/

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17 © LayerX Inc. 合成データとは ● 元のパーソナルデータの統計的な特徴を学習した機械学習モデルから架空のパーソナルデータを生成 ● 差分プライバシーと組み合わせることが可能

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18 © LayerX Inc. 出所:https://www.jmir.org/2021/10/e30697/PDF, https://www.mdclone.com/adams-platform ● MDCloneは、2016年創業のイスラエルの会社で、累計$104Mを調達 ● 合成データにより、医療データの外部との共有を、自由に、迅速に行えるプラットフォームを提供 ○ IRB(治験審査委員会)のプロセスを待たずにデータを活用できる 事例: MDClone 合成データの活用事例: ワシントン大学との全米COVIDコホート共同研究 ● COVID-19では、複数の施設から得られるビッグデータを用いた包括的な分析を行う上で、個々の施設 に存在する臨床データの共有が課題となっている。 ● そこで、ワシントン大学では臨床データのプライバシー・機密性の保持との両立をはかるべく、 MDClone社の協力のもと、合成データとして導出した。 ● 合成データから得られた結果をオリジナルデータから得られた結果と比較して検証した結果、 ○ 各ユースケースにおいて、合成データの分析結果は、データの分布が類似。 ○ 予測モデルも同等の性能を示すなど、オリジナルデータの分析結果をうまく模倣できている。

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19 © LayerX Inc. パーソナルデータ流通の意義と 社会的な課題

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20 © LayerX Inc. ● 世の中にあるデータのうち、データ流通のポテンシャルはまだ数%くらいしか発揮されていない(?) ● 医療、行政、金融など様々な社会問題の解決に繋がる データソース別の利用シーン(一例) 顧客属性データ 決済・取引データ 移動履歴データ スマホ位置情報 電子カルテ 購買データ TV視聴データ 電力利用データ 政策立案・改善 商圏分析 ・立地検討 マーケティング 施策立案・改善 製品開発 広告などの パーソナライズ 事例①:Suica利用データ 事例②:電力利用データ ● 駅の利用状況データを通じて人の流れをより正確に把握することに よる、観光施策や地域活性化向けの活用を狙うもの。 ● 首都圏を中心に駅ごとの乗降者数のデータなどを集計したレポート 「駅カルテ」を作成。 ● スマートメーターを通じて収集した電力データを利用するもの。 ● 特定地域での電力使用状況に基づく商圏分析や、各世帯での電力使 用状況に基づく高齢者見守り・再配達削減などに活用を図る。 出所:JR東日本、電力・ガス基本政策小委員会 パーソナルデータ流通の可能性

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21 © LayerX Inc. 就職で不利になったり、 勤務先で差別されないか・・・ パーソナルデータ利用に伴うプライバシーの懸念 ● 学歴、病歴 ● 収入、資産 ● 行動履歴 ● etc. 本人 様々な事業者 病歴のせいで生命保険に加入できなく なるかも・・・ 不安 ● しかし、パーソナルデータの外部提供に伴い、ユーザー・ステークホルダーの不安につながりうる ● 価値のあるリアルなデータほど、伝統的な大きな企業が保有することが多く、何十年とかけて築き上げ てきたユーザー・社会との信頼関係は非常に重要なものである クレカが作れなくなったり、必要な時 にお金を借りれられなかったらどうし よう・・・ データ取得 自分のデータが勝手に 売られるのは気持ち悪い! designed by Freepik

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22 © LayerX Inc. データ外部提供におけるジレンマ ● その結果、保守的になり、提供する情報量を絞っているケースがある ○ また、データを使う側も自由に使えなかったりする ● しかし、データの利用者は、もっと沢山の情報量・もっと柔軟な分析を期待する ○ 理想は、まるで自社のデータかのように分析できること 現状提供しているもの 利用者が求めるもの designed by Freepik

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23 © LayerX Inc. 弊社PrivacyTech事業のビジョン こ れ ま で こ れ か ら ● リスクの判断基準が難しく、匿 名加工情報なども使いにくい ● データを安全に流通させる仕組 みが整っていない ● 統計的な(個人を選別しない) 用途でデータが安全に流通 ● 明確な基準でプライバシーを担 保し、外部に対する透明性、ア カウンタビリティを担保 外部データへの アクセスは困難 データ保有者 データ利用者 エンドユーザー 守り部門/規制当局 暗黙的で 形式的な同意取得 リスク把握が困難で 保守的な判断 非選別目的で 柔軟に活用可能に データ保有者 データ利用者 エンドユーザー 守り部門/規制当局 明確なルールで リスクを評価 客観的な安全性 による安心感 designed by Freepik

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24 © LayerX Inc. あいおいニッセイ同和損害保険さまの事例 ● 取得したユーザ様の走行データを元に、様々な切り口で分析した統計情報を、プライバシー保護を通じ て元データが逆算されることのないようにした上で、ユーザー様が参照できるダッシュボードを構築。 出所:2022年6月30日付け、LayerXプレスリリース <LayerXのお客様事例>自動車走行データの分析サービスの提供開始 ○ あいおいニッセイ同和損保さまがテレマティクス自動車保険で蓄積する自動車走行データなどに LayerXの提供する最先端プライバシー保護技術「Anonify(アノニファイ)」を適用した上で、 性別や年齢情報等を用いたデータ分析サービスをご提供。

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25 © LayerX Inc. あいおいニッセイ同和損害保険さまの事例 出所:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06973/ ● 「Anonify」により、より柔軟な切り口で分析が可能に ● 結果的に交通事故が削減されれば、保険金の支払いも減り本業にもシナジーがある ○ 単なる「データ販売」に限らないデータ外部提供の事例

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26 © LayerX Inc. ● 技術的に安全であることは、それ単体で直ちに必ずしもエンドユーザーの安心に繋がるわけではないも のの、実際的なリスクを対処し、説明可能にすることは、全ての解決策の土台になる ● 技術によるプライバシー担保や「トラスト」の形成は、これからの社会における長期の重要テーマ 信用の連鎖 最初のドミノ ● 規制当局・プライバシー保護の有識者 2つ目のドミノ ● メディア・政府などの権威 3つ目のドミノ ● 一般の方(デジタルリテラシーのある方等) 4つ目のドミノ ● さらに広い一般の方・社会全体

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27 © LayerX Inc. 技術的な面白さ

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28 © LayerX Inc. プライバシー保護技術のトレードオフ プ ラ イ バ シ | 保 護 水 準 高 低 有用性 (*2) 高 低 何も出せない 生データ同等 トレードオフ あり 既知の様々な 攻撃あり 単体で非常に 高いリスク ほぼ解消 一定範囲で ほぼ解消 一部攻撃あり & 未知の攻撃 への保証なし ● 有用性とプライバシー保護にはトレードオフがあり、「銀の弾丸」は存在しない。 ● 差分プライバシーはかなり高いプライバシー保護要件であり、「適切な緩和」の研究も行われている 銀の弾丸 プライバシー保護技術のR&Dの面白さ

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29 © LayerX Inc. プライバシー保護技術のR&Dの面白さ 参考:"Differential privacy in health research: A scoping review" https://academic.oup.com/jamia/article/28/10/2269/6333353 ● 世界的に研究が盛んで、日々新しい手法が出続けている! ● 社会実装がはじまった結果、良いリサーチクエスチョンが出始めた時期 ○ 実際のデータやユースケースのドメイン知識と組み合わせることで、有用性を改善できる 差分プライバシーに関する年別論文出版件数(EBSCOhost)

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30 © LayerX Inc. データ分析の面白さ 出典: https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00994/ ● 位置・移動データ、決済データ、医療データなど「リアルな」データだからこその統計的な難しさ ● データの掛け合わせにより、さらにデータサイエンス・機械学習の可能性は広がる ○ 例: 走行データに、歩行者の人流データや、天気のデータを掛け合わせて、急ブレーキ原因を分析

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31 © LayerX Inc. データ基盤・プロダクト開発の面白さ ● プライバシー保護されたデータを簡単に提供できるデータ抽出基盤のプロダクトを開発中 ● 詳しくは次の須藤 (osuke) さんのパートで!

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32 © LayerX Inc. ぜひお話ししましょう! ● 今日お話ししたのは、あくまで「最初にフォーカスしている事業セグメント」です! ● 今後の事業展開について、色々な構想がありますので、ぜひお話しさせてください〜 https://meety.net/matches/OOXRSCHNJYrs

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33 © LayerX Inc. Q&A

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34 © LayerX Inc.