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ここはウォーターフォール市、アジャイル町 第一章 業務改善の問題地図2丁目 読書会 無力感 2020/12/26 インフラ勉強会 amarelo(アマレロ)

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自己紹介 コーヒー焙煎人兼エンジニア amarelo(アマレロ) twitter:@amarelo_n24 ※アマレロ:ポルトガル語で「黄色」 特技:コーヒー豆焙煎 資格:AWS認定クラウドプラクティショナー ソリューションアーキテクトアソシエイト Microsoft Azure Fundamentals(AZ-900) 好きなコーヒー:ブラジル ブルボンアマレロ 好きなお菓子 :ブルボンのお菓子全般 アルフォート、ブランチュール、シルベーヌ、チョコリエール、ルマンド・・・

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主な登壇履歴 インフラ勉強会(2019年8回、2020年1回) ・インフラエンジニアのためのコーヒー入門(2019/1/31) ・沼への誘いLT大会:アルフォートのすすめ ・技術書同人誌との出会い・執筆LT(2020/3) など 外部勉強会(2019年7回、2020年2回) ・ #ssmjp:ITエンジニアへのコーヒーのすすめ(2019/10) 令和になってようやくSSD換装をした話(2020/12/18) ・エンジニアの登壇を応援する会:鈍行列車の旅をやってみた話 ・ラクス:はじめてのトラックボール(2020/10) など

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書籍紹介 ここはウォーターフォール市、アジャイル町 ストーリーで学ぶアジャイルな組織のつくり方 著者:沢渡あまねさん、新井剛さん 出版社:翔泳社 URL: https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/97847981 65387

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書籍紹介 業務改善の問題地図 ~「で、どこから変える?」~進まない、続かない、 だれトク改善ごっこ 著者:沢渡あまねさん、元山文菜さん 出版社:技術評論社 URL:https://gihyo.jp/book/2020/978-4-297- 11639-2

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今回の読書会の目的 「無力感」は、ここは「ウォーターフォール市、アジャイル町」第一章 と業務改善の問題地図2丁目共通のテーマです。 両書籍を合わせた読書会で、「無力感」の原因や立ち向かい方について 考察したいと思います。

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アジェンダ 1.ここアジャ第一章のストーリー要約 2.ハマナ・プレシジョンの無力感の原因は何か? (1)認証基盤運用チームの4つの問題 (2)業務改善の問題地図2丁目を元に考察 (3)無力感の深掘り 3.無力感に立ち向かうためには? (1)アジャイルになる (2)改善の風土をつくる 4.まとめ

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1.ここアジャ第一章 ストーリー要約

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登場人物(第一章に登場する人物のみ) ◆ハマナ・プレシジョン株式会社 認証基盤運用チーム 相良 真希乃(33歳):主人公 チームリーダー 森岡 俊平 (27歳):5年目の技術系社員 原野谷 渉 (41歳):カジマ・システムサービス インフラエンジニア 笠井 美香 (32歳):ハドソル(※)ヘルプデスクリーダー ※ハマナ・アドバンスト・ソリューションズ ◆アジャイル勉強会 中須賀 葵 (??歳):北欧雑貨通信販売企業に所属するスクラムマスター

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認証基盤運用チームの現状 認証基盤チームはインシデント、クレームだらけ。 真希乃はチームの現状を知ることにしたが… 何かいい方法は無いものか… 美香:電話対応に追われる。 諦めの態度。 渉:イライラ 俊平:受身意識

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アジャイル勉強会への参加 「アジャイル勉強会~セイチョウする組織をつくる~」にて 中須賀 葵のプレゼンを聞き、アジャイルに興味を持った。 プレゼン終了後、真希乃は声をかけようと一歩踏み出す決心をした! 過去に流した涙を、 未来の笑顔に 変えたいんだ!!

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2.ハマナ・プレシジョンの無力感の原因は?

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(1)認証基盤運用チームの4つの問題

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(1)認証基盤運用チームの4つの問題 ①開発メンバーと顧客だけで要件や仕様が決まる。 ②ユーザテスト工程で運用上の問題が次々に発覚。 ③「運用でカバー」で取り合ってもらえない。 ④運用やヘルプデスクの声が届かない。

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①開発メンバーと顧客だけで要件や仕様が決まる。 ハマナ・プレシジョンでは、ウォーターフォール型にてシステム 開発、運用のやり方が決まっていくため、前工程での決定事項を 後工程で変えづらい。しかし、開発メンバーとハマナ・プレシジョ ン業務部門の間で要件定義と仕様が決められてしまう。 ◆さらなる問題点 ・システム利用者や運用の観点が抜けていること。

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②ユーザテスト工程で運用上の問題が次々に発覚。 運用観点を考慮しないシステムのため、運用上の問題が次々に 発覚する。 ◆さらなる問題点 ・運用メンバーやヘルプデスクが文句を言っても 時すでに遅し…取り合ってもらえずに工程が 進んでいく…

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③「運用でカバー」で取り合ってもらえない。 運用でカバーしきれない不具合や、ユーザからのクレームが多い要 望については、システムを改修して対応する。 ◆さらなる問題点 ・開発チームでの変更内容が運用チームに共有されない。 ⇒変更点が運用チームに共有されないため、ユーザー から指摘されて初めて問題に気づく。 ・過去に運用チームが問題視してフィードバックした ことが反映されていない(私見)。

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④運用やヘルプデスクの声が届かない。 届ける機会もない。届けても聞く耳持たないような気もする。 ◆さらなる問題点 ・新たなインシデントやクレームを増やす原因に。 ・チーム内外ともに、情報共有をしなくなる。 ⇒インシデント状況が共有されず「気づきベース」の 偶発的かつ属人的対応になる。

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(2)業務改善の問題地図2丁目を元に考察

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現場が改善提案しない9つのポイント ①怖くて言えない ②空気を読んで言えない ③テーマがない ④言語化できない ⑤気づかない/気づけない ⑥無力感 ⑦トクしない ⑧サポートしてくれない ⑨愛着がない

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ハマナ・プレシジョンに該当するものは? ①怖くて言えない ②空気を読んで言えない ③テーマがない ④言語化できない ⑤気づかない/気づけない ⑥無力感 ⑦トクしない ⑧サポートしてくれない ⑨愛着がない

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④言語化できない 問題や課題を言葉にできない。みんなモヤモヤと心に不満を抱えている だけで、それが組織内で問題点・課題として顕在化しない。 ・俊平は問題だと思っていても、何とかしたいと思っていない。 ・渉はいつもイライラしている原因は、生煮え状態のリリース。 その状態でリリースしてくる担当者に文句の一つも言っていない。 ※言っているけど変わらないから諦めたのか・・・ ・美香はユーザの声をプロパ社員に上げてきたが、何一つ変わら ないため、言語化するのを諦めている(言語化しない)。

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⑤気づけない 前任者に気遣って気づかないフリをしているのも含む。 ハマナ・プレシジョンのメンバーは、 言語化できていない ⇒ 問題だと気づいていない もしくは 言語化しない ⇒ 問題だと気づいているフリをしている

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⑦トクしない 改善提案しても、評価されない。 改善して仕事を効率化しても、残業代が減るだけ。 あるいは、その分面倒な仕事が新たに降ってくる。 ハマナ・プレシジョンの場合は、改善提案しても評価されない。 それ以前の問題で、改善提案しても誰も聞いてくれない。 ※美香が過去に行ってきたことから明白。

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⑨愛着がない そもそも、組織に愛着がない。 よって、わざわざ意見する義理もない。 ※個人的には根本的に一番マズいレベルだと思う。 ハマナ・プレシジョンの場合、このレベルまで行っているのでは? ・俊平の受け身な態度、美香の諦めの態度、渉のイライラから、 組織や自分が関わっているシステムへの愛情が薄れている、 もしくは無いと思われる。

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⑥無力感 今回のキーワード。 もっとも闇深い背景。なぜ、社員が改善提案しないか? 現場が本音を言わないか?些細なヒヤリハットすら報告しないのか? 無力感しかないため ・頭ごなしに否定される ・実行された試しがない ・報告書を作成する作業や説明するのが面倒

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「無力感」は、⑦⑧⑨も包含している。 解決しないと組織そのものの求心力、 働く人たちのエンゲージメントに影響する。

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意見や提案が行われないのは・・・ 「この組織を信頼していない」 社員のメッセージの可能性大!

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(3)無力感の深掘り

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そもそもなぜ無力感に苛まれるのか? ①奇特な勇者のボランティア活動 ②改善能力不在 ③改善が上手くいったためしがない ④改善の進捗共有や情報共有がされていない

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①奇特な勇者のボランティア活動 組織の問題・課題を指摘し、改善を提案する人は奇特な勇者! 無力感が支配している職場では、待てど暮らせど現れない。 奇特な勇者が現れ改善提案しても、あからさまに否定される… こうして次の勇者が生まれない組織風土が出来上がる。

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②改善能力不在 問題や課題が分かっていても改善する能力がない。 目先の仕事に追われるばかりで、改善を考えることや そのスキルの育成をしてこなかった。 最初、ハマナ・プレシジョンのメンバー(真希乃も含む) は改善する方法も能力もなかった、分からなかった。 それが無力感につながっていると思われる。

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③改善が上手くいったためしがない 改善能力が無いと改善体験そのものが生まれず、改善の 成功体験も生まれない。ますます無力感を高める。 改善しようとしても、 ・中間管理職ブロック ※ ・抵抗勢力の邪魔 で長続きせず自然消滅に… ※(私見)ハマナ・プレシジョンの場合、課長の掛塚がブロックしてたのでは??

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④改善の進捗共有や情報共有がされていない 改善活動を始めても、その進捗や情報が共有されない。 現場に不信感を募らせる原因になる。それを解消させない (情報共有しない)と、無力感へとつながる。 ハマナの場合、認証基盤システムの追加リリースをしてい る(一応改善活動はしている)。しかし、そのリリース情 報を正しく共有しないため、美香たちヘルプデスクの不信 感を募らせ、渉の不信感(イライラ)を募らせている。

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無力感が支配する組織風土を放置すると… 業務を俯瞰して改善 できる人材が育たない エンゲージメント低下 コンプライアンスを 脅かすリスクに

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無力感が支配する組織風土を放置すると… ハマナ・プレシジョンの場合… ・俊平のような「意思なんてない」人間を増やす。 ・インシデントが常態化する(当たり前になる)。 ・ヘルプデスクメンバーがオペレーションミス起こす。 または、ヒヤリ・ハットを抱え込むようになる。 ・多忙な状況を放置して、メンバーのメンタル不全に。 等のようなことが考えられる。

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3.無力感に立ち向かうためには?

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(1)アジャイルになる

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ウォーターフォールとアジャイル ウォーターフォールとアジャイルは共存可能 Web業界などの開発方法論ではない! ゼロイチの二項対立でもない! アジャイルは「ありかた」

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Web業界などの開発方法論だけではない アジャイルは、 「個人と対話」をし「動くソフトウェア」を基準にし、 「顧客と協調」し「変化に対応」することに価値を置く。 開発現場以外にも適用できる。また、すべてを完璧にする 必要はなく、一部を取り入れるだけでもよい!

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アジャイルの原則 アジャイルには12個の原則がある。これらの言葉が価値基準や判断 基準になる。 ※4つの視点で整理する。 視点 内容 チーム 日々一緒に働く/意欲に満ちた人々で構成/信頼する/フェイストゥフェイスで話 す/自己組織化されたチーム プロセス 早く継続的に提供/定期的なふりかえり/やり方を調整する/できるだけ短い時 間・感覚でリリース/持続可能な開発を促進/一定のペースを維持 プロダクト 価値あるソフトウェア/技術的卓越性と優れた設計/無駄なくつくれる量を最大限 にする/動くソフトウェアが進捗の尺度 顧客 顧客満足を最優先/要求変更を後期でも歓迎/お客様の競争力を引き上げる

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ゼロイチの二項対立ではない ■ウォーターフォールのメリット 要件変更、メンバー変更がほぼなく複雑性が低い環境 ならば、計画を作り予定通り作ることが可能。 ■アジャイルのメリット 世の中の状況や要件が頻繁に変わり、複雑性が高い環境。 プロセスを繰り返しながら徐々に成果を積み上げ、 早く失敗し学びに変えることができる! いいとこ取り、目標に合わせて強弱を変えても良い。 最短でビジネスゴールを目指すために共存を!

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アジャイルとは「ありかた」 アジャイルに正解はない。 チームとしてセイチョウし、顧客価値を最大にしていくためには、 たゆまぬカイゼンを続けることが重要。 そのために、実践と学びのループを回す仕組みを作ること! Be Agile!!

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まずは定期的なふりかえりから 「どうせやっているミーディング」を問題提起、改善提案、改善の実行とふり かえりの場にする。 例:KPT(ケプト) K:Keep(よかったこと、今後も続けたいこと) P:Proglem(問題点、今後は止めること) T:Try(試してみたいこと) 用意するもの:ホワイトボード、付箋、ペン やること:自分の意見を付箋に書き出してホワイトボードに貼る。 他人の意見を見ることで新たな気づきや言語化のヒントに! 見える化、言える化のサイクルを促進。

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(2)改善の風土をつくる

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(2)改善の風土をつくる ①改善を「仕事」に ②改善した先の「世界」を明確に ③本気を行動で示す ④「成果」より「変化」を

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①改善を「仕事」に 改善を「仕事」として認める。 足りないリソース(ヒト、モノ、カネ)を調達する。 現場に権限を与える。 そんな時間がない現場の場合は、 「その予算や時間を確保すること」をテーマにしてみる。 組織力強化、人材育成、マネジメント能力強化に!

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②改善した先の「世界」を明確に 何のための改善か? 改善した人にその後何を期待するか? 改善した後、組織として何に注力したいか? 改善を目的にしないためにも、 改善後のビジョンを考え、 改善の大切さを自分の言葉で 発信して理解してもらう。

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③本気を行動で示す トップは改善活動を現場任せにしない。 ・改善した人や組織を評価する。 ・改善した人や組織が得する仕組みを雰囲気をつくる。 ・社内の育成や環境整備に投資する。 ・自発的な改善を活動を邪魔しないよう、無駄な慣習や 事務作業を減らす。

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④「成果」より「変化」を 成果は、数値化によって評価を 変化は、言語化によって評価を 組織風土はすぐには変わらない。 改善成果はすぐには現れない。 しかし、変化は小さくても目に見えて 現れる。その「変化」を言語化して、 「改善は楽しい!」ことの共感を生もう!

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4.まとめ

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まとめ メンバーが意見を言わないのは、組織を信用していない可能性大! 無力感が支配する組織は、メンバーのエンゲージメントを下げ、 コンプライアンスのリスクを高める。 ウォーターフォール、アジャイルはゼロイチではない。 うまく共存させて、たゆまぬ改善とセイチョウを。 改善することが楽しいを思え、改善している人が得をする風土と 仕組みをつくり、共感者を増やしていこう。

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ご清聴ありがとうございました!