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Very Large-Scale Multi-Agent Simulation in AgentScope https://arxiv.org/html/2407.17789v1#S5 1

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目次 1. はじめに 2. 関連研究 3. インフラストラクチャ 4. 実験 5. 結論 2

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想定読者 マルチエージェントシステムに興味がある研究者や開発者 ▶ 大規模シミュレーションの課題に直面している専門家 ▶ LLMを活用した新しいアプリケーションを探求している技術者 ▶ 3

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1. はじめに LLMの進歩により、大規模マルチエージェントシミュレーションの新たな可能性が開かれた ▶ 既存プラットフォームの課題: ▶ スケーラビリティと効率の限界 - エージェントの多様性不足 - 管理プロセスの煩雑さ - AgentScopeの強化: ▶ アクターベースの分散メカニズム - 柔軟な環境サポート - エージェント多様性のための設定ツール - Webベースの管理インターフェース - 4

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2. 関連研究 LLM活用エージェントプラットフォーム: ▶ 単一エージェントプラットフォーム: AutoGPT, LangChain, ModelScope-Agent, Transformers Agents - マルチエージェントプラットフォーム: MetaGPT, Auto-Gen, CAMEL, LangSmith - 限界: 大規模シミュレーションへの拡張性に課題 - エージェントベースシミュレーションフレームワーク: ▶ 特定ドメイン向けフレームワーク: Vidur, Ataei et al., Cheng et al., Ren et al. - 限界: 大規模かつ多様なシミュレーションのサポート不足、汎用性の欠如 - 5

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3. インフラストラクチャ (1/4) アクターベースの分散メカニズム 自動並列実行: ▶ 通信グラフに基づく依存関係の動的識別 - マルチプロセスモードによる効率向上 - 集中型ワークフロー管理: ▶ プレースホルダーを用いた非同期実行 - 中央プロセスでのワークフロー構築と分散エージェントの実行を分離 - 6

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3. インフラストラクチャ (2/4) エージェント-環境インタラクション 高頻度アクセスサポート: ▶ 分散ノードとしての環境モジュール実装 - RPCによる高速通信 - データ競合解決のためのリクエストキュー - マルチレイヤー環境構造: ▶ グループ別の環境設定が可能 - グローバル環境との階層的連携 - 7

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3. インフラストラクチャ (3/4) 異種設定 人口分布設定ツール: ▶ 年齢、性別、職業等の分布を簡単に指定 - 拡張性のある設計で新しい属性の追加が容易 - 自動背景生成パイプライン: ▶ LLMを用いた詳細な背景設定の自動生成 - 多様性向上のためのランダムシード調整 - 8

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3. インフラストラクチャ (4/4) 大規模エージェント管理 AgentScope-Manager: ▶ Webベースの視覚的インターフェース - 複数デバイスにまたがるエージェントの一元管理 - サーバーとエージェントのライフサイクル管理 - 9

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4. 実験 (1/6) 設定: "平均の2/3を当てるゲーム" スケーラビリティと効率 各エージェントが0-100の数字を報告 ▶ 全体の平均の2/3に最も近い数字を報告したエージェントが勝利 ▶ 100万エージェントのシミュレーションを4デバイスで12分で完了 ▶ 逐次実行や非同期モードと比較して大幅な効率改善: ▶ 逐次実行: 約12日 - 非同期モード: 約8.6時間 - 提案手法: 40秒 - デバイス数増加に比例して実行時間が短縮 ▶ 10

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4. 実験 (2/6) シミュレーション結果と分析 チェーン・オブ・ソート方式のプロンプトがエージェントのパフォーマンスを向上: ▶ 報告される数字が0に近づく - ナッシュ均衡への収束が加速 - マルチラウンドゲームでナッシュ均衡への収束を確認: ▶ ラウンドを重ねるごとに報告される数字が0に近づく - エージェントの合理的な意思決定能力を示唆 - 11

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4. 実験 (3/6) システムプロンプトの影響 詳細な指示がエージェントの思考プロセスを改善: ▶ より合理的な数字の報告 - ナッシュ均衡への迅速な収束 - LLMによってプロンプトの効果に差異あり ▶ 12

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4. 実験 (4/6) 多様な背景設定 教育レベルによる影響: ▶ 高学歴エージェントほど低い数字を報告する傾向 - LLMによって教育レベルへの感度に差異あり - 職業による影響: ▶ ゲーム理論の教授や経済学者が最も低い数字を報告 - 職業に応じた思考プロセスの違いを確認 - 13

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4. 実験 (5/6) LLMの混合 個人レベルのシミュレーション: ▶ 異なるLLMで異なる行動パターンを観察 - ラウンドを重ねるごとに戦略の調整を確認 - グループレベルのシミュレーション: ▶ 同じLLMを使用するエージェント間で行動の収束を確認 - グループ全体の利益を考慮した戦略的行動を観察 - 14

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4. 実験 (6/6) 追加の考察 LLMの事前知識の影響: ▶ クラシックゲームの変形に対する反応の違い - プロンプトによる誘導の効果 - ゲームのバリエーションに対するエージェントの理解能力: ▶ ナッシュ均衡が0でない場合の適応 - 計算ミスや論理エラーの発生と全体への影響の少なさ - 温度パラメータの影響: ▶ 高温度設定で報告される数字の多様性が増加 - 平均値への影響は限定的 - 15

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5. 結論 AgentScopeの強化により実現したこと: ▶ スケーラビリティと効率の大幅な向上 - 多様なエージェント人口のサポート - 大規模シミュレーションの容易な管理 - 実験結果が示す可能性: ▶ エージェントベースシミュレーション研究の進展 - 現実世界の複雑な現象のモデル化と予測への応用 - LLMを活用した新しいシミュレーションパラダイムの確立 - 16

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まとめ AgentScopeは大規模マルチエージェントシミュレーションの課題を解決 ▶ アクターベースの分散メカニズムにより高いスケーラビリティと効率を実現 ▶ 柔軟な環境サポートと多様なエージェント設定により現実的なシミュレーションが可能 ▶ 実験結果は、LLMを活用したエージェントの高い推論能力と適応性を示唆 ▶ 今後の研究でさらなる可能性が期待される ▶ 17

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3.1 Actor-based Distributed Mechanism 18

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概要:Actor-based Distributed Mechanism 大規模マルチエージェントシミュレーションのための基盤技術 ▶ アクターモデルに基づく分散メカニズム ▶ 主な特徴: ▶ i. 自動並列実行 - ii. 集中型ワークフロー管理 - 19

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自動並列実行 通信グラフを用いた依存関係の動的識別 ▶ 頂点: エージェント - 有向辺: メッセージパス - 実行準備が整ったエージェントの識別と並列実行 ▶ マルチプロセスモードの採用 ▶ 各エージェントが独立したプロセスで実行 - 通信グラフに基づく自動的なサブグラフ分割 - 20

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自動並列実行の例 Agent-A の実行完了後、Agent-B と Agent-C が並列実行可能 ▶ Agent-D と Agent-E は依存関係により並列実行不可 ▶ 21

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集中型ワークフロー管理 中央プロセス(センター)でのシミュレーション実行 ▶ 分散エージェントの代理(プロキシ)を中央に配置 ▶ プレースホルダーの導入 ▶ 非同期実行を可能に - 中央でのワークフロー構築と分散エージェントの実行を分離 - 22

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プレースホルダーの動作 1. センターがメッセージをAgent-Aに送信 2. Agent-Bにyのプレースホルダーを提供 3. センターがzの実際の値をリクエスト 4. Agent-BがAgent-Aからyの実際の値を待機 5. Agent-Bがzを計算してセンターに返送 23

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3.2 Agent-Environment Interactions 24

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概要:Agent-Environment Interactions エージェント間通信と並んで重要な要素 ▶ 高頻度アクセスへの対応が必要 ▶ 主な特徴: ▶ 1.柔軟な環境操作 - 2.高頻度アクセスサポート - 3.マルチレイヤー環境構造 - 25

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柔軟な環境操作 基本的な環境操作: ▶ 登録 (Registering) - 照会 (Querying) - 更新 (Updating) - 削除 (Removing) - モニタリング (Monitoring) - 様々なデータベースに適応可能: ▶ キーバリューストア - リレーショナルデータベース - NoSQLデータベース - 26

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インタラクションの次元 1. タイムライン グローバル時間へのアクセス - 特定のトリガーによる動作調整 - 2. ロケーション エージェントの位置情報管理 - 近隣エージェントや項目との相互作用のためのフック機能 - これにより、様々な現実世界のシナリオをシミュレート可能 ▶ 27

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高頻度アクセスサポート 環境モジュールを分散ノードとして実装 ▶ Remote Procedure Call (RPC)を使用したエージェントとの通信 ▶ リクエスト処理の最適化: ▶ i. アクセスされるデータに基づいてリクエストを分類 - ii. 異なるキューで並行処理 - iii. データ競合の解決 - 28

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グループ別の環境設定が可能 ▶ グローバル環境との階層的連携 ▶ 利点: ▶ グループ内協力のサポート - グループ間の情報差別化 - 29

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3.3 Heterogeneous Configurations 30

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概要:Heterogeneous Configurations 大規模シミュレーションにおけるエージェントの多様性の重要性 ▶ 主な特徴: ▶ 1.設定可能ツール (Configurable Tool) - 2.自動背景生成パイプライン (Automatic Background Generation Pipeline) - 目的: ▶ エージェントの多様な背景設定を容易に生成 - 人口分布の精密な制御を実現 - 31

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設定可能ツール (Configurable Tool) ユーザーが簡単に人口分布を指定可能 ▶ 提供される分布テンプレート: ▶ 年齢 - 性別 - 職業 - 国籍 - 教育レベル - 拡張性: ▶ 新しい属性の追加が容易 - 多様な要件に対応可能 - 32

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設定可能ツールの使用例 total_population: 1000 distribution: education_level: elementary_school: 0.2 high_school: 0.3 bachelor: 0.3 master: 0.15 phd: 0.05 この例では、教育レベルに基づいて1000人の人口分布を指定しています。 ▶ 33

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自動背景生成パイプライン 1. 設定ファイルから分布に基づいて具体的な値を抽出 2. 抽出された値をJSON形式に変換 3. メタプロンプトに値を挿入し、背景生成タスクの指示を作成 4. LLMを使用して異種の背景設定を生成 5. 多様性向上のための工大: ランダムシードの調整 - LLMの温度パラメータの調整 - 34

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自動生成された背景設定の例 { "name": "Emily Chen", "age": 28, "education": "Master's degree in Computer Science", "occupation": "Software Engineer", "background": "Emily grew up in a tech-savvy family in Silicon Valley. She's always been fascinated by algorithms and their real-world applications. In her free time, she participates in coding competitions and contributes to open-source projects." } このような詳細な背景設定が各エージェントに対して自動生成されます。 ▶ 35

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利点と応用 大規模シミュレーションの設定プロセスを簡素化 ▶ 現実的で多様なエージェント集団の生成が可能 ▶ 応用例: ▶ 社会シミュレーション - 経済モデリング - 都市計画 - マーケティング戦略の評価 - 研究と応用の促進: ▶ エージェントベースモデリングの新たな可能性を開拓 - より複雑で現実的なシナリオのシミュレーションを実現 - 36

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3.4 Management for Large-scale Agents 37

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概要:Management for Large-scale Agents 大規模エージェントの管理と監視の課題 ▶ AgentScope-Managerの導入 ▶ 主な特徴: ▶ 1.分散サーバー管理 - 2.Webベースの視覚的インターフェース - 3.集中型エージェント管理 - 4.複数シミュレーションのサポート - 38

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分散サーバー管理 シミュレーション開始時に各リモートデバイスでサーバーを起動 ▶ サーバーの主な機能: ▶ 分散エージェントのリモート作成 - エージェントの監視 - エージェントの停止 - エージェントのライフサイクル管理 ▶ エージェント情報の中央サーバーへの同期 ▶ 39

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Webベースの視覚的インターフェース 全登録サーバーの包括的な概要を提供 ▶ 表示情報: ▶ サーバーID - IPアドレス - 実行状態 - 計算リソースの使用状況 - 各デバイスにデプロイされた全エージェントの可視化 ▶ 41

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集中型エージェント管理 ユーザーによる一元的な管理操作: ▶ サーバーの設定 - エージェントの起動 - エージェントの終了 - 個々のエージェントではなくサーバーに焦点を当てた管理 ▶ 利点: ▶ 管理プロセスの効率化 - 大規模エージェントシステムの効果的な管理 - 42

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複数シミュレーションのサポート サーバーの再利用: ▶ 異なるシミュレーション間でサーバーを維持 - 分散サーバーの再起動不要 - シミュレーション間の柔軟な切り替え: ▶ サーバーとエージェントの迅速な設定 - 起動と終了の効率的な管理 - 複数のシミュレーションシナリオに対応可能 ▶ 43

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AgentScope-Managerの利点 スケーラビリティの向上:数百万のエージェントを効率的に管理 ▶ 運用の簡素化:複雑な分散システムの中央管理を実現 ▶ リアルタイムモニタリング:システム全体の状態をリアルタイムで把握 ▶ リソース最適化:計算リソースの効率的な割り当てと使用 ▶ 柔軟性:異なるシミュレーションシナリオに容易に適応 ▶ 44