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© LY Corporation Technical Writing Meetup vol. 37 テクニカルライターのチームで 「目標」をどう決めたか Dev Content Team Yoshiko Horikoshi 10th October 2024

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© LY Corporation 2 自己紹介 Self introduction

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© LY Corporation みなさん、はじめまして 「ほりこし」です Nice to meet you all. My name is Horikoshi. 3

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© LY Corporation LINEヤフー株式会社 Dev Contentチーム LY Corporation Dev Content Team 4

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© LY Corporation 2020年1月から LINEでテクニカルライター I have been working as a Technical Writer at LINE since January 2020. 5

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© LY Corporation Yoshiko Horikoshi 6 プログラマ(3年) 広報(4年) インフラエンジニア(7年) 2020年1月からLINEでテクニカルライター 2023年10月からLINEヤフー Programmer (3 years) Public Relations (4 years) Infrastructure Engineer (7 years) Technical Writer at LINE since January 2020 From October 2023 at LY Corporation @mochikoAsTech

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© LY Corporation 7 https://techbookfest.org/organization/12790004

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© LY Corporation 8 https://techbookfest.org/organization/12790004

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© LY Corporation 9

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© LY Corporation 今日話す内容 Today’s agenda 10

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© LY Corporation テクニカルライターのチームで 「目標」をどう決めたか 11

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© LY Corporation そもそも… テクニカルライターってなに? 12

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© LY Corporation LINEヤフーの技術組織には 技術ドキュメントや APIリファレンスなどを書く 専門職として 「テクニカルライター」 というポジションがあります! 13

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© LY Corporation 14 https://www.youtube.com/watch?v=HjKvDK50iY0 https://logmi.jp/tech/articles/325624 「テクニカルライターがどんなふうに働いているか?は… LINEの開発者向けドキュメントを支える 「テクニカルライティング」の専門チーム というセッションの動画と記事をどうぞ

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© LY Corporation 2020年ごろはまだ テクニカルライターという 職業があること自体が あまり知られていなかった 15

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© LY Corporation そこから約5年が経って… テクニカルライターを 採用している企業も 多くなってきた 16

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© LY Corporation 本題に戻って… 17

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© LY Corporation テクニカルライターのチームで 「目標」を決めることの難しさ 18

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© LY Corporation Dev Contentチームは エンジニアが1名、 テクニカルライターが5名 19

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© LY Corporation LINE Developers site https://developers.line.biz/ 20

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© LY Corporation LINE Developersサイトで、 社外の開発者向けにドキュメントを提供。 Messaging API、LINEログイン、 LIFF、LINEミニアプリなど 複数プロダクトのドキュメント(日英)を すべてこのチームで書いている 21

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© LY Corporation テクニカルライターのチームで 目標を決めることを なぜ「難しい」と感じていたのか 22

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© LY Corporation テクニカルライターは 基本的に自分たちが プロダクトそのものを 開発している訳ではない ※でもドキュメントやUI文言は 広義でプロダクトの一部ではある 23

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© LY Corporation 新しくリリースする このプロダクトのドキュメントを ○日に出せるように書いてほしい! …のように 持ち込まれる相談に応じて 仕事をしていくことが多い 24

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© LY Corporation 能動的に業務を進めつつも 「言われたところを優先的にやる」 という受動的な部分からは 逃れられない、とも言える 25

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© LY Corporation テクニカルライターのチームが どこを目指していくのかという 中長期的な目標を決めようとしても 自分たちだけでは 決めかねる部分があった 26

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© LY Corporation 目標設定って難しい… 27

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© LY Corporation 「目標設定って難しいですねー」 (と言っているうちに数年が経過) 28

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© LY Corporation テクニカルライターって 言語化することが仕事では? 29

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© LY Corporation 言語化するのが仕事なのに チームの目標がふわっとしたまま 何年も言語化されていない状態… 30

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© LY Corporation よくない! 31

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© LY Corporation 医者の不養生 紺屋の白袴 テクニカルライターの文書化遅れ 32

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© LY Corporation 2024年春 ついにチームの 「目標」を決める ことにした 33

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© LY Corporation よーし! チームの○○を 決めよう! ※○○に当てはまるものを みなさま自由にご回答ください 34

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© LY Corporation ゴール?長期目標?理念? 目指すもの?方向性?ビジョン? ミッションステートメント? スローガン?キャッチコピー? コアバリュー?KPI?OKR? 行動指針?ガイドライン?指標? 夢?大切にしていること? 35

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© LY Corporation チームの目標を立てたいので なんか作ろうと思ったけど まずその「なんか」を 何にしたらいいのか 分からない問題 36

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© LY Corporation 私たちのチームの ○○は△△です!の 「△△」を考えようとしたが まず○○が決まってなかった… ○○に入るものいっぱいある… 37

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© LY Corporation 私は「何を」 決めたらいいんだ…? 38

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© LY Corporation みんなが使ってる それっぽいのなんだ? 39

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© LY Corporation MVV? よし、それで やってみよう 40

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© LY Corporation 会社の経営理念や企業紹介にはよく 「ミッション」や「ビジョン」や 「バリュー」という言葉と一緒に おしゃれスローガンみたいなものが 載っている 41

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© LY Corporation LINEヤフー株式会社 引用元:https://www.lycorp.co.jp/ja/company/mission/ 42

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© LY Corporation 株式会社SmartHR 引用元:https://smarthr.co.jp/about/ 43

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© LY Corporation 株式会社Helpfeel 引用元:https://corp.helpfeel.com/ja/company 44

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© LY Corporation あれがMVVらしい 45

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© LY Corporation ミッション(Mission) ビジョン(Vision) バリュー(Values) それぞれの頭文字を取って MVV 46

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© LY Corporation ミッションとビジョンと バリューの違いが 分かる人は挙手! 47

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© LY Corporation GPT-4o曰く ミッションとビジョンとバリューは 使命と理想像と価値観 48

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© LY Corporation 使命と理想像と価値観… なるほど分からん! 49

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© LY Corporation 小学生でも分かるような言葉で MVVを説明して と頼んでみた 50

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© LY Corporation GPT-4o曰く ミッションとビジョンとバリューは 目標と夢と大切なこと 51

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© LY Corporation 目標と夢と大切なことの 違いってなに?! 52

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© LY Corporation ChatGPT頼みをやめて じっくり調べてみることに… 53

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© LY Corporation MVVは企業理念の テンプレートのように あちこちで使われている割に そもそも何が出典元なのかや MVVそれぞれの正しい解釈なども 曖昧らしい 54

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© LY Corporation 大人って意外と いい加減…! 55

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© LY Corporation そこで今回は 弊チームにおける MVVとはこういうもの! という独自解釈のMVVを定義 することにした 56

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© LY Corporation 別に世界中で通じる 「大統一MVV」を 定めたい訳ではない 57

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© LY Corporation チームの中で 「MVVってこういうものだよね」 という認識が合っていることが大事 58

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© LY Corporation 独自解釈で定義したMVV ミッションとは ミッションは「使命」です。 子供たちが大好きなアンパンマンでいうところの「何のために生まれて〜」というアレです。 たとえばウルトラマンなら「この星の人たちを守る!」みたいなものがミッションですね。 ビジョンとは ビジョンは使命を果たすために自分たちはこういう存在、組織になりたいという「理想像」です。 ここで大事なのは、チーム内の個々人ではなく「組織」の理想像であるということです。 ウルトラマンなら「みんなのヒーロー」みたいなものですね。ちなみにいろいろなMVVを 調べたところ、企業によってこのビジョンは省略されることもあるようです。 バリューとは 最後にバリューは、理想とする存在になり、使命を果たすための「行動指針」です。 たとえば大胆さと慎重さ、素早さと確実さのように相反するものの間で、 自分たちが何を優先して行動すべきか迷ったときの指針になるものがバリューです。 ウルトラマンなら、仮に「誰も死なせない」というバリューがあれば、「目の前の敵にとどめを 刺せば、もう二度と地球は襲われず平穏が訪れる。でも敵を倒すことを優先したら、隣にいる瀕 死(ひんし)の地球人は治療が間に合わずに死んでしまう」みたいなときに、バリューに従って 「敵を倒すより、地球人を病院に連れていこう」という判断ができます。 59

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© LY Corporation 自社のMとVを独自解釈で確認 ミッションとは ミッションは「使命」です。 子供たちが大好きなアンパンマンでいうところの「何のために生まれて〜」というアレです。 たとえばウルトラマンなら「この星の人たちを守る!」みたいなものがミッションですね。 ビジョンとは ビジョンは使命を果たすために自分たちはこういう存在、組織になりたいという「理想像」です。 ここで大事なのは、チーム内の個々人ではなく「組織」の理想像であるということです。 ウルトラマンなら「みんなのヒーロー」みたいなものですね。ちなみにいろいろなMVVを 調べたところ、企業によってこのビジョンは省略されることもあるようです。 バリューとは 最後にバリューは、理想とする存在になり、使命を果たすための「行動指針」です。 たとえば大胆さと慎重さ、素早さと確実さのように相反するものの間で、 自分たちが何を優先して行動すべきか迷ったときの指針になるものがバリューです。 ウルトラマンなら、仮に「誰も死なせない」というバリューがあれば、「目の前の敵にとどめを 刺せば、もう二度と地球は襲われず平穏が訪れる。でも敵を倒すことを優先したら、隣にいる瀕 死(ひんし)の地球人は治療が間に合わずに死んでしまう」みたいなときに、バリューに従って 「敵を倒すより、地球人を病院に連れていこう」という判断ができます。 60

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© LY Corporation 会社の経営理念や企業紹介にはよく 「ミッション」や「ビジョン」や 「バリュー」という言葉と一緒に おしゃれスローガンみたいなものが 使命と理想像と行動指針が 載っている 61

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© LY Corporation 独自の定義ができたので テクニカルライターのチームの 「MVV」を決めよう 62

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© LY Corporation 実はもともと みんなで決めたチームの 「ミッション」だけは 存在していた 63

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© LY Corporation チームの中で 言語化はされていないけれど こういう気持ちで 働いているよね…という ふんわりした共通認識もあった 64

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© LY Corporation それを元に 「ビジョン」と「バリュー」 をひねり出して フィードバックをもらって 直していこう… 65

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© LY Corporation 「MVVできたよー!」 66

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© LY Corporation 全員「わかる」 67

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© LY Corporation 満場一致で チームのMVVが決まった 68

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© LY Corporation ミッション 役に立つドキュメントで開発をもっと楽しく (Make development fun with helpful docs) 開発者がLINEヤフーの提供するプロダクトを使って開発をするとき、 その体験が楽しいものになるか、それともイライラしたつらいものになるかには、 プロダクトそのものの使いやすさだけでなく、ドキュメントの分かりやすさも大きく関わってきます。 私たちDev Contentチームの「使命」は、分かりやすく役に立つドキュメントで、 みんなの開発をもっと楽しくしていくことです。 69

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© LY Corporation ビジョン ドキュメントのスタンダードを確立するパイオニア (Be the pioneer. Set the standard for IT technical documentation.) LINEヤフーの社内でも、あるいは周りのIT企業を見渡しても、ドキュメントで悩んでいるところは多くあります。 たとえば 「ちゃんとドキュメントを残すべきだ」という気持ちがあっても、 どうしても開発だけが先行してドキュメントは置いてけぼりになってしまう。 あるいはみんな頑張って社内に情報を書き残しているけれど、あまりにコンテンツが多すぎて 「もう古くなってしまった過去の仕様」と「最新の仕様」がごちゃごちゃになって見つけられない、 といった事象にはみなさんも心当たりがあると思います。 テクニカルライターのチームを抱える会社は少しずつ増えてきたものの、 まだ当たり前の存在にはなっていません。 私たちは、「ドキュメントってああいうふうに書いたり、管理したりすればいいんだ。 うちもLINEヤフーのやり方をまねしてみよう!」と言われるような、 ドキュメント管理のスタンダードを確立するパイオニアになることを「理想像」として掲げました。 70

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© LY Corporation バリューは4つ 71

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© LY Corporation バリュー 走りながら考える (Think on the run) 何かをやるかやらないか、どんなふうにやるか、という計画を立てることは大切ですが、 検討に時間をかけすぎていつまでもその場にとどまっていると何も始まりません。 何かやった方がいいと思うことがあったら、取りあえずやってみよう! まずは走り出して、それ以上のことは走りながら考えよう! やってみて失敗しても、少なくとも「こうやったらうまくいかない」という学びが得られるという点で なにもやらないよりはいいことだ、と私たちは思っています。 72

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© LY Corporation バリュー 早く公開すれば早く直せる (Release early, fix faster) 情報の正確さは大切ですが、一方で「完璧で何一つ誤りのないドキュメントになるまでは世に出さない」 と思っているといつまでもドキュメントが公開できません。 ドキュメントが何もない状態よりは、 多少の不足や分かりにくさがあってもドキュメントが「ある」方がまだいいはずです。 万全を期すあまりにいつまでもリリースできないよりは、 ある程度の失敗を許容することで早く公開することを優先しています。 73

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© LY Corporation バリュー 惜しみなく出すともっと得られる (The more we share openly, the more we gain) テクニカルライターが持つライティングの知見は、 社内の研修や社外のイベントなどで惜しまず共有しています。 自分たちが書くものだけでなく自社全体のドキュメントが、 さらに自社だけでなく業界全体のドキュメントの品質が底上げされていく過程に貢献できたら、 それは素晴らしいことです。 ノウハウは隠して独占するよりも、みんなで広く共有し、 集合知によってさらに改善されていった方がいいはずです。 74

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© LY Corporation バリュー 愛着が湧くほど詳しくなろう (Know the product best, love the product most) そのプロダクトに興味のない人間がおざなりな理解で書いたドキュメントは、読めばそれと分かるものです。 私たちは「言われたとおりにドキュメントを書くだけ」ではなく、 実際の開発者と同じようにそのプロダクトを使ってみて、仕様や背景を理解した上で、 分かりやすいドキュメントを作り上げたいと思っています。 そのためにはプロダクトに愛情を持つことで詳しくなり、 詳しくなることでもっと好きになっていく、という姿勢が不可欠です。 75

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© LY Corporation やっとMVVができた… 76

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© LY Corporation これによって半期毎の個人目標設定で 「個人的にはこれやりたいけど チームの方向性とあってるのかな?」 という懸念を解消できるようになった 77

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© LY Corporation 「目標設定って難しいですねー」 「でもMVVってあるといいものですね」 78

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© LY Corporation 「目標設定って難しいですねー」で 数年経過してしまったが もっと早く MVVを作ればよかった? 79

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© LY Corporation みんなで共通の認識を持つ ↓ それを言語化する 80

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© LY Corporation チームの中に 言語化はされていないけれど こういう気持ちで 働いているよね…という ふんわりした共通認識があった ↓ 言語化するだけだった 81

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© LY Corporation この数年間は チームの共通認識が 醸成されるまでに 必要な期間だった (ということにしよう) 82

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© LY Corporation 83 バリュー 惜しみなく出すともっと得られる (The more we share openly, the more we gain) テクニカルライターが持つライティングの知見は、 社内の研修や社外のイベントなどで惜しまず共有しています。 自分たちが書くものだけでなく自社全体のドキュメントが、 さらに自社だけでなく業界全体のドキュメントの品質が底上げされていく過程に貢献できたら、 それは素晴らしいことです。 ノウハウは隠して独占するよりも、みんなで広く共有し、 集合知によってさらに改善されていった方がいいはずです。

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© LY Corporation Technical Writing Meetup vol. 37 テクニカルライターのチームで 「目標」をどう決めたか Dev Content Team Yoshiko Horikoshi 10th October 2024

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© LY Corporation