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侵入者の特性を考慮した 相互情報量に基づく 巡回経路の評価 坂倉健太* 小中英嗣 名城大学大学院 理工学研究科 情報工学専攻 令和五年度 電気・電子・情報関係学会 東海支部連合大会

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研究背景 ➢ 警備ロボットの巡回警備の実用化 https://www.knightscope.com/k5/ 警備の自動化 警備員の負担の軽減・警備の質の向上 警備員の代わりに警備ロボットを導入

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➢ 巡回警備の目的:火災・不審者・事故の早期発見と拡大防止 研究背景 これらの事象を総称してインシデント ➢巡回警備の考慮すべき点: ➀巡回経路が単一の経路 ➁訪問間隔が長い地点が 存在する 侵入者によって ➀経路が予測される ➁インシデントの発生 が容易となる

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➢ 本研究の目的: 研究背景 • 訪問間隔を警備の一周毎に変化させる手法の提案 • 警備ロボットの訪問間隔を観測しインシデントを起こす侵入者のモデル化 本研究の提案手法を相互情報量に基づいて評価し 単一の巡回経路との比較を行う

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➢ 巡回警備の条件: • 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る • 経路の始点と終点が同じ CPP(中国人郵便配達問題) CPPに帰着 地図が無向グラフ ➢ CPP(中国人郵便配達問題): 無向グラフの全ての道を少なくとも一度通り、出発点に戻る経路 のうち総経路長が最小のものを求めるグラフ問題

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1. 地図を無向グラフに変換 2. 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成 3. 多重グラフに対してオイラー回路を求める CPPの解法

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地図上の通路を辺、通路同士の交差点を頂点、頂点間の距離を辺の重み 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 2.0 地図を無向グラフに変換 与えられた元の地図 変換した無向グラフ

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1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 • 次数(頂点に繋がっている辺の数)が奇数の頂点間のみで 最小重み最大マッチングを求める ➢ マッチング 次数が奇数の頂点6個を2個ずつ の三組に分ける 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成

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1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 • 次数(頂点に繋がっている辺の数)が奇数の頂点間のみで 最小重み最大マッチングを求める ➢ マッチング 次数が奇数の頂点6個を2個ずつ の三組に分ける 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成 マッチングは15通り存在

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1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ➢ 結果 • マッチング:(1,2) (4,9) (6,7) • マッチングの重みの総和:4.0 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成

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1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ➢ 結果 • マッチング:(1,2) (4,9) (6,7) • マッチングの重みの総和:4.0 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成 15通りの中で最小のもの

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1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ➢ 結果 • マッチング:(1,2) (4,9) (6,7) • マッチングの重みの総和:4.0 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成 15通りの中で最小のもの ➢ 最小重み最大マッチング: 重みの総和が最小となるマッチング

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• 元のグラフにマッチングを追加し多重グラフを生成 • 多重グラフ 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成

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• 元のグラフにマッチングを追加し多重グラフを生成 • 多重グラフ 最小重み最大マッチングを用いた多重グラフの生成 全ての頂点の次数が偶数

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多重グラフに対してオイラー回路を求める ➢ オイラー回路を求め巡回経路を生成: 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る、最短の経路

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多重グラフに対してオイラー回路を求める ➢ オイラー回路を求め巡回経路を生成: 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る、最短の経路 ➀

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多重グラフに対してオイラー回路を求める ➢ オイラー回路を求め巡回経路を生成: 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る、最短の経路 ➀ ➁

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多重グラフに対してオイラー回路を求める ➢ オイラー回路を求め巡回経路を生成: 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る、最短の経路 ➀ ➁ ③

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多重グラフに対してオイラー回路を求める ➢ オイラー回路を求め巡回経路を生成: 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る、最短の経路 ➢ 問題点 単一の経路なため巡回経路を予測される ➀ ➁ ③

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多重グラフに対してオイラー回路を求める ➢ オイラー回路を求め巡回経路を生成: 地図上での全ての通路を少なくとも一回は通る、最短の経路 ➢ 問題点 単一の経路なため巡回経路を予測される ➀ ➁ ③ ➢ 提案手法: 最小重み最大マッチングに着目し、 前の周と異なる複数の巡回経路を生成

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提案手法の概要 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 2.0 16.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 2.0 マッチングをランダムで一つ選択

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提案手法の概要 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 2.0 16.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 2.0 重みを非常に大きな値に変更 マッチングをランダムで一つ選択

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提案手法の概要 1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 16.0 ➢ 結果: • マッチング:(1,7) (2,6) (4,9) • 次数が奇数の頂点間のみで最小重み最大マッチングを求める

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提案手法の概要 1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 16.0 ➢ 結果: • マッチング:(1,7) (2,6) (4,9) • 次数が奇数の頂点間のみで最小重み最大マッチングを求める (6,7)を選ばないマッチング • マッチングの重みの総和:6.0

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提案手法の概要 新しく生成された経路 前の周の経路 ➀ ➀

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提案手法の概要 新しく生成された経路 前の周の経路 ➀ ➀ ➁ ➁

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提案手法の概要 新しく生成された経路 前の周の経路 ➀ ➀ ➁ ➁ ③ ③

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提案手法の概要 新しく生成された経路 前の周の経路 ➀ ➀ ➁ ➁ ③ ③ 提案手法によって生成される 巡回経路は 一周毎に変化している

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侵入者モデル ➢ 侵入者がインシデントを発生させるのに要する時間 𝑇𝑐 を設定 𝑇𝑐 間警備ロボットが来ないと確信 侵入者は目的の辺で警備ロボットの 訪問間隔時間を観測し続ける 侵入者が目的の辺でインシデントを発生 観測

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侵入者モデル 𝑇𝑐 = 500 観測 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 ∆𝑡𝑖 = {400,500,800,150} ∆𝑡𝑖 :𝑖番目の訪問間隔時間 𝑆 ∊ { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 }:状態 𝑇𝑐 :インシデント発生に要する時間 侵入者モデル 𝑺𝒊 から𝑺𝒊+𝟏 を予測 𝑆𝑖 = { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 , 𝑆𝑠 }

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侵入者モデル 𝑇𝑐 = 500 観測 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 ∆𝑡𝑖 = {400,500,800,150} ∆𝑡𝑖 :𝑖番目の訪問間隔時間 𝑆 ∊ { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 }:状態 𝑇𝑐 :インシデント発生に要する時間 𝑺𝒊 から𝑺𝒊+𝟏 を予測 𝑆𝑖 = { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 , 𝑆𝑠 } ➀ ➀ 侵入者モデル

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侵入者モデル 𝑇𝑐 = 500 観測 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 ∆𝑡𝑖 = {400,500,800,150} ∆𝑡𝑖 :𝑖番目の訪問間隔時間 𝑆 ∊ { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 }:状態 𝑇𝑐 :インシデント発生に要する時間 𝑺𝒊 から𝑺𝒊+𝟏 を予測 𝑆𝑖 = { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 , 𝑆𝑠 } ➀ ➀ ➁ ➁ 侵入者モデル

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侵入者モデル 𝑇𝑐 = 500 観測 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 ∆𝑡𝑖 = {400,500,800,150} ∆𝑡𝑖 :𝑖番目の訪問間隔時間 𝑆 ∊ { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 }:状態 𝑇𝑐 :インシデント発生に要する時間 𝑺𝒊 から𝑺𝒊+𝟏 を予測 𝑆𝑖 = { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 , 𝑆𝑠 } ➀ ➀ ➁ ➁ ③ ③ 侵入者モデル

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侵入者モデル 𝑇𝑐 = 500 観測 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 ∆𝑡𝑖 = {400,500,800,150} ∆𝑡𝑖 :𝑖番目の訪問間隔時間 𝑆 ∊ { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 }:状態 𝑇𝑐 :インシデント発生に要する時間 𝑺𝒊 から𝑺𝒊+𝟏 を予測 𝑆𝑖 = { 𝑆𝑠 , 𝑆𝑠 , 𝑆𝑙 , 𝑆𝑠 } ➀ ➀ ➁ ➁ ③ ③ 相互情報量 侵入者モデル

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評価指標 𝐽 = σ𝑒∈𝐸 𝐼𝑒 𝑆𝑖+1,𝑆𝑖 𝐸 (1) 𝐼𝑒 𝑆𝑖+1 , 𝑆𝑖 = 𝐻 𝑆𝑖+1 − 𝐻 𝑆𝑖+1 𝑆𝑖 (2) 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 E:グラフの辺集合 𝐼𝑒 𝑆𝑖+1 , 𝑆𝑖 :辺𝑒の状態𝑆𝑖+1 と𝑆𝑖 の相互情報量 評価指標 J :警備ロボットの訪問間隔の予測しづらさ 𝑃 𝑆𝑖+1 = 𝑆𝑙 ȁ𝑆 𝑖 = 𝑆𝑠

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評価指標 𝐽 = σ𝑒∈𝐸 𝐼𝑒 𝑆𝑖+1,𝑆𝑖 𝐸 (1) 𝐼𝑒 𝑆𝑖+1 , 𝑆𝑖 = 𝐻 𝑆𝑖+1 − 𝐻 𝑆𝑖+1 𝑆𝑖 (2) 𝑆𝑠 ∆𝑡 ≤ 𝑇𝑐 𝑆𝑙 ∆𝑡 > 𝑇𝑐 E:グラフの辺集合 𝐼𝑒 𝑆𝑖+1 , 𝑆𝑖 :辺𝑒の状態𝑆𝑖+1 と𝑆𝑖 の相互情報量 評価指標 J :警備ロボットの訪問間隔の予測しづらさ 𝑃 𝑆𝑖+1 = 𝑆𝑙 ȁ𝑆 𝑖 = 𝑆𝑠 Jの値は侵入者に与える情報量が 大きいほど大きくなり、 訪問間隔時間が乱雑であると言えるので 大きい方が望ましい

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数値実験 ➢ 評価する巡回経路 (1) 本研究の提案手法で生成する巡回経路 (2) CPPの解法で生成する単一の巡回経路 ➢ 実験条件: • それぞれ100周分の巡回経路を生成 • ロボットの速度を1 [m/s] • 𝑇𝑐 = 800𝑠 実験で使用する無向グラフ

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数値実験 各辺の𝑆𝑖+1 と𝑆𝑖 の相互情報量 (1) 本研究の提案手法で生成する巡回経路

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数値実験 (1)の J の値0.7068 各辺の𝑆𝑖+1 と𝑆𝑖 の相互情報量 (2)の J の値0.0 (1) 本研究の提案手法で生成する巡回経路

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数値実験 (1)の J の値0.7068 (2)の J の値0.0 各辺の𝑆𝑖+1 と𝑆𝑖 の相互情報量 (2) CPPの解法で生成する単一の巡回経路

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数値実験 (1)の J の値0.7068 各辺の𝑆𝑖+1 と𝑆𝑖 の相互情報量 (2)の J の値0.0 (1) 本研究の提案手法で生成する巡回経路 提案手法によって生成される 巡回経路は訪問間隔が多様で 侵入者の予測を難しくしている

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まとめ・今後 • まとめ ➢ 本研究では訪問間隔を警備の一周ごとに変化させる手法の提案と侵入者の モデル化をした ➢ 訪問間隔時間の相互情報量からCPP の解である単一の経路に比べ本研究の提 案手法によって生成される巡回経路は侵入者の予測を難しくすることが分 かった • 今後 ➢ 侵入者のモデル化をより具体的にする