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2023-10-06 Monthly Privacy-safe tracking topics share 広告設定をより制御できるようになると ユーザーはどう反応しどう感じるか LINEヤフー株式会社 メディア広告チーム 栗本 真太郎

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2/33 プライバシー保護の流れが強まる中、より良い広告体験作りの参考になりそうな話題を紹介 具体的には、以下のような問いを調べた研究を紹介 l Cookieの利用目的同意ダイアログにおけるデザインに、どう反応しどう認識しているか? l 収集したログがどういったものかを見せることがユーザーにどう影響するか? l デバイス上で推測された興味関心をコントロールできるとどう感じるか? 目的:広告やプライバシー関連施策を考えるヒントにしてもらう 発表概要 ※断りがない限り、画像は各論文のものを引用しています

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研究その1 Cookieの利用目的同意ダイアログに おけるデザインに、 どう反応しどう認識しているか? Multiple Purposes, Multiple Problems: A User Study of Consent Dialogs after GDPR (PoPETs'20)

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4/33 GDPRは、Cookieの使用目的の同意を得ることをWebサイトに要求しており、 これはポップアップやバナーで実現されるのが一般的 [Sánchez-Rola et al. 2019] で観察されているように、"accept all"を促される傾向にある しかし、デフォルトのオプションはかなり開示的であることが多く、 大多数のユーザーのプライバシー嗜好を反映していないかもしれない [Watson et al. 2015] Cookie使用目的の同意は、より多くのacceptに誘導されがち [Sánchez-Rola et al. 2019] Can I opt out yet?: GDPR and the global illusion of cookie control. (AsiaCCS'19) [Watson et al. 2015] Mapping user preference to privacy default settings. (TOCHI'15)

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5/33 選択肢の増加が悪影響を引き起こすという事象は マーケティングの文脈のみならず プライバシー設定の文脈でも確認されている 例)より多くのプライバシー設定からの選択を 迫られると、選択に不満足になり後悔しやすい [Korff et al. 2014] では詳細に選んでもらえればいいかというとそうでもなさそう [Korff et al. 2014] Too much choice: End-user privacy decisions in the context of choice proliferation. (USENIX'14)

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6/33 仮説 1. 同意ダイアログに強調された"accept all"がある場合、 このボタンがない場合よりも、より多くの目的に同意する 2. 同意ダイアログに強調された"accept all"がある場合、 同意したことになる目的を把握すると、 a. 自身の決定を後悔する b. 騙されたという感覚を抱くようになる 3. 同意ダイアログが複数の目的を提示する場合、 単一の目的のダイアログよりも多くの労力を必要とする 4. 同意ダイアログが複数の目的を提示する場合、 単一の目的のダイアログよりも大変であるという認識を持つ 実際の行動にはどう反映され、感情としてはどう感じるか

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7/33 l フライト検索を模したWebサイト上で、特定の出発地、目的地、時間のフライトを 検索するタスクをやってもらったのち、アンケート l Webサイトにアクセスすると、以下の3ダイアログのうちの1つが表示される l オーストリアとドイツの学部生合計150人の回答を収集 実験設定:"accept all"のあるT1, 目的数を減らしたT2との比較

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8/33 "accept all"のあるT1群の参加者は、それがないControl群の参加者と比べ、 有意に多くの目的に同意した 仮説1の検証結果:"accept all"は同意数を増やした

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9/33 "accept all"のあるT1群の参加者は、同意したことになる目的を把握すると l 後悔の念が有意に高まった(2a) l 騙されたという感覚が有意に強くなった(2b) 仮説2の検証結果:"accept all"があり同意した目的を把握すると 後悔の念が強まり騙されたと感じるようになる

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10/33 選択肢がT1より少ないT2群の参加者は、同意するまでの時間が有意に短くなった 仮説3の検証結果:複数目的のダイアログにはより多く労力が必要

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11/33 選択肢がT1より少ないT2群の参加者は、タスクがより簡単だとは感じていなかった 仮説4の検証結果:複数目的のダイアログが大変だとは感じない

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12/33 "accept all"のないControl群の参加者は、 有意により正確に同意した内容を把握できていた ところで、同意した内容を思い出せるかというと…?

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13/33 l "accept all"は同意目的数を増やすが、 一方で同意目的を把握した場合に後悔や騙されたという感覚を強めてしまう l 同意目的数が増えると同意までの時間は増えるが、 一方で難しくなったとは感じられていなかった l 一つ一つ目的に同意してもらう方が、より同意内容が覚えられていた →多少量が多くなったとしても、誠実丁寧な同意取得が吉かもしれない 研究その1まとめ

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② 収集したログがどういったものかを見せることが ユーザーにどう影響するか? Are Privacy Dashboards Good for End Users? Evaluating User Perceptions and Reactions to Google's My Activity (USENIX Security'21)

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15/33 GoogleのMy Activityのように、 自分の行動履歴を閲覧・削除できるような プライバシーダッシュボードが存在している これがオンライン広告や興味推定のような データ収集へのユーザー理解を高めることを 示唆する研究はあるが、 データ収集自体への懸念や有益性の認知に どう影響するか?を調べた研究はほとんどない 未開拓領域:プライバシーダッシュボードが認知に与える影響

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16/33 1. Googleのデータ収集に対するユーザーの認識、理解はどのようなものか? 2. Googleのデータ収集に対するユーザーの懸念、有益性の認識に My Activityはどう影響するか? 3. My Activityに触れることで、ユーザーはどんな設定や行動を変えるか? RQs

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17/33 Google製品利用者を募り、入れてもらった拡張機能を利用して、 My Activityの使用経験について回答してもらう また、この拡張機能によりカテゴリごとの月間アクティビティ数等も収集する より具体的には、以下の手順: Prolificを活用して合計153人の回答を収集(1人当たり35問程度) 調査設定

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18/33 l My Activityで収集されるデータ量が予想以上だったと35%が驚いた l Googleが収集するデータの理解を深めるのにMy Activityが役立つと76%が同意 l 透明性を提供してくれているから(40%) l Googleがデータを収集する目的は 広告のためと80%は認識 l 次いで、71%がパーソナライズを含むUXの改善、 25%が検索結果のカスタマイズ l 39%はデータを他社に売るためと考えている l Googleによるデータを収集する理由の説明は 64%が少なくとも少しは適切だと認識 RQ1:Googleのデータ収集に対するユーザーの認識、 理解はどのようなものか?について

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19/33 My Activityに触れることで、懸念の認識は有意に減少し、有益性の認識は有意に増加 いずれについても、元々の認識の程度を問わず有意に変化 RQ2:Googleのデータ収集に対するユーザーの懸念、有益性の 認識にMy Activityはどう影響するか?

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20/33 l 設定を変えるとしたのは36% l 変更するとした主な項目は、 保存期間の変更、収集の停止、削除頻度の変更 l 認識の変化は、プライバシー設定の 変更意思の予測因子ではなかった l 今後My Activityを見返すとしたのは37% l 懸念が強いと、有意に見返す可能性が高まった l 今後使い方を変えるとしたのは26% l 懸念の認識が強まった、有益性の認識が弱まった人は 変える可能性が有意に高かった l アクティビティ数が多い人も 変える可能性が有意に高かった RQ3:My Activityに触れることで、 ユーザーはどんな設定や行動を変えるか?

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21/33 収集したデータの確認、また確認できることは l 懸念の認識を有意に減少、有益性の認識を有意に増加させる l 多くの場合設定や行動を変えることには繋がらない l 特にプライバシーへの懸念が強い人に有益 →サービスにポジティブな影響があると思われるため、積極的な導入が吉かもしれない 研究その2まとめ

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③ デバイス上で推測された興味関心を コントロールできるとどう感じるか? User Attitudes Towards Controls for Ad Interests Estimated On-device by the Browser (USEC'23)

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23/33 これまでのターゲティング広告はサードパーティーCookieを使うものが多かったが、 "Cookie"という用語が否定的な意味合いを持つようになり[Kulyk et al. 2018]、 またGDPRの施行もありプライバシー保護の文脈から多くの議論がなされている そんな中、ChromeはサードパーティーCookieの廃止を決定 代わりに、トピックベースのパーソナライズの方向に舵を切っている 脱Cookieの潮流:より追跡がされない方向へ [Kulyk et al. 2018] This website uses cookies: Users' perceptions and reactions to the cookie disclaimer. (EuroUSEC'18)

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24/33 l ユーザーのブラウザの閲覧アクティビティから、 関心があると思われるトピック(興味のあるカテゴリ)を記録 l 例えば、ブーツに関する閲覧があった場合には、 その上位カテゴリである靴やファッションにも興味があるものとして推定・記録 l 一定期間の記録から上位のトピックが選出される(ここまでの処理はデバイス上で実施) l APIの呼び出し元は、選出されたトピックのみ利用可能 Topics APIによるトピックベースのパーソナライズの仕組み 画像出典:Topics API の概要 https://developer.chrome.com/ja/docs/privacy-sandbox/topics/overview/

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25/33 l 推定された興味のトピックによる制御は、サードパーティーCookieの場合と比べて、 パーソナライズ広告の価値とプライバシーのレベルをより高く認知してもらえるか? RQ

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26/33 1. Cookieベースのパーソナライズと比べて、 トピックベースのUIからより高いレベルのプライバシーを推測する 2. Cookieベースの制御と比べて、 トピックベースの制御により高いレベルの制御感覚を感じる 3. プライバシー重視のユーザーは、推測されたトピックの制御にあまり価値を感じない 4. ユーザーは、パーソナライズ広告に感じる価値と 媒体社にとっての価値との関連を認識している 5. トピックベースの場合において、Webサイトでの行動により ウェブサイトが金銭的な利益を得るものと認識している 6. トピックベースの場合において、媒体社にとっての価値よりも 自身にとっての価値を高く感じる RQを踏まえた仮説群

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27/33 以下の各シナリオにおいて、靴のWebサイトの訪問後に 靴の広告を見たという状況を想像してもらう 1.全てのCookieを許可 2.サードパーティーCookieをブロック 3.トピックベースのパーソナライズを許可 その後、アンケートに回答してもらう 市場調査Qualtricsを活用し アメリカ人&イギリス人合計2552人の回答を収集 調査設定

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28/33 パーソナライズ広告が l 閲覧体験全般に付加価値を与えると感じる l 訪問先にとってより価値が高いと感じる 仮説4の検証結果:ユーザーは、パーソナライズ広告に感じる価値と 媒体社にとっての価値との関連を認識している

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29/33 l 全てのCookieを許可する場合と比べて、個人を特定されないことへの確信度が高い (仮説1の部分的支持) l Cookieベースの制御と比べて、コントロールできているという感覚が強い (仮説2の支持) l サードパーティーCookieをブロックする場合と比べて、 Webサイトに利益をもたらしていると感じる(仮説5の部分的支持) 仮説1, 2, 5の検証結果:トピックベースは優位と認識されている

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30/33 l プライバシーにあまり関心がない人は、 高いレベルのプライバシーとコントロールできているという感覚を得た l 一方で、プライバシー重視の人は、 トピックのコントロールにあまり価値を感じなかった 仮説3の検証結果:トピックベースのプライバシー保護&制御感覚は プライバシーへの関心の多寡によって変わる

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31/33 媒体社にとっての価値は少し低く評価されたが、 ユーザーにとっての価値は有意に高く評価された 仮説6の検証結果:トピックベースはユーザーにとってより嬉しい

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32/33 トピックベースのパーソナライズは l プライバシー保護や制御の感覚を高め得る ただし、プライバシーへの関心の多寡によって感じ方は変わる l Webサイトにとっても嬉しいだろうし、 ユーザー自身にとっての価値はより高く感じられる →デバイス上での興味関心の推定とそれを踏まえた制御という方向性は正しそう 研究その3まとめ

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33/33 l データの利用目的はざっくりではなく丁寧に同意してもらう方が 後悔や騙されたという感覚を誘発しにくく、また内容も覚えてもらえそう l 収集したデータを確認できるようになると、 懸念の認識を減少、有益性の認識を増加させられそう (特にプライバシーへの懸念が強い人に対して) l Cookieベースに比べて、トピックベースのパーソナライズは プライバシー保護や制御の感覚を高め得るだけでなく、 ユーザーにとってより良いものだと認識されていそう 発表まとめ